Sisterhood(version51)   作:弱い男

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#14

 学校が終わり、姉さんと一緒にスタジオへ向かいながら会話をする。今日はメンバー集めで注目しているバンドのライブは無いので、姉さん達の練習を見学してもいい?と聞いたら姉さんは快く許可をくれた。氷川さんには私の方から通話アプリで連絡を入れておいた。そしたらすぐ返信が来た。

 

『湊さんが許可しているのなら、私も構いません。練習の時に、何がおかしいか指摘していただければ助かります』

 

 と、氷川さんの中では練習を見た私がダメ出しする事になっているみたいで、私は内心慌てた。私より上手い人に対してダメ出しとかできませんって!!そう返したけれど氷川さんは

 

『期待しておりますので』

 

 としか返してこなかった。こ、これは相当な重圧(プレッシャー)だよね!?変な指摘したら困惑させそうだし、姉さんから逆に指摘されそうだし――というのがつい十数分前の事。姉さんにどうすればいい?と聞けば

 

「そんなに緊張しなくていいわ。華那の感じた事、思った事を素直に言えばいいわ」

 

 と、優しく言ってくれたので、ありがとうと姉さんにお礼を言った。もし姉さんにまで「厳しい意見出して欲しいわね」と言われたらスタジオに着くまでずっと緊張したままだったはずだから。

 

「そういえば華那。前言っていた欲しいギターってどんな色なのかしら?」

 

 スタジオへ向かって歩いていると姉さんが唐突に聞いてきた。先日、姉さんにパソコンを占有していた時に、私がスマホでとあるギタリストが演奏している動画を見て欲しいなあと呟いていたのを覚えていて聞いてきたみたい。

 

「んー、キャナリーイエローって色なんだけど、なんでも海外の車メーカーが使用している色らしいよ?」

 

「……華那。その色だけは止めておきなさい」

 

「え?でも「今もっている黒が凄く似合っているし、青とか赤系が華那には似合うと私は思うわ」!……わかったよ。姉さんが言うならその色で探してみるね!」

 

 と、何故か私の両肩に手を置いて、キャナリーイエローは似合わないと言ってくる姉さん。本当はその色が欲しかったけど、姉さんが私に合う色を考えてくれたのが嬉しかったので、私は姉さんの意見を参考にしようと思う。ならDC(ダブルカッタウェイ)のアクアブルーにしようかなぁ。あれなら青系だし、姉さんお勧めの色になるもんね!あと赤なら、あれかなぁ。チェリーレッドってやつかな。

 

 そんな会話をしていたらスタジオに到着した。その入口にあこちゃんが待っていた。実はここまでは打ち合わせ通り。ただ、ここからが正念場。だって、姉さんを説得しないといけないのだから。だから、私がついてきたのだけれどね!

 今日が最初で最後のチャンス。リサ姉さんとあこちゃんにはそう伝えてある。この間までの練習であこちゃんの技術は上がってるし、リサ姉さんも二年のブランクを感じさせないほどに技術も戻ってきている。基礎練習はしていたから、後は慣れるだけだったから、指導や指摘する私としては楽だった。

 

 でも、姉さんが納得いくレベルかどうかは私には分からない。でも、二人とも向上心はある。私はそういうところを見てほしいし、姉さんの歌声にあこちゃんのドラムもリサ姉さんのベースも合う。そう信じている。

 

「友希那さん、こんにちは!今日もお願いに来ました!!あこをバンドに入れてください!!」

 

 あこちゃんが元気よく挨拶をして、何度も断られているのに姉さんにバンドに入れてもらえるようにお願いする。実は、こうやって姉さんの隣で、あこちゃんがお願いする姿を見るのは初めてなので、私の方が緊張してしまう。

 

「諦めてなかったのね……」

 

「はい!いっぱい練習しました!友希那さんの歌う曲全部叩けるようにしてきました!だから……一回だけテストしてください!!それでダメならもう言いませんから!!お願いします!」

 

 呆れた口調の姉さんに対し、勢いよく頭を下げるあこちゃん。左手にはボロボロになったスコアを持ってだ。姉さんは溜息を吐いて、どう断ろうかしら――、といった感じの表情をしている。今です――と幻聴が聞こえてきた気がするけれど、それは無視して私は姉さんに

 

「姉さん。一度だけって言ってるんだから、テストしてあげたら?」

 

