Sisterhood(version51)   作:弱い男

2 / 84
#1

 帰りのショートホームルームが終わり、私――湊華那(かな)――が一伸びしていると隣にいる髪の毛の一部を赤メッシュにしているのが特徴な、目つきが悪い事をよくクラスメイト達に茶化される美竹蘭ちゃんに声をかけられた。

 

「華那。今日はバイトか何かあるの?」

 

「んー?特に用事もバイト無いからこのまま帰ろうかなって思っていたところだよ。蘭ちゃん達は、アフグロの練習でしょ?」

 

 アフグロ――正式名Afterglow――は蘭ちゃんがボーカル&ギターを務める、幼馴染五人で結成されたガールズバンドだ。本格的なロックサウンドを中心に、バラエティに富んだ楽曲もやっていて、結構ファンもいるみたいで、時々、隣クラスの子に話しかけられているのを見た事がある。

 

「うん。これから練習。その……華那がバイトなら、行く場所は同じだから皆で一緒に行こうかって……」

 

 と、少し恥ずかしそうに言う蘭ちゃん。あー……なんかごめんね、蘭ちゃん。今度埋め合わせするからと言うと

 

「べ、別に華那と帰れないからって落ち込んでなんか無いし!」

 

 顔を赤くして明後日の方向を向く蘭ちゃん。見事なまでのツンデレのテンプレ的な回答。というか、誰も落ち込んでいるの?って聞いてないよね!?そんな事を私が思っていたら、蘭ちゃんは逃げるように教室から出て行ってしまった。

 あー……これは明日、御機嫌取りでクッキーでも用意しておいた方がいいかもしれないね。って、そこ。明日茶化そうとか言ってないでいいから!あとで被害受けるの私なんだからね!?

 

 などと言いながら教室に残っていたクラスメイトと別れて校門へと一人向かう。今日は個人的な用も無いし、ポピパ――正式名Poppin'Party――のメンバーからも連絡無いから家にまっすぐ帰ってギターでも練習しようかなと思った瞬間だった。

 

「かーなっ!」

 

「わっ!?ってリサ姉さん!」

 

 私が羽丘女子学園の敷地から歩道に出た瞬間、左側から誰かが抱きついてきた。抱きついてきたのは、私より八センチぐらい身長の高い、見た目がまんま、ザ・ギャルって感じの今井リサ姉さんだった。私と姉さん――湊友希那――にとってリサ姉さんは大切な幼馴染。家が隣ってこともあって、小さい頃はよく三人で遊んでいた。

 

 一時期、私と姉さんがFWFを目指すようになってから、姉さんとリサ姉さんは疎遠になった時期もあった。でも、その期間でも私とは話しはしていたけれど、どこか遠慮している印象を私は受けていた。

 

 で、最近になって、姉さんとリサ姉さんはRoseliaというガールズバンドを結成した。姉さんはボーカルとして。リサ姉さんはベースとして日々練習を重ねている。結成するまで色々あった。……あったんだよ!その時、姉さんのサポートをしていた私は、メンバー集めに奔走していたからね。少し前のことを思い出しながら、私はリサ姉さんの腕の中で首を傾げつつリサ姉さんに問う。

 

「リサ姉さん。どうしたの急に抱きついてきて?」

 

「いやー。最近、華那と会ってなかったからさー。華那成分補給しようと思って☆」

 

「リサ姉さん、意味わかんないよ……」

 

 と、お茶目にウインクしながら舌を出すリサ姉さんに呆れた表情を浮かべるしかなかった。確かに、ここ最近リサ姉さんとは会っていなかった。それもそうだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。姉さんがバンドを結成してからは、姉さん以外のRoseliaのメンバーとは最低限の付き合いをするようにしていた。もちろん理由はあるよ?あるんだよ?嘘じゃないよ?本当だよ?

 

「まあいいじゃん。減るもんじゃないしー」

 

 ニンマリと笑うリサ姉さんに私は軽い頭痛を覚えるも「いつもの事か」とさらりと流すことにして、リサ姉さんから離れて、最近の練習はどうかと聞いてみる。どうやら練習はいい雰囲気でやれているみたいで、私の一個下の宇田川あこちゃんのドラムの精度もかなり上がってきているとの事。

 

「あこちゃん凄いなぁ。中学生なのによくRoseliaの激しい楽曲叩けるね」

 

「だよねぇ。無理してなければいいんだけどさぁ。アタシ心配だよー」

 

「確かに……」

 

 まだ体ができていないあこちゃんのことを心配しつつリサ姉さんと話しを続ける。高校生活には慣れた?から部活何かやる?おすすめはダンス部だよー☆あと、数学の先生厳しいからきちんと予習したほうがいいよー。あと風紀担当の先生に目を付けられると大変だよ!等々――

 

 最後の部活については聞き流しておいたけどね。私、ダンス無理だって!踊れないのにダンス部とか、他の人に迷惑だよ!尚、私の体育の評価は五段階評価の二だ。あ、五が最も優れている方だよ。つまり下から数えたほうが早い。でも、走ることぐらいならできるから、陸上競技系か文系の部活かなぁ。今のところ部活に入ろうと思わないけど。

 

 そんな他愛のない話をしていると、突然背後から声をかけられた。振り向くと、そこには私と同じ銀色の長い髪を優しい風で靡かせた姉さんがいた。

 

「姉さん!」

 

「華那、リサ。ここにいたのね。少し探したわよ」

 

