【休載】生きたければ飯を食え Ver鬼滅の刃   作:混沌の魔法使い

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メニュー42 カワサキブートキャンプ(玄弥編) その2

メニュー42 カワサキブートキャンプ(玄弥編) その2

 

 

カワサキ殿が呼吸の才能の無い子供の面倒を見ていると聞いて、私の寺の前に何日も座り込んでいた子供の事を思い出し、休暇の時に様子を見に来た。

 

(あの子供は鬼気迫る様子だったからな)

 

カワサキ殿に無礼を働いていないかと見に来たのだが、それは全くの杞憂だった。

 

「いいか、お前が気付いたのがカウンターの理論だ。日本語で言うと反撃っていう意味なんだが、本来は相手の動きを待ってそれに合わせる。だけど俺がやったのは、あえて誘い込んで、相手の勢いを利用してのカウンターだ。タイミングはシビアだが、お前が食らったとおり凄まじい破壊力がある」

 

「じ、じびゅんがまひゃにでやるから、い、いぎゃいんでひゅね?」

 

「そう言うことだ。とりあえず、少し休むか?」

 

「ひゃい」

 

声の感じと濁音の混じった声、そして何かが流れる音を聞く限りでは恐らく鼻血を流しているのだろう。しかも相当な量だ、それだけの痛みに耐えながらもカワサキ殿の訓練に耐えるとは……私は少しばかりあの少年の評価を改めた。

 

「カワサキ殿」

 

「お? 行冥か。どうした?」

 

「いえ、カワサキ殿が呼吸の才能の無い子供の面倒を見ていると聞いたので」

 

私がそう言うとカワサキ殿は合点が行ったのか手を叩いた。

 

「そうか、行冥の所に居座ってたって言ってたっけ」

 

「ええ。その負けん気は買いましたが、私にはまだ誰かを教え導く事はとてもではありませんが出来ないので」

 

「謙遜しすぎだよ。案外お前はいい師匠になるんじゃないか?」

 

手ぬぐいを絞る音と、少年の呻く声。どうもカワサキ殿が手当てをしているようだ。

 

「どれ、私が運びましょう」

 

「悪いね。折角きたんだ、昼飯と夕飯食ってけ」

 

カワサキ殿の言葉に是非と返事を返し、気絶している少年を小脇に担いでカワサキ殿の屋敷へと足を向けて歩き出す。

 

「実弥の弟と聞いてますがどうですか?」

 

「悪くない、筋はいいぞ。まさか2日でカウンターの要領を見切るとは思わなかった」

 

カワサキ殿としても想像外だったが、かなり筋がいいらしい。かと言う私もかうんたぁは岩柱との決闘時に教えられていたので基本的なことは覚えている。

 

「私は目が見えぬぶん、恐れることはないですが」

 

「そうそう、何度も気絶してるし、吹っ飛んでるのに全然折れないんだわ。1週間で諦めさせるつもりだったんだが……」

 

「無理そうと言う事ですか」

 

「多分な、1週間で成果が出なかったらあきらめるって言う約束だから、それこそ死に物狂いで覚えようとしてる」

 

追詰められれば、追詰められるほどに伸びる性格と言う事か、そう考えればカワサキ殿の厳しい鍛錬とはある意味相性がいい。

 

「カワサキ殿の鍛錬は実に厳しいですからね」

 

「ギリギリを見極めているだけさ。まぁ良いや、せっかくの休暇にここまで来てくれたんだ。ゆっくりして行ってくれ」

 

カワサキ殿の歩いていく音を聞いていると、思ったよりも早く少年――玄弥が目を覚ました。まだ状況を把握してないようだが、一刻も経たずに目を覚ますとは相当に頑丈だ。カワサキ殿の拳の威力を、かうんたぁの理論を知るからこそそう思う。

 

「起きたか」

 

「あ、えっと、あんときはすみません。俺凄く焦っていて、本当にすいません」

 

目を覚ますなり謝罪をしてくる辺り実に礼儀正しい、あの傍若無人な振る舞いは焦りから来る物だったとして、今回は許してやろう。

 

「カワサキ殿に鍛錬を受けているのだろう。昼餉まで少し時間がある、同じ人を師と仰いだのだ。少し見てやろう」

 

