【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー33 お食事パンケーキ

メニュー33 お食事パンケーキ

 

蜜璃が杏寿朗の継子になり、槇寿朗・杏寿朗の2人の炎の呼吸の使い手に指導を受け、メキメキと実力をつけている頃。俺の元には1通の手紙が届いていた。

 

「ほう、そうかそうか」

 

手紙の送り主は小芭内。水の呼吸の修錬を続けていたが、やはりどこか合わず悩んでいる途中に自分の呼吸を見出したとの事。そしてその呼吸には通常の刀では合わないらしく、槇寿朗の方から刀鍛治の里に頼んでくれるように頼みに行きますと言う物だった。ここで俺に頼んでくれとか、手紙で頼まない辺りが小芭内の真面目な性格を現しているなと思いながら読み終えた手紙を畳んで引き出しの中にしまい立ち上がる。自分の屋敷を持ちはしたが、1人で暮らすのは危ないという槇寿朗の忠告でまだ俺は煉獄家に居候していた。その理由はやはり新たに岩柱になった行冥、そして育手の育成方針への口出し、そして最終選別の方法の見直しと今までの鬼殺隊の常識を変え続けてきたのが大きいだろう。

 

「見得や伝統じゃないだろうに」

 

ボウルの中にふるいを掛けた薄力粉、ベーキングパウダー、そして通常よりも少し少なめの砂糖と、少しだけ多い塩を入れて混ぜ合わせる。流石に年頃の乙女相手に何時も山盛りの丼飯と揚げ物や魚という物では流石にあれだと思った。まぁ、食べる量は槇寿朗達に匹敵するので、乙女というには流石にすこーし問題があるが、それでもうら若い乙女である事は変わりない。となれば少しお洒落な食事を作ってやりたいと思うのは当然の事だろう。

 

「牛乳、卵っと」

 

今回はホットケーキを作ろうと思う。なんでも砂糖を少なめにしてサンドイッチのパンの代わりにしたり、ピタパンのようにしたりするというのを昔見たことがあるのでそれを作ってみようと思う。パンはちょっと仕込んでいる時間が無い上に窯がないのでパンを焼く設備が無い。だから鉄鍋さえあれば作れるパンケーキを作ることにしたのだ。

 

「作っている燻製肉と野菜と……後は、そうだな。蕎麦をソースで味付けして焼きそばっぽくしてみても面白いかもしれないな」

 

まだ訓練は始まったばかり、色々仕込んでみるのも面白いと思い。鉄鍋でゆっくりとパンケーキを焼き始めるのだった……。

 

 

 

 

 

杏寿朗が見出してきただけあり、甘露寺の才能はここ最近の炎の呼吸を使う剣士よりも遥かに秀でている。

 

「良い踏み込みだ!だが、もっと力強く踏み込んだ方が良いなッ!」

 

「はいッ!師範ッ!!」

 

少女でありながら、その膂力は全集中の呼吸だけの物ではない、生まれ持った素質だ。これだけ才覚に秀でている内弟子には流石の俺も笑みが零れたが、それと同時に少し落胆していた。

 

「む?甘露寺、妙な癖が出ているぞ?」

 

「え?そうですか?」

 

「うむ。不知火にそのような足運びは無いなッ!」

 

不知火は相手に向かって踏み込み、そのままの勢いで袈裟切りをする。基本にして炎の呼吸の型の基本にして奥義と言える。それゆえに不知火を極められないと他の型を習得するのに些か問題が出て来る。だが俺はこれはある意味当たり前だと思っていた。

 

「杏寿朗!相手は女性だぞ。男と同じ踏み込みが出来ると思うな、だが良い踏み込みだ。自信を持て!」

 

「は、はい!」

 

「なるほど! 私は女性に技を教えたことはありませんでしたから、そこまでは考えておりませんでした!」

 

「甘露寺に教える事で、自分自身ももう1度見直すのだ。杏寿朗」

 

