Sisterhood(version51)   作:弱い男

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#17

「そういえば、花咲(そっち)の中間テストっていつなの?」

 

 学校もバイトも休みの土曜日。私はポピパのみんなに誘われて蔵練を見に来ており、休憩時に私と学校が違うみんなに聞いてみた。羽丘()の方は来週からだけど、常時予習と復習をしている私に死角はないんだよ。ないんだよ!これでも中学校時代は学年二十位以内には入るぐらいの学力あったんだよ?ホントだよ?

 あ、姉さんはね、なんだかんだ言って学年十位以内に入っているんだよね。「興味ない」って言いながらそれだけの成績残せるって凄いよね。

 

「……あれ?何時(いつ)だっけ、有咲?」

 

「香澄、お前なぁ……。中間テストなら来週からだぞ?本当なら練習している場合じゃねえんだぞ?」

 

「香澄ちゃん。まさか忘れてた?」

 

 いつもの調子で有咲ちゃんに確認をする香澄ちゃん。それを見てりみちゃんが苦笑いを浮かべながら聞いたけど、香澄ちゃんは固まっていた。あれ?どうしたの香澄ちゃん?

 

「香澄?どうしたの?」

 

「ど、ど……」

 

「「「「「ど?」」」」」

 

「どうしよー!!!!勉強全くしてないよー!!!!!!」

 

「むっきゅ!?」

 

 突然の大声に私は耳を塞いだのだけれど、数秒遅かったため変な声が出てしまった。み、耳痛い。私の様子を見た沙綾が私を後ろから支えてくれたので、倒れる事はなかった。ありがとう沙綾。

 

「どういたしまして。でも、香澄らしいね。勉強してあるから今日練習するって言ったと思っていたからね」

 

「だよねー……。おたえちゃんは勉強してるー?」

 

「ぼちぼちとしてるよー。ねえ、沙綾。生物の範囲ってウサギの生態についてだよね?」

 

「おたえ。違うから……」

 

 平常運転のおたえちゃんに、呆れた様子でツッコミを入れる沙綾。もし、テストにウサギの生態について出たら、間違いなくおたえちゃんなら満点取れるね。私は満点を取るのは無理かなあと思いながら香澄ちゃんを見れば、有咲ちゃんに引っ付いてどうしようと泣きついていた。

 

「だああああ!!私に引っ付いたって、どうしようもねえだろう!!自己責任だ!じ・こ・せ・き・に・ん!!」

 

「そう言わずに、助けて有咲ー!!!!」

 

「アハハ……いつも通りだね、香澄ちゃんは」

 

「だねぇ……そういう華那は大丈夫なの?」

 

 有咲の腰に手をやって、しっかりとホールドしている香澄ちゃんを見て、私は苦笑いを浮かべるしかなかった。それだけ元気があれば勉強に使えばいいと思うんだけど、香澄ちゃんの事だから勉強よりバンドの方に力入っちゃうんだろうなあ。そう考えながら私は沙綾に、予習復習しているからだいじょぶだと伝える。

 

「それに、この後、カフェに行って勉強しようと思って、勉強道具も持ってきているんだ」

 

「ほう、しっかりしてますねー」

 

「!華那ー!勉強教えてー!!というか、みんなで勉強会しよう!!」

 

「わぷっ!?」

 

 と、私と沙綾のやり取りが聞こえたのか、今度は私をターゲットにした香澄ちゃんが勢い良く私に飛びついてきた。いつもなら倒れているところだけれど、さすがに香澄ちゃんも手加減(?)してくれたおかげなのか、倒れずにすんだ。

 

「香澄……お前どこでやるつもりだ?」

 

 右頬が引き攣っている有咲が、恐る恐る私に抱きついている香澄ちゃんに問う。確かに場所の問題あるよね。このメンバーでカフェに行って勉強なんてしたら、(主に香澄ちゃんが)うるさくて迷惑だろうし……。

 

ここ(有咲の家)!」

 

「だと思ったよ!!」

 

 あっけらかんと答える香澄ちゃんに吠える有咲。私と沙綾は苦笑いを浮かべるしかなかった。その後、有咲が香澄ちゃんの提案に予定通りに折れて、勉強会を開催する事になった。りみちゃんとおたえちゃんは勉強道具を取りに一度家に戻った。

 沙綾は勉強するつもりだったみたいで、私と一緒で家から勉強道具を持ってきていた。香澄ちゃんはというと……

 

「香澄おまっ!?なんで私の家に勉強道具が置いてあるんだよ!?」

 

「だって、持って帰るの面倒だったんだもんー」

 

