Sisterhood(version51)   作:弱い男

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#49

「そういえば、華那ちゃん。ギター一本だけなの?」

 

「え?」

 

 吹奏楽部の皆と一緒に演奏会に向けた練習の休憩時間。その植松先輩の言葉が、私の頭痛のタネになるだなんて、その時は思いもしなかった。植松先輩の言葉に私は頷いて

 

「そうですね。私が今持っているギターは、このエピフォンのギターだけですね」

 

 と、答えつつ、私は次に練習する楽曲に合わせるためにチューニングを継続する。演奏する楽曲が多く、半音下げチューニングだったり、全く違うチューニングにしなきゃいけないから結構忙しかったりする。植松先輩は腕を組んで、その様子を見ていたけれどポツリと呟くように

 

「そうなると演奏会の時、チューニングの時間も取らないといけなくなるかな……」

 

「あ……」

 

 その言葉に私はチューニングしていた手を止めてしまった。そうだ。演奏会の時にいちいちチューニングしているような時間取っていたら演奏する時間もそうだけれど、観客の皆さんが冷めてしまう。それは避けなきゃいけないし、よくよく考えたら、プロのライブでも、私が尊敬するあの人も、ライブの時は演奏する楽曲数にもよるけれど、予備も含めたら二十本近くのギターを用意している。

 そう考えると、ギター一本だけで今回の演奏会をするのは至難の業――というより無茶だ。無理だ。いや、「ムリ」「疲れた」「面倒くさい」とか言うんじゃないってツッコまないで!?物理的に無理なんだからね!?

 

「ギター……用意するって言っても、中古ギターでも高いし、華那ちゃんが使いやすいってギターがあるか分からないもんね……」

 

 いつもふざけた様子の植松先輩が、ここまで真剣に悩んでいるのは珍しい――と、後で吹奏楽部に所属する同級生に聞いた話し。なんでも指揮をする時ぐらいしか真剣に見えないとか……それはそれで酷い言われようだよね!?

 

「でも、明日辺りにでもギター見に行ってみますね。私も、いちいちチューニングするのは時間かかりますから」

 

 チューニングを再開させながら、笑みを浮かべて植松先輩に伝える。いざとなったら、理由をまりなさんに言って、ギターを借りられないかお願いしてみよう。私もCiRCLEの予備ギターを時々だけど整備しているからね。何本あるか把握しているから、余裕だと思うし。

 

「無理だったらすぐに言ってね。華那ちゃんだけに負担はかけたくないから」

 

 私の言葉に心配そうにそう返してくださる植松先輩。感謝の言葉を伝えつつ、無理はしないことを約束する。さて、そろそろ練習再開しましょう。次は……メドレーでしたよね?

 

「そうだね……そそ。メドレー。動画サイトを見たら、ギターでやっているの見たのと、有名アニメの楽曲だから、知ってる人多いと思ってね」

 

「ですね。有名アニメなのは間違いないですし、内容も泥棒と探偵ものですから、盛り上がるのは間違いないですよね」

 

 何曲かメドレーをやる予定なのだけれど、誰もが知っているであろうアニメのメインテーマメドレーもやる予定。あと、私がやりたいと言った楽曲も数曲入る事になって、現在オーケストラの演奏用にアレンジ中の最中。それらの楽曲については、その人のオーケストラライブブルーレイを持っていたので、貸し出して対応してもらっている。

 声優なのに紅白にも出た事のある方の楽曲だから、知っている人も少しはいると信じたい。それを含めると、演奏予定楽曲数は二十曲近く。もうプロのライブだよね、これ。だからこそ、トラブルがあってもいいよう、予備のギターやチューニングの違うギターを用意しておく必要がある。完全に頭から抜けていたけど……。

 

「じゃあ、はじめよっか!!」

 

 全員に休憩時間終わりと告げる植松先輩に返事を返す部員の皆さん。勿論私も返事を返して、演奏に集中する。植松先輩が指揮棒を振り、私がタイミングを合わせて、吹奏楽部の演奏をバックにギターを演奏する。今回は私が練習で使うミニアンプで音を出しているけど、本番は既にまりなさんが用意してくれる手筈になっている。

