Sisterhood(version51)   作:弱い男

13 / 84
#12

 姉さんのバンドメンバーを探しをしていた中、私の後輩である宇田川あこちゃんが姉さんと一緒にバンドをさせてほしいと頼んでいる姿を見た。それを見た私は正直に言って羨ましいと思ってしまった。

 姉さんと一緒にバンドをしたいと言えるあこちゃんの行動力に――だ。でも、どうやら姉さんと氷川さんは、あこちゃんの実力を見ることなく断ったようだ。それはあんまりじゃないか。それじゃあ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()じゃない――

 

 そう思った私は、落ち込んでいたあこちゃんに声をかけて、姉さん達が演奏する楽曲のスコアのコピーを渡した。日程が合えば練習に付き合う事も約束して――だ。あこちゃんの実力は分からない。でも、あそこまで熱意があって姉さんと一緒にやりたいと本当に思っているというのなら――

 

 

 私はあこちゃんを応援する――

 

 

「――のシンバル叩くところ若干遅れていたよ、あこちゃん。それと――――かな?ってだいじょぶ、あこちゃん?」

 

「はい!だいじょーぶです!」

 

 という事で、お互いの日程が合った木曜日。私とあこちゃんは、姉さん達が練習しているスタジオとは別のスタジオで練習をしていた。いや、だって。そこで鉢合わせして、何をやっているのかしら、華那?ってなったら困る。非常に困る。良い言い訳が思い浮かばないもん!

 それはともかく。私の指摘に元気よく答えてはいるものの、あこちゃんの表情には疲れが見えてきている。一度休憩しよう、あこちゃん。最初の頃に比べてかなり良くなってきているから、安心していいよ。

 

「ホントーですか!!よかったぁ。これでダメだって言われたらどうしようかと思ってました……」

 

 スティックを置いて床に座り込むあこちゃん。練習している楽曲はロック調が多く、ツーバスを使いながらのテクニカルな楽曲揃いだ。でも、あこちゃんはその楽曲を私がいない時でも、しっかり練習してきてくれているのでかなり形になってきた。あこちゃんには基礎も大事だからね?と伝えたけど、基礎練習は疎かにしてはいないから安心安心。後は――

 

「リズム隊のドラムはあこちゃんでだいじょぶだから、後はベースだね……」

 

「あー……確かにそうですよねぇ?こう……ドラムでダダダダダンッ!!ってきてるけど、ベースのデーンデデデーンが無いとやっぱり曲として纏まらないですよねぇ」

 

 と、私の言葉に同意してくれるあこちゃん。うん。あこちゃん、擬音で表現するのもいいけど、しっかりと言葉にしよっか?そう伝えると驚きの表情を浮かべたあこちゃんが

 

「えー!!??華那さん理解できないですかー!?」

 

「いや、(悲しいけど)理解できたけど、他の人ができるかと言われるとできないんじゃないかなぁ……」

 

 主に氷川さんと姉さんだけど……。氷川さんはどちらかというと理論的に、ロジカル的に説明しないといけないと思う。というか生真面目な性格だし、姉さんは姉さんでそういう擬音系な説明より、ハッキリと言語化してあげないと理解できない人だから。

 ……あれ?あこちゃんこの二人の中に入ってだいじょぶかな?私、不安になってきたよ。その呟きが聞こえたのか、あこちゃんは満面の笑みを浮かべながら

 

「ふっふっふっ。安心するがいい華那。我が体に眠る闇の力が……闇の力が……えっと……闇の……うう、助けて華那さーん!」

 

「はいはい。そこは『我は放つは光の白〇』か『光に覆われし漆黒よ。夜を纏いし爆炎よ。(中略)エクス〇ロージョン!』って言っておけばいいんじゃないかな?」

 

「それダメなやつですよね!?」

 

「なら、あれいっとく?『黄昏より暗き「それもダメな奴です!!」ダメかー」

 