「面倒だからって……うちはお前の荷物置場じゃねー!!」

 

「……勉強しよっか、沙綾」

 

「……だね」

 

 騒がしい二人を置いといて、折り畳み式テーブルを組み立てた私と沙綾は勉強を始めた。それを見て香澄ちゃんが慌てて勉強道具を用意して私の隣に座って

 

「華那ー。教えてー」

 

「早っ!自分で考えろよ、香澄!!」

 

 と、沙綾の隣に座りながらツッコミを入れる有咲。私と沙綾は苦笑いを浮かべるしかなかった。で、何が分からないのかなと聞くと

 

「テスト範囲!」

 

「……知らんがな」

 

「こ、こ、こ……このバ香澄ー!!!!!!」

 

「アハハっ!!香澄らしいねっ!!」

 

 香澄ちゃん達と学校が違うので、テスト範囲が分からない私がそういうのも無理はないよね!?有咲に至っては真面目に香澄ちゃんを怒り、沙綾はお腹抱えて笑っていた。あ、香澄ちゃん正座させられて、真面目に説教受けている。

 

「いいか、香澄。お前、高校生の本業って何か分かっているか!?」

 

「え、えと……!部活と遊び!「ちげーよ!!」あう」

 

 いや、香澄ちゃん。なんで悩む必要あった!?学業が本業でしょうが!と心の中でツッコミを入れながら私は頭を抱えるのだった。沙綾が「気にしたら負けだよ」と言いながら私の肩に手を置いて悟ったかのように話してくれた。こういうのが毎日あるのなら、退屈しないだろうなあと思いながら、勉強を再開するのだった。

 

「あ、華那。ちょっとここの解き方教えてもらってもいい?」

 

「ん?えと、ここは――――ってやれば解けるよ。花咲(そっち)羽丘(うち)と同じぐらいの範囲なんだね」

 

 と、沙綾がさしてきた数学の問題を見て、今さっきまで私が解いていた問題と似ていたので、そういう感想を漏らした。まあ、まだ一学期の中間だからそんなに大差ないのかなと思いながら問題を解いていく。

 

「ありさー。ここ教えて~?」

 

「ああ゛?……おい、香澄。冗談だよな?」

 

 有咲が香澄ちゃんから問題を見せてもらって固まって、絞り出すような声で聞き返していたので私は顔を上げて

 

「どうしたの有咲?」

 

「……華那。お前この問題見てどう思う?」

 

「?」

 

 有咲が私に香澄ちゃんが聞いている問題を渡してきたので確認する。え、ちょっ……はぁ?え?ちょ、ちょ?ちょっ、待てよ?

 

「か……香澄ちゃん。真面目に質問しているんだよね?」

 

「うん!」

 

 私の声は震えていたと(のち)に沙綾は語ってくれた。いや、これ震えるってどころか、卒倒するレベルの質問だったのだから仕方ないよ。ってかね、知ってなきゃダメな問題だよね!?

 

「えっと……『鎌倉幕府を開いた人物を次の四人の中から選びなさい。一.源頼朝。二.チンギスハン。三.織田信長。四.伊藤博文』……ちなみに香澄ちゃんは誰だと思っているの?」

 

「えっとねー、信長!」

 

「んなわけねぇーだろぉー!!!!」

 

 若者の歴史離れ――ってわけじゃないだろうけれど、まさかここまで酷いとは思ってもいなかった。いや、まさか鎌倉時代にノッブ……違った。織田信長ねぇ……。そんな時代に信長いて、鉄砲伝来していたら時代変わっただろうなあ。多分グダグダになると思うけど。

 

『是非もないヨネ!』

 

『ノッブは黙っていましょうね!?』

 

『はぁ~、お酒美味しい……』

 

 って、脳内で黒髪を背中まで伸ばした赤服の少女と、着物の姿の薄い桃色の髪をした少女と、その二人と同い年に見える銀髪の少女が、お酒飲んでる姿が脳内に浮かんだ。貴女方どちらさまで!?

