Sisterhood(version51)   作:弱い男

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#32

 高熱の風邪をひいた――と、姉さんから聞かされたのは当日の夕方だった。というか、それ以前の記憶が全くなくて困っているんですけど!?あ、体温計が鳴った。何度だろうと腋から取り出そうとしたら、姉さんは私が動く前に動いて、体温計に表示されている数字を読み上げた。

 

「37.0℃……ね。平熱に近くなってきているけれど、まだ無理はしてはダメよ」

 

「え……でも夕食の準備ぐらいなら「ダメに決まっているでしょ」あう」

 

 私がベッドから降りようとすると、姉さんに両肩を掴まれて、強制的に寝かされてしまった。母さんも父さんもまだ出張中だから、こうなると必然的に姉さんが料理をするしかないのだけど――

 

 

姉さんの料理は壊滅的――

 

 

 という現実が待ち受けていて、私の病状が悪化する未来しか見えない。あ、でも、学校の家庭科で料理する時間あるから、そこで基礎を学んでいれば――ごめん。そんな簡単に基礎覚えられていれば、ホットケーキを天ぷらみたいに揚げないよね。姉さん、音楽に(基本は)全振りだからなぁ。英語と国語は、歌詞書く時に必要だから勉強しているみたい……。

 

「あの……姉さん。そしたら誰が夕食作るの?」

 

 恐る恐る姉さんに聞いてみる。姉さんは私の問いに首を傾げる。どうしてそんな事を聞くのと言いたげ……そう。

 

「ああ、そうだったわね。華那、今日スマホ見ていなかったわね。安心しなさい。今、山吹さんとリサが準備してくれているわ」

 

「え?沙綾とリサ姉さんが?」

 

 思い出したかのように言う姉さんに、私は首を傾げるしかなかった。隣のリサ姉さんだけならまだしも、沙綾がなんでいるのだろう?

 

「山吹さんはKえ……Poppin’Partyの戸山さんと市ケ谷さん達が来るのを止めてくれたのよ。あの二人が見舞いに来たら、見舞いが見舞いじゃなくなるからって」

 

「あー……確かに」

 

 姉さんが何か言い直していたけど、あの二人が来たら夫婦漫才が始まっちゃうからね。仕方ないよね。うん。納得していると、部屋の扉を叩く音と沙綾の声が聞こえてきた。

 

「入って良いわよ」

 

「ちょっと、姉さん!?なんで姉さん答えるの!?」

 

「アハハ!さっきまで寝ていたから、心配したけど、その様子ならもう大丈夫だね、華那」

 

 と、私と姉さんのやり取りを見ながら入ってきた沙綾は、笑いながらそう言って近づいてき、自分のおでこを私のおでこに当てる。

 

「うん。熱少しあるぐらいだけど、顔色見るともう大丈夫そうだね」

 

「ええ。今さっき測ったら37.0℃だったわ。でも、明日も大事を取って休ませるつもりよ」

 

「その方がいいですね」

 

「えぇ!?だいじょぶだ「「じゃないわ(でしょ!)」」あふん」

 

 と、姉さんと沙綾の息の合った言葉に私は変な声を出すしかなかった。うう。明日は学校行くつもりだったのに……。それは一旦置いといて、沙綾にこんな時間に私の家にいてだいじょぶかと問うと

 

「大丈夫だよ。後でお父さんが迎えに来てくれる予定だから」

 

「そうなんだ。用意周到だね沙綾……」

 

 と、満面の笑みで答える沙綾に私はそう返すしかなかった。沙綾みたいな可愛い女の子が、夜遅くに一人で歩いていて何かあったら問題だし、私のせいで沙綾を危険な目に合わせることになっちゃうし……と、考えたけれど、沙綾のお父さんが迎えに来るなら問題ないね。……ないのかな?

