Sisterhood(version51)   作:弱い男

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#29

「全員揃ったわね……それじゃあMKMの第七次集会を始めるわ」

 

 と、CiRCLEのラウンジを貸し切りにした湊さんが音頭を取って、テーブルを囲むようにして座っているメンバーを見渡しながら言った。って、ちょっと待って。何、集会って!?

 

「ちょ、ちょっと待ってください。アタシ、モカに連れられてきただけなんですけど……?そもそもMKMってなんですか」

 

 集会と言うので、一応手をあげて発言をするアタシ。そんなアタシを見た湊さんが、モカに視線を向けて小さくため息を吐いて

 

「青葉さん……今度から新たにメンバーを連れてくる場合は、きちんとこの集会の趣旨を説明しておいて頂戴」

 

「わかりましたー」

 

 と、呑気に返事をするモカにアタシは頭が痛くなる。アタシはその間に今日集まっているメンバーを見る。モカ、つぐ、巴にひまりのアフグロの全員。紗夜さんにリサさん。彩さんに白鷺さん。それとポピパの……確か山吹さんだったっけ。それに市ヶ谷さん(だったと思う)に香澄。そしてアタシという関係性があるようでないメンバーだ。だって、どうみてもバンド関係なさそうだし。

 湊さんの右隣りにリサさん。その反対側に山吹さんが座っているけれど、この座り方には何かあるのかとアタシが思っていると

 

「MKMの正式名は【湊華那を見守る会】よ」

 

「はっ?」

 

 堂々と会の名称を言う湊さんに、「何を言ってるんだこの人は」という目で湊さんを見たアタシは悪くない。いや、華那を見守り隊とか意味わかんないし……。

 

「まあまあ、蘭。一応話し聞いてから……ね?」

 

 湊さんの隣に座るリサさんに宥められるアタシは、頷いてから湊さんに謝罪してから先を促した。湊さんは小さく頷いてから

 

「初めての人もいるから、もう一度、説明するけれど……私の妹である華那が、以前誘拐未遂事件に巻き込まれたのは知っているわね?」

 

 私を見ながら確認するように問う湊さんに私は頷く。その事件の事を聞いた時はアタシも焦った。華那が怪我してないかとか、トラウマになってないかとか色々と考えてしまったけれど、学校でクラスの皆に囲まれて普通に話している姿を見て、安心したのを今も覚えている。

 本当に、華那はうちのクラスのマスコット的存在だから、いないとクラスの雰囲気が暗くなるし、アタシも……華那がいなくなる事を想像したくない。

 

「なら話しは早いわね。その事件があってから数日後に、一回目の集会を行ったのよ。その時のメンバーは紗夜とリサ。それに山吹さんと市ヶ谷さん。そして私だけだったのだけれど」

 

 湊さんの説明をまとめると、華那が事件や学校内でいじめにあってないか、何か変わった事がないかを報告し合う機会を作った方がいいのではないか?という提案が、紗夜さんとリサさんからあったそうだ。確かに……いじめを受けていたとしても華那なら、誰にも言わないで我慢しそう。

 それで隊の意義に賛同したメンバーを集めて何回かやっていくうちに、徐々にメンバーが増えていったそうだ。で、今回はアタシが参加させられた訳か。というか、巴とつぐみは二回目から参加してたんだ……。

 

「おうよ。華那をいじめるやつがいたらアタシが速攻でぶっ潰す予定だからな!」

 

「私も、華那ちゃんに何かあったら生徒会に協力してもらう予定だよ!」

 

「……二人とも、ちょっとやりすぎ……だと思うんだけど!?」

 

 頭を抱えながらアタシは二人に対して呟くように発言する。確かに、華那がいじめられていたら、アタシも華那を守る方向で動くと思う。でも、暴力とか権力を使うのはちょっと違うような気がするのはアタシだけ?