「華那……分かっているでしょ?私達にはそんな時間が――」

 

「あこちゃんの熱意は本物だよ。私の後輩だから知ってるんだ。やる時はやる子だよ。だから、私からもお願い。あこちゃんの熱意、無駄にさせたくない。一曲だけでもいいからテストしてあげて」

 

 私も姉さんに向かって頭を下げる。姉さんは驚いた表情を浮かべたけれど、すぐに平静を取り戻して数秒黙って考えていた。お願い。姉さん――

 

「分かったわ。一回だけ。一曲だけセッションして判断するわ。それでいいかしら?」

 

「!は、はい!ありがとうございます!!友希那さん!!華那さん!!」

 

「よかったねあこちゃん!でも、ここからが勝負だよ?」

 

 と、頭を下げるあこちゃんの頭を撫でながら私は小さな声であこちゃんに注意する。そう。やっとスタートラインに立てただけ。私が立てないスタートラインに……。あこちゃんなら大丈夫と信じているからね。練習してきた事、全部ぶつけてきて。

 

「……行くわよ二人とも。紗夜が待ってるわ」

 

 と言って、スタジオの中に入ろうとする姉さんだったけれど、ある人物がそれを引き留める。

 

「友希那!そのテスト……アタシも受けていいかな?」

 

「!……リサ……」

 

 そう。それはベースの入ったケースを背負ったリサ姉さんだった。制服を着ている事から、一度家に帰ってベースを取りに行ってそのまま来たのだと思う。ってか、タイミング合わせたでしょリサ姉さん……。本当はあこちゃんと一緒にお願いする手はずだったはずなのにぃ……。

 

「リサ……貴女……」

 

 複雑そうな表情の姉さん。色々と思うところがあるみたいなのは当たり前……か。一度音楽から離れていったリサ姉さんが、再び音楽をするという決意をして、尚且つ姉さんと一緒にバンドをしようとしているのだから。

 

「そんな心配そうな表情しないでよ友希那。アタシもさ、覚悟してきたんだ。やっぱりアタシ、友希那と一緒に音楽やりたくて、友希那を支えたいんだ」

 

 その言葉に私は胸が痛むような錯覚を覚えた。姉さんを支える事。一緒に音楽をする事。どれも私が目指してきた事だ。でも今はもう叶わない。私にはリサ姉さんとあこちゃんの想いが姉さんに届く事だけを祈るしかできない。でも、私にはこの結果を見届ける義務がある。だって、リサ姉さんがもう一度ベースをする決意に至った原因は私になるのだから。姉さんは目を瞑って黙っていたけれど

 

「……はあ。分かったわ。あこ、リサ。一曲だけテストするわ。それで判断させてもらう。それでいいかしら?」

 

 小さく息を吐いて、仕方ないといった風に言って、私達に背を向けてスタジオの中に入っていった。

 

「はい!」

 

「オッケー!」

 

 と、リサ姉さんとあこちゃんは顔を見合わせて笑顔を見せる。ここまでは順調。後は二人が全力を持ってやるだけ。私にできるのはここまでだ。

 

「リサ姉さん。あこちゃん。頑張って!」

 

 私から二人に言えるのはこの言葉だけだった。二人は私の言葉に力強く頷いてくれた。私たち三人は姉さんの後を追ってスタジオへ入る。部屋に入れば、氷川さんがすでにギターの準備をしていた。まだ練習開始時間には余裕があるけれど、流石は氷川さん。そういうところ見習わないといけないなあ。

 

「湊さん、華那さん。こんにちは。……後ろの二人は?」

 

「こんにちは、氷川さん。この二人はバンドメンバー候補です」

 

「候補ですって?湊さん。いったい……」

 

 私の言葉に動揺する氷川さん。急に連れてきた人間が候補だというのだから驚くのも無理ないよね。姉さんは小さく息を吐いて

 

「どうしてもって言うから、一曲だけ合わせてみて判断する事にしたのよ。それに……目は本気よ。遊びじゃないわ」

 

 腕を組んで真剣な表情で氷川さんと会話する姉さん。その間にあこちゃんとリサ姉さんは、自分たちの楽器の準備を始める。私は近くにあった椅子を手に取り、姉さんが歌う位置の正面になるように置いて、氷川さんと姉さんのやり取りを見守る。

 

「……みたいですね。分かりました。華那さんの推薦もあるみたいですし、一曲だけなら私も文句はありません」

 

