Sisterhood(version51)   作:弱い男

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今回から、Sisterhood最終章一歩手前の話しに入ります。
つまり簡単に言えば、オリジナルストーリー回を

「全速前進DA!」

って感じで、バンドリ本編に掠らなくなります。
ご了承ください。


では、本編ドゾー


#44

「ゆっきなちゃーん!!」

 

 昼休み。リサと一緒に学食へ向かっている最中だった私は、突然廊下で声をかけられた。後ろを見れば、だいぶ前に演劇部と吹奏楽部の合同練習を見に行った時に、アドバイスを求めてきた吹奏楽部の部長であるうえ……うえ……なんだったかしら。リサ覚えているかしら?

 

「友希那、植松ミカだよ。同じクラスなんだから覚えてあげなよー……」

 

 私の問いに苦笑いを浮かべながら答えてくれるリサ。確かにそうね。でも、接点がほとんどないのだから仕方ないじゃない。それで植松さん。何か用かしら?そう問いかけた私に、植松さんはとんでもない発言をしたのだった――

 

()()()()()()()()()()(貸して)()()()()()!!」

 

 私がその場で怒らなかったのは、褒められるべきだと思うの。でも、後でリサが教えてくれたのだけれど、目で人が殺せそうな、そんな鋭い目つきをしていた――と。失礼ね。私は人を殺した事なんてないわよ。……まだ。

 

 

 

 

 

「で……先ほどの発言はどういう事かしら?」

 

 あんな発言を廊下でしたものだから、かなりの大騒ぎになってしまった。私達は場所を移して、学食にやってきていた。テーブル越しに植松さんを睨む私。その横でリサが苦笑いを浮かべながら、私を宥めているけれども、流石に姉として先ほどの発言は聞き逃せるようなものではなかったわ。

 植松さんは小さくなった状態で右手をおずおずと小さく上げて「発言よろしいでしょうか?」と聞いてきた。発言していいから、さっさと先ほどの真意を言いなさい。

 

「あのですね……毎年、吹奏楽部はオーケストラ編成で文化祭前に、単独で市のホール借り切って演奏会をやっているんですよ」

 

「そうなの?」

 

 去年の事なんて全く覚えていないわ。それに、吹奏楽部に興味も無かったのも一因ね。リサは知っていたの?

 

「え?あー……見には行っていないけど、ポスターなら見たよ。チケットも用意して、かなり本格的な演奏会みたいだよ?」

 

「そうなの。本格的な演奏会なんだけど……毎年、ただ演奏するんじゃなくて色々と工夫してやっているの」

 

 ここ数年は演劇部とコラボしてやっていたんだと、植松さんは説明してくれた。なら、今年も演劇部とコラボすればいいじゃない。そう聞くと

 

「それが……今年、夏休みに演劇部とコラボしちゃったから、流石に連続ってなると……」

 

「あー……ロミオとジュリエットだっけ?確か、好評だったって薫が言っていたっけ」

 

 それを聞いたリサが右手人差し指を顎に当てつつ、瀬田さんの事を思い出しているようだ。そうだったのね。今は心に余裕があるから、次があるのなら見に行ってもいいわね。でも、そういう事なら、また演劇部とコラボすれば――そう言いかけて気付いた。短い間隔で同じような事をしてしまえば――

 

「マンネリ化してしまうって訳ね……」

 

「そうなの」

 

私の言葉に同意するように頷く植松さん。それは分かったわ。それで、どうして華那を「ちょうだい」という発言に繋がるのかしら?

 

「あの……その発言は本当ゴメンナサイ」

 

「あら?私は怒ってはいないわよ?どうして、そのような発言になったのか知りたいだけよ」

 

「あー……(これは、完全に怒ってるよね。友希那?)」

 

 なぜか隣に座っているリサが、呆れたような声を上げていたけれど、後で追及する事にするわ。

 

「あのですね……夏休みの時に、ライブハウスでKMGのギターとして演奏してたじゃない?」

 

 本当に申し訳なさそうで、言いにくそうに話し始める植松さん。そのライブの事は、私はしっかりと覚えている。あの時、Roseliaは私の独りよがりのせいでバラバラになってしまって、あのままだったら本当に解散していてもおかしくはなかった。

 でも、そうならなかったのは華那のお陰である。華那が身を削ってまで歌い上げ、その後を引き継いだポピパの演奏。それらがあったからこそ、私は大切な事に気付けた。だからと言って、二度と華那に歌わせたくはないわ。

 

「あ、大丈夫、大丈夫。華那ちゃんには絶対、歌わせないから。それは約束する」

 

「そう……なら、なにをさせるつもり?」

 

