【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー8 オムライス

メニュー8 オムライス

 

無惨を初めとした大人の……鬼? とりあえず大人の鬼としよう。大人の鬼はとにかく好みが細かい、まぁそれは良いんだが、ハンバーグとかを好まない者が非常に多い。肉に対する拘りが非常に強烈だ。

 

無惨は牛肉を好むが豚肉は余り好きではない、鶏肉は牛肉ほどではないがそれなりに食べてくれる。

 

巌勝は鶏肉を好むが、無惨同様豚肉は余り好きではない、牛肉は文句を言わない程度に食べる。

 

狛治は豚肉を好むが、牛肉はさほど好きではない、鶏肉は豚肉ほどではないが、それなりに好んで食べる。

 

女性の鬼は全体的に鶏肉を好み、豚肉や牛肉はほどほどと言う感じだ、梅は牛肉大好きだけどな……。

 

無論そこに料理の仕方や工程で更に好みが別れるが、まぁ大体そんな傾向がある。しかしそれらの法則に当て嵌まらない鬼もいる。

 

「あ、カワサキさん、今日のお昼はオムライスでお願いします」

 

「子供達が頑張って収穫をするからな」

 

「あいよー」

 

響凱と零余子がキッチンに顔を出してから子供の鬼を引き連れて畑に歩いていく。

 

「がんばるー」

 

「野菜もとってくるねー」

 

「いってきまーす♪」

 

それぞれが小さなスコップを手に歩いていく子供の鬼。響凱と零余子の引率している姿を見ていると、保育園の先生に見えなくも無い。

 

「いや、案外間違いじゃないか?」

 

響凱は本の読み聞かせと自分で紙芝居を作ったりと子供の鬼に人気者だし、零余子も面倒見が良いのでお姉ちゃんと慕われている。

 

「なるほど、天職か」

 

きっとあの2人は子供に関係する仕事に付くのが天職だったんだなと思い、昼食の準備を始める。

 

「さてとオムライスか……」

 

となるとやはりふわふわ卵のオムライスだろう。そうとなればやはりソースはデミグラスソースが一番だ、後は零余子はチーズが好きなのでチーズのソースもいいかもしれないなと考えながら、材料を並べていく。

 

「ま、何十回、何百回と作ったから失敗はありえないな」

 

デミグラスソースは洋食の基本と言っても良い。そして作るレシピも店の数ほどあると言っても過言ではないし、簡単に作れる物から、時間の掛かる物まで、その幅は非常に広い。

 

「今回は子供向けで良いだろう」

 

本格的なものだと赤ワインとかも使う。そうなると子供にはあんまり美味しいとは感じられない筈だ、だから即席のデミグラスソースにする。繊維にそって玉葱を薄切りにして小皿に取り分け、フライパンで小麦粉を狐色になるまで炒めたら、玉葱と同様小皿に取り分けておく。

 

「よっと」

 

小麦粉を炒めたフライパンにバターを入れて、玉葱を炒める。弱火でしっかりと炒め、玉葱に色が付いてくたっとしてきたら乾煎りした小麦粉を加えて小麦粉の粉っぽさが無くなりペースト状になるまで炒める。

 

「ケチャップ、ソース、牛乳、隠し味にしょうゆと蜂蜜、それとコンソメっと」

 

本当なら赤ワインだが、子供向けと言う事で蜂蜜を隠し味に加え、コンソメスープでペーストと調味料を伸ばして煮詰める。

 

「うし、OKOK」

 

ソースにトロミが付いたらデミグラスソースはOKだ。

 

「もう準備を始めるか」

 

どれくらい収穫するかは判らないが、人数は10人を越えている。少し早い気もするが、最悪保存を掛けてしまえば良いと思い俺はデミグラスソースを仕上げてすぐオムライスの準備を始める事にした。

 

「シンプルに行くかな」

 

オムライスにはグリンピースやマッシュルームも入れるが、食べるのは子供がメインだ。だからシンプルに玉葱と鶏肉だけにしようと思う。玉葱はみじん切り、鶏肉は子供でも食べやすいように細かく切り分ける。

 

「……」

 

バチバチとフライパンの焼ける音がする。べちゃべちゃなチキンライスではオムライスの旨みは半減すると言っても良いだろう、強火でフライパンをしっかりと焼く、その温度は目ではなく、耳で聞き分ける。

 

「ここ」

 

最も温まったと判断したタイミングでサラダ油を入れ、玉葱と鶏肉を炒める。鶏肉に色が付いたらたっぷりのケチャップをいれ、塩、胡椒で味を調える。ケチャップの水気がある程度飛んだら米を入れて強火のまま一気に炒める。米をケチャップの赤で染め上げるイメージで混ぜ合わせ、米が綺麗に赤色に染まったら火の上からフライパンを降ろし、深皿に綺麗に楕円形になるように盛り付けたら保存を掛けて温度を維持する。

 

「さてと次だ」

 