「そう……二人とも準備できたら言って頂戴」

 

 氷川さんの言葉に私はホッと胸をなでおろした。姉さんは発声練習をして準備をしている。相変わらず綺麗で力強い声だなぁ。そう思っていると二人の準備が終わったみたいで、姉さんもそれを確認してから

 

「やるわよ。一曲だけのテストを――」

 

 そう言ってから、姉さんは演奏する曲を二人に伝える。曲は姉さんがライブでやっているカバー曲で、「ETERNAL BLAZE」。うん。だいじょぶ。私も入れて三人で何回も練習した曲だから、大きなミスさえなければいい線いけると思う。二人とも頑張って。

 

「華那。終わった後、意見を聞かせて頂戴」

 

「うん。分かったよ、姉さん」

 

 姉さんも自分と氷川さんの判断じゃなくて、演奏していない私の意見を聞いて判断するつもりのようだ。私は頷きながらそう言って椅子に座る。本当は立っていた方がいいかもしれないけれど、座っていた方が無駄に緊張しないでいいと思ったから。

 

「あこ、リサ、紗夜。カウント三つで始めるわよ。あこカウントお願い」

 

「はい!スリー、ツー、ワン」

 

 あこちゃんの元気なカウントから演奏が始まる。その瞬間、私は一気に四人が奏でる音に引き込まれた。今までいろんなライブハウスで見て聴いてきたバンドよりも完成度は低い。それでも、四人の奏でる音楽は私の心に響いていた。リサ姉さんとあこちゃんは本当に楽しそうに音楽を奏でている。氷川さんはそれに引っ張られないようにしながらも、この瞬間を楽しんでいるように見えた。姉さんも歌う事に集中しているけれど、いつも以上に感情が歌に込められていた。

 想像以上。できる事なら、私もギターを持ってその演奏の輪の中に入りたい。それができればどれだけ楽しいだろう。でも――それはやってはいけない。望んではいけない事。だって。この音は、()()()()()()()()()()()()()()()なのだから――

 

 演奏はあっという間に終わってしまった。私は自然と拍手をしていた。気になるミスもあった。でも、そのミスを帳消しにするぐらいに、四人の奏でた音楽は素晴らしくて、心に響くものがあった。

 

「……」

 

「……」

 

 演奏が終わってから全員沈黙。私も拍手を止めて様子を見守る。今は私が口を出していい場面じゃない。そう判断したから。しばらく静寂がスタジオを支配していたけれど、あこちゃんが申し訳なさそうに声を上げた。

 

「あの……黙ってますけど、あこ……不合格ですか?」

 

「っ……そう……だったわね。ごめんなさい。小さいミスはあったけれど、二人とも合格よ。紗夜は?」

 

 動揺を隠せていない姉さんだったけれど、合格と言ってから氷川さんに確認をとる。氷川さんも何か考えていたようだけれど頷きながら

 

「私も同意見です。ただ……」

 

 何か言い辛そうな氷川さんだったけれど、氷川さんの言葉を聞いた瞬間、あこちゃんが喜びを爆発させた。

 

「い……やったー!!!!華那さん!!!リサ姉!!やったよ!!」

 

「そうだねあこ!いやーきちんと合わせられるか不安だったけど、体が勝手に動いた感じでさぁー。初めて四人で合わせたと思えなかったよー」

 

 と、飛びついてきたあこちゃんを抱きしめながらリサ姉さんが肩の力を抜いてそう言う。確かに初めてとは思えないほど四人の音はシンクロしていた。音をただ合わせるだけなら誰でもできる。でも、今奏でられた音はただ合わせただけじゃない。

 バンドの醍醐味ともいえる人を惹きつけるサウンド。それが今奏でられた正体?間違いなく姉さん達も今の音を感じていたのだと思う。だから戸惑っているのかな?私もただ体感しただけだから、言葉にするのが難しい。

 

「……華那の意見は?」

 

「……今のはこの四人でしか奏でられない音楽だと思う。聴いていた私がサウンドに引き込まれるような感覚だったもん。姉さん。私はこの四人でやっていくべきだと思うよ」

 

 姉さんに問いかけられた私は正直に答えた。ただ、内心は複雑だった。だって、今まで何回か姉さんと一緒にライブに出た事あるけれど、こんな体験した事、無かったから。一緒に歌っている時は今感じたものに近い感覚はあったけれど、ギターとして隣でサポートメンバーで出てからは一回も無かった。だからこれは嫉妬。これはきっと羨望なんだ。この四人でしか奏でられない音に対しての。

