Sisterhood(version51)   作:弱い男

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注意事項
※今回はアフグロイベントストーリーの華那視点(オリジナル)


#39

「姉さん、ごめんね。夜も遅いのに」

 

「このぐらい大丈夫よ。華那が帰りに怪我でもしたら、大変だもの」

 

 と、夜道を姉さんと歩いている私。実は、学校に忘れ物をしてしまい、担任の上条先生に連絡をしたところ、学校の鍵を開けてくれるというので、学校へ向かっている訳なのです。でも、一人で行こうとしたら、姉さんに捕まり

 

『華那、こんな時間にどこ行くつもり?』

 

『あ、学校に忘れ物したから、上条先生に連絡したら、鍵開けてくれるって言うから、行ってくるね』

 

『私も行くわ』

 

『ふへ?』

 

 うちの(あね)様なんて言いました?一緒に行く?誰と?私と?

 

『なんで!?』

 

 私がそう言ったのは悪くないと思うんですよ。だって、私一人で行く予定だったし、姉さん猫の動画見てくつろいでいたじゃない!?と、心の中で思っていたら、姉さんは「暗くなっているのに、一人で行かせて何かあったらどうするの」と正論を言われてしまい、私は拒否する事は出来なかった。

 

 という訳で、私は姉さん同伴の元、学校へと来たわけなのですが……。あれ?生徒用玄関の鍵かかっている?上条先生、鍵開けてくれるって言っていたんだけどなぁ……。そう思っていると、校舎の中で何かが動くのが見えて、驚きのあまり姉さんにしがみついてしまった。

 

「華那!?」

 

「こ、校舎の中で何か動いた……!」

 

 私達以外いないはずだし、鍵はかかっていたのに誰かがいた。しかも()()も。姉さんの腕にしがみついて震える私。いや、だって。夏だし、怪談話しだし、学校には七不思議あるし!?

 

「華那落ち着きなさい。もしかしたら、先生達か、警備員の人かもしれないわ。上条先生に連絡してみましょう」

 

「う、うん」

 

 姉さんに頭を撫でられながら、私は持ってきていたスマホで上条先生に連絡を取る。何回かコール音がした後、上条先生が出てくれたのだけれど、生徒用玄関じゃなくて、裏の教職員用の入り口にいるとの事らしい。待っているから、ゆっくりでいいよと言われ、私と姉さんは教職員用入口へ移動する。

 教職員用の入り口前には、白のスポーツカーが止まっていて、上条先生がその車に寄り掛かりながら待っていてくれた。夜遅くにすみませんと言うと

 

「毎年、一人か二人はいるから気にしなくていいわよ。でも、しっかり者の湊さんが忘れ物するとは思ってはいなかったけどね」

 

「華那が……しっかり……者?」

 

「姉さん!そこで首傾げないで!!」

 

「ハハッ。仲良いな、湊姉妹は」

 

 という、やり取りをしてから、上条先生も何か問題あったら大変だからと一緒に来ることになった。大人がいれば確かに問題起きても、だいじょぶだという安心感は生まれた。上条先生がわざわざ用意してくれていた懐中電灯を私達は受け取って、教室へ向かいながら先ほど六人ぐらいの集団が校舎内を動いている姿を見たと伝えると

 

「……もしかしたら、悪戯か泥棒か……警戒はした方がいいわね」

 

「……でも、生徒用玄関は鍵が掛かっていましたよ?」

 

「警備員の人が鍵かける前に入ったのかもしれないわ。三人分の懐中電灯用意しといてよかったわ。まあ、幽霊なら三人いて、懐中電灯あれば近寄ってこないでしょ」

 

 先生の言葉に、姉さんの腕にしがみつく。私、心霊現象は苦手なんです。姉さんは平気そうな顔しているけれど、私は昔からその手の話しはダメ。先生が私の様子を見て

 

「あー……湊……姉もいるから、華那さんでいいわね。華那さんは苦手なのね。ごめんごめん」

 

