Sisterhood(version51)   作:弱い男

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#4

 昼休み。私は高校に入学してから仲良くなった、隣クラスの幼馴染のみんなで結成したというバンド、Afterglowのメンバーに誘われて屋上へと向かっていた。ただ、ある人物に対して私は知らん顔をしていた。というか、顔すら合わせないようにしていた。

 他のメンバーから話しかけられれば普通に会話しているけれど、その会話の中も、どこか緊張感が漂っている雰囲気。そんなに緊張する必要ないと思うんだけどなぁ……。

 

 さて、私が話しをしないという人物。それは、同じクラスの黒い髪の一部に赤いメッシュを入れた不良娘こと美竹蘭。Afterglowのボーカルギターをやっている。実家はちょっとした名家らしいけど、“迷家”の間違いじゃないかと最近思ってる。口には出さないけど。

 

「なあ、モカ?」

 

「なーに?トモちん」

 

と不機嫌ですオーラ全開の私の後ろで、巴ちゃんとモカちゃんがヒソヒソ声で話しているけど気にしない。というか、聞こえてるからね?二人とも?

 

「なんで華那の奴、あんなに不機嫌なんだ?蘭の奴はどこか落ち込んでるし」

 

「あー……それはあれだよー。羽沢珈琲店(括弧)カナちんの人格(括弧閉じ)殺人事件の影響ですな」

 

 と、推理ドラマの探偵役がやるように、腕を組んで右手人差し指を立てながらモカちゃんが話していた。ってか、括弧って読むものなんだ!?

 

「モカちゃん、勝手に(うち)で殺人事件起こさないで!?」

 

「ツグ、ツッコみそこなんだ!?括弧じゃないんだ!?」

 

 モカちゃんの言葉につぐちゃんが反応して、それにひまりちゃんがツッコむ。何この混沌(カオス)。この混沌どう収集させるの?誰か知恵の泉持ってる人いるー?あ、いないか……。ならニャル子さん呼んできて。え、休暇取ってベガスに行ってるの?(ツッコミ要員の)銀さんもついて行った?……なら仕方ないね。現実逃避しよう。そうしよう。

 

「冗談はともかく、なにがあったんだ、華那?」

 

 と、現実逃避しかけていた私に声をかけてくる巴ちゃん。あ、巴ちゃんは姉さんのバンドRoseliaでドラムやってるあこちゃんのお姉さんだよ。巴ちゃんは私に、姉に対して妹が何考えているか相談しにやってくる時があるので、Afterglowのメンバーの中でもかなり私と仲がいい子だ。そんな巴ちゃんに、私はわざとらしく両手で目を覆って

 

「私……もうお嫁にいけなくされたの」

 

「「はあ!!??」」

 

 私の発言に巴ちゃんとひまりちゃんが同時に声を上げる。あれは、公衆の場でやるような事じゃない。しかも姉さんも絡んでいるから尚更質が悪い。

 あ、姉さんともここ三日ほど口きいてないよ。家では目に見えて落ち込んでるけど、ここは心を鬼にして対応しないと。二度とあの悲劇を起こしてたまるものですか。ものですか……!

 

「悲劇って……おおげ「何か言った不良娘?」……ナンデモナイ」

 

 何か言いかけた不良娘に満面の笑みを向ける。そしたらどうしたのかな?冷や汗流して視線外されちゃった。あれれぇーおかしいなぁー。他のみんなも引き攣った笑み浮かべてるし。私何かしたかなぁー?と思いつつ首を傾げる。

 

「(ら、蘭。さっき嫁にいけないとか華那のやつ言ってたけど、お前何やったんだよ!?)」

 

「(誤解だよ!誤解!)」

 

「(五回!?おまっ、華那とナニやってんだよ!?)」

 

「なっ、ち、ちがうし!!と、巴、勘違いしすぎだし!!」

 

 と、屋上についてから二人だけで話し合ってる巴ちゃんと不良娘。あー……二人とも小さな声で言い争っていたけど、会話が私達に全部筒抜けだからね?しかもお約束的なボケを巴ちゃんがして、最後は不良娘が顔真っ赤にして怒鳴ってるしね……。さ、みんなあの二人置いてご飯食べよ?