 その日の練習はある程度まとまっていたと思うけれど、まだアレンジの所で詰めていかなきゃいけないかなという感じ。それに演奏の順番もまだ正式に決まっていないから、そこも話し合わないといけない。でも、まだ一ヵ月程時間はあるから、練習をきちんとすればだいじょぶ。

 

 

唯一の問題は、ギターどうしよう――

 

 

 

 

 

 ギターの問題が発覚した翌日の放課後。今日は吹奏楽部だけの練習という事で、私は一人、江戸川楽器店にやってきていた。もちろんギターを見にだ。うん、やっぱり高いなぁ。バイトしているって言っても、そう簡単に高校生が手を出せるような価格帯じゃないよね。それと、やっぱり音を重視したい。中音域の音が太いというか分厚いギターサウンドにしたいから――

 

「ん?あれ、華那だー!!」

 

「うわっぷ!?」

 

 突然、横から大きな声を出して横から私に抱き着いてきたのは、香澄ちゃんだった。倒れる瞬間、香澄ちゃんが来た方向を見れば、有咲と弦巻さん。そして美咲さんがいた。どういう組み合わせ?と、倒れつつ思った私だったけれど、床に背中から倒れたからか、少しだけ背中に痛みが走った。

 

「痛っ!」

 

「え……華那?」

 

「バッ香澄!!怪我したらどうすんだ!!大丈夫か華那?」

 

 つい、痛みに声を上げてしまった私。その私の様子にキョトンとした香澄ちゃん。慌てた様子で有咲がやってきて私を介抱してくれた。どこが痛いとか聞いてきてくれたのだけど、一瞬だけ痛み走っただけだから安心して。

 

「なら、いいんだけどさ……香澄。謝れよ」

 

「ごめん華那ぁ」

 

 と言って、今度は縋り付くように謝ってくる香澄ちゃん。ああ、もう!気にしなくていいから!そう伝えたのだけど、なかなか離れてくれない。有咲、助けて!!

 

「ほら、香澄。いい加減離れろ。一応、華那も大丈夫みたいだし、今後注意しろよ?」

 

「はぁい……本当ゴメンね、華那」

 

「香澄ちゃん、本当に私、気にしてないからね。それで……どうしたの四人して」

 

 と、合流した弦巻さんと美咲さんを見ながら問うと

 

「私達、学校の帰りにたまたま一緒になったの!で、香澄達が江戸川楽器店(ここ)に行くって言うから、ついてきたのよ」

 

「で、あたしは巻き込まれた……と」

 

「美咲さん……その……どんまいです」

 

 説明を受けた私は美咲さんにそう言うしかできなかった。天真爛漫な弦巻さん相手に、何言っても無駄なのは理解しているつもり。だから、美咲さんがついていっている事、フォローしてあげている事が凄いなと思っている。

 

「それで、華那はなにをしていたのかしら?」

 

 と、興味津々といった感じで、オメメを輝かせながら私に聞いてくる弦巻さん。とりあえず、ここ店内だから声の大きさ考えようね。そう言ってから、ギターを見に来た事を伝える。

 

「おいおい。いつものギター壊れたのか?」

 

 私の説明を聴いて心配そうに聞いてくる有咲。ああ、違うよ違うよ。今度、吹奏楽部と一緒に演奏会するんだけど、ギターのチューニングをいちいち変える時間が無いから、もう一本用意しておく必要がある事を伝える。

 

「演奏会ですって美咲!なら、あたしも協力して、完全映像化してあげるわ!」

 

「こころ、やめてあげて!学校違うから、迷惑になるから!!」

 

 と、暴走し始めた弦巻さんを抑えようと必死に辞めるよう説得する美咲さん。心遣いはありがたいけど、美咲さんも言ったけど、学校違うからやめておいた方がいいと思うよ?