 笑いながら謝ってくる先生。うう、恥ずかしい。こんな年になっても、幽霊が怖いだなんて子供っぽいから。実は私、小さい頃に病気して、入院した事が何回かあったのです。その際、夜中の病院内に響いた呻き声とか、病院内で起こりえない音とか聞いた事あって、それ以来、そういう心霊現象は苦手になってしまったのです。

 あ、入院した理由は……確かおたふく風邪が両頬にできたからだったはず。最初に右頬発症したのに、二日後に治っていないのに左頬にも発症して、結構熱出たんだよね。それで緊急入院する事になった訳ですよ。うっすらとしか覚えてないけど、確かそうだったはず。

 

「それで、華那さん。何を忘れたんだっけ?」

 

「え……あ、ノートです。クラスメイトが宿題のコツ教えてってお願いされたので、持ってきたのですけど……」

 

「持ち帰るのを忘れた……と」

 

「はい……」

 

 先生が、宿題のコツはいいけれど、全部見せちゃダメよと注意を受ける。先生もう手遅れです。もう見せちゃいました――と、心の中で思っていたら、姉さんが前を指さしながら

 

「先生、前に何か灯り見えません?」

 

「ん?……確かにうっすらと見えるわね……」

 

「ぴにゃ!?」

 

「華那!?驚かさないでちょうだ……無理な話しだったわね……」

 

 そんな会話を聞いてしまった私は、声を上げて姉さんの腕にしがみついて震える。姉さんが何か言っているようだけれど、怖い怖い怖い怖い!!もう帰りたい。ノート無くて課題終わらなくてもいいから、帰らせてぇ。

 

「華那、落ち着きなさい。大丈夫よ。私がいるわ」

 

「ね、姉さん……」

 

 見上げるようにして見た姉さんの表情は、柔らかい笑みを浮かべていて、とても綺麗だった。ちょっと怖さが無くなったけれど、やっぱり不安はある。と、思っていたら、姉さんが手を繋いでくれた。

 

「こうすれば怖くないでしょう?」

 

「うん……ごめんなさい、姉さん」

 

「気にしないで、華那」

 

 ギュっと私は姉さんの手を握る。あの時、私が忘れてなければ、姉さんに迷惑かけなかったのにと後悔の念に苛まれていると

 

「湊姉妹、そろそろ行くわよー。ずっと同じ所にいたら、霊に食べられるわよ~」

 

 先生の言葉に、背筋に寒気が走った。食べ……食べられる……。想像しただけで夏なのに体の震えが止まらなくなってしまった。姉さんが、私の背中に手を回して撫でてくれているけれど、本当に震えが止まらない。

 

「先生……お願いですから、華那を怖がらせないでください」

 

「ハハハ……なんかスマン……」

 

 と、私の様子を見て笑っていた先生だけれども、姉さんからの抗議の声に、素直に謝るのだった。うう……幽霊よりまだ泥棒の方がいいよぉ……。なんて心の中で呟きつつ、姉さんにしがみつきながら教室へと向かった。

 

「教室ついたわよ、華那」

 

「う、うん」

 

 今もまだ姉さんにしがみついたままの私。流石に姉さんも呆れているよね……。と思いつつも、どうしても手を離すのは怖くてできないのだけれど……。

 

「大丈夫よ華那。何があっても、この手は離したりしないわ」

 

「姉さん……」

 

 安心させようと声をかけてくる姉さんに感謝しながら自分の机へと向かってノートを取る。その際、どこからか悲鳴に似た声が聞こえたので、私は小さい悲鳴をあげて座り込んでしまった。

 

「ふぎゃ!?」

 

「華那!」

 

「おいおい……本当に誰かいるのか?」

 

 姉さんが座り込んだ私の背中に手を回して、大丈夫、大丈夫だからと声をかけてくれていたけれど、私はかなりパニックになっていた。だって、夜の学校でこんな声するだなんて誰が思う!?先生は先生で冷静に行動して、廊下の方で声が聞こえた方を確認していたのが見えたけれど、もう帰りたいぃ。

