【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

81 / 95
メニュー32 焼肉の日 その3

メニュー32 焼肉の日 その3

 

 

鉄板の上で音を立てて焼かれている野菜と肉――それは休む事無く俺は勿論、伊之助や義勇さん、錆兎、煉獄さん達の手元の皿に盛られ続けている。

 

「美味いッ!! この甘くて辛い味噌は最高だッ!」

 

「本当ですね師範ッ! カワサキさん、今日のも凄く美味しいですッ!」

 

美味しい、確かに美味しいのだ。普通の味噌とは違う、円やかな甘さを伴った味噌はそれだけで食欲を誘う。

 

「ふぅぅううう――後3杯ッ!!」

 

伊之助が大きく息を吐いて、空の丼にまた白米を盛り付ける。

 

「へえ、やるじゃねえか。猪頭、もう少しだぜ? ほれ、頑張れ頑張れ」

 

「……うっせ、ちっと休憩だ。この味には飽きた……」

 

「んじゃ、伊之助はストップだな。ホルモン焼きが欲しいのはもういないか? いないなら次の料理の準備に入るけど」

 

カワサキさんの問いかけにホルモン焼きを食べたいと言う声が上がらず。ホルモン焼きはこれで終わりになったが、俺の皿にはまだ全然ホルモン焼きが残っている。

 

「ふー」

 

ここは1回米を食べるのを止めてホルモン焼きだけを食べる事にした。ホルモン焼きは味が濃くて、米が食べたくなるが今は完全に逆効果になると思ったからだ。

 

(……美味しい。凄く美味しいのは間違いないんだ)

 

満腹に近いのにまだ箸は動いていた。それはこの料理が美味しいからだと思う、確かに中途半端な覚悟でカワサキさんの訓練に参加するなと言われ半ば意地で御櫃の米を全部食べてみせると言った。カナエさんの言う通りならば柱になる為の訓練は6食食べる事が要求される筈だ、この程度で止まっていては駄目だと判ってはいる。少しずつでもいい、口を動かし続けろ。

 

(大丈夫、まだ大丈夫だ)

 

腹帯を片手で緩めて、少しずつ少しずつだが口を動かし続ける。弾力があって噛み切れないホルモンは飲み込むしかないのでお腹に溜まるのを感じるが、それでも少しずつ少しずつ飲み込んでいく。

 

「……炭治郎。漬物だ」

 

「その調子で良い、ゆっくりで良い。口を動かし続けるんだ。食べるのを止めるともう入らなくなるぞ」

 

義勇さんと錆兎の助言に返事を返せず、小さく頷いて口を動かし続ける。やっとホルモンを食べ終え、残っている野菜と漬物に箸を伸ばす。

 

「わぁ、次はハラミなんですね。私これ好きなんです!」

 

「そうかそうか、すぐに焼けるからな。もう少し待っててくれよ」

 

「はーい!」

 

甘露寺さん凄いなあ……俺より倍以上食べているのに凄く笑顔で美味しそうに食べている。

 

「ハラミか! うむうむ! 甘露寺タレをくれ」

 

「はい!」

 

煉獄さんと甘露寺さんが喜色満面という様子で取り皿にタレを入れる。そしてそれとほぼ同じタイミングで2人の皿の中に焼き上げられた肉が入れられ、順番に肉が取り分けられていく。

 

「うお、これも美味そうだな!」

 

伊之助の言う通り肉厚な肉に美味しそうだと素直に思う。これはホルモンよりも食べやすいかもしれない、そう思いながらタレにつけて肉を口にした。

 

(こ、これは……重い、今この状況でこの肉は重過ぎるッ!)

 

見た目は脂なんてなさそうな食べやすそうな肉に見えた。だが口に運んだ瞬間に判った、これはとんでもない強敵だと……肉は柔らかく、簡単に噛み切れるのだが、思ったよりも弾力があって食べにくいそしてそれに加えて脂もたっぷりだ。これは肉単体では食べられないと悟り、俺は丼を手にし米と野菜を駆使しながら、少しずつハラミという肉を飲み込んでいくのだった……。

 

 

 

 

 