 

「沙綾……」

 

「華那言わなくていいよ……私も頭痛いから……」

 

 と、私と沙綾は二人して頭を抱えたのだった。有咲はまだ香澄ちゃんに説教をしていた。そんなカオスな状態な所に、りみちゃんとおたえちゃんが戻ってきた。そして、この惨状を見たおたえちゃんがどうしたのと聞いてきたので説明をすると、おたえちゃんが盛大に爆弾を落としてくれたのだった。

 

「違うよ香澄。チンギスハンだよ」

 

「「おたえちゃん!?」」

 

「ちょ、おたえも!?」

 

 りみと私、沙綾が驚きの声を上げる。問題児がまさか二人に増えるだなんて……。これはちょっとまずいかもしれない。私、今日帰れるかなぁ……。盛大に溜息を吐いてから、私は荷物の中から歴史の教科書を取り出して、香澄ちゃんとおたえちゃんに勉強を教える。

 

「はいはい、おたえちゃんと香澄ちゃん、歴史教えるからこっち来なさい」

 

「はーい!」

 

「ん、わかったよ」

 

 他の三人から二人を隔離して歴史を教える。ま、まあ私が教えればだいじょぶだろうなと、始めた時は思っていました。ええ、思っていましたよ!人物と出来事を簡単に説明してから、ある出来事について二人に質問してみた。

 

「鎌倉幕府ができる前に大きな戦いがあったのだけれど……何の戦いか知ってる?」

 

「関ヶ原の戦い?戊辰戦争?ん?川中島の戦いだっけ?」

 

「違うよ香澄。長篠の戦いだよ。あ、違った。オルレアン包囲戦だった」

 

 こ……これは想像以上に手ごわい相手を引いてしまったような気がする。しかも、歴史がかなり改変されてるよ!?明治時代の戦争が起きた事になってるし、国外の戦いが日本で発生した事になっちゃってる!?ジャンヌ・ダルクは日本に来た事無いからね!?

 わ、私、負けない!壇ノ浦の戦いぐらいは一般常識として知ってなきゃダメなはず……!という訳で歴史の教科書を二人に見せながら

 

「いい?関ヶ原も桶狭間もこの時代の後だよ。オルレアン包囲戦にいたっては国外だからね!?……鎌倉時代と戦国時代はかなり年代が違うから、そこで間違っているようだと赤点確実だよ。このままだとバンド練習どころじゃなくなるねー……。夏休み補習祭りかなぁ?」

 

「そ、それはダメ!」

 

「うん。補習するぐらいならギターの練習したいよね。あとおっちゃん達可愛がりたい」

 

 私の言葉に反応して勢いよく立ち上がる香澄ちゃんと、さらっとウサギの話題を出すおたえちゃん。よし、言質は取った!なら、やる事は一つなのは分かっているよね、二人とも?

 

「歴史苦手~」

 

「私も……かな?」

 

「歴史は基本的に暗記だからね、何度も教科書読み直しに、授業中に取ったノートを確認するといいよ。後は語呂合わせで年代と幕府の関わり覚えたりするのも手かな」

 

 と、香澄ちゃんとおたえちゃんが簡単にできる対策を私は教える。歴史は好き嫌い激しいからねぇ。特に江戸時代の徳川歴代将軍が羅列されると、そこで訳分からなくなるからね。でも、(なに)と関わっているかを覚えれば簡単なのだけどね。

 

「例えば、壇ノ浦の戦いと、その戦いで勝ったのが源氏って覚えれば楽になると思うんだよね」

 

「それができたら苦労しないよ~……」

 

「ウサギの種類なら覚えられるんだけどね」

 

 あ、アハハ……どうしよう。この二人どうやったら歴史で赤点逃れできるかなあ。もうこうなったらあれか。中学受験とかで言われている方法しかないなあ。

 

「二人とも、ストーリー作りながら覚えればいいんじゃないかな?」

 

「「ストーリー?」」

 

 私の提案に二人して首を傾げてしまった。うん、分かっているよ。自分でもこれは最終手段な事で、きちんとした歴史を覚えてくれるかどうか、わからない事ぐらい。だから、そんな冷めた目で私を見ないで、有咲!

 とにかく、平氏と源氏が権力争いしていて、お互いかなり戦力消耗しながら戦い続けて、お互い持てる力全部出した最終決戦が壇ノ浦。で、その勝者が源氏で、鎌倉幕府開いた……って(イメージ)で覚えていけば、まだ覚えられるんじゃない?

 

「おおー!そういう事!!さっすが華那!結構覚えやすい!!」

 

「確かに、そういう覚え方なら楽しみながら覚えられそう」

 

 二人とも納得してくれたみたいで、香澄ちゃんは両手を叩いてはしゃいでいる。その香澄ちゃんに対して、五月蠅いと言わんばかりの鋭い視線を送る有咲。有咲……見てないで助けて。この二人私じゃ手に負えないよー……。

 

「しゃーねぇな……。そこまで言うなら香澄の面倒は私が見てやるよ」

 

「有咲、ありがとう……おたえちゃんは私が担当するから、よろしくね」

 

「あいよー……ほら香澄、やんぞ、こら」

 

「はーい!」

 

「よろしく、華那」

 