 

「ねねね、華那ちゃん。実際、なにあったの?」

 

 と、おにぎり(中身鮭)を取り出した私に聞いてくるひまりちゃん。私は食べようとしていたおにぎりを右手に持ったまま左手を眉間にあてて、この間の日曜日にあった出来事を話し始めた。

 

 

 

 その日の午後、私と姉さんは羽沢珈琲店で待ち合わせをしていた。姉さんはRoseliaの練習が午前中だったので、終わったらここで一緒に軽食でもしよう――という話になったのが昨日の夜。で、姉さんと一緒にカフェするのが楽しみのあまり、ちょっと早めに来てしまった私は本を読んで待っていた。

 

 入口の扉が開く音がする度に視線を向けているのは仕方ないよね。だって姉さんと一緒にカフェなんてここ最近なかったから。その行為を何度も繰り返していると、姉さんがやってきた。私は立ち上がって右手を上げながら

 

「姉さんこっちこっち」

 

 と、周囲に迷惑にならない程度の声で姉さんを呼ぶ。姉さんは私に気付いてくれて一直線に席に向かって来てくれた。

 

「ごめんなさい、華那。待たせてしまったわね」

 

 と、座りながら謝る姉さん。そんなに待ってないから大丈夫だよ、姉さん。と笑みを浮かべて答える。

 

「そう……ならいいのだけれど」

 

 と、どこかホッとした様子の姉さん。少し姉さん疲れているのかな?と思い、私は姉さんに疲れてないか聞く。

 

「私は大丈夫よ。それより、注文しましょう。羽沢さんに迷惑かけないようにしないと……」

 

 と言ってメニューを手に取る姉さん。無理してるように見えるけど、大丈夫だって言うなら大丈夫なのかなと不安に思っていると、つぐちゃんが水の入ったコップを持ってきてくれて、姉さんの前に置きながら

 

「友希那先輩。華那ちゃん。三十分ぐらいソワソワして待っていたんですよ?」

 

「ちょっとつぐちゃん!言わないでよ!」

 

 まさかのつぐちゃんの暴露に私は慌てる。あれだけ念を押して言わないでって言ったのに!つぐちゃんは私を見て小さく舌を出して「ごめんね」って言ってきたので、私は何も言えなくなった。つぐちゃんにそんな事されたら誰だって許しちゃうよね!……多分。

 

「ふふっ。華那ったら、私の事かなり待っていたのね」

 

「うう……」

 

 と、小さく笑う姉さんに私は恥ずかしさのあまりメニューで顔を隠す。でも、何か注文しないといけない事を思い出し、顔を赤くしたまま私は姉さんに何飲むかを聞こうとした時、つぐちゃんが慌ててやってきた。どうしたの?

 

「あの、友希那先輩、華那ちゃん。本当に申し訳ないんですけど、相席になっても大丈夫ですか?」

 

 時間的に混んできたみたいで、もう席がないみたい。で、私と姉さんの席は運がいい事に四人座れるテーブル席。相席って事は二人来るって事なのだろうと思っていると

 

「私は別に気にしないわ。華那は?」

 

 と、平静に答える姉さんが聞いてきたので、私も大丈夫だよと答える。つぐちゃんが本当に申し訳なさそうに何度も謝ってくるけど、気にしなくていいよと姉さんと一緒に伝える。

 

「つぐみ。無理言ってゴメン」

 

「つぐ~ありがと~」

 

 つぐちゃんがカウンターへ行ったと思ったら慣れた声の二人が私と姉さんの隣に座る。あれ?蘭ちゃんにモカちゃん?

 

「あ……華那。それに湊さん。こんにちは」

 

「おー華那ちんだ。おハロー」

 

 と、座って気付いた様子の蘭ちゃんとモカちゃん。モカちゃんは右手を振って私に緩い挨拶をしてくる。私も二人に挨拶を返す。ってか、おハローって、おはようとハロー合体させちゃったよモカちゃん。というか、それ、どこかのゲームキャラが言っていたような……。

 

「美竹さん、青葉さん。こんにちは。珍しいわね、二人とこんなところで会うなんて」

 

「そうですね。意外ですね。アタシも湊さんがつぐみの家に来てるだなんて思いもしませんでした」

 

 なんか、不穏な空気が流れ始めてるような気がするのは私だけかな?そう思い、姉さんの隣に座ってるモカちゃんに視線を送る。けど、モカちゃんはお手上げするだけだった。

 その為、私はハラハラしながら二人の様子を見守る。というか、話しに入れないよ!怖くて。

 

「そういえば、美竹さんは華那と一緒のクラスだったわね。いつも華那が世話になってるみたいね。ありがとう」

 

「っ……べ、別に世話なんかしてないですよ。こっちこそ……迷惑かけてすみません」

 

 え、なんで私の話しになってるの!?しかも姉さんが蘭ちゃんに感謝してるし!?ってか、姉さんは私のお母さんじゃないよね!?そこまでしなくてもいいよ。は、恥ずかしい。

 蘭ちゃんも蘭ちゃんで、なんで顔赤くして迷惑かけてすみませんとか言ってるの!?蘭ちゃんが私に迷惑かけた事ないじゃん!