 とそんなふざけた事を言いながら休憩した後、真面目に練習を再開する。あこちゃんの集中力と体力と相談しながらだったけれど、充実した内容で今日の練習を終えた。あこちゃんは本当に上手い。今まで色んな場所で色々なバンドを見てきたけれど、その中でもトップクラスの技術の持ち主だ。後はムラッ気がなくなればだいじょぶだ。姉さんの望むレベルに到達できる。ただ、問題は――

 

「ベース……だよね」

 

 あこちゃんを家に送り届けた帰り道。一人呟く。バンドのリズム隊はドラムだけじゃ成り立たない。ベースがあってこそ楽曲として、バンドとして成立すると私は考えている。もちろんギターやキーボードもいなければダメだけどね。でもバンドの礎となると言ってもいい楽器がベースとドラムだ。ドラムはあこちゃんで解決するからいいでしょ。

 ベースの弾けるレベルも重要視しないといけない。でも今、私が不安視しているのは、あこちゃんのような元気なドラマーと、某防人さんと並ぶくらいのクール系女子最先端を行っちゃっている氷川さんと姉さんを上手く纏められる人物。そんな人がそう身近にいる訳が――

 

「……いる。けど……」

 

 歩く足を止めて空を見上げて呟く。そうだ。今、私が望む人物が一人いるじゃない。でも、あの人は二年前に私と姉さんについていけなくなって、時々一緒にセッションしていたベースを辞めてしまった。それでも、一緒に話したり、姉さんと私の事を気にかけてくれている。

 私が姉さんの傍にいれれば良かったのだけれど、氷川さんという素晴らしいギタリストがいる。私の入る場所(スペース)はもう無い。でも、あの人なら、まだ入れる場所はある。確かにブランクはあるけれど、基礎練習をしているのは知っているし、何よりリサ姉さんが奏でるベース音は姉さんの歌声にマッチしていた。

 

 ただ、リサ姉さんが姉さんの事を心配していて、FWFを諦めさせようとしているのも分かってる。リサ姉さんが心配しているのは、姉さんが音楽をやる理由が父さん達の音楽を否定した人達への復讐なんじゃないかって事。でも、私がそうじゃないって否定してもきちんと理解してもらえるかどうか……。姉さんの口から説明したほうが間違いなく良いと思う。

 

 それはそれで今は置いておこう。それ以前の問題として、リサ姉さんにもやりたい事があるはずなんだ。音楽を辞めた理由はもしかしたらそれが理由かもしれない。……結局これは私の自己満足なんだろうな。姉さんがステージで輝く姿を見たい。それだけなのかもしれない。

 リサ姉さんにベースをしてくれとお願いするとしても、リサ姉さんの前で音楽の話をする時に見せる苦しそうで、複雑そうな表情を私は見たくない。でも……もうリサ姉さんぐらいしか頼める人がいない。それに、私自身、もう一度リサ姉さんが満面の笑みを浮かべてベースを弾いている姿が見たい。だから……

 

 

 

 私が姉さんの代わりに泥を全部被ればいい――

 

 

 

 

「それでお姉さんに話しってなにかなぁ?」

 

 と言いながら、アタシの部屋で正座して若干俯き加減の華那に明るい声で話しかける。テーブルには紅茶が入ったカップが二つと今朝作ったクッキーが置かれている。週末の金曜日だった昨日の夜。ベッドに座って遊び半分でベースを弾いていたら華那から通話アプリで連絡が来た。

 

『リサ姉さん。相談があるんだけど……明日って空いてる?』

 

「?華那が相談って珍しいなぁ……明日はバイトも部活も無いからいつでも大丈夫だよ☆っと」

 

 と送って、華那から朝十時ぐらいに(うち)に来ると返信が来た。んー……アタシの家に来るって事は、友希那には聞かれたくない話しなのかな~と思いつつ、『りょーかい!待ってるぞ☆彡』と返信を送る。

 ちょっとお菓子でも作ろっかな?食べやすいクッキーがいいよね!となって、朝作った訳だけれど……どうやらそんな雰囲気じゃあないみたいだねぇ。

 

「リサ姉さん。あこちゃん知ってるよね?」

 

「あこ?うん。同じダンス部の後輩だから知ってるも何も結構話しするよ。あこがどうしたの?」

 

 重々しく口を開いた華那の意図が読めない質問にアタシは首を傾げながら答える。あこはいつも元気一杯で、周りも元気にさせてくれる子だ。華那の後輩にもなるから、話した事はあるみたいだけど、どうしてあこの名前出てきたんだろう?