 

「華那。後でいいからスマホ見ておきなさい。さっきから通知が凄い事になっていたわよ」

 

「あー……友希那先輩。やっぱりですか?」

 

「ほへ?」

 

 と、少し呆れた表情の姉さんと、予想通りだと言わんばかりに苦笑いを浮かべている沙綾。なんでスマホの通知が凄い事になっているんだろうかと、私は疑問に思いながら枕元に置いておいたスマホを見て驚いた。

 

「え?つ、つつ通知が二百六十二件!?」

 

 メッセージアプリの件数がインストールして以来、見た事もない件数に達していて、私は素っ頓狂な声を上げて驚くしかできなかった。あ、また増えた!?しかも十件も!?慌てて操作をしてメッセージを確認する。

 えっと、まず多いのがクラスのグループで、次が……蘭ちゃん!?一体全体、何送って……って、また増えた!?とりあえず、速攻で『今、熱測ったら平熱まで下がったから無事だよ!』と蘭ちゃんに送った。するとすぐさま

 

『ん。分かった』

 

 とだけ返ってきた。うーん蘭ちゃんらしいっちゃらしいけど、女の子としてはその返答はどうなんだろう。と、とりあえず、次はクラスのグループに返さなきゃ。

 

「華那、メッセージを返すのもいいけれど、夕飯の時間よ」

 

 と、呆れた表情を浮かべている姉さん。いや、だって、今こうしている間も通知が増えているんですけど!?というか、沙綾以外のポピパメンバーからもきているし、紗夜さんからもきているし……あ、今度は千聖さんから来た!?え?お説教が必要かしら?って、ナンデ!?ナンデ説教!?

 

「あ、アハハ……華那。とりあえず、平熱に下がったから大丈夫ですって送っておいたらどうかな?」

 

「そうする……」

 

 苦笑いを浮かべる沙綾の言葉に頷いた後、ガックシと項垂れる私。絶対、千聖さんに今度会ったら説教コースだよ……。しかも正座させられるんでしょ?逃げ場?そんなのあるわけがないよ……。そんなことを思いつつ話していたら、リサ姉さんがトレーにお椀を乗せて部屋にやってきた。

やってきたはいいけど、夕食用に作った卵おかゆだよと私に食べさせようとしてきた。いや、自分で食べられるから――と言おうと思ったら、姉さんと沙綾がリサ姉さんに同調するように、皆で食べさせようとしてきたので

 

「皆と一緒に食べたいなぁ……」

 

 と、呟いたら、今ここで食べると私が皆が食べている時に独りになるという事実に気付いてくれたようで、速攻で私はリビングに連行されていきまして、そこでよく漫画とか小説である、「あーん」って食べさせてもらうシーンをリアルでやる事になってしまいました。

 

「ほら華那、あーん?」

 

「あ、あ、あーん?」

 

 姉さん、なんでそんな無表情で食べさせてくるんですか。もう少し、緊張とか、恥ずかしそうな表情してもいいと思うのは私だけ?って、沙綾は沙綾で、ノリノリで食べさせようとしないで!

 

「でもさー、華那がここまで体調崩すのって小学校以来?」

 

 と、塩鮭(リサ姉さんが焼いたそうです)を食べながら聞いてくるリサ姉さん。麩とワカメの味噌汁(こちらは沙綾とリサ姉さんの合作との事)を飲んだ後に姉さんが

 

「そう……ね。去年も体調崩したけど、ここまで酷くはなかったわね」

 

 と、去年の体調不良を引き合いに出す我が姉様。それを聞いた沙綾が怒った表情を浮かべて私を見る。「私聞いてないんだけど?」って言いたげなのはすぐ分かった。いや、去年の夏は、暑さが原因だからね?今回は疲れ?って先生言っていたらしいし、今後気を付けるから。ね、ね?だから、そんな怒らないで沙綾!

 

「今度から華那のスケジュール管理したほうがよさそうね」

 

「そうですね。華那すぐ無理するから。こっちが心配になるよ」

 

「そうそう。バイトでもいつも一生懸命働いてるって聞いたぞー?」

 

 私が入る隙間もなく三人して会話を進めていっているけど、沙綾。沙綾に言われたくないよ!?沙綾だってすぐ無理しているよね!?と心の中でツッコミを入れつつ、今日病院からもらった薬を飲む私。苦い……。

 食事の後、お風呂に入りたかった私だったのだけれど、沙綾・姉さん・リサ姉さんの三人を論破する事はできなかったよ……。お風呂には入れなかったけど、体を拭くぐらいなら――という許可は得た私は、三人が襲ってくる(言い間違えに非ず)前に、自分で体を拭いたのだった。

 

 

 

 

「……暇だなぁ」

 

 次の日。結局、姉さんとリサ姉さん。そしてわざわざ電話までして、念を押してきた沙綾によって、私は今日一日ベッドの上でゴロゴロしている事となってしまった。いやだってさ、もう平熱なんだよ?なのに、

 

「また悪化するかもしれないわ。だから大人しくしておきなさい」

 

 と姉さん。

 

「華那ー?大人しくしてないと紗夜に言いつけるよー?」

 

 とはリサ姉さん。というか紗夜さんに言わないで!間違いなく怒られるパターンだもん!