カワサキ殿が筋があると言った玄弥の腕前を見てみるのも悪くない、そう思いながら言うと玄弥はよろしくお願いしますと元気よく言った。残りは4日――カワサキ殿の性格、実弥の性格を考えれば最後の試験に出てくるのは間違いなく実弥――口調は悪いが、面倒見が良く懐の深い男だ。自分の弟が鬼殺隊に入ろうとするのを力付くで止める為に何でもするだろう、それこそ骨を折ることも考えられる。それに耐えるだけの精神力があるかどうか見極める為に庭に出る。

 

「私もカワサキ殿にかうんたぁは教わった。恐らく次は拳ではなく木刀だ。手加減はしてやろう、お前が覚えようとしている妙技――その身体を以て覚えろ」

 

「うっすッ!!」

 

木刀を構え近づいてくる気配を感じ取り、振るわれる瞬間までその場に止まり、振り上げられた音を聴いた瞬間に木刀を振り下ろす。

 

「がぁッ!?」

 

玄弥の苦悶の声に地面に叩きつけられる音。そして咳き込み、嘔吐する音を聞きながら私は立てと言う。

 

「実戦はこれよりももっと痛い。これで折れるなら諦めるが良い」

 

「……ま、まだまだぁ……」

 

木刀を地面に当て立ち上がる音を聞いて、前に踏み込み拳を振るう。再び玄弥の悲鳴と吹っ飛ぶ音を聞き、玄弥の手から落ちた木刀を拾って投げつける。

 

「悠長にたってどうする。死にたいのか、すぐに立て。這い蹲ってでも刀を振るえ」

 

「おげえ……うっ、おおおおッ!!!」

 

普通だったらこれで心が折れている。それでも吼え、立向かうのはカワサキ殿から見て筋が良いと言うのもよく判る。

 

「踏み込みが甘い、そんな握りで鬼を切れるかッ!」

 

「がっ!?」

 

だが呼吸を使えないと言うのは鬼殺の隊士にとっては致命的だ。筋が良いだけで、見込みが無いのならば諦めさせるのもまた慈悲。

 

「南無阿弥陀仏。若輩の身なれど、私は柱である。遠慮も何も要らない、全力で来い」

 

「うあああああーーーッ!!」

 

「気持ちだけでは届かん」

 

「ぐうっ!?」

 

決して越えることの出来ぬ壁として立ち塞がる。それで心折れるか、それとも奮起するか……膝をつき、咳き込んでいる玄弥が再び立ち上がるか、見えぬ瞳で見つめ続けるのだった……。

 

 

 

 

 

 

庭から聞こえて来る玄弥の雄叫びと行冥の声を聞いて思わず調理の手を止めた。正直行冥と俺では圧倒的に行冥の方が厳しいだろう、だがカウンターの理論も知っているし、現にカウンターを鬼殺に利用しているのは行冥だ。俺の机上の空論よりも、遥かに行冥の方が理解度がある。

 

「これで諦めるのも1つか」

 

行冥もカウンターを極めている訳では無いが、既に実用段階にしている。これを見て、諦めるか、それとも完成形を見て奮起するか……1週間と短時間での詰め込みだからこそ、完成形を見て自分には無理だと思って諦めるのも1つの道だと思う。

 

「よし、野菜はこんなもんでいいか」

 

たっぷりのキャベツの千切りを鍋の中に入れて、軽く湯通ししたらすぐにザルにあげておく。

 

「次はおろし金と」

 

おろし金を手にしてしょうがとにんにくをすりおろす。潰しても良いのだが、今回はツケダレにしたいので、丁寧にすりおろすことにする。今日作るのは山賊焼きと呼ばれる料理だが一口に山賊焼きと言っても、実は2種類ある。1つは長野県を由来とする料理で、すりおろしたしょうがやにんにくを漬け込んだタレに鶏腿肉を漬け込んで片栗粉を塗してあげた物、山賊焼きと言っておきながら、揚げているのに焼きとは何ぞや? と言う謎はあるのだが、とにかくこれは山賊焼きと言う料理だ。後はもう1つ山口県の物で骨付き腿肉をにんにく醤油ダレに漬け込んで炭火焼かオーブンで焼いた物もこれも山賊焼きと言う。フライドチキンを出したばかりで揚げ物を連続で? と思うかもしれないが、まずはとにかく身体を大きくする為にカロリーを摂取する為に油物、そして肉料理だ。成長期に加えて、何故かバフの効果がかなり強く出るので、筋力UPなどの効果を持つ調味料等も惜しげもなく使う。しょうがとにんにくをすりおろした物に、醤油、蜂蜜を加えてツケダレを作ったら、フォークで穴を開けた鶏腿肉に塩胡椒を振って、よく揉んで味を馴染ませたらタレの中に入れる。行冥もいるので少し多めに下拵えする。残ったら残ったで槇寿朗とか杏寿朗にサンドイッチにして渡せばいいので、多少多めに準備して良いだろう。