 

「なるほど……でも、買えるのか?」

 

「まあ、音色とかギターの好みに拘らなければ……」

 

 そんなやり取りをして、弦巻さんが落ち着いた時に、有咲がギターを見ながら聞いてきた。そう。安いやつなら買える価格帯も置いてある。それこそ、ギター初心者用の物から、中古品まで。でも、その中古品でも高いのは、希少価値の高い物が混ざっているから、きちんと価格見ないと後で大変な事になる。

 

「わたしの、ランダムスター貸そっか?」

 

「あー……慣れてないギターもそうだけど、他の人のギターは出来る限り使いたくないかな。壊したら大変だし……」

 

 CiRCLEのギターならいいのかって話しになるかもしれないけれど、香澄ちゃんやおたえちゃんのギターをもし借りて壊したってなったら、二人に迷惑がかかってしまうし、ポピパの音が変わってしまう恐れがある。そんな怖い事、私出来ません。

 

「うーん……そうなると難しいな……」

 

「なら、あたしがきょうりょ――」

 

「こころ、ちょっとあっち行こっかー。あたし、気になる楽器あるんだよねぇ」

 

「そうなのね!三人ともごめんなさい。ちょっと、美咲と一緒に見に行ってくるわね!」

 

 目で「こころを離しておくから、ゆっくり見てて」と訴えてくる、美咲さん。私は弦巻さんに見えないようにごめんと手を合わせる。美咲さんは笑いながら右手を左右に振って、弦巻さんと一緒に私達から離れていった。

 なんか、嵐のような人だったし、なんかここのギター全部買うわ!!って言いそうな勢いだったのは気のせいかな?ねえ、有咲?

 

「善意で、本気でやりそうだな……」

 

 と、右頬を引き攣らせながら有咲が言ったので、どうしたのだろうと考えて、弦巻さんが本物のお嬢様である事を思い出し、私は頭を抱えたのだった。ここにあるギターどころか、あの人が使っていたギター買ってきて「使っていいわよ!」とか言い出しそうで怖い。うん。身の丈にあったギターを探そう。そうしよう。

 

「でも、本気でどうするんだ?安いのって言ってもピンキリだろ?」

 

「そうなんだよねぇ……それに、今回は私の尊敬するアーティストさんの楽曲を演奏するから、尚更悩んじゃって」

 

デビューした当初はヤマハのMG-Mっていうモデルを使っていたんだけど、その後ギブソンのレスポール主体になっていった訳で、そう考えるとレスポールに近いやつ……ってなると、ギブソン傘下のエピフォンから出てるモデルなら安いのもあるしから、それに近いギターがあればいいんだけど。

 そう呟きつつ、ギターを見る。色々なメーカーのギターが置いてあるけれど、どうも「これだ!」ってギターに巡り合えない。結局は私の好みなんだよね。そう苦笑いしながら有咲達に言うと

 

「まあ、演奏するのは華那だからな。自分の弾きやすいやつとか、そういう目線は必要なんじゃねぇの?」

 

「えー?カッコイイ形とか、必要だと思うよ有咲?」

 

「お前は特殊なんだよ!!」

 

 と、お約束が始まったので、私は何も言わずにギターを見る。今使っているのが黒だから、次は明るい色とかがいいかなぁなんて思いつつ、自分の好きな形をまず見ていく。うん。やっぱり高い。気に入った形のギターについている値札を見て、私は項垂れる。これいいなって思ったギターの最低値が二十万ってなんですか……。

 

「おっ、華那じゃないか。どうした、項垂れて」

 

「あ、店長さん。こんにちは」

 

 と、ギターの前で項垂れていたら、このまえ、あの人モデルのギターを持たせてくださった店長さんが声をかけてくださった。私は挨拶をしてから、今度、学校の吹奏楽部と一緒に演奏する為に、ギターが必要になった事を話した。

 

「なるほどなぁ……なら、“あれ”使うかい?」

 

「あれ?」

 

 店長さんの言葉に私は首を傾げる。店長さんは右手で上を指さしたので、私達がその先を見ると――

 

「い……いやいやいやいや!!あれは店長さんの大切なギターじゃないですか!!しかも、ナンバリングついてる貴重なギターですよ!?」

 

 私は慌てて両手を左右に振る。――そう。店長さんが指さしたギターというのは、前、紗夜さんと姉さんの三人で来た時に、持たせてもらったレスポール、シグネチャー・モデルのDC(ダブルカッタウェイ)アクアブルーのギターだったのだ。

 あれは私みたいなギタリストがそう簡単に持っていい物じゃないし、買うお金なんて無い。この前、店長さんが三桁行くとか言っていたじゃないですか!!