 

『華那?無理したら本気で怒るからね?』

 

 と、すっごく低い声で言い放つ沙綾。背筋が凍るぐらいの低さで、本当に沙綾だよね?と確認したくなるぐらいだった。そういう事があったので、大人しくしているのだけれど……時間を見れば、まだ十時過ぎ。授業と授業の間にある短い休憩時間に、姉さんやリサ姉さん。クラスの皆やアフグロにポピパの皆などなど、多数の人から通知が送られてきて返信するだけでも大変だった。

 ま、まあ。昨日よりはマシかな?まさか千聖さんと紗夜さんから文章上で説教受けるだなんて思わなかったし、燐子さんは超速&長文顔文字付き文章で心配してくれていたし、クラスの皆は個性全開の中、「早く復帰して癒してー」とか書いてあったし……。

 

 って、私は癒し動物か何かか!?とツッコミを入れたら山ちゃんとめぐちーが「え?違うの?」とか書くもんだから、グループ内が笑っているスタンプでごった返して、えらい事になっていた。

 

 そんな事を思い出しながら、暇つぶしに溜まりに溜まっていた小説を読み進める。去年は受験だったし、今年入ってからはバンドメンバー探しで奔走していたからね。なかなか落ち着いて本を読むという事も出来なかったから、ちょうどいい機会だと自分に言い聞かせる。でも、圧倒的暇な現実は変わらない。

 

 小説もこんな状態だと、集中して読む事ができなくて、五十ページ読んだら休んでスマホ構って、また読んで休んでの繰り返しを三回ほど行う。うーん。ここまで集中力無かったかなぁ……と自分の集中力の無さに落ち込みながら時計を見る。あ、まだ十二時になってない。嘘でしょ!?

 

「ひーまー」

 

 読んでいた小説に栞を挟んで、ベッドの上で両足をバタバタさせる私。それで暇が解消するかと言えばそうじゃないのは理解しているし、体調崩した私が悪いから仕方ない事なのだけど……暇っ!!

 そんな時、スマホに何か届いた事を知らせる音が鳴る。なんだろうと思って見たら、クラスのグループ内に通知が一件。なんだろうと思って開いたら

 

「……もう。みんなして休み時間に何やっているの……たかが風邪だよ!」

 

 と、私は言いつつも、自分の頬が緩むのが分かった。だってそこにはクラスの皆が映った写真が一枚写っていて、「華那ちゃん早く学校に来てね!」って書いた大きな紙(横断幕的なやつ)を持った集合写真になっていたんだもん。

 私はデフォルメされた猫が爪とぎをしていて、その横に「準備中」って書いてあるスタンプを選択して送る。その直後、皆が可愛いスタンプ送付合戦になったので、通知がすさまじい事になってけど、私のせいじゃない!って現実逃避をしながらリビングへ向かう。ちょっと、喉が渇いたので水分を取りに。無理はしてないからだいじょぶだよね!?

 

 冷蔵庫の中にあったスポーツドリンクを取り出して飲む。その時も通知が鳴りやまない状況だったけれど、そろそろ授業再開だと思うから後で見ればいいかと思いながら、ちょっと早めの昼食を食べることにした。リサ姉さんが「消化にいいものにしておくねー☆彡」って言っていたけどなんだろうと思いつつステンレスの鍋の蓋を開ける。これは……具は入っているけど麺のないうどん?ん?蓋の裏面に紙が貼ってある?