不死川が炭治郎を嫌っているのは判っている。なんせ母親と家族の恩人であるカワサキさんが禰豆子が人を食ったら、責任を取って死ぬとまで言っているのだ。仮に俺が同じ立場だとしたら炭治郎を良い目で見ることは出来ないだろう……。だが俺は義勇と共に禰豆子は普通の鬼と違うと信じた。鬼になり空腹状態なのに炭治郎を庇った禰豆子ならば――そして雪山を駆け下りてきて、炭治郎達を庇ったカワサキさんを見て、義勇が兆しと感じたとおり、俺も炭治朗が今までの鬼殺隊を変えると感じた。

 

(無理だと思うが、ここまで食べればあっぱれだ)

 

宇髄は俺達が始めてでも炭治郎と伊之助が挑んでいる御櫃を食べ切ったと言ったが、その前に俺達はカワサキさんの元で継子になる訓練を積んでいた。つまり俺達には食べ切る下地が合ったのだ、完全に初見でここまで食べ切ったのは本当に初めての事だと思う。

 

「しゃあおらあッ!!!」

 

「んぐ、ふうふう……美味しいですッ!!」

 

ハラミという肉は肉に見えるが実は内臓系の肉でかなり癖が強い。カワサキさんの醤油とにんにくを使ったさっぱりと食べられるタレが無ければ食べきるのが難しい部位だ。

 

「はっはっ!! 良いぜ良いぜ。良い食いっぷりだ!!」

 

「うむ! この調子なら食べきれるのではないか!」

 

タレにつけたハラミを飯の上に乗せて、丼にして掻きこんでいる宇髄と煉獄が声を上げて笑う。確かに鬼連れの隊士と言う事で炭治朗の立ち位置は決していい物ではない。しかも、鬼殺隊の恩人であるカワサキさんの命が懸かっているとなれば、柱は勿論、隊士や隠からもいらないやっかみを受けるだろう。

 

「ご馳走様」

 

「お? もう良いのか? 実弥」

 

「米櫃のは全部食ったぜ。カワサキさん、ご馳走様。玄弥はもう少しゆっくり食ってな」

 

「おい、実弥。もー、悪いな。実弥も色々複雑なんだよ」

 

羽織を翻し歩いていく不死川を見て匡近が炭治朗に向かって手を合わせ、その後を追ってその場を後にした。

 

「やっぱり不死川さんは竈門君が嫌いなのかな?」

 

「いいや、そうではない。己の不始末を思うのだろう……実弥は不器用な男だからな、炭治朗、伊之助。あいつを許してやって欲しい、そう悪い男ではないのだ」

 

悲鳴嶼さんが2つ目の御櫃を空にし、3つ目の御櫃に手を伸ばしながら実弥を許してやって欲しいと口にする。

 

「あいつが帰ったのはお前の頑張りを見たからだ。もう食えないなら無理をしなくてもいいぞ? 初めてでそこまで食えばあっぱれだ」

 

最初に中途半端な覚悟で参加するなと言った以上。不死川の性格なら絶対に最後まで見届けていただろう……だけど炭治朗を見ていて考えを改めた……いや、もう少し様子を見ることにしたのだろう。しかし言いだしっぺの以上止めて良いとは言えず、帰って行ったのだ。相変わらず不器用すぎると思わず苦笑した。

 

「い、いえ、全部食べます。やりきります! それに凄く美味しいですから!」

 

宇髄が無理なら良いぞと言うが炭治郎は全部食べると口にして、笑みを浮かべて米を口に運んだ。

 

「ご馳走さまあッ! あーもう食えねえッ! もうはいらねえぞッ!!!」

 

伊之助が先に御櫃を空にし、仰向けになってもう食えねえと叫んだ。空になった御櫃は伊之助の隣に転がっていて、米一粒も残されておらず、綺麗に食べ切られていた。

 

「カワサキ殿。そろそろ例の物をお願い出来るだろうか?」

 

「私もお願いしまーす。これを楽しみにしているんですよ」

 

「OK。じゃあそろそろ最後の料理にするか」

 

まだ続くと知って炭治朗が絶望したような表情になる。だけどこの料理まで耐えられれば、まず間違いなく御櫃は食べきれたも同然だ。

 

「……これを食べれば食欲が出る。一気に御櫃の中身を食べ切れるぞ」

 

「え? ほ、本当ですか?」

 