 と、マンツーマン指導で教えていく私と有咲。途中、りみちゃんと沙綾も入り、教え合いながら勉強会は夕方まで続いた。数学を教えている時、有咲が凄く頭抱えていた。香澄ちゃん。方程式の使い方が分からないならまだしも、足し算と引き算、掛け算と割り算が混ざった時の計算する順序が残念な事になっていたからね。

 一方、おたえちゃんは数学はバッチリだった。英語はやや不安な点あったけど、問題は歴史だけだったので教えていても楽だった。途中、有咲からヘルプ飛んできて助けに行ったけれど、基礎から教える羽目になるとは思わなんだ……。

 勉強会が終わっても元気だったのは香澄ちゃん。私と有咲はダウン寸前まで追いやられていた。(主に精神が)

 

 その後は夕食の時間が近い事もあって解散となり、私は帰宅したのだけれど……

 

「華那。この時間までどこに行っていたのかしら?」

 

 と、玄関で待ち構えていたのは、両腕を組んで仁王立ちの姉さんだった。ここ家じゃなかったら私逃げ出している自信あるよ!だって、姉さんの背後に、なんか迷子になって、泣いちゃいそうな元プロレスラーな女性見えるんだもん!

 

「あ、有咲の家で勉強会をしていました」

 

「……ならいいわ。中間テスト間近なのに遊び歩いているかと思ったわ」

 

 テスト前に遊ばないよ!と言いながら靴を脱いで家に入る。あ、ちょうどよかった。ねえ、姉さん。

 

「?なにかしら」

 

「ちょっと、英語で分からない部分あるから教えてもらってもいいかな?」

 

 ある程度できているのだけれど、日本語訳の部分でちょっと躓いている部分があった。有咲からやり方を教えてもらったけれど、イマイチ自分の中で消化できなかったのもある。うーん、理解力低いのかなぁ。

 

「ええ。いいわよ。食事前にすませるわよ、華那」

 

「ありがとう、姉さん!」

 

「私の部屋でいいかしら?」

 

 いいよと返事をして、二人で部屋に向かって勉強をする。姉さんの教え方は親切なんだよね。分かるまで根気よく教えてくれるから、質問する側としては本当に助かる。夕食後も少しだけ姉さんから問題の解き方について教えてもらった。これで、明日も復習すれば中間テストは乗り切れるかな。

 

「姉さん、ありがとう。分からなかった部分、分かるようになったよ」

 

「そう。良かったわ」

 

 と、微笑む姉さん。やっぱり姉さんは頼りになるなあ。でもいつ勉強しているか分からないのは、中学時代からの謎。だって、最近だと作詞作曲して、ボイストレーニングして、猫の動画や写真見て癒されている。勉強する時間ある?ないよね?

 まあ、気にしても仕方ないよね。私だってバイトして、ギター弾いて、勉強しているのだから、姉さんだって勉強する時間作れるはず。多分。そう考えながら、姉さんにもう一度ありがとうと言って部屋を出ようとした時、姉さんに呼び止められた。どうしたの?

 

「華那、今日はもう勉強しないのよね?」

 

 と、真剣な表情で聞いてくる姉さん。どうしてそんな事を聞くのだろうか?と、不思議に思った私は首を傾げながら「しないよ」と答えると

 

「そう……もし、華那がよければ、少しギター弾いてくれないかしら?少し練習しておきたいのよ」

 

「!ち……ちょっと待ってて!すぐ持ってくるから!!」

 

 姉さんが右手人差し指を顎に当てて、少し首を傾げて提案してきた。私は嬉しくて姉さんに早口で伝えると、自分の部屋へギターを取りに急いだ。練習の付き合いでも、姉さんと一緒に歌を奏でられるのが嬉しいから。

 その後、ギターを持って戻ってきた私は、何曲か姉さんと合わせるのだった。途中で、私達の音に気付いたリサ姉さんが家に乱入してきて、三人でセッションする事になり、楽しい時間を過ごしたのだった。

 

 あ、中間テストは無事に乗り越えられて、私は学年十五位で、姉さんは学年七位という成績。リサ姉さんも八位という成績だった。リサ姉さんについては、見た目とのギャップ凄いとアフグロのみんなが話していたけれど、幼馴染の私にとってはいつも通りの成績なので驚きはなかった。

 あと、ポピパのみんなの成績は、有咲は学年トップ。りみちゃんと沙綾は上位に。おたえちゃんは中位。かすみちゃんは赤点回避だったと付け加えておく。今度は一週間前から勉強会した方がいいね……。そう有咲と沙綾と話し合う私だった。

 

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