 

『うどんは冷蔵庫の中に入ってるから、温める時にいれるように!byリサ』

 

 なるほど。麺が伸びるのと、麺が汁を吸い込んで、汁が無くなるのを防止するための処置だね。でも、蓋の裏に紙貼っとく意味あった!?と疑問に思いつつ、その紙を剥がして麺を具材の中に投入して火を入れて、しっかりと温まったのを確認して器に盛りつけてリビングで独り食べる。

 

 うーん。やっぱりこう、一人、家でポツンと食べるのは寂しいものがあるなぁ。そう思いながらテレビをつければ、国会中継がやっていたので、内容も確認しないまま速攻でテレビの電源を落として、静かにうどんを食べる。

 

 食べ終えてからスマホを確認したら、スタンプ合戦から何故か大喜利合戦に移行していて、何があったんだと私は頭を抱えた。というか、授業はどうしたの皆!?というツッコミを入れようかと思ったら、蘭ちゃんから個別に通知が来ていてそれを見ると

 

『先生の身内に不幸が合ったらしくて、急遽自習時間になったんだけど……これどうすればいい?』

 

 ときていた。私は再び頭を抱えながら蘭ちゃんに「鬱陶しいようなら通知切っておけばいいと思うよ」と返事を送ると「ん。わかった」とだけ送ってくる蘭ちゃん。まあ、蘭ちゃんまで大喜利に参加していたら、それはそれでアフグロ緊急ミーティング事案だよね。

 

 食器と鍋を洗い終えた私は部屋に戻って、ギターを昨日はまったく構ってないから、練習しようと決めて、ギターをアンプにつないで軽く練習を始める。まずはコード進行と指の準備体操。

 一日置いたからって上手くなっている訳がなく、逆に感覚が鈍っているような気がしてしまう。よし、こうなったら徹底的に基礎練習からやろう!ってなって練習を開始する。指の動きから、弦を押さえる指の感触を確かめるようにしながら反復練習。

 一時間ぐらいやった後、私が尊敬するギタリストの「華」「GO FURTHER」「#1090」を練習する。久々に「GO FURTHER」弾いたけど、ある程度弾けているかな?そう思いつつ一度休憩しようと思い一度ボリュームをゼロにして、アンプからコードを抜く。ギターで遊びながら時間を見れば二時過ぎていた。あれ?そんなに練習してたっけ?と思いながらスマホを確認する。……あ、姉さんからメッセージきてた。

 

『きちんとお昼食べたかしら?』

 

 姉さん……保護者か何かかな!?あ、でも姉だから保護……者……なのかな?うん?違うような気がするんだけどなぁ……。それはともかく、きちんと食べたよ!と返信しておく。その後も、何人かから来ていたのを返信しているうちに眠気が襲ってきて、気付いた時には私は夢の世界へと旅立っていた。

 

 で、私が眠っていたことに気付いた時。そこには両腕を組んで見下ろしている姉さんが無言で立っていた。眠っていたせいで上手く働いていない頭でどうしたのと問うと

 

「華那……無理はしないようにって言ったのに、なんでギター抱いて眠っていたのかしら?」

 

「むにゅ……?ぎたー?」

 

 目を擦りながら首を傾げる私は、ベッドを見る。……あれれー?おかしいぞー?一気に目が覚めて冷や汗が背中を伝う。姉さんがどうして両腕組んで立っていたのかを理解した私。まずい。これは非常にまずい状況。これはどう言い訳しても逃げられる未来は私に残ってない――

 

「華那、説教を受ける覚悟はできているかしら?」

 

 と、すっごく冷めた表情なのに、「私怒っているわよ?」と案に伝わる姉さんの口調。いや、そこまで怒る理由は分かるけど、もしかしたら、もしかしたら寝ぼけてだいた可能性だってあるよね!?多分……。と考え、苦笑いを浮かべながら

 

「……ね、寝ぼけてギター持ったんじゃないかなぁ……アハハ「そんなわけあるわけないでしょう」……デスヨネー」

 

 と、バッサリと否定して、そのまま説教モードに入る姉さんに、私は項垂れるしかなかった。結局、そのまま一時間正座して、姉さんから説教を受ける事になり、今回の件がリサ姉さんや紗夜さん。そして、沙綾にまで連絡が行ったようで、リサ姉さんと沙綾は勢いよく部屋に突撃してくるし、紗夜さんは電話越しの説教行うし……。いや、確かに病人なのにギターの練習したのは私だけどさ、そこまでする必要ないよね!?と思いながら黙って説教を受け続ける私。

 

 だって、あの姉さん達、怖いんだもん……。なんでか千聖さんからもお説教の長文送られてくるし……。本当、体調治りかけの時は無理をしない。そう心の中で私は決めたのでした。

 

 尚、翌日。クラスに行ったら、皆の玩具になったのはまた別のお話し――

 

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