 

「それで、姉である私がこの会の会長を、私と華那の幼馴染であるリサと、中学時代からの付き合いがある山吹さんが副会長を務める事になったのよ。ここまでで何か質問あるかしら?」

 

 会の進行を仕切る理由を説明する湊さん。なるほど。確かに湊さんなら姉だし、家でも華那と一緒だから理に適って……いる?って違う違う!何、感化させられているのアタシ!?ってか、本人(華那)がこの会の事知ったら間違いなく怒る。絶対怒るに決まってる。その事についてアタシが問うと

 

「大丈夫よ美竹さん。華那には分からないように、きちんと日時調整しているわ。それにアプリのグループも別にしてあるわよ」

 

「グループ!?グループ作ったんですか!!??」

 

 驚愕の発言にアタシは声を荒げてしまった。いや、だって、華那を見守るって言って、わざわざグループ作る必要ある?アタシが頭を抱えたのは仕方のない事……だと思う。

 隣に座るモカが、アタシの肩に手を置いて小さな声で「気にしたら負けだよーランー」って言ってきたけれど、そういう問題じゃない。そもそも守る会と言ってますけど、実際は何をしているんですか?ストーカーしているなら、即座に警察に突き出しますよ。

 

「ストーカーだなんて心外ね。あくまでも、華那と一緒にいた時の報告会のようなものよ。だから、隠れて華那の様子を見るだなんて事は……してないわよね、紗夜?」

 

「ゴフッゴフッ!?な、なんで私に聞くんですか、友希那さん!?」

 

 ちょうど水を飲もうとしていた紗夜さんに、真顔で聞く湊さん。皆の視線が紗夜さんに向かう。動揺が激しかったからだと思うけれど、紗夜さんがそこまでするとはアタシは思えな――

 

「日菜に何か異常はないかは調べさせてはいますが、流石に後をつけるような真似はしていませんよ」

 

「調べさせてるだけでも十分かと!!」

 

 紗夜さんの発言に、机を叩いて立ち上がってしまったアタシは悪くない!というか、なんで日菜さんに調べさせてるんですか!?調べる必要ないですよね!?

 という私の発言にウンウンと頷いてくれていたのは市ヶ谷さんだけだった。おかしい。アタシの感覚は間違ってないはずなのに、ここにいるとアタシの方が間違っているのじゃないかって思えてくる。でも、市ヶ谷さんが同意してくれているなら――

 

「リサさん達は華那と学年が違うから、時間が合う合わないあると思うので……同じ学年の人達の方が調べさせた方がいいと思いますよ」

 

「そっち!?」

 

 まさかの市ヶ谷さんの発言にアタシは頭を抱え込んでしまった。この集会に参加している時点であっち(湊さん達)側だというのは薄々勘付いてはいたけど、まさかここまでだなんて思っていなかった。うわっ……そう考えると、まともなのアタシだけ……?

 

「蘭……みんな華那の事が心配なんだ。それだけは分かってくれ」

 

「巴……それは分かってるんだけど……だけど……」

 

 アタシの肩に手を置いて宥めてくる巴にアタシは右手を額に当てながら答える。皆が華那のことを想っているのはアタシだって理解している。でも、その方向性が間違っているんじゃないかって思う訳であって――

 

「そうですね。ですが、上級生からのいじめも考慮しなければいけませんので、日菜や今井さん。そして姉である友希那さん達からの情報も必要かと」

 

「そうです……ね。華那。我慢しちゃうからなぁ……そう思わない、有咲?」

 

「だな。華那のやつ、もう少し他の人を頼ってもいいと思うんだけどな……」

 

「そうね。この間の、連れ去り未遂事件の話し聞いた瞬間。私、実行犯の男を社会的に抹消しようかと本気で考えちゃったぐらいだもの……。華那ちゃんにもお説教した方がよかったかしら?」

 

「ち、千聖ちゃん。お、落ち着いて。ね、ね?」

 