 

「……湊姉妹。申し訳ないけど、少し付き合ってもらっていい?車で家まで送るし、途中でコンビニ寄ってアイスでも何でも奢ってあげるから……ね?」

 

「……先生、華那の状態を見て言っていますか?」

 

 姉さんに手を貸してもらいながら立ち上がった私だったけれども、先生の発言を聞いて再び崩れ落ちそうになった。まさか……先生、声のした場所に向かうって言いませんよね?確か、声のした方向は音楽室があったと思うのですけど……。音楽室って七不思議の一つがある場所だって、山ちゃん(本名:山梨(やまなし)紗耶香(さやか)ちゃん)から聞いた覚えある。

 

「湊姉の言いたい事も分かる。けどな……一応、私もここの教師として、見過ごせない事態かもしれない。それにお前達だけで帰らせようにも、もし相手が泥棒で、鉢合わせしたら……後は分かるな?」

 

「……分かりました。華那。そういう訳だから、絶対にこの手を離さないで頂戴」

 

「う、うん」

 

 先生の言い分に渋々と納得した姉さん。私も先生の言い分は分かる。分散した時のリスクを考えれば、一緒に行動するのがいいと思う。頭じゃ分かっているけれど、怖いものは怖い。私は姉さんの左手を握り、先生を先頭にして夜の校舎を進む。

 階段の数が変わるとかの話しがあった事を思い出してしまった私。それを姉さん達に伝えると、段数を数えなければ怖くないと言われ、先生や私達が聴く音楽の話しをしながら階段を上る。あ、先生って、結構音楽好きなんですね?最近の音楽も知っていらっしゃるし、ジャンル幅広い。

 

「ええ。好きよ。まあ、演奏とかは出来ないけれどね。聴いて楽しむぐらいよ。って、二人ともボーカルとギターやっているって話しだったわね。凄いわねぇ」

 

「そんな事無いです。私達なんてまだまだですから」

 

 なんだか、姉さんが先生と話している時に使う敬語ってのが、あまり聞き慣れていないせいか、新鮮な感じがしてしまった。近場の年上だとまりなさんがいるのだけれど、まりなさんには砕けた感じの敬語で話している印象(イメージ)だからかな?

 話しながら校舎内を進んでいくけれども、特にこれといった問題は発生せず。正直に言います。このまま、何も起きずに終わってください。それと、一秒でも早く帰してください。本当怖くて怖くて……。姉さんが手を握ってくれているから、まだ正気を保てているけれど、もし一人だったら気絶している自信しかない。

 

 階段を上がったり下ったりしつつ、誰もいないことを確認していって、私達が最後の確認地点としてやってきたのは体育館だった。灯りが無いので真っ暗ではあるけれども、窓から入り込む月明かりのお陰で、うっすらと体育館の中が見えた。

 

「さて……体育館にまで来たけれど、なんだか風が入り込んでいる感じがするわね?」

 

「……どこか扉でも開いているのかしら?」

 

「……?先生、姉さん。あそこの扉開いていない?何人かが走っていく姿が、外で見えたんだけど……」

 

 と、私は持っていた懐中電灯でその扉を照らしながら姉さん達に伝えた。ちょっと遠くからだったから、見間違えかもしれないけれど、人だったのは間違いないと思いたい。

 そう言ったら、先生が走って扉まで行ってしまい、私達も後を追うように走る。先生が扉の外に出て、周囲を確認していたので、私達も確認すると校門の方へ走っていく()()姿()()()()の影が見えた。

 

「……どうやら、肝試しでもしてて怖くなって逃げたみたいね」

 

 先生が呆れた口調で呟いて、盛大に溜息を吐いていた。何人か、見覚えのあるようなシルエットに見えたけれど、気のせいだという事にしよう。うん。あ、先生、さっきの悲鳴みたいなのはもしかしてあの()()

 

「だと思うわ……。しかし、高校生にもなって()()で肝試しだなんて、もう少し大人になってもらわないと困るわね……。はあ。今度の会議で議題に上げるしかないか……」

 