圧倒的な膂力を持ち合わせているが甘露寺はやはり女なのだ。男とは骨格が違う、そしてカワサキの言葉を借りるのならば筋肉の稼動域が違う。筋力などでは男に匹敵していても、やはり適した身体の動きは男とは違うのだ。

 

(……うーむ)

 

こうして見ていると判るのだが、甘露寺はずいぶんと胸が大きい。さらしで押さえているが揺れる度に重心がずれているのが良く判る。炎の呼吸のようにどっしりと構え、相手を一撃で両断するというのは筋力に秀でている甘露寺には確かに良く合うだろう。だが、甘露寺が炎の呼吸を極めるのは難しいと言わざるを得ない。

 

(修錬の間に独自の呼吸を見出すか、別の呼吸を紹介するべきか……)

 

初めて杏寿朗が見出してきた継子だ。出来る事ならば最後まで面倒を見てやりたいが……炎の呼吸への適正は甘露寺は決して高いとは言えんな。

 

(足捌きは……水の呼吸、体捌きは雷の呼吸に劣るが早い)

 

水の呼吸の様に縦横無尽に足場を変えるが、水の呼吸の滑らかさにはやや遠い。

 

雷の呼吸の様に鋭い踏み込みと、速度を生かした体術を見せるが、雷の呼吸の速さには遠い。

 

そして炎の呼吸の力強さに良く似ているが、燃え盛る炎ではなく揺らめく炎の儚さを感じる。

 

(既存の呼吸にはどれも合わないな……)

 

カワサキの助力を得て、日の呼吸の再現を試みた時に判った呼吸の適正の重要性――甘露寺は炎の呼吸の適性はあるが、極める事が出来ないと言うのはすぐに判った。

 

(後はいつそれを言うかだな)

 

甘露寺と言う初めての継子に気合を入れて指導をしている杏寿朗。そして初めての杏寿朗の継子と言う事で気合を入れて学んでいる甘露寺――その2人に本当の事を言うのは憚られるが、何時かは2人も気づく時が来る。それをどうやって杏寿朗と甘露寺が乗り越えるのかと考えると、早い内に言うべきなのだろうかと頭を悩ませていると厨からカワサキが姿を見せた。

 

「随分と訓練に励んでいるな!感心感心。だけど昼飯の時間はもう過ぎてるぞ!」

 

カワサキにそう言われて気付いたが、確かに昼飯の時間は過ぎていた。

 

「すまない。少し訓練に熱が入っていたようだ」

 

「申し訳ありません!カワサキ殿!して、今日の昼食はなんですか!」

 

「何時も美味しいご飯ありがとうございます!」

 

なんにせよ、まずは昼飯だ。杏寿朗と甘露寺の事は今度機会を見て伝えることにしようと思い、カワサキの用意した昼食に視線を向けたのだが……。

 

「なんだこれは?」

 

丸いドラ焼きの生地みたいなのが山積みになっていて、野菜とカワサキが作っている燻製肉。そして蕎麦か? 随分と色の濃い蕎麦と卵焼きとカワサキが何をしたいのか判らない料理が多数並んでいた。

 

「おお、焼き蕎麦ですか!いただきます」

 

「あ、馬鹿!待てッ!」

 

カワサキが制止するが、それよりも先に蕎麦を口に運んだ杏寿朗の顔が歪んだ。

 

「か、カワサキ殿……これは随分と辛い、いや濃いですな」

 

「だから待てって言ったろうが……ちょっと待て。悪い、槇寿朗。先に杏寿朗の分を用意する」

 

「ああ、構わん。どうも待ちきれないようだからな」

 

「申し訳ありませぬ……」

 

しょんぼりとする杏寿朗に柱になってもまだ子供かと苦笑し、カワサキが手早く準備するのを見ながらカワサキがよく作る甘みと酸味のある特製の水を口にするのだった……。

 

 

 

 

蕎麦を炒めた物――焼きそばは良く食べるので思わず箸を伸ばしたが、想像以上に味が濃かった。普段の倍くらい濃かったので思わず吐き出しかけたが、それをするとカワサキ殿に叱られるので気合で飲み込んだ。だがカワサキ殿の料理で飲みこむのが辛いと思ったのはきっと後にも先にもこの濃い焼きそばだけだと思う。