 と、少し疲れたような表情を浮かべる姉さん。探すならスマホで連絡してくれればよかったのに――と思ったけれど口には出さないでおいた。

 

「ごめんごめん。ちょっと華那と話してたんだー。最近会えなかったからさー」

 

 謝るリサ姉さんに姉さんは「そう」とだけ言うと、私とリサ姉さんの間に立って

 

「二人とも帰るわよ」

 

「うん」

 

「オッケー。あ、そうだ。ねえ友希那、華那。今日練習無いから、ちょっと寄り道しない?」

 

 と、リサ姉さんからの突然の申し出に私は困惑する。Roseliaの練習が無いこともそうだけど、寄り道をするという提案に私はすぐに賛同できなかった。今日は帰ってギターの練習をしようかと思っていたから。

 

 今から二年前――当時、姉さんと一緒に歌っていた私は喉を痛めてしまい、歌えなくなってしまった。一応歌えるんだけど一曲もたない。下手すれば一番のサビ部分で声が掠れてしまう状態になってしまった。日常生活には問題ないんだけどね。あ、中学のクラス対抗合唱コンクールの時はピアノを(何とか)弾けたから、伴奏者として出て難を逃れた。

 で、喉を痛めてからは、私は歌うことを止めてギターを始めた。姉さんの隣に立てる日が来ることを夢見て。でも、その夢は叶わなかった。二年。そう二年しかギターを弾いていないというのは、姉さんや私自身が求めるレベルに到達するには短すぎた。

 

 だから私は夢を諦めて、姉さんのサポートをしていた。その時、何度か姉さんの隣に立ってライブハウスで演奏したこともある。あの時は楽しかったなあ。一緒にステージに立っている――それだけで満足しちゃっていたしなあ……。なんて現実逃避もいい加減にして、リサ姉さんに答えないと。

 

「どこにいくつもり、リサ?」

 

 と、姉さんがリサ姉さんに問いかける。腕を組んで少し不機嫌そうな姉さん。あ、これはあれだ。リサ姉さんの回答によっては行かないって言いだす。間違いない。そうなったら私も右に倣えで姉さんと一緒に帰ろう。そうしよう。リサ姉さんには悪いけど……。

 

「ふふふ……友希那も、華那も好きな場所だよー♪」

 

「「?」」

 

 リサ姉さんの言葉に私と姉さんはお互い見合って首を傾げる。私と姉さんが好きな場所ってどんなところだろ?ライブハウスとか、図書館とかかな?でもライブハウスなら、姉さんとリサ姉さんはいつも行っているから無いか。考えているとリサ姉さんは右手を招き猫がしているポーズのように手首を曲げて

 

「ふふーん。猫カフェだよ!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、私と姉さんの回答は瞬時に決まった。私と姉さんはアイコンタクトをとって頷き合い

 

「……行くわよ華那、リサ」

 

「うん、姉さん。ほらリサ姉さん、案内はやく!」

 

「二人とも反応速すぎでしょ!?」

 

 と、私と姉さんはリサ姉さんを置いて歩きだす。私と姉さんが共通して好きなものの一つ――それは猫。そう愛玩動物の猫ちゃん様だ。昔は飼っていたのだけど今はいない。でも私達姉妹が猫を好きなのは変わるわけがなく、姉さんと私は時々猫カフェや公園の猫と戯れたりしている。

 

 その時撮った猫の写真は、スマホからパソコンにバックアップしてある。スマホでもパソコンでも見られるから、姉さんが時々私のパソコンを占領することがある。特に作詞作曲に行き詰った時にパソコンで猫の映像を見てるのはリサ姉さんですら知らない……はず。

 

 ベッドの上で死んだかのように天井を見上げ、作詞を考えるのが姉さんのスタイルになっている。最初見た時は驚きのあまり、ベッドに駆け寄って姉さんに必死に声をかけた。何か病気じゃないかと心配してしまったから。その後、誤解だと説明を受けて姉さんに謝った。姉さんは小さく笑って許してくれた。

 で、次の日から私に心配かけないように配慮してくれたのか、気分転換にって猫の画像を見に来るようになった。私としては姉さんと一緒にいられるのは嬉しいけど、二時間以上パソコン占領はどうかと思うよ?

 

「姉さん」

 

 横を歩く姉さんに声をかける。姉さんは前を向いたまま「何?」と聞いてきた。私はできるだけの笑みを浮かべて

 

「猫カフェ楽しみだね」

 

「……そうね」

 

 少し柔らかな笑みを浮かべて私を見る姉さん。ああ、こんな日がずっと続けばいいのに――

 

「友希那、華那!!猫カフェの道、こっちだよ!!」

 

「「え?」」

 

 後ろから慌てた様子で私達を止めるリサ姉さんに、私と姉さんはほぼ同時に振り返る。両手を腰に当てて、苦笑いを浮かべているリサ姉さんに私と姉さんは謝る。その後、私達は無事に猫カフェへ行ったのだった――

 




お久しぶりの方はお久しぶりです。
初めましての方は初めまして。
弱い男です。

一度削除した作品ではありますが、また読んで頂ければ幸いです。
ただ、更新は前みたいに一ヵ月に一回ではなく完全不定期なので、あまり期待しないでいただければと思います。ハイ。
今回の#1は少し加筆してお送りしました。内容は変わっておりません。次回からは加筆は(ほぼ)ない予定です。

ではまた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。