【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー34 ふわふわパンケーキ

メニュー34 ふわふわパンケーキ

 

大師範と師範の家でお世話になって嬉しいことが沢山あった。まずは、やっぱり修練の事。正直、師範の継子に見出される前は女だからと言う事で馬鹿にされることも多かったし、私が添い遂げる殿方を探していると聞いた先輩隊士から夜伽をしろとか言われることもあった…勿論そう言うのは鎹鴉や藤の家の人達が監視してくれていた事ですぐに処罰が下ったけど、正直かなり怖かったのを覚えている。その時の事を考えれば瑠火さんは優しいし、相談にも乗ってくれる。それに大師範と師範も女だからと馬鹿にしないで熱心に稽古を付けてくれる。

 

次はやっぱりカワサキさんの食事だ。最終選別の時に食べた時もすっごく美味しかったけど、私のために特別な献立を作ってくれるし、色んな国の料理も作ってくれる。それにこう……上手く言えないけど、お兄ちゃんみたいな感じがして凄く相談しやすいのだ。

 

「判る!カワサキ殿は俺にとっても兄のような人だ!」

 

「ですよね!カワサキさんってお兄さんって感じがしますよね」

 

「うむ!色々と相談にも乗ってくれる上に、海外の鍛錬を色々と教えてくれてな!俺が柱に成れたのは父上とカワサキ殿の存在が大きいなッ!!」

 

師範もカワサキさんを兄のように思っていると言って快活に笑った。

 

「勿論それは俺だけではなく、小芭内も同じだろうがな」

 

「お、小芭内さん?兄弟弟子さんとかですか?」

 

いま大師範の家にいる弟子は私しかいない筈だから、小芭内という人物が師範の兄弟弟子と言うのは明らかだった。だからそう尋ねると師範は大きな声で笑った。

 

「俺の幼馴染だ!俺と共に父上に炎の呼吸を習ったのだが、炎の呼吸の適性が低くてなあ。水の呼吸と霞の呼吸の育手の所を渡り歩いているそうだ!」

 

呼吸の適性……それはとても繊細な問題だ。炎の呼吸の師範に習っても炎の呼吸を扱いきれないと言う隊士は多いし、毎年水の呼吸の使い手を選出している家でも、水の呼吸の適性が低い子供がいると言う話は実際良く聞く。

 

「し、師範」

 

「気にするな!大丈夫だ。お前がどんな道を選ぼうとも、俺も父上もお前の師。良く考え、そして学び、己の技を磨けばいい。それに、修錬を積んでいる間に炎の呼吸の適性も上がるやもしれん!」

 

 

「は、はい!頑張ります!」

 

「その意気だ!今日はカワサキ殿が特製のおやつを作ってくれるはず!気合を入れて鍛錬だ!」

 

「はい!」

 

休憩は終わり、再び私は師範の指導を受けながら炎の呼吸への理解を深めようと努力をした。だけど……どうしても拭いきれない違和感が消える事はやはりないのだった。

 

 

 

 

 

 

小さな鍋の中で茹でている皮を剥いて、小さく切ったさつまいもに串を刺す。スッと串が入り、ぐずぐずとまでは言わないが、かなり柔らかくなっているのを確認してお湯を捨てて、弱火で更に水気を飛ばし時折鍋を揺すり焦げ付かないようにし、水気を十分に飛ばしたらマッシャーで芋を丁寧に押し潰す。

 

「砂糖と牛乳っと」

 

いい具合にさつまいもが潰れたら牛乳と砂糖を加えて弱火で練り上げるような感じでさつまいもを伸ばす。ふわふわのパンケーキを作る約束をしたが、そこで杏寿朗が欲しいと言ったさつまいものクリームの準備だ。本当は生クリームの方が滑らかな仕上がりになるのだが、ふわふわのパンケーキに使うなら味が濃くなりすぎるので牛乳にした。

 

「良し。こんな物だな」

 

程よく芋の感触を残したクリームになった所で火からどけて、香り付けにブランデーを数滴垂らしてざっと混ぜ、氷室の中に運んで冷やしておく。これで鍛錬が一区切り付いた頃に良く冷えてちょうど良い頃合になる筈だ。

 

「うし、やるか」

 