 

「……あこちゃん。姉さんのバンドに入りたくて、今必死にドラムの練習してるんだ」

 

「え……?」

 

 華那の言葉にアタシは思考が停止した。あこが友希那のバンドに入りたがってる?どうして?しかも今ドラム練習しているってなんで華那が知っているの?そんなアタシの疑問に答えるように華那は俯いたまま話しを続けた。

 

「日程が合えば、あこちゃんの練習に私行ってアドバイスしてるんだ」

 

「そ……っか」

 

 驚きを隠せないアタシはそれだけしか言えなかった。華那の話しにアタシは胸騒ぎがしていた。これ以上聞いちゃダメ――と頭の奥底から警告が響く。でもそれと同時に、華那の話しを聞かなかったらずっと後悔する事になる――って、なんとなくだけれど……思ってしまって、アタシは華那の言葉を待つしかできなかった。

 

「で、あこちゃん。本当に真剣に、それでいて憧れだっていう姉さんと一緒にバンドやりたいって」

 

「憧れ……」

 

 あこが時々ライブハウスにライブ見に行っているのは知っていた。だって、見に行ったライブの話しは必ずと言っていいほど友希那のライブの事だったから。その隣でギター弾いている華那の事も話していた。

 あこの話しを聞いていたアタシは、また友希那と華那が遠くに行ってしまったかのような錯覚を覚えていたんだ。あの時――友希那と華那のお父さんが音楽を止めるきっかけになったフェス、FWFの後。二人がバンド組んで「必ず父さん達の音楽を認めさせるんだ!」って言ってかなり厳しい練習始めた。

 

 その頃からアタシは二人についていけなくなって、次第に三人で楽しくやっていたセッションがだんだん辛いものになってきて、アタシは次第に音楽から距離を置くようになった。華那は最初の頃は、またセッションやろうよと声をかけてくれたけれど、アタシは用事あるって嘘をついて「時間あったらね」と誤魔化して逃げた。

 友希那は、きっと――ううん。間違いなくアタシの気持ちに気付いていたから何も言わずに普段通りに接してくれた。華那も友希那に言われたかは分からないけれど、アタシの前で音楽の話しをしなくなった。それだったのに今日、どうして音楽の話をするのだろうか。しかもすごく苦しそうな表情を浮かべながら――

 

「アタシ、あこがさ、友希那や華那のライブ見に行ってるのは知っていたんだ。でも、ちょっと話し見えてこないんだよねぇー。華那、ハッキリ言ってごらん?そんな苦しそうな表情じゃ、せっかくの美人さんがもったいないぞー」

 

 って、笑いながら言ってあげる。少しでも華那が緊張しないで済むように、それで……華那がそんな苦しそうな表情を浮かべる時間が減るようにと願いを込めて。だって、華那は血は繋がってないけれどアタシの可愛い妹分だもの。妹の苦しい姿なんて見たいと思う?友希那もききっと……ううん。絶対「見たくはないわ」って答えてくれるはず。

 

「リサ姉さん……今日私が来たのは……リサ姉さんにもう一度ベースやってもらえるようにお願いしに来たの」

 

「……アタシに?」

 

 顔をあげて、アタシをまっすぐ見ながら華那は、やっぱり苦しそうな表情を浮かべながら言った。アタシはすぐにその言葉を理解できなかった。ううん。したくなかったんだ。だって、アタシは一度、友希那と華那から逃げたんだよ?どうしてアタシなのだろう――と、いう疑問がアタシの心の中に渦巻いていた。

 