「大変ね……先生も」

 

 右手を額に当てて、盛大に溜息を吐く先生に、同情の声をかける姉さんだったのだけれども

 

「そう思うなら、湊姉も、もう少し態度よく過ごしてくれないか?他の教員からクレーム結構来ているんだぞ?」

 

「……善処するわ」

 

 と、言われて明後日の方向を見るしかできなかったのでした。先生は笑いながら「善処でもなんでもいいわ」と言いながら、体育館の扉を閉めて鍵をかけた。その後、私達は教職員用の玄関に戻り、玄関の鍵を閉めた。で、先生が約束通り、私達を車で自宅まで送って行ってくれる事になり、途中でコンビニによって飲料とお菓子を先生の奢りで買ってもらった。

 

「先生、本当にありがとうございました」

 

「ありがとうございました」

 

 と、車から降りて、改めて先生にお礼を言う。先生がいなかったら、本当に大変な事になっていたかもしれない。そういう意味では、先生に連絡してよかったと心の底からそう思った。

 

「気にしなくていいわ。逆に、私の方こそゴメンね。怖い思いしてるのに巡回に付き合ってもらっちゃったから」

 

「いえいえ!そんなの気にしてないです!ほんと、だいじょぶなんで!」

 

 申し訳なさそうに言ってくる先生に慌てて、そんな事無いと言ったのだけれど、姉さんが凄く冷たい目で私を見ていたのには気付いた。けれど、気付いてないフリをしつつ先生に何度もお礼を言って、先生を見送ってから家の中に入る。

 帰ってきて一息ついてから、お風呂に入ったりして、寝る時間になったのだけれど……。

 

「寝れない……」

 

 そう。眠れない。ベッドでゴロゴロしながら眠くなるのを待ったのだけれど、怖くて眠れない。三十分ほどゴロゴロしてみたけれど、ダメだったので、一度落ち着こうと水を飲みにリビングへ降りた。

 

「はあ……」

 

 水を飲んで、盛大に溜息を吐く。ここ最近はそういう事(心霊現象)については考えないようにしていたのだけれど、今日は本当怖かった。人だと分かったけど怖いものは怖い。静かに階段を上がって自分の部屋に入ろうとしたら、姉さんの部屋の扉が合いた。

 

「あら、華那。起きていたのね?」

 

 と、眠そうに目を擦りながら姉さんが声をかけてきたので、ちょっと水欲しくなったの。だいじょぶ、今から寝るよと伝えると。

 

「……華那、今日は一緒に寝ましょう」

 

「え?……いいの?」

 

「いいもなにも、怖いのでしょ?なら一緒に寝れば怖くないわ」

 

 姉さんには全部、見透かされていました。もう高校生になったのに、姉さんに甘えてばかりじゃダメだなと思いつつも、姉さんの言葉に甘える私なのでした。姉さんに抱かれて目を閉じたら、安心したのか、すぐに眠りにつく事が出来たのだった。

 

 

 翌日、つぐみちゃんの家にやってきた私。ちょうどアフグロのメンバー全員揃っていて、会話に参加する事になり、昨日の話しをしたのだけれど――

 

「でね、皆に似た五人と、知らない子が一人ね、体育館の外で走っていくのが見えたんだよね」

 

「「「「「……え?」」」」」

 

 私以外の皆が固まった。え?私何か言っちゃいけない事言った?首を傾げようとしたら、蘭ちゃんが猛烈な勢いで私の両肩に手を置いて

 

「華那っ!それ以上はもう話さなくていいから!」

 

「え……でも」

 

「でも、でもなんでもいいから!」

 

「アッ……ハイ」

 

 と、蘭ちゃんの勢いに負ける私なのでした。いったい何があったんだろう?首を傾げる私に対し、アフグロの皆はどこかぎこちない様子だった。結局、真相は闇の中に葬り去られる事になったのでした。本当に何があったんだろう?

 


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