鍋に少量の水を入れて沸かしている間に生地の準備を始める。ボウルの中にふるった薄力粉、砂糖、卵黄、牛乳、サラダ油を加えてよく混ぜ合わせる。全体が良く混ざったら今度は別のボウルを用意して卵白を入れて泡たて器で卵白の塊を綺麗にほぐす。良くほぐれた所で全力で泡たて器で卵白をかき混ぜる。

 

「んんッ!」

 

それこそ泡たて器を叩きつける要領でかき混ぜ、卵白が泡立って来たら砂糖を少しずつ加えてまたかき混ぜる。

 

「うしっ!OK」

 

泡たて器を持ち上げたときにメレンゲが持ち上がりついてきたら完成だ。これを最初に作った生地に混ぜて、メレンゲを潰さないようにサックリとかき混ぜれば生地は完成だ。

 

「頼むから上手く行ってくれよ……」

 

鉄板を竃の上に乗せサラダ油を敷いて温まってきたらおたまでゆっくりと生地を鉄板の上に乗せる。これを数回にわけて高さを作る感じで生地を盛り上げて、鉄板の上に4つ生地を置いたら、生地に掛からないように注意してお湯を入れたら、蓋をする。暫くそのまま様子を見て、小さく深呼吸をしてから蓋を開けた。

 

「……良し良し……」

 

鉄板でお湯が蒸発し、蓋で蒸気を逃がさないように蒸し焼きにしたことでふんわりと膨らんでいる。潰さないように気をつけて引っくり返すと綺麗な狐色になっている。

 

「もうちょっとだな」

 

また鉄板の上にお湯を入れて蓋をして蒸し焼きにする。10分ほど焼いた所で蓋を開ける。

 

「完璧」

 

ふわっと膨らんだパンケーキを見て俺は思わず笑い、潰れてしまわないように保存を掛けて丁寧に鉄板の上から皿の上に移し、次の生地を鉄板の上に丁寧に流し込み、次のパンケーキを焼き始めるのだった……。

 

 

 

 

 

カワサキ殿が用意してくれたおやつ用のパンケーキは中に燻製肉や焼き蕎麦を挟んだ物と違い、非常に柔らかそうな物だった。

 

「さつまいものクリームと巣蜜、それと溶かしたバターを用意してるから好きな物をかけて食べてくれ」

 

カワサキ殿はそう言うとどんどん焼いてくるからと言って厨へと戻って行かれた。俺達は皿の上に置かれた柔らかそうなぱんけーきを1つずつ、それぞれの皿の上に乗せる。

 

「兄上、さつまいものクリームですよ」

 

「うむ!ありがとう」

 

千寿朗から受け取ったさつまいものクリームをパンケーキの上に乗せようとしてふと思った。これだけ柔らかいぱんけーきに乗せたらつぶれてしまうのではないか? と思い皿の上にクリームを乗せる。

 

「じゃあ私は巣蜜を」

 

「ではばたーを」

 

甘露寺は巣蜜、千寿朗はバターをぱんけーきの上に乗せて、それぞれ匙を手にした。

 

「おおッ!これは凄い!」

 

「や、やわらかーい……」

 

匙が吸い込まれるようにぱんけーきの中に消えた。ゆっくりと匙を動かしてぱんけーきを掬ってみると中までふんわりとしているのが良く判る。

 

「どれ、どんな味だろうな」

 

「カワサキさんの料理だからきっと美味しいですよ」

 

「どんな味か楽しみだなあ」

 

3人でこのぱんけーきがどんな味なのかを想像し、口をあけて頬張った。そして俺達はその味わったことのない食感に3人とも声を失った。

 

(こ、これは凄い)

 

口の中で溶けるように消えた。雲を食べればこんな感じなのかと思うほどに不可思議な食感だった。

 

「お、美味しいー♪こんなの初めて食べるわッ!」

 

「本当ですね!これすっごく美味しいですッ!」

 

「うむ!これは美味いッ!!」

 

甘露寺が美味しいと言った瞬間。俺も千寿朗も口々に美味いと叫んだ。この不可思議な食感と味に驚いて声が出なかったのだが、甘露寺のお陰で美味いと言う事が出来た。

 

「口の中で溶けて消えますねー♪」

 