 

「本当はパンに挟むんだが、生憎パンを焼く設備がないからな。パンケーキを作った」

 

「え?カワサキさんは窯があればパンを焼けるんですか!?」

 

「焼けるぞー?あんぱんでも食パンでも何でもござれだ」

 

なんと……カワサキ殿はパンまで焼けるのか、前にお館様が用意してくれたアンパン――あれは実に美味かったが、カワサキ殿がパンまで焼けるとは驚きだ。

 

「今度は窯か。庭がまた賑やかになるな」

 

「作るのは確定かよ……それなら材料だけでいいぞ? 俺が使いやすくないと困るからな」

 

カワサキ殿の料理の腕を生かすために鉄板を配置した部屋なども準備したが、今度は窯か!どんな料理が出来るのか楽しみだ。

 

「ほい、出来たぞ」

 

俺がさっき食べられないと思った濃い味の焼きそばをぱ、ぱんけーき?とやらに挟んでカワサキ殿が差し出してくる。見た目はドラ焼きのようだが……。

 

(いやいや、問題ない)

 

カワサキ殿の料理で不味い物はない!きっとさっきの濃い味は俺が急いで食べ過ぎたからだと思い、差し出されたドラ焼きのような物を口に運んだ。

 

「美味いッ!!!」

 

「そうかい、それは良かった」

 

「こんなに面白い美味いは初めてですッ!!!」

 

ぱんけーきはほんのりと甘く、そしてとてもふんわりとしていて柔らかい。その味は菓子に近く、これでは腹が膨れないと思ったときに顔を出す焼き蕎麦の濃い味――さっきは辛いと思ったその味がぱんけーきで甘い口の中に広がると甘さは感じず、また焼き蕎麦の辛さも感じない。カワサキ殿が手打ちしている弾力の強く歯応えの良い蕎麦と柔らかいぱんけーき……甘い物と辛いもの、この相反する味がまさかこうまで口の中で1つになるとは驚きだ!

 

「うん!美味いッ!!!!」

 

具材は無く、少し寂しいか?と思ったのだがそんな事はない。焼き蕎麦の弾力と濃い味、そして柔らかいぱんけーきの甘さだけで十分に満足出来る味だ。

 

「ほう?俺のは杏寿朗のとは違うのだな?」

 

「燻製肉と赤茄子とレタスを挟んでる。厚切りの燻製肉が良い味をすると思うぞ」

 

カワサキ殿の燻製肉が厚切り!? 普段は薄く切られているのが厚切りにされていると言うだけで涎が出てくるのが判る。

 

「飲み込んでからな。ちゃんと準備してあるから」

 

「んぐ、はいッ!!」

 

ぱんけーきというのは思ったより大きい上にたっぷりと焼き蕎麦が挟まれている。

 

「む、これは何とも言えんな。美味い、美味いのは間違いないんだが……こんな味は初めてだ」

 

「は、初めての味ですね、甘いのにしょっぱいなんて面白いです!」

 

「甘いのと辛い味は良く合うのさ。案外美味いだろ?」

 

父上と甘露寺が食べているのを見て、残り少しの焼き蕎麦を挟んだ物を大きく口を開けて頬張る。

 

「カワサキ殿!私にも是非!」

 

「はいはい、今作るよ」

 

カワサキ殿がぱんけーきを手の上に乗せて、白い……マヨネーズというカワサキ殿が良く作る調味料を塗って、その上にレタス、赤茄子、そして厚切りにした燻製肉が乗せられてぱんけーきで挟まれる。

 

「はいよ」

 

「いただきます!」

 

零れ落ちそうになる具材を両手でしっかりと掴んで、大きく口を開けて齧りついた。

 

「美味い!!!美味いッ!!!」

 