「いろんなライブハウス行って、多くのベーシストやギタリストの人達見てきたけれど、姉さんの歌声に合うベーシストはリサ姉さんしかいないの……。それに……リサ姉さんがベース時々弾いてるの知ってるんだよ?」

 

「……あちゃー。聞こえてた?」

 

 アタシは右手で頬を掻いた。時々だけれど、ピックでお遊び程度にベースを弾いてはいた。家が隣だから聞こえちゃうかもしれないなって思っていたけれど、やっぱりベースを完全に辞める事がアタシにはできなかった。

今この時間、部屋の飾りとして机の隣に鎮座している赤色のベース。友希那と華那がよくアタシに合ってると褒めてくれたベース。それをチラリと見る。

 

「私は()()()()()()()()()()()()。だから……だからリサ姉さん。お願い。もう一度、姉さんと一緒に音楽をして……!」

 

 と、言って頭を下げる華那。その際、アタシの目にはハッキリと見えた。華那の目元に涙が浮かんでいるのを……。今日、アタシにお願いしていいかどうか、華那なりにかなり考えたんだと思う。じゃないと、ここまで必死に、それでいて苦しそうな表情でお願いする訳がない。

 もう幼い頃から友希那も入れて、三人一緒に育った仲なんだからそのぐらい分かるよ。でも、アタシは怖い。いくら基礎練習はしてきたとはいえ、二年のブランクは大きすぎる。その間、友希那は色々な場所でライブや練習をして経験を積んでいる訳だし、一度離れたアタシが友希那の隣に立つ資格なんてないんだよ。だから私は――

 

「ゴメン……華那からそう言われるのは嬉しいんだけど……アタシには無理だよ……」

 

 いつものトーンでなんて言えるわけがなく、震える口を動かして何とか声を絞り出した。華那がどれだけアタシの事を信頼してくれているかは分かってるつもり。じゃなきゃ、ブランクがある人間に頼み込んでくるわけがないし、覚悟を持って今日来たはずなんだ。でもアタシは……その期待には答えられない……。

 

「そ……そうだよね!ご、ごめんなさい、リサ姉さん。いきなりこんな話しして。リサ姉さんにもやりたい事があるからね!…………あ、も、もうこんな時間だ。り、リサ姉さん、紅茶御馳走様!」

 

 と無理やり作った笑顔を浮かべたかと思うと、慌てて立ち上がる華那。突然の事で呆然とその姿を見るしかできなかった。数秒遅れで状況が飲み込めたアタシは振り返る。華那が部屋を出る前に立ち止まって

 

「リサ姉さん。一つだけ私からお願い……日常生活でさ、姉さんの事お願い」

 

 と、振り返って笑みを浮かべる華那。その目からは涙が零れ落ちていて、アタシはただただそれを見る事しかできず、華那の言葉に対して何も言えなかった。華那はそう言ってから部屋から出て行った。しばらくして遠くから玄関の扉が閉まる音が聞こえた。

 アタシはそれを聞くまで動けなかった。華那が見せたあの泣き顔とあの言葉。まるで自分じゃ友希那を支えられないと言っているかのような発言。アタシはベッドに背を預けて右腕を目に当てて

 

「華那、アタシよりシッカリ友希那の事支えられているよ。なのになんで……そんなこと言うの……」

 

 答えなんて返ってこない。アタシの事を姉と慕ってくれている華那に、あんな表情をさせるだなんてアタシは最悪な“姉”だ。でも……どうすればよかった?アタシは真紅のベースを見たけれど、ベースは当たり前だけれど何も答えてはくれなかった。

 

 

 

 

「……はぁはぁ」

 

 リサ姉さんの家を出てから私は走って近くの公園まで来ていた。息を整えてベンチに腰かける。流れる涙を右手で拭う。きっとこうなるって分かってた。分かっていたつもり。でも、実際にこうなると自分のした事はリサ姉さんにとって、精神的な負担になってしまったんじゃないかって……。

 だから断られた時、逃げるようにしてリサ姉さんの家から出てきたんだ。リサ姉さんにどんな表情をして話していいか分からなくなって。

 