 

「そう……決定ね。あこ、リサ。確認なのだけれど、ついてこれないと判断したら辞めてもらうけれど、それも覚悟の上よね?」

 

「はい!」

 

「うん。勿論だよ」

 

 姉さんの問いかけに力強く頷く二人。だいじょぶ。このメンバーなら上に行けるし、支え合えるはず。

 

「そう……なら今から練習するわよ」

 

 と言ってさっそく練習に入ろうとする姉さん。きっと今の感覚をもっと磨きたいのだろう。私は出て行った方がいいかなと思ったけれど、氷川さんが近づいてきて

 

「華那さん。指摘お願いしますね」

 

「え……あ、はい」

 

 氷川さんから期待に満ちた表情で言われたら、私は断るに断れなかった。まあ、少しでも姉さん達の役に立てるならそれもいいかと思いつつ、姉さん達の練習を見守るのだった。

 

 

 

 

 

「という事があってから、あこちゃん経由で白金さんがメンバーとしてRoseliaに入った訳です」

 

「そう……なんだね……」

 

「二人を陰でサポートしていたのは華那さんだったのですね。それならあのテスト時点で、二人の楽曲への理解度が高かったのも頷けますね」

 

 Roseliaの練習が午前中だったある日の午後。私は白金燐子さん、氷川さんの三人で喫茶店でお茶をしながら、Roseliaの結成裏話をしていた。実は白金さん加入について私はノータッチで、加入した日もキーボード演奏者がいないか探していた。探している途中、リサ姉さんから連絡来て、メンバー見つかったと聞いた時に、素っ頓狂な声を上げたのは私は悪くない。悪くないよね!?

 

 で、白金さんとは話すようになったのは加入後だった。自己紹介した時に、姉さんの妹って事で驚いていたっけ。年下だから可愛がってくれているのは素直に嬉しいのですけど、いつもクッキーやらアメやらくれるのはどうしてですかね?そこまで子供じゃないですよ?

 

「でも……どうして……その話しを私達に?」

 

 疑問に思った正面に座る白金さんがそう聞いてきた。白金さんの隣に座る氷川さんも疑問を抱いていると思う。確かに昨日のうちに連絡していたとはいえ、喫茶店でこんな話しするとは思っていなかったと思う。

 

「確かに。白金さんや私にする話しには思えなかったのですが、意図があるのですよね?」

 

「ええ、勿論あります。どうしてあの二人がバンドに入ろうと思ったのか。どんな経緯だったかを知っておけば、お互い活動していく中で円滑に事が進められると思ったからです。特に後で加入した白金さんと他のメンバーの温度差を無くす――と言うのが重要だと思ったので」

 

 そう。Roseliaはバンドとしてはまだ産声を上げたばかりで、まとまりなんてまだみえてきていない。でも、いつかこの話しをした事が生きてくる時が来る。そう思ったから。それに――

 

「あまり……考えたくはないのですけど、私の身に万が一の事があって、姉さんを支えられなくなった時。姉さんを近くで支えてくれるのはリサ姉さんがいる。でも、バンド仲間として支えられるのは氷川さんと白金さんだと思ったからです。ただ、あこちゃんにはまだ難しい話しかなって……」

 

「万が……一……?」

 

 そう。人間なんて何時どうなるかなんて本人すらわからない。神様がいるなら、神様が決めた時に、命を落とすのだろう。それが結果として事故や病死、老衰などの形をもって。そうなった時。姉さんが一人になってしまったら、きっと私の為にと無茶をする。そういう時、バンドメンバーとして支えてもらいたい。

 

「華那さん……あまりそういう事は言わないでほしいのですが?」

 

「ごめんなさい、氷川さん。でも……バンド内での事は私何もできないし、もう知っていると思うのですけど、姉さん口下手だから心配で……」

 

 鋭い視線で話してくる氷川さんに私は視線を下に落として謝りながらそう伝える。人付き合いが苦手な部分がある姉さんだから、何か行き詰ったりすると、自分を何とか貫こうとして失敗しそうな気がして……。

 

「確かに、失礼な言い方かもしれませんが、湊さんはあまり口数の多い方ではありません。でも、だからと言って華那さんがそこまでする必要――……ありましたね」

 