オムライスの主役はやはり半熟の卵だ。これが失敗すると目も当てられないと個人的に思っている。

 

「ほっと」

 

ボウルに卵を3つ割り入れ、牛乳と混ぜ合わせる。ここでは下味をつけないのがポイントだ、本格的に作るならチキンコンソメや塩胡椒で味を調えるが、あまり味を付けすぎると子供には不評なのでシンプルに仕上げる事を徹底する。卵液を仕上げたらフライパンにバターを入れて加熱して溶かす。

 

「うし、完璧」

 

バターが溶けたら卵液を流し込んですぐにかき混ぜる。そして卵が半熟になったら火から降ろしてゴムベラで楕円形になるように形を整え、チキンライスの上に乗せる。

 

「……よっし」

 

包丁で楕円形の卵の真ん中を開くと半熟卵が溢れ出す。我ながら完璧な仕上がりだと頷きながら切り開いた卵をチキンライスの縁に入れるように形を整える。

 

「どんどん行くか」

 

まだまだ作らないといけないので俺はすぐに次の卵を焼くべく、卵液の入ったボウルに手を伸ばすのだった……。

 

 

 

 

 

野菜や果物の栽培や収穫は戦う事ができない子供の鬼や女の鬼の仕事だ。基本的に無限城で賄える物は無限城で賄う。そうでもないものは無惨様が外貨を稼いでそれで買い揃えるが、人数が人数なので間に合わない事も多々ある。そうなれば自分達で栽培するのが一番確実となるのは当然だった。

 

「おいしー♪」

 

「頑張ったから美味しいッ!」

 

「はむっ!!」

 

そして収穫等を終えた後の食事は豪華な物になる。これも1つの決まり事だった、カワサキさんの料理は何時でも美味しいけれど収穫の後のものは更に美味しいし、なによりも自分達が育てた野菜で料理もしてくれるので、物を育てるという実感も子供達に教える事が出来る。

 

「この茶色いの美味しい! でもカレーじゃないね?」

 

「それはデミグラスソース……洋食で使われる基本のソース」

 

「基本?」

 

「一番の下地と言うことだ」

 

響凱の説明に頸を傾げている子供の鬼。子供に説明するには難しすぎるだろうに……もっと噛み砕いてシンプルに教えてあげないといけない。

 

「色んな野菜や調味料を使って作るソースなんだよ、半熟卵に良く絡んで美味しいでしょう?」

 

「うん、美味しいー」

 

「むふう♪」

 

カワサキさんのオムライスは子供に大人気だ。大人には不評の料理の多くは子供には大人気である、ハンバーグとか、チキンライスとか、オムライスとか、それに甘いもの全般はとにかく子供に人気だ。

 

「零余子お姉ちゃんのは白いね?」

 

「なんで白いのー?」

 

「ふふ、これはチーズのソースなのよ、チーズ食べられる子はいるかしら?」

 

チーズと聞いてむうっと顔を顰める子が大半を占めた。チーズの香りが苦手と言う子は案外多くて、でも私はチーズが好きだからチーズのソースにしてもらっているのだ。

 

(んんー美味しい)

 

卵の濃厚な旨みにチーズの旨みが交わればこれは最早最強だ。白いチーズのソースにチキンライスの赤が混じっていくのも色合いが綺麗だと思う。

 

「おいしいね」

 

「うん、凄く美味しいわ」

 

鬼になった事で昔の事は私もあまり思い出せなくなってしまった。鬼になっても、記憶がしっかりと残る者とそうではない者に分かれるらしい、私はどうも後者で、響凱は前者だった。ぼんやりと覚えているのは大事な物があったというそれだけ……。

 

「1口あげるー」

 

「あー! 私も私も!」

 

「お姉ちゃん! あーんあーんッ!!」

 

私がじっと見つめているのを見て私も食べたいと思ったのか、あーんあーんっといいながら匙を向けてくる子供達に笑みが零れる。

 

「ふふ、ありがとう」

 

忘れてしまった大事な物……きっとそれは弟や妹だったのだと思う。私は妹も弟も守れなかった駄目なお姉ちゃんだけど……それでも自分の出来る事はやりたい、守れなかった子の分も守ってあげたいと思うのだ。

 

「美味しい?」

 

「うん。凄く美味しい。ありがとう」

 

はにかんで笑う子供達の頭を撫でる。お腹だけではなく、心も満たされる。それは何よりも嬉しいけど、それと同時に悲しくも思った。私が失ってしまった弟と妹にもこの味を教えてあげたかったと心から思うのだった……。

 

「零余子は大変だね」

 

「うむ、だがあの子は皆のお姉ちゃんだ」

 

累がデミグラスソースのオムライスを食べながら響凱に声を掛ける。朝日と違い、子供の鬼に囲まれている零余子は困ったような顔をしているが、それでも嬉しそうな顔をしていた。

 

「累こそ、寂しいか?」

 

「ううん、そうでもないかな。友達が増えたしね」

 