 歌わせないと言うのなら、華那に何をさせるつもりなのだろうか。ギター以外の楽器となると……華那が弾いていたり、吹いていたりする姿が全く想像できないのだけれど。

 

「ふっふっふっ……甘いよ。甘すぎるよ湊さん!それこそ、アイスクリームに蜂蜜かけて、さらに練乳かけるぐらい甘いよ!」

 

「聞いてるだけで胃もたれしそうだねぇ……」

 

「そうねリサ……」

 

 そんなのアイスクリームじゃないわ。それに食べ物で遊ばない方がいいわよ。

 

「例えだよ!?」

 

 テーブルを叩く植松さん。食べ終わっていたから料理が落ちるとか、コップが倒れて水が零れるという事はなかったのだけれど、反応が大袈裟ね。本当に演奏中に冷静に指揮できているのかしら?

 

「うわぁぁん!リサちゃん。友希那ちゃんがいじめるぅ!!」

 

「あーはいはい。落ち着こうねーミカ」

 

 と、リサに抱き着いて泣くふりをする植松さん。私は盛大に溜息を吐いて、脱線してしまった話を聞く事は出来ないだろうと諦めようとした。流石に植松さんもそこは分かっていたのか、しばらくしてからリサから離れて、対面に座り直し、咳払いをしてから

 

「それで……真面目な話しなんだけど――」

 

 真剣な表情の植松さんが話した内容は、私が勝手に「いいわ」と言えるような代物ではなかった。本人の意思を確認しなければいけないものだった。どうして私に聞いたの?本人に直接言えばいいじゃない。そう問うと

 

「それは分かっていたんだけど……華那ちゃんの使用は、姉である友希那ちゃんの許可得ないといけないって話しを聞いたから……」

 

「使用許可って……誰よ。そんなありもしない噂流した人間は……」

 

 いや、華那は確かに大切な妹よ?でも、私がいちいち使用許可出すとかありえないと思わないのかしら?ねえ、リサ。……?リサ?

 

「え、あ、な、なに友希那?」

 

リサ……話し聞いてた?私がいちいち華那の使用許可出さなきゃいけないという噂についてよ。どうかしたの、リサ?ちょっと汗かいているけれど……。

 

「な、ナンデモナイヨー。ちょっと熱くなってきたからじゃないかな?もう九月なのに暑いよねぇ~」

 

「そうね……体調崩さないように気をつけないといけないわね」

 

「そ、そうだねぇ~(あ、あぶなっ!アタシが冗談で言った事が広まっただなんて、友希那に言えないよぉ)」

 

 少しぎこちない様子のリサだけれど、本当に大丈夫なのかしら。それはともかく。そういう話しなら本人に言ってもらえるかしら。その方が、本人の意思を確認できるはずよ。

 

「そうする……で、それと合わせて実は()()()()()()()にお願いがあるの!」

 

「私……」

 

「達……に?」

 

 両手を顔の前で合わせて頼み込んでくる植松さんに対し、私達は顔を見合わせるしかできなかった――

 

 

 

 

「――という訳で、華那ちゃんお願い!!」

 

「何がどういう訳なんでしょうか!?」

 

 放課後。吹奏楽部の部長さんでいらっしゃる植田先輩「植松だよ!?」失礼。噛みました。

 

「嘘だぁ」

 

「かみましゅた」

 

「マジだったの!?」

 

 私の発言に驚く植松先輩。いやあ、わざと噛むって難しいなとちょっと遠くを見ながら思う私。だって、放課後に一年生の教室に突然やってきて、説明もなくお願いだけされたら、誰だって遠くを見て溜息ぐらい吐くと思うんですよ。どう思う、蘭ちゃん?

 

「あたしに話し振らないで」

 

「冷たい……蘭ちゃんが冷たい……」

 

 項垂れる私。すかさずクラスメイトから「蘭ちゃん(美竹さん)が華那ちゃんいじめてるー!!」という声が上がった。勿論本気ではなく、冗談というのは分かっているのだけれど、蘭ちゃんは顔を赤くして否定していた。……蘭ちゃん、皆に遊ばれているだけだからね?まあ、蘭ちゃんは放置しておいて……植松先輩。本当に用件は何なのでしょうか?

 

「それなんだけど……ちょっと、場所変えない?あまり多くの子達の前で話す内容じゃないから」

 

「は、はあ……?」

 

 え?他の人に話せない内容って何!?も、もしかして、私が知らないだけで、実は植松先輩がこの学校の番長的な人で、さっきの私の名前間違えに気を悪くした?え?これもしかしてよく漫画とかである「校舎裏連行」ってやつですか!?