 と、コップを持つ手が震えている白鷺さんを宥める彩さん。華那と白鷺さんが知り合いだった事にアタシは驚きを隠せなかった。というか、有名な子役だった女優と華那がどこでどう会ったら、こんな仲のいい関係になるのだろう。

 

「白鷺さん。澤野さんの件は、色々と迷惑をかけたわね。私からも謝らせてもらうわ」

 

「いえいえ。私としても、あの事務所の方には嫌な事されていたから、華那ちゃんや友希那ちゃん達の役に立ててよかったわ」

 

 と、頭を下げる湊さんに、笑みを浮かべながら答える白鷺さん。この二人もなんか仲いいんだけど……やっぱ華那関係で親交深めてるみたいだ。でも、湊さんの言った「澤野さんの件」ってのがアタシの中で気になってしまった。そもそも澤野さんってダレ?

 

 その後も、集会は続いていったのだけど、ツッコミ役が不在という事態にアタシは頭を悩ませる場面ばかりだった。

 

「それで華那が転倒して――」

 

「そんな事があったのですね。だから、この間、華那さんと一緒に練習した時に足を気にしていたのですね」

 

「その練習時の華那について詳しく聞いてもいいですか!」

 

「バ香澄!声デカすぎ!!……あ、私も詳しく聞きたいです」

 

 と、(ツッコミ担当の)頼みの綱(市ケ谷さん)ですらこれである。ツッコミ役がアタシだけじゃ、もう間に合わない。というかアタシもう帰ってもいいかな……。そんな事をアタシが考えていたら、湊さんがアタシに話しを振ってきた。

 

「美竹さん。美竹さんは華那と同じクラスだから、授業中とかの様子を見ているわよね?どんな様子か教えてもらってもいいかしら?」

 

「え……」

 

 まさかの話題を提供しろと言う湊さんの発言にアタシは固まる。いや、確かに学校の中でなら、一緒にいる時間は長いかもしれないけど、そんな面白い話しは――あった。そうだ。この間、体育でサッカーする事になった時の話しをすればいいんだ。

 

「お、ランー。あの話しちゃうー?」

 

 と、モカが何を話すか気付いたようで、ニヤニヤと笑みを浮かべながら聞いてきたのでアタシは頷いて

 

「つい先日、隣の組――B組と合同で体育の授業があって、クラス対抗でサッカーする事になったんです。その際、クラスの皆で話し合った結果、華那がゴールキーパーやったんですけど……途中までいい動きしてて、無失点に抑えていたんですよ」

 

 そう。誰かがゴールキーパーをやらないといけないのだけど、誰もやりたがらない。それもそうだ。やっぱりサッカーは攻めて、シュートしてゴール決めるのが醍醐味だし。っと言っても、体育の授業内での話しだけど。

 

「おおー。あの華那がゴールキーパーやってるイメージないなぁ。ねっ友希那」

 

「そうね。やったとしても、オロオロしてそうな感じなのだけれども……」

 

「アハハ……確かに、華那ならボール取りに行こうとしてコケてるようなイメージしかないですね」

 

 と、トップ三人衆がそれぞれのイメージを語る。まあ、アタシもやるまではそうなるだろうなって思っていたから、人の事を言えない。それで試合も終わるってところで、巴がシュートしたら……

 

「その……あまりのボールの速さに反応しきれなくて……華那の顔面にボール当たって、華那が倒れるって事件が発生しまして……」

 

「顔面!?巴さん。狙ったわけじゃありませんよね?」

 

「さ、ささささ紗夜さん!?あ、アタシがそんな事する人間に見えますか!?」

 

 部屋の温度が、一気にマイナスになったかと錯覚するぐらいの冷めた視線を巴に向ける紗夜さん。まさかの問いかけに動揺を隠せない巴。巴、動揺しすぎだし……。

 