義勇が珍しく饒舌なのに炭治郎が驚いているが、その通りだ。俺達もまだ御櫃が半分くらい残っているが、それはこれを食べる為に腹に余裕を持たしていたのだ。カワサキさんが最後に取り出した牛肉の塊を見て、不死川が自分の好物を食べないで帰ったのは炭治郎に嫌味を言った己を戒めての事だろう。

 

「カワサキさん……不死川」

 

「ああ、判ってるよ。義勇、ただな。お前もう少し喋ろうぜ?」

 

ビフテキが大好物の不死川に土産で持って行きたいとカワサキさんに頼んでいる義勇なのだが、カワサキさんの言う通り主語が抜け落ちている義勇。カワサキさんに何を頼んだのか判らない様子の煉獄達を見て、どうすればもう少し義勇が喋ってくれる様になるのかと俺は頭を抱えるのだった……。

 

 

 

 

実弥とは結構長い付き合いになるが、粗暴な言動からは想像出来ないほどに責任感が強く、思いやりのある男だ。鬼連れの炭治郎を嫌悪するような素振りを見せているが、それが不器用な実弥なりの炭治郎の守り方の1つだった。柱である自分が警戒する事で下級隊士の暴走を防ぐと言う事もある。実際実弥と炭治郎は良く似ている境遇だ、稀血の家族という事で鬼に狙われる確率は極めて高い。俺がその前に保護したが、そうでなければ鬼に狙われて一家皆殺しになっていた可能性は捨て切れない。実弥は炭治郎を通して、自分達が歩んだかもしれない1つの結末を想像したのだろう。

 

「カワサキさん。兄貴にも」

 

「大丈夫。玄弥、義勇が先に頼んでる」

 

え? っと言う顔をしている玄弥と俺はちゃんと頼んだと言わんばかりにドヤ顔をしている義勇。どうしてこいつはこう言葉足らずなんだろうなと思いながら牛腿肉を鉄板の上に乗せて、塩胡椒を振る。

 

「相変わらずこいつは派手だなあ。これだけの塊の肉を焼く所なんてそう見られたもんじゃねえ!」

 

「まだ焼けないですか!?」

 

肉の塊が焼かれていて派手だと喜ぶ天元とまだ焼けないかとそわそわしながら尋ねてくる杏寿朗。口にはしていないが、まだかなという顔をしている蜜璃に苦笑する。本当ならば身体を大きくする事を考えると炭水化物を制限する必要があるが、全集中の呼吸を修めている杏寿朗達の消化スピードは尋常ではなく、更に言えば食べた分全てを栄養に変えている。炭水化物制限をしなくとも、身体を引き締める事が出来る……だと思う多分。ある程度は食事療法は修めているが呼吸は俺の理解を超えているので、炭水化物制限が必要無いという風に俺は受け止めている。

 

「ほっと」

 

「うおっ!? 火、火だ!?」

 

「ええ!? こ、これ大丈夫なんですか!?」

 

「はっはは! やっぱり外国の料理は派手だな、いやもう派手派手だ!」

 

「うむ、余興としても楽しめるからな!」

 

ワインを鉄板の上に振りかけてフランベする。巻き上がった火柱にフランベを初めて見る伊之助と炭治朗が驚き、天元が派手だなと喜ぶ声を聞きながらバター醤油を上から掛け蓋をして少し蒸らす。

 

「はい、お待たせ牛腿肉のステーキだ」

 

スライスしたステーキを各々の皿の上に乗せる。

 

「伊之助はどうする? 肉少しだけ食べるか?」

 

「……食べる」

 

食べると言う伊之助のために少し小さめ――サイコロステーキくらいに切り分けて皿の中にいれてやる。

 

「うめぇ! これ美味いなあ! 今度はもう少し飯を食える時に食いたいな!」

 

「ほんとだ。おいしい……中が赤いのにちゃんと火が通っているんですね!」

 

レアステーキは馴染みが無い炭治郎が驚いているが、肉の日だけではなく結構な頻度でステーキを頼んでいる杏寿朗達は躊躇いもせずステーキを頬張る。

 

「美味い! 美味い! やはり肉の日の最後はこれだな!」

 

「んー美味しい! お肉を自分でも偶に焼くんですけど……やっぱりこの味にはならないんですよね」

 

「そうなんだよなあ、肉を焼くだけと思ったんだけどなあ……」

 

「そう簡単な物じゃ無いんだよ。ステーキっていう物はな」

 