「氷川さん……?」

 

 言っている途中でなにかに気付いた氷川さんは小さく息を吐いた。その様子に若干困惑する白金さん。そう。氷川さんには初めて会った時に話した事。五万人とか六万人収容するようなスタジアム級のライブをする事。そのステージに一緒に立っている事。それが私達の夢だった。でも今は叶わない。姉さんはRoseliaのボーカル。私はどのバンドにも所属していないただのギター好きのどこにでもいる人なのだから。

 

「五……六万人……?」

 

 一気に青ざめる白金さん。あ、白金さん人込み苦手なのを忘れていた。その光景を想像しちゃったのかな?ご、ごめんなさい。だいじょぶですか?

 

「あ……うん。大丈夫……だよ?……でも……素敵な夢……だね」

 

 と、若干震えながらも笑みを浮かべて言ってくれる白金さん。

 

「はい。……氷川さん、白金さん。迷惑なのは承知の上でお願いします。どうか、姉さんの事。最後まで見捨てないでいてください」

 

 頭を下げてお願いする。やっと、やっと上を目指せるメンバーが揃った。後はメンバー同士の努力次第。私にできるのはここまで。

 

「……まったく、華那さん。顔をあげてください」

 

「え、あ、は…い……みゅ!?」

 

 氷川さんに言われて顔をあげた瞬間、いつの間にか隣に座っていた氷川さんが私の頭を胸に引き寄せて頭を撫でてきた。え、え?ど、どういう事!?

 

「華那さん。貴女が何もできないって事はないって前にも言いました。覚えてますか?」

 

 優しい口調で私の頭を撫でながら氷川さんが言う。確かに前も言ってくれた。「本当に身近で支えられるのは華那さんだけ」だって。でも――

 

「……どんどん姉さんが遠くに行ってしまう気がして……。私なんかじゃ支えられないんじゃないかって……」

 

 ポロポロと一つ二つと涙が零れ落ちる。どんどん遠くなる背中。私も必死に追いつこうと頑張っているけれど、上手くならない。なら、私がいなくても大丈夫なように立ち振る舞うしかないと思った。だから二人に貴重な時間をもらってまで話をしたわけで――

 

「大丈夫……だよ。華那ちゃん……一生懸命やってるの伝わってるから……」

 

「そうです。だからそんなに自虐的に……悲観的にならないでください。それに私達、約束しなくても湊さんを見捨てる事はありません」

 

 と私を抱きしめる腕に力が入る氷川さん。ありがとうございます……それとごめんなさい。迷惑ばかりかけて……。

 

「いいんですよ。華那さんが一生懸命で、Roseliaの将来の事を考えて行動しているのは伝わりました。だからこの程度迷惑じゃないですよ」

 

「そうだよ……華那ちゃん。大丈夫だから……ね?」

 

「グスッ……ありがとう……ございます」

 

 二人の優しさに私はただただ感謝の言葉を伝える事しかできなかった。その後、泣き止んだ私に名前で呼ぶようにと少し恥ずかしそうに言ってきた氷川さん。でも――と言うと

 

「もう私達は他人じゃないでしょう?大切な友人同士なのだから名前で呼んでもいいと思うのですが?」

 

「そうだよ。私の事も……名前で呼んで……ほしいかな」

 

「え……友……人?」

 

 驚きを隠せなかった。だって、氷川さんはギターの先生で、身近で尊敬している人だったから、そう言われるだなんて思ってもいなかった。白金さんは誘ってくれたゲームを一緒にする仲だけど、学校違って先輩だからそう呼んでいたんだけど……。ただ、自分で言っていて恥ずかしかったのか、顔真っ赤ですよ?()()()()

 

「!……ほ、ほっといてください!」

 

「あ、それと燐子さん。NFOでレベリングしたいんで手伝ってもらっていいですか?」

 

「うん!……お安い御用……だよ」

 

 と、名前呼びになっても関係が大きく変わった訳じゃないけれど、どこかつながりが太くなった。そんな気がする。その後は他愛のない話しをしばらくしてから私達は笑顔で別れた。本当にいい人達が姉さんの周りに集まってくれた。それが嬉しかった。いつか……R()o()s()e()l()i()a()()()()()()()()()()()()()()。そんな事を思いながら家路へと向かう私の足は軽やかだった。

 

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