 やだ、やだぁ……私まだやり残した事ばっかりなのにぃ。もう泣きそうな感じなんですけど、平静を装う私。で、やってきたのは校舎裏ではなく音楽室だった。あ、ここが私の最後の場所になるんだ……なんて思っていたら

 

「華那ちゃんのギターの腕前を見込んで、吹奏楽部とコラボ演奏してほしいの!」

 

「……ふへ?」

 

 と、勢いよく目の前で頭を下げた植松先輩。え、え?一体全体何が起きているのか理解できない私は、困惑するしかなった。そもそも、吹奏楽部とコラボ?どういう事ですか?

 

「あっ、そこから説明しなきゃだよね。ごめんごめん。実は――」

 

 混乱している頭を落ち着かせるように努めながら、植松先輩の話しを頭の中でまとめる。例年、文化祭前に吹奏楽部でコンサートを行っている事。そのコンサートが、去年まで三年連続ぐらいで演劇部とコラボしていた事。でも、今年は夏休みにそのコラボをやってしまったので、流石に連続となると飽きられてしまうという懸念がある事。

 そこで、白羽の矢が立ったのが私だという事らしい。いや、なんでそこで私なんですか?ギターだってそこまで上手じゃないですよ。もっと上手な人紹介しましょうか?

 

「ううん。華那ちゃんじゃなきゃ出来ないの。これ覚えてる?」

 

 そう言って、植松先輩が私に見せたのは空のペットボトルだった。しかも、パッケージが外された状態の物。あの……これってゴミですよね?

 

「そうそう。これだけなら、ただのゴミだよ。でも……はい。華那ちゃん、ここ見てみて」

 

「?……あっ!え?嘘!?」

 

「ふっふーん。そういう事~。だから華那ちゃんにお願いしに来たの」

 

 得意げに話す植松先輩の顔とペットボトルを交互に見ていた私。植松先輩が手で見えないようにしていたペットボトルの横には「湊華那」とマジックペンで書かれていた。これは、この間のKMGのライブで飲んだ水を入れたペットボトルで間違いない。って、事は……あの時、持って帰るって言った観客は――

 

「私だよ♪」

 

「やっぱりぃぃぃぃ!!??」

 

 私は驚きの声を上げる事しかできなかった。あの時のライブ見に来ていたんですか!?というか、なんでペットボトルまだ持っているんですか!?もう、ツッコみたい所ばっかりですよ!?

 

「あははー。華那ちゃん可愛いのに面白い子だねぇ!」

 

「みょん!?」

 

 突然抱きしめられたので、変な声を出すのはいつもの事。って、なんで抱きしめられた挙句頭撫でられなきゃいけないんですか!?私、マスコットとかお人形さんじゃなくて人間ですよ!?

 

「あーもう。そうやってじたばたしてる仕草も全部可愛ぃ。お持ち帰りしたい!」

 

「アホな事やってないでいいから、話し進めなさい。この馬鹿部長」

 

「おごっ!?」

 

 と、突然現れて、植松先輩の頭をぶん殴ったのは年上であろう、目つきが鋭く、赤に若干の茶色が混ざった色の髪をショートヘアにした女子でした。え……えと……どちら様ですか?

 

「ああ……ごめん。わたし、明石ゆかり。そこで悶絶してる馬鹿の幼馴染で、吹奏楽部の副部長よ。よろしく……えっと?」

 

「あ、私、湊友希那の妹の華那です。こちらこそよろしくお願いします」

 

 先輩という事が分かったので、礼儀正しく頭を下げる。明石先輩がなぜか「ほう」と言ったのだけれどどうしたのだろう。そう思いつつ頭を上げた時に分かった。明石先輩の表情は、若干の驚きの色を浮かべていたから。

 

()()()()()だっていうから、どんな奴かと思えば……かなり礼儀正しいじゃん」

 

「う、うちの姉が失礼な事をしたようで申し訳ございません!!」

 

 勢いよく頭を下げて謝罪を伝える。というか、姉さんなにやったの!?

 

『知らないわよ。そもそも話した事も(ろく)にないわ』

 

 そんな幻聴が聞こえてきたのだけれど、帰ったら千聖さん直伝お説教のお時間だからね。覚悟しておいてよね。この間、千聖さんから習ったんだから!

 

「ククッ……本当、湊とは性格全く違うんだな。気に入ったよ」

 

「え?あの先輩?」

 

 優しく私の頭を撫でる明石先輩。なんで撫でられているか分からないのですけど……。そんな困惑をしていると、殴られた痛みから復活した植松先輩が

 

「あー、ゆかりん!ずっるい!!」

 

「五月蠅い」

 

「ゆかりんの私の扱い酷っ!?しかもうるさいを漢字で言ったよね!?」

 

「話し進まないでしょ」

 

「ぎゃん!?」

 

 目の前で行われるコントにも似たやりとりに、私は苦笑いを浮かべるしかなかった。うん。すごい鈍い音したけれどだいじょぶかな?え、明石先輩?殺しても死なないからだいじょぶ?そ、そんなわけないですよね!?