鉄板の上を掃除しながら本当にそう思う。シンプルな料理ほど誤魔化しが効かない、ぺペロンチーノしかり、ステーキしかり、簡単な料理ほど料理人の腕が確かめられる物はないのだ。

 

「ほい、玄弥。実弥と匡近の分だ、ちゃんと届けてやってくれよ」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

「流石に持ち帰りだからレアには出来て無いから、ちゃんと火を通してあるからな。レアを食べたかったらまた来るように言っておいてくれ」

 

保存を掛ければレアでも持ち帰りは出来るが、流石にそこまでやるのは違うからな。ウェルダンに焼き上げたステーキをスライスして、飯の上に乗せたステーキ弁当を玄弥に預ける。普段より少なめに食べて帰ったから、ぜったい物足りなさを感じている筈だ。玄弥もそれが判っているのか、ステーキを飯の上に乗せてステーキ丼にするとそれをかき込んで立ち上がる。

 

「じゃあ、カワサキさん。ご馳走様でした!」

 

「おう、満足してくれたなら何よりだ」

 

ご馳走様でしたといって満面の笑みを浮かべて走っていく玄弥を見送り、美味い美味いと喜んで食べている杏寿朗達を見ていると何日も前から準備していた物が3時間も経たずに無くなってしまっても全然苦ではない。料理人にとって用意した物を美味しいと喜んで食べて貰えるのは何にも勝る報酬なのだと思う。

 

「ご馳走様……でしたぁッ!」

 

「はいよ、お粗末。良く食いきったな、炭治朗」

 

俺は絶対食べきれないと思っていたのだが、御櫃の中身を全て食べきり、仰向けに倒れ込んだ炭治郎を見て初めてで良く食べきったなあと正直感心した。

 

「宇髄。これで炭治郎の見かたを少しは変えてくれるんだろ?」

 

「おう、中々根性があるじゃねえか。感心したぜ」

 

食べきったことによる安心感と満腹が影響しているのか、寝入ってしまっている2人を前にして天元達が言葉をかわす。

 

「うむ。食べきった事は正直賞賛する。後は隊士としての力量があるかどうかだな!」

 

「でも師範、今は力が足りなくても食べきれたんだから、これから訓練を頑張れば良いと思うわ」

 

「出来る」

 

「ああ。そうだな、炭治郎ならカワサキさんの訓練も出来るだろう」

 

「そしたらその後はあれだな。黄金の汁を作る時の3日3晩の鬼退治、これができりゃあ誰の継子だって務まるぜ」

 

最初では絶対に食べきれないとされる特別メニューを食べきった炭治郎の話をして盛り上がる煉獄達。実際ここ数年で初挑戦で肉の日の食事を食べきったのは炭治郎と伊之助が初であり、この後に俺の訓練に挑戦して身体を鍛えて、黄金のコンソメスープを作る時の鬼の討伐に挑戦してやりきれば継子として認められる。そしてそうなれば鬼連れの隊士という悪評よりも、最速で継子になり行冥の打ち立てた2ヶ月で柱になった上で、しかも柱に勝利したと言う記録を樹立出来るかもしれない。確かに鬼を連れていると言う悪評は消える事はない、だがもしかするとと言う期待が生まれる事になるだろう。しかしそれ以上に炭治郎には数多くの試練が圧し掛かることになる――それを炭治郎が乗り越える事が出来る事を祈り、そして炭治郎が助けを求めてきた時に力になってやろうと改めて心に誓うのだった……。

 

 

メニュー33 お食事パンケーキ へ続く

 

 




うーん。焼肉って何回もやってるせいか、どうもどれも似た感じになってしまい。上手く書くことが出来ませんでした。すいません!!
もっと精進しなければならないなというのを痛感します。次回はパンドン様のリクエストで甘露寺さんにホットケーキや、それらを使ったおかずパンを書いて見たいと思います。ここで上手く書けなかった分そちらで挽回したいと思いますので次回の更新もどうかよろしくお願いします。


PS クリスマスに向けて番外編を準備中

飯を食え カーニバルファンタズム
飯を食え オバロ
飯を食え 鬼滅版

通常更新に加えて上記を準備中です。
私の執筆はとまらねぇからよ……クリスマスに間に合うことを期待して待っててくださいよ……。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

  • 間違っている
  • 間違っていない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。