「本当です!カワサキさんがアイスクリンとかを作ってくれますけど……それとはまた違う感じで」

 

「美味いッ!!!」

 

俺には色々と飾ったことを言えないので美味いとだけ叫んだ。それだけでカワサキ殿のいる厨にまで俺の声はきっと届いた筈だ。今度はさつまいものクリームを掬ってぱんけーきと共に頬張った。

 

「美味い美味い!わっしょいわっしょいッ!!!!」

 

口の中に少しだけ残るさつまいものほくほくとした食感! そしてさつまいもの甘み!!それが口の中で1つになって美味い以外の言葉が出てこない。

 

「ほわあ……おいひい……」

 

「幸せの味ってこんな感じなんですかねえ……」

 

カワサキ殿は今まで俺達の知らない味を幾つも作ってくれたが、これほど感動的な味は初めてだった。

 

「なんだ、何を騒いでいる?杏寿郎」

 

「おお!小芭内か!カワサキ殿が珍しい菓子を作ってくれてな!お前もどうだ?」

 

何時の間にやってきたのか小芭内が俺達が騒いでいるのを見て、怪訝そうな顔をしてこっちにやってきた。

 

「菓子?カワサキさんのか……それなら俺も」

 

そう言いながらやってきた小芭内が甘露寺に気付いて足を止めた。その目は大きく開かれ、甘露寺を凝視している。

 

「えっと小芭内さんですか?師範の幼馴染の……?」

 

「あ、ああ。伊黒、伊黒小芭内だ。杏寿郎は幼馴染になる」

 

「そうですか!あの、私は甘露寺蜜璃って言います。よろしくお願いします」

 

小さく頭を下げる甘露寺をじっと見つめている小芭内。無表情の小芭内だから少し判りにくいが、甘露寺を見て頬を赤らめているのが俺には判った。

 

「伊黒さんもどうですか?」

 

「あ。いや、俺は」

 

「遠慮するな!さぁ、座れ!!」

 

逃げようとした小芭内の肩を掴んで強引に甘露寺の目の前に座らせる。驚いた様子で俺を見る小芭内だが、俺はそれを知らない振りをした。自分を必要以上に律し、罰している小芭内が俺の勘違いでなければ好意を見せたのだ。これは珍しいことだ、これを切っ掛けにして、もっと小芭内が社交的になれば良いと思ったのだ。

 

(お、お前の弟子ではないのか?)

 

(弟子ではある!だが恋仲ではない!)

 

目に見えてうろたえる小芭内。長い付き合いだが、小芭内のこんな反応を見たのは初めてだ。それと同時にカワサキ殿が小芭内が変わるには愛する相手でも見つけないと駄目かと言っていたのを思い出し、ここは余計なお世話をしてやろうと思ったのだ。

 

「はい、伊黒さんもどうぞ。とても美味しいんですよ?」

 

「あ、ああ。も、貰おうか」

 

声は若干うわずっているが、それでも甘露寺からぱんけーきを受け取ったと言うのが良い傾向だと思った。

 

「お!小芭内も来たのか。よっし、よし、じゃあもっと沢山焼いてくるかなあ」

 

「すいません。カワサキさん……ご迷惑を掛けます」

 

「良いって良いって、そんなの気にしなくていいからさ。いっぱい食べてくれよ」

 

笑顔で言うカワサキ殿はぱんけーきを置いてすぐに厨に引き返していく。だがその姿は楽しそうで本当に料理をしているのが楽しそうに見える。

 

「このさつまいものクリームが美味いぞ」

 

「巣蜜も美味しいですよ。伊黒さん」

 

「あ、ああ。そうか……ではまず巣蜜から貰おうか」

 

俺と甘露寺に同時に声を掛けられて、少し困っている様子だが決して嫌そうにしていない。

 

「はい。伊黒さん、お茶をどうぞ」

 

「すまない。ありがとう、千寿郎」

 

穏やかな昼下がり、俺達はカワサキさんの作ってくれたぱんけーきを食べながら、穏やかな時間を過ごすのだった……。

 

 

 

メニュー35 とろろ蕎麦ととろろご飯へ続く

 

 




次回は食事描写よりもシナリオを重視して書いて見たいと思います。具体的には「日の呼吸」の再現実験みたいな感じでやってみたいなと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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