 

「味噌汁も用意するかな」

 

タレを馴染ませている間に玉葱とワカメと豆腐の味噌汁を準備し、完成した頃合にはタレがよく肉に染みている頃合だ。

 

「よしよし」

 

キッチンペーパーで余分なタレを拭って、片栗粉を塗して少なめの油で揚げ焼きにする。少なめの油でカリっとするまで丁寧に低温でじっくりと焼き上げ、表面がカリっと仕上がったら鍋から取り出して食べやすい大きさに切り分けて、キャベツと一緒に盛り付ける。

 

「よーし、そろそろ呼びに行くか」

 

庭で鍛錬をしている行冥と玄弥を呼びに行こうと思い厨房を出る。

 

「ぬあああああッ!!!」

 

「ッ!」

 

ガツンっと大きな音を立てて木刀がぶつかり合い、玄弥の木刀が中ほどから折れてこっちに飛んで来る。それを片手で掴んで止め、肩を竦めた。

 

「そろそろ昼飯だ。玄弥、顔を洗って来い」

 

「あ、す、すみません! 大丈夫でしたか!?」

 

「大丈夫だ。ほれ、早く汗を流して来い。腹減っただろ?」

 

ぐぐうっと大きな音を立てる腹に顔を赤くし、顔を洗ってきますと言って駆けて行く玄弥。その姿を見送り、折れた木刀を縁側において庭に下りる。

 

「どうだった?」

 

現役の鬼殺隊、そして柱の行冥に玄弥をどう見えた? と尋ねる。

 

「筋がいいと言うのも納得です、数度で未熟とは言え私のかうんたぁを真似して見せました」

 

「やっぱりかあ。あいつも中々天才肌だよなあ」

 

呼吸は使えない。だが目、そして身体に受けた痛みを反芻して、己の物にする天才。理論や、頭で覚えるのではない。文字通り身体に刻付けて、そして己の物に落とし込ませるだけだ。

 

「実弥と良い勝負をすると思うんだがどうだろうか?」

 

「間違いなく。4日後、私も見に来ます」

 

「おう、見に来てやってくれ。さ、お前も顔を洗って、飯の準備をしてくるといい」

 

返事を返し歩いていく行冥の背中を見送り俺は頭を掻いた。絶対玄弥もなんか特殊能力的なものを持ってると確信したからだ。

 

「うーむ。眠ってる子を起こしたかなあ」

 

このままだと実弥に恨まれそうだなと肩を竦め、俺も昼食をとる為に広間に足を向けるのだった……。

 

 

 

 

カワサキさんと行冥さんにボコボコに殴られて、本当は泣きそうなくらい怖かったし、痛かった。だけどそのお蔭で少し掴めてきた気がする。

 

(相手に判らないくらいで……)

 

誘い込んで、相手の攻撃方向を制限して、自ら飛び込んで――いや駄目だな。それだと呼吸が使えない俺では対応が一挙動遅れる……。

 

(うーん)

 

こう何か相手の方から俺の方に近づいてくるような何かがあれば……。いや、今は兄ちゃんに俺が鬼殺隊に入るのを認めさせるのが最優先で、他の事を考えている場合じゃない。カワサキさんがくれた湿布を腫れている部分に張って、俺は広間に足を向けた。

 

「すいません、おまたせしました」

 

「気にしなくて良いさ、ほら座れ座れ」

 

カワサキさんに言われて自分の席に腰掛ける。目の前の行冥さんの丼が凄い――まるで山のようだ。それに野菜や味噌汁の量も俺よりも遥かに多い。

 

「いただきます」

 

「「いただきます」」

 

手を合わせて会釈してから箸を手に取る。今日の献立は鶏肉をこれは揚げてるのかな? とにかく鶏肉だ。それと野菜と豆腐、わかめ、玉葱の味噌汁、漬物と言う感じだ。

 

「美味いッ! カワサキさん、これ凄く美味しいですッ!」

 

見た目は前に食べたフライドチキンに良く似ている。だけど、それよりも衣が固くて、味がかなり濃い。丼を持ち上げて米を口に運ぶ、1口鶏肉を齧っただけなのに、米をどんどん食べたくなる。

 

「久しぶりのカワサキ殿の食事なので余計に美味く思いますね」

 

涙を凄まじい勢いで流しながら食べている行冥さんに何か言うべきなのか悩んだが、カワサキさんが平然としているのでこれが普通だと思い。俺は口を閉じた、だけど凄い勢いで泣いてるけど大丈夫なんだろうか……?