「ほんと……馬鹿で最低な人間だ……私」

 

 そうだ。自己満足の為に幼馴染であるリサ姉さんを巻き込もうとした。自己嫌悪に陥っていた私の頬に雨粒が一つ二つと降り注いできた。さっきまで晴れていたのに……。濡れるから帰らなきゃと頭の中で思っているのに体は動いてくれない。だんだん強くなる雨脚。

 体の温度がだんだんと下がっていくのが分かっていながら動けない状態が続いた。降り始めてから何分……いや十分以上は経ったのかな?もう時間の感覚すらない。動かなきゃだめだよね。風邪ひいたら姉さんに心配させちゃうし、あこちゃんの練習見てあげられなくなる。そう考えていた時だった。

 

「華那!?何してるの!?」

 

 と、慌てた声を上げて私に近づいてくる人がいた。誰だろうと顔をあげれば、そこには傘をさして右手には袋一杯に野菜とか入ったスーパーバッグを持った中学時代からの友人である沙綾だった。私の手を握って

 

「体すごく冷えてる……何かあったの、華那?」

 

「沙綾……私……私……」

 

「うん……大丈夫だから。泣かなくていいよ。華那」

 

 と抱きしめて頭を撫でてくれる沙綾。結局その時何も言えずに、雨で濡れて冷えた体を温めるため沙綾の家に行く事になった。

 

 

 

「ええ……ええ。分かったわ」

 

 紗夜とスタジオで練習をしてから、昼過ぎに家に帰ってきたと同時に私のスマホが鳴った。相手は華那の友人である山吹さんだった。どうしたのかと聞けば、公園で雨に打たれながら泣いている華那を見つけて、今山吹さんの家(確かパン屋だったわね)で保護しているとの事らしい。何があったかはまだ聞けてない状態。華那……いったい何があったの?でも、ごめんなさいね、山吹さん。うちの華那が迷惑をかけて……。

 

『いえ気にしないでください。友希那先輩。ただ……』

 

 私の言葉に、明るく答えてくれる山吹さんが言葉を濁した。どうかしたのかしら?

 

『あの……華那に今日の事、華那が自分から話すまで待ってあげてもらえませんか?』

 

 泣いていたという事実が、華那の精神的なダメージが大きいという判断から山吹さんは私にお願いしてきたのだと思うわ。そうね。今は聞かない方が華那の為ね。そう私は判断し、

 

「ええ。分かったわ。代わりにお願いを一つしてもいいかしら、山吹さん?」

 

『あ、はい』

 

 私が「お願い」と言うと緊張した声が電話越しに聞こえてきた。そこまで緊張しなくてもいいのだけれど……。

 

「華那の事、お願い」

 

『!……分かりました。家に帰るまでにはいつもの華那に戻してみせます』

 

 短く、それでいて簡潔に山吹さんに伝える。それだけで理解してくれたようで、山吹さんは明るくそう言ってまた連絡すると言って電話を切った。ふう……。私がいない間、華那に何があったかは分からない。雨の中泣いていたなんて異常事態だわ。本当なら今すぐにでも華那のところに行って抱きしめてあげたいところだけれど……逆効果になるかもしれない。

 華那が凄く悩んでいるということに私は気付いていた。ここ数日の華那の様子を見ればすぐ分かったわ。あの子は考え事をしている時は椅子の上で体育座りする癖があって、一昨日の夜に華那に用があって部屋に行った時にその恰好をしていたのを覚えている。

 

「何があったの……華那」

 

 いつも明るくて、私に元気をくれる華那が泣いていたという事実は、姉として見過ごせなった。でも、山吹さんと約束したのだから私が直接華那に聞くわけにはいかない。もどかしい気持ちが私の中で渦巻く。駄目ね。一度飲み物でも飲んで落ち着きましょう。

 と、ちょうどその時、スマホが鳴った。今度は何かしら?そう思い画面を見ればそこには、通話アプリでリサからトークが届いている通知が表示されていた――

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。