 

「ふふっ……クラスで華那は大丈夫かしら?姉としては、うまくクラスに馴染んでるか不安なのよ。聞かせてくれないかしら?」

 

 その言葉、そっくりそのまま姉さんに返したい。姉さんの態度は知らない人から見れば冷たいとか、変わってると思われても仕方ないから。妹としては姉さんの学校生活が不安です。

 

「そうですね……アタシから見たらクラスに馴染んでると思いますよ。クラスのマスコット的存在で、クラスのみんなに好かれてますし」

 

「ほへ?」

 

 私は蘭ちゃんの言葉に素っ頓狂な声上げてしまった。なにそれ?マスコット?私マスコットみたいな存在!?

 

「う~ん……モカちゃん的には想像が容易すぎて、欠伸が出てきた~」

 

「モカちゃん!?」

 

 私が軽いショックを受けているというのに、姉さんは平静を保っている。いや、そこは姉として否定してほしいんだけど!?

 

「そう。でも、華那の可愛らしさを一番知っているのは姉の私ね」

 

「はっ?華那の可愛いところなんてアタシでも知ってますよ」

 

 と、なぜか誇らし気の姉さんと喧嘩口調の蘭ちゃん。二人の視線が混じり合い、火花が飛ぶ――いや、そんな事で張り合おうとしないで!お願いだから!

 

「家に帰ってギターを弾いていたのに、眠気に負けてベッドでギター抱いたまま眠ってる姿とか本当に可愛らしいのよ?」

 

「なにそれ。見たい」

 

 と、なぜかどや顔の姉さんと、悔しそうな蘭ちゃん。やめて姉さん!姉さんしか知らない私の姿を蘭ちゃんに言わないで!ってか、なんで姉さんが私の可愛いところ言い出すの!?恥ずかしいんだけど!?

 

「でも、そのぐらいじゃまだまだですね」

 

 と、なんでか張り合おうとする蘭ちゃん。いや、意味わかんない!モカちゃんは眠っちゃってるし。起きてー!モカちゃん起きてー!(ウルトラ)起きてー!!

 

「なんですって?」

 

「授業中に眠気が襲ってきて、必死に眠気に耐えているけどコックリコックリ、船漕いでる姿は本当に可愛いですよ」

 

「……今度、授業見に行こうかしら」

 

 真剣に腕を組んで考える姉さん。いや、姉さん。真面目に授業受けようよ!?

 

「でも甘いわ、美竹さん。華那が猫と戯れてる時の慈愛に満ちた笑顔は見た事ないはずよ」

 

「え、なにそれ。本気で見たいんだけど」

 

「ね、姉さん!なんでそんなに私の事でドヤ顔かましてるの!?」

 

 と、スマホをいじって美竹さんになにか見せる姉さん。ちょっと、まさか……

 

「え……か、可愛い」

 

「でしょう?さすがは私の妹ってところよ」

 

「姉さん、いつ撮ったの!?」

 

 と、蘭ちゃんの隣から見ると、私が猫を抱いて満面の笑みを浮かべている写真が表示されていた。蘭ちゃんは悔しそうな表情をしていたけれど、すぐさま口を開いた。あの、これ何の言い争い?しかも声がだんだん大きくなってるんだけど!?

 

「昼休みに疲れていたからか、眠っていたから授業前に起こしたら『うにゅ?』とかかわいい声だして起きたんですよ?」

 

「……可愛いわね」

 

「でしょ?」

 

 二人して真剣に頷きあってるけど、私としては本当に穴を掘って埋まってしまいたい気分だ。は、恥ずかしいよ!