 そんな状況だったので私が植松先輩を介抱して、回復した植松先輩と明石先輩の二人から、改めて今回の件について詳しい話を聞く事になった。

 

「で、どこまで話したんだっけ?」

 

「毎年、吹奏楽部が文化祭前に単独で演奏会やっているって所。十分も経っていないのに忘れるとか、知能低下が進んでるんじゃない?」

 

「あんたが殴ったからでしょ!!……コホン。で、今年は華那ちゃんのギターと吹奏楽部の演奏をしようと思ったんだ。華那ちゃんにお願いしてる理由は勿論あるよ。あのライブで演奏した『#1090』……日本武道館で行われた『Tour2016"The Voyage"』バージョンだったでしょ?」

 

「え……」

 

 確かに、あの時のライブで演奏した「#1090~Million Dreams~」は植松先輩の言う通り、実際のライブアレンジを意識したのは事実だ。でも、それを気付くだなんて……。正直、私の世代ではそんなに好きだという人がいないから寂しかったけど……もしかして先輩達は――

 

「私たち二人とも()()()()の大ファンなんだよね」

 

「うん。クールだよね」

 

 私の視線で気付いたのか、二人とも優しい笑みを浮かべて同意してくれた。そうなんだ……でも、私なんかギタリストとしてはまだまだですけど、本当にだいじょぶですか?

 

「そんな事ないよ!それに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思ったんだ」

 

「やりたい事?」

 

 植松先輩の言葉に首を傾げてしまう。私じゃなきゃ理解できないってどういう意味なのだろうか。ギターとオーケストラ……。うーん、思い浮かばない。

 

「クスッ……。二〇〇四年、東京都のとあるオーケストラ団と私達が好きなアーティストが何をしたでしょうか?」

 

「ミカ。それヒントどころか完全に答え」

 

「うっさいよ!」

 

 満面の笑みで私にヒント――と、いうか明石先輩の言う通り答えですよね。オーケストラと共演したあのライブですよね?……え。あ、ま、まさか……それを!?

 

「ふっふーん。その通り!私達、吹奏楽部のオーケストラ編成と華那ちゃんのギターサウンドで、それをやろうって決めたの!!」

 

 植松先輩が両手を広げて、大袈裟に言ったのだけれど、私は呆然とするしかなかった。いつか、“あの人”のようなオーケストラと共演するようなライブできたらいいなと思っていたのに、それが今叶いそうになっている。でも……不安しかない。

 

「華那。不安はあると思う。でも……私も、華那の演奏を映像だけど、見て思ったの。『この子とならやりたい』って」

 

「……!」

 

 真剣な表情で、私をまっすぐ見つめながら明石先輩がそう言ってくださった。その言葉は嬉しかった。でも……怖い。私のギタースキルで、本当にできるのだろうか……。だから私は――

 

「返事……来週まで待っていただけますか」

 

「……分かったよ。急な話しだもんね。華那ちゃんの気持ち固まったら、私に連絡して。これ、私の電話番号」

 

 結局、結論を先延ばしにするしかできなかった。それなのに、植松先輩は、笑みを浮かべながら私に連絡先が書いてある用紙を渡してきた。私はそれを受け取りながら謝罪する。そしたら、植松先輩が私の頭を撫でながら

 

「いいんだよ。私達の方こそゴメンね。急にこんな話しして、華那ちゃん困惑させちゃったから」

 

「どっちかというか、ミカの言動のせいだと思う」

 

「ゆかりん!?」

 

 ボソリと呟くようにツッコミを入れる明石先輩。そのやり取りを見て、私は小さく笑ってしまったのだった。そんな私の様子を見た明石先輩が私の両肩に手を置いて、私と視線を合わせて

 

「華那。どんな結論選んでもいい。私達は怒らないから。だから、しっかり考えて。後悔の無いように」

 

「……はい。ありがとうございます」

 

 急かす訳じゃなく、私が後悔しないようにと気をつかってくださった。私は頷いて感謝の言葉を伝える事しかできなかった。今も、心の中ではやりたい気持ちと、断る気持ちが揺れ動いていたから。その後、明石先輩が植松先輩を引き摺るようにして帰ってしまったので、私一人音楽室に取り残されてしまった。

 

「どうしよう……」

 

 答え……本当に出るのかな。そんな不安すら覚えながら私は音楽室を後にした。自分が本当にやりたいのかどうかを考えながら――

 




二〇〇四年のソロライブ……いったい、どこの都響とコラボレーションしたライブなんだ……()
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