最近子供の鬼の保護が増えているので子供鬼の筆頭である累は友達が増えたと喜んでいる。

 

「今度野球をやるんだ」

 

「また城を壊さないようにな」

 

「……あれはちょっと頑張りすぎただけ」

 

鬼の力で野球なんてやれば大惨事になるのは目に見えていた、だけどカワサキがGOサインを出して、そして無惨の前で正座をして説教されていたのを思い出し響凱が苦笑しながら言うと累は顔を背けた。

 

「ご馳走様。さてと、小生は仕事に戻るかな」

 

「また絵本?」

 

「紙芝居だ。また見においで」

 

「うん、判った」

 

口の周りをデミグラスソースでべたべたにした累の頭を撫でて響凱は食堂を後にする。

 

「お昼寝の時は僕!」

 

「やだあ! 私!!」

 

「はいはい、喧嘩しない。それと今は先にご飯にしようね?」

 

「「「はーい」」」

 

零余子の言葉に元気よく返事を返す子供達を見て、響凱は笑う。子供達の笑顔が増えるのにつれて零余子も明るくなった。最初に連れて来られた時のような死人の顔色ではなく、生きている、そう判る姿に響凱は良かったと呟くのだった。

 

 

 

 

無限城ひそひそ噂話

 

無限城で保護されている子供の鬼。その大半は鬼になった事で記憶が曖昧になっている、その為面倒を見てくれる大人には酷く懐いているのだが……1人だけ例外がいる。

 

「なんで私だけぇ」

 

年下の少女、少年に病的に反応する朝日だ。優しいが、その目に邪な何かを感じるのか子供の鬼からの評価は下も下、遭遇したらまず逃げ出されるという点で朝日の評価は決まっているといっても過言ではないだろう。

 

「黙れ変態、私とてお前を連れて行くのは極めて不快だ」

 

「酷くない!? しかも私乙女だよ」

 

「乙女は子供の半裸を見て鼻血と涎を流さない」

 

子供の鬼を抱きかかえようとしていた変態2の足を巌勝が掴んで引きずりながら事実を叩きつける。

 

「兄上……それは?」

 

「無惨がつれてゆけというので連れて行く」

 

「私だけで大丈夫ですよ?」

 

「私がお前と2人きり等恐ろしくて出来るか」

 

何時襲い掛かってくるか判らない相手と2人きりなんて冗談ではない、せめて後1人増援と言って変態を付けられたのも不快ではあるが、縁壱と2人きりよりかは遥かにましと思うべきだろう……。

 

「ヒャッハー! 新鮮なショタの匂いがするぜええッ!!!」

 

「止まれ! おい馬鹿ッ!! 止まれと言っているだろう!!! この変態ッ!!!! 縁壱追う……」

 

鳴女の血鬼術で山の中に移動と同時に朝日が山の中に消えていき、巌勝が振り返ると縁壱は縁壱で自分の身体を抱いてびくんびくんしていたので巌勝の目から光が消えた。

 

「人選間違ってるッ!!!」

 

無惨の明らかな人選ミスに巌勝は涙した、しかし朝日の変態行動を止めない訳には行かないと飛び掛ってきた鬼の頸を一閃の元に跳ね飛ばし、朝日の消えた方向に向かうとそこには……!

 

「ぷぎゅうううッ!!!」

 

「ふぎいっ! ひぎいっ! 死ぬ! 殺されるッ!! 猪にころさ……ふぎゃあッ!!」

 

まだ幼い少年を背中に乗せた猪が朝日を何度も何度も、踏み殺してやると言わんばかりに執拗に踏んでいる光景に巌勝は空を仰いだ。

 

何故自分ばかりこんな目に合うのか、そして朝日が意識を失うまで踏みつけた猪がギロリと睨む、ただの畜生と侮るなかれ、その威圧感は巌勝であったとしても後ずさりするほどの気迫を放っていた。それは子を守る親の気迫……まがりなりにも親だったからこそわかる。この猪にとって背負っている子供は自分の子供なのだ。

 

「お前の子は弱っているように見える」

 

「グルルル」

 

流行り病か、その背中に背負っている子供の顔色は悪く、呼吸も浅い。

 

「そのままでは死ぬ、お前とお前の子に害をなさんことを誓おう。私にお前の子を救わせてくれ」

 

「……」

 

暫く見詰め合う猪と巌勝。そして猪が纏っていた敵意は消え、朝日をもう一度4本足でしっかりと踏みつけてから巌勝の後ろに付いた。その態度は案内しろと言わんばかりで巌勝はその姿に苦笑しながら、朝日の足を掴んで引きずりながら猪と猪が背負った子供を連れて縁壱の元へ戻るのだった……。

 

 

 

メニュー9 お粥へ続く

 

 




次回はまだショタなぁ伊之助と生きてる母猪のターンです。後は万世極楽教の話も交えて行こうと思います、そして今回は「まどぼー」様と「tzk7600」様のリクエストで「オムライス」と「零余子」さんでお送りしました。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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