 

「そうね……寝起きなら、部屋で寝てて、私が起こしに行った時に目を擦りながら『おはよーお姉ちゃん』って言ってくれるのよ?」

 

「うわっ。マジ可愛いんだけど……でも、湊さん。体育の時に、バスケットボールの試合中にコケてみんなを心配させた後に、スリーポイントシュートを決めてみんなに胴上げされたなんて知らないですよね?」

 

「……詳しく聞こうかしら、美竹さん」

 

 と、真剣な表情でコーヒー(砂糖とミルクたっぷり入り)を飲む姉さん。二人とも、もうやめて!私のライフ(メンタル)はもうゼロよ!!私だって球技で唯一得意のバスケでシュート決めるぐらいできるんだよ!?

 しかもコケたのは、相手チームの子の足が引っかかっただけだよ!?私が何もないところでコケたような言い方しないでよ!?

 

「そうそう。眠れない時に、申し訳なさそうに私の部屋の扉をノックして、枕抱えて『一緒に寝てもいい?』って聞いてくる姿も可愛いのよ?」

 

「湊さん……今度、泊まり行ってもいいですか?」

 

「いや、蘭ちゃんそれはおかしいからね!?」

 

 二人して結構大きな声で話すもんだから、ほかのお客さんの温かい目が私に注がれている事に気付かない二人。私は、顔が真っ赤になっていると自覚するぐらい体温が高まっているのを感じつつ、恥ずかしさのあまり下を向く。

 尚、二人の知っている私の可愛さ自慢は三十分にも及んだ。終わりを告げた理由はリサ姉さんがやってきて、惨状を見て私を連れだしてくれたから。その後、リサ姉さんの腕の中で泣いたのは内緒。

 

 

 

 

「――という事があったの」

 

「「蘭が悪い!」」

 

「なっ。巴にひまり、速攻すぎっ!?」

 

「おー蘭が叱られてる~」

 

 私の話しを聞いて瞬時に蘭ちゃんに詰め寄る巴ちゃんとひまりちゃん。よかった。常識人がまだAfterglowにはいたみたい。二人から叱られている不良娘は、固いコンクリートの上に正座してひまりちゃんと巴ちゃんに説教受けている。

 巴ちゃんは妹がどんだけ恥ずかしいか考えろと言っていた。いや、姉の立場でもの言っちゃダメでしょ。それ言うなら、うちの姉さんに言ってやってよ……。

 

「で、蘭。華那ちゃんに謝ったの!?」

 

「あ……」

 

 かなり真剣に怒ってるひまりちゃんに私は若干恐怖を覚えつつ、一口おにぎりを頬張る。うんおいしい。

 

「ほら、蘭。早く謝りなさい!」

 

「ひまり。なんかお母さんみた――「なに?」ナンデモナイデス」

 

 と、怒るひまりちゃんに何か言おうとして睨まれた不良娘は途中から棒読みになってた。うん。あの睨みは私なら泣いてる自信があるよ。

 

「その……あの……華那……?」

 

「……なに」

 

「恥ずかしい思いさせて……ごめん」

 

 と、頭を下げて謝る()()()()。はあ。それ(謝罪)が無かったから怒っていたわけなんだけどね……。姉さんもそうだし。

 

「反省してるならいいよ。蘭ちゃん」

 

「あ……本当にごめん。華那」

 

 私は笑みを浮かべて蘭ちゃんにそう言うと、ホッとしたような表情を浮かべながらも謝ってくる蘭ちゃんだった。その後はいつも通り色々と話しながらお昼休みを終えた私達。

 

 

 その日の夜。自室でギターを弾いていたら、姉さんがやってきて昼間の蘭ちゃんと同じように謝ってきた。どうやらリサ姉さんと氷川さんに叱られたらしい。可愛いのは分かるけれど、さっさと謝ってきなさい――と。って、可愛いってつける必要性!?

 

 今度、二人としっかり“お話し”しないといけないなと思いつつ、姉さんに「大衆の前で大きな声で言わないでくれるならいいよ」と言って謝罪を受け入れた。やっぱり、直接言われるのもそうだけれど、知らない人にまで聞こえるように言われるのは恥ずかしい。

 

「そう......ね。ごめんなさい、華那」

 

「姉さん、反省しているならいいよ。もうやらないでよね?」

 

「ええ、気を付けるわ」

 

 と言って、頭を撫でてくれる姉さん。あれ?反省しているよね?だいじょぶだよね?そう思いつつも、姉さんに撫でられるのは嫌いじゃないから、そのまま私は撫でられる続けるのであった。

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