「華那、そんな事、言っていなかったのだけれど……美竹さん。その後、どうなったのかしら?」

 

「あっ、はい。顔面にシュート受けた華那は倒れちゃって、みんな集まって様子見に行ったんですけど……気絶しちゃってて……。先生も慌てて授業終了させて、皆で華那を保健室に運ぶ事になったんです」

 

「気絶って……華那の奴、大丈夫だったんだよな……?」

 

「昨日、蔵練に来てくれてたから大丈夫じゃないかな?あっ、有咲。心配してるんだ?」

 

「ば、バッカ!心配するに決まってんだろ!!顔面って事は頭だぞ!頭!後遺症とか残ったら大変じゃねぇか!!このバ香澄!!」

 

 と、夫婦漫才をする二人は置いといて、アタシはその後の話しをする。保健室に運んで、大崎先生に見てもらい、病院に行くまでに事じゃないとの診断結果を聞いてみんな安心していると、華那が無事に目を覚ました。

 

「その際、巴がもう泣くんじゃないかってぐらいの勢いで華那に謝っていたんですよ」

 

「ちょっ!?蘭!それ言う必要ないだろ!?」

 

 その時の様子を思い出して、アタシは小さく笑いながら話す。すると、巴が慌てた様子でアタシにツッコミを入れてきた。いやだって、あの時の巴、今思い出しても凄い必死だったから。嫌われるんじゃないかって、勝手に思い込んでいたみたいだし。

 

「いやだってさ……授業中の事故とは言え、顔面だぞ?顔面。いくら温厚な華那でも怒ってるって思っちゃってさ……」

 

 右手で頭を掻きながら、バツが悪そうに言い訳をする巴。それを見てみんなが笑う。巴心配しすぎ。華那がその程度で怒るわけないよ。それを巴に言うと、山吹さんがウンウンと頷いて、笑みを浮かべながら

 

「そうそう。華那が怒るとしたら、華那の大切な人達が馬鹿にされた時だよ。だから巴。安心しなよ」

 

「沙綾……。そう……だよな……。あの時のアタシ。気が動転しててさ……」

 

「まあ、そうなるでしょうね。ですが、華那さんの顔にボールを当てた事実に関してはきちんと()()()をしないといけませんね……巴さん。分かっていますよね?」

 

 と、机に両肘をついて威圧感を放つ紗夜さん。いや、ちょっと待って。なんか「お話し」の部分がちょっとニュアンスが違うような気がするのはアタシだけ!?

 いったい何が行われるのか不安を覚えたけれど、それを止めたのは湊さんだった。

 

「紗夜。そこまでにしておきなさい。華那が許しているのだから、私達がああだこうだ言う必要はないわ」

 

「ですが……いえ。分かりました。巴さん、威嚇するような真似をし、申し訳ありませんでした」

 

「いえいえ!アタシの方こそ、次から気をつけますから!」

 

 湊さんに注意された紗夜さんが巴に謝る。というかそこまでしなくてもと思いながら、アタシはまだ続く集会に身を委ねるのだった。華那の周辺に異常はないのを確認して、何かあったらすぐに通話アプリで報告するというのを確認して解散となった。

 解散してからアタシはつぐみに問いかけた。

 

「ねえ、つぐみ」

 

「なに蘭ちゃん?」

 

「『湊華那を見守る会』って言うより、『湊華那の可愛さを語り合う会』の方がシックリこない?」

 

「……蘭ちゃん。それは言わないお約束だよ」

 

「お約束なの!?」

 

 と、いうやり取りがあった。でも、みんなで華那の可愛いところ言い合ってるだけだったし……と思うアタシが悪い……?そんな事を考えつつ、アタシ達は帰路につくのだった。

尚、第八次集会の日程は来週との事らしいので、参加できるように日程調整しないと……。って、アタシ毒されてる!?と、アタシが気付いたのは、自室に入ってからだったのはまた別の話し。

 

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