柔らかくて甘いぱんけーきを噛み千切ろうとすると燻製肉に歯が当たる。その厚切りにされた燻製肉にこんな贅沢が許されるのかと思いながら挟まれている野菜と共にぱんけーきを齧りきる。噛み締めるたびに溢れ出る脂、そして塩味の強い燻製肉を包み込むぱんけーきの甘さ――。

 

「これは美味いです!お代わりを!!」

 

焼き蕎麦も美味かったが、普段少ししか食べれない燻製肉を厚切りで食べれるというのが気に入り、もう1度同じ物をカワサキ殿に頼み、残り半分のぱんけーきを頬張るのだった……。

 

 

 

 

何時もカワサキさんは凄く美味しいご飯を作ってくれるけど、こんなに面白いご飯は初めてかもしれない。

 

「んんー♪美味しいです!」

 

「良かったよ。これはあんまり日本じゃ馴染みがないだろうからなあ」

 

お菓子をご飯にすると言うのは確かに日本では全然見ないと思う。だけど、これは面白くて凄く美味しいから凄く気に入ってしまった。

 

「卵がふわふわ~♪」

 

「ふふん、自信作さ」

 

普段の卵焼きの数倍はふんわりとして柔らかい、それと柔らかくて甘いぱんけーきは凄く合う。卵が甘いからお菓子みたいな感じがするんだけど、しっかりとお腹に溜まる感じがする。

 

「ん。んー?美味いのですが」

 

「俺達にはあんまり合わないな」

 

「だから言っただろ。卵は蜜璃用だと、勿論美味い事は美味いが2人には合わないだろう」

 

私の為に用意してくれた卵焼きは師範と大師範にはあんまり合わなかったようだ。美味しいことは美味しいんだけど、どうも口に合わないという様子だ。

 

「焼き蕎麦で作ってくれ」

 

「私もお願いします!」

 

口の中が甘いのか口直しで焼き蕎麦を挟んでくれと師範と大師範が言う。私には焼き蕎麦の味は少し濃すぎて苦手だけど、やっぱり大師範と師範には合うんだなあと思いながらふんわり卵の挟まれたぱんけーきを口に運んでふと気づいた。

 

「カワサキさん。これってもしかして凄く甘く出来るんですか?」

 

甘くしてないと言っていたけど、甘くしてないって事は甘く出来るって事だ。それに気付いてカワサキさんに尋ねるとカワサキさんは凄く優しい顔で笑った。

 

「勿論出来るさ。明日のおやつに準備するからな」

 

「はい!楽しみにしてます!」

 

「甘いのもたまにはいいですね!さつまいもは使えますか?」

 

師範も甘いおやつに使って欲しい食材をカワサキさんにお願いしている。

 

「勿論出来るぞ。ちゃんと準備しておくから2人とも楽しみにしていてくれ」

 

「「はい!」」

 

この塩味の効いたぱんけーきも美味しいけど、甘く作ってくれたぱんけーきがどれだけ美味しいのかという楽しみが出来た事に笑みを浮かべながら、卵の挟まれたぱんけーきを頬張った。

 

「んー!やっぱり凄く美味しいです!」

 

「そこまで喜んでくれるとこっちも嬉しいよ」

 

「カワサキ殿!焼き蕎麦のを1つ!」

 

「カワサキ、俺は卵と燻製肉を」

 

「なんと!?そんな事を頼んでも良いのですか!?」

 

「残っても困るからな、こうやって食べたいって言うのがあったら教えてくれよ」

 

「「燻製肉と卵でお願いします!」」

 

好きな組み合わせでも作ってくれると聞いて私も師範も大師範と同じ卵と燻製肉を使って欲しいと声を揃えてカワサキさんにお願いするのだった……。

 

 

メニュー34 ふわふわパンケーキへ続く

 

 




パンケーキでサンドイッチにするって言うのは調べてみると結構あって、自分で作ってみても案外美味しかったです。厚切りベーコンをどーんって挟むのが個人的に凄く良かったですね。次回は小芭内と蜜璃の初エンカウントを書いて見たいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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