 

「世事は良いさ、どんどん食ってくれ」

 

行冥さんも大きく口を開けて鶏肉を一口で食べて、凄い勢いで米を口に運んでいる。食べている量も勢いも凄まじいのに全く下品ではない、その姿を見て口周りとかに米がついているのがかなり恥ずかしくなった。

 

「恥じることはない、まず子供は腹一杯食い、眠り、そして遊ぶ事だ。つまり玄弥、お前のするべき事はカワサキ殿に感謝し、食事をすることにある」

 

「子供に飯を与えすぎて、ガリガリだった行冥が言えることじゃないぞ?」

 

「……南無」

 

ガリガリ? え、この人が? 岩や大木のように大きい行冥さんが痩せていたという事を聞いて俺はかなり驚いた。

 

「まぁあれだ。カワサキ殿の食事をすれば短時間で身体は変わる。後はそれの恩恵をどれだけ使いこなせるかだ」

 

「はい!」

 

行冥さんの助言を聞いて再び鶏肉に箸を伸ばし、少し悩んだが真ん中の身が厚い部分を持ち上げる。

 

(良い香りだ)

 

にんにくとしょうがの食欲を誘う香り、そして香ばしく焼かれてる? 揚げられている? そのどちらか判らないがその強い香りを嗅いでいると唾が口の中に湧いてくるのが判る。大きく口を開けて鶏肉に齧りついた。

 

「うめえッ!!」

 

香ばしくカリッとした衣ごと肉を噛み千切る。その瞬間に口の中にあふれ出す肉汁とかなり濃い目の味――そのままだとやはり濃い。だがこの辛さが米を食べるのには丁度良い。

 

「ふーふーッ! あふっ! あふっ!」

 

炊き立てご飯を冷ますが、完全に冷えるまで我慢出来ず米を口に運び、その熱さに悶絶しているとカワサキさんの笑い声が響いた。

 

「米の上に少し野菜を乗せろ、それで食べやすくなるぞ」

 

「ひゃいッ!」

 

口の中の米を飲み込んでから米の上に野菜を少し乗せて、鶏肉を頬張って、その濃い味と強いにんにくとしょうがの香りに米が食べたくなり、野菜の下から米を持ち上げて頬張る。野菜の水気で米があんまり熱く感じない上に、しゃきしゃきとした野菜の食感と野菜その物が持つ甘みで更に食が進む。

 

「肉を食う時は野菜は必須だ」

 

そういうカワサキさんは丼の上に野菜を乗せて、その上に鶏肉を乗せて丼のようにして食べている。確かにそうすると野菜の旨みも味わえるし、肉の脂で米も食べやすくなる。

 

「カワサキ殿、おかわりを」

 

「あいよ」

 

行冥さんがあっという間に丼飯を食べ終え、カワサキさんにおかわりを頼む。米が盛られている間に味噌汁を啜り、漬物を口に運ぶ。味噌汁と漬物の塩辛さは口の中が重くなったときにちょうどよくて、俺も味噌汁と漬物で口の中をさっぱりとさせて、今度は少し我慢をして端の方で米の残りを食べる。

 

「カワサキさん、俺もおかわりお願いします」

 

「よーし、どんどん食え、後2杯は食えよ」

 

「はいッ!」

 

今は食べて、カワサキさんが教えてくれることを全部覚えて……兄ちゃんに俺が鬼殺隊に入る事を認めて貰うのが1番大事なことだ。

 

「お待たせ」

 

「ありがとうございます!」

 

丼飯の上に野菜を乗せて、その上に鶏肉を乗せて自分で作った丼にして、鶏肉、野菜、米とどんどん頬張る。止まったら食べれなくなる、今は自分の夢を、目標を叶える為にがむしゃらに前に進むだけなのだから……。

 

 

メニュー43 カワサキブートキャンプ(玄弥編) その3へ続く

 

 

 




山賊焼きは2種類ありますが、今回は揚げ焼きのほうで行きました。焼くのも美味しいんですけど、ちょっと脂がおちすぎかなあと思ったのであげ焼きにしてカロリーの暴力で責めます。次回は1週間後、実弥もだして行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

カワサキさんがオラリオにいるのは……

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