 

「三桁!?」

 

「うっそだろ……」

 

 香澄ちゃんと有咲も目を丸くして驚く。そりゃそうだよね。そんなギターがこの店にあって、飾られているんだから。あ、ちなみに厳重に保管されているので、盗まれる心配はないそうです。

 

「大切って言ってもなぁ……ギターにとっては使われなきゃ、意味が無いと俺は思うんだよな。だから、使ってもらえるなら使ってもらった方がいいんだが」

 

「それでもです!高校生が、そんな高価なギター持てませんよ!お気持ちだけもらっておきます」

 

 別に気にしてないのにという風な店長に、私はそう言って断った。そもそも、持って帰る前に盗まれたらどうするんですか。本当、店長さん。もう少し考えてください。そう心の中で呟く。でも、まだ時間はあると言っても、今週中には用意しないと、本格的な練習――通しリハの際に迷惑をかけてしまう。それだけは避けないと。

 

「……ならあいつに……しておくか」

 

「?……店長さん何か言いました?」

 

「いやいや、ちょっと倉庫行って、華那が使っているギターと同じ種類あるか確認してくるわ。三人とも、ゆっくり見て行ってくれ」

 

 と、右手を挙げてバックヤードに向かう店長さん。ありがとうございます。と伝えたのだけど、何言ったんだろう?

 

「ねえねえ、華那!これカッコいいよ!!」

 

 と、いつの間にか奥の方のギターを見に行っていた香澄ちゃんに呼ばれる。

 

「あいつ……華那いくぞ……暴走止めるぞ」

 

「そうだね」

 

 疲れた表情を浮かべる有咲に同意しながら、私達はその後もギターを見て回るのだった。でも結局は、その日、いいギターに巡り合えず、手ぶらで帰るのだった。

 

 

 

 

「ただいま……」

 

「ああ、お帰り。華那」

 

 ギターを見に行った二日後。バイトから帰ってくると、リビングに珍しくお父さんがいた。しかも何故かソファーの横にギターケースが置いてあった。仕事関係のかなと思いつつ、自分の部屋に行こうとしたら呼び止められた。なに、お父さん?

 

「今度、吹奏楽部の演奏会に出ると聞いてな。これを使え」

 

「え?」

 

 と、私にギターケースを渡してくるお父さん。誰から聞いたの?と答える前にお父さんは「楽しみにしているからな」と言って自分の部屋に戻って行ってしまった。もう……素直じゃないんだからと呟きつつ、自分の部屋に行ってギターケースを下して、どんなギターが入っているんだろうとワクワクしながらケースを開け……開け……は?

 

「はいぃぃぃぃ!!??」

 

 そこに入っていたギターを見て、私は素っ頓狂な声を上げるしかできなかった。隣の部屋にいた姉さんが音を立ててやってきて、勢いよく扉を開けて私の部屋に入ってきた。

 

「どうしたの華那!?」

 

 慌てた様子の姉さんの声。私は振り返ってギターを指さし、震える声で

 

「ね、姉さん、ぎ、ギターが。ギターが……」

 

「?ギターがどうかしたの?……え?」

 

 私の様子があまりにおかしいので首を傾げつつも、私の横に座ってギターケースを見ると、私と同様に固まってしまった。そうだよね。そうなるよねと、どこか冷静になりつつも、どうしてこのギターをお父さんが持っていたのかという疑問が渦巻いていた。

 

「か、華那……これってまさか……」

 

「う、うん……レスポールの……シグネチャー・モデルのDCアクアブルー……だよ」

 

 私も姉さんも、二人とも驚きのあまり声が震えてしまい、ギターに触れられないでいた。あ、ギターケースの内側に用紙入ってたんだ……なんだろう。え、証明書!?やっぱりこれ正規品!?

 

「ねねねねね、姉ささささささん!!」

 

「お、落ち着きなさい華那」

 

 証明書を両手で持っているけれど、手が震えている私の肩に手を置いて落ち着くように言う姉さん。その姉さんの表情も困惑の色が強く見えた。それもそうだよね。だって、お父さんから使えって言われて渡されたギターがこんな高級なギターなら驚くしかない。というか、返してこなきゃ。そう考えて、ギターケースを閉じて、丁寧に持ってからお父さんの部屋に行く。

 姉さんも、気になるのかついてきてくれた。お父さんの部屋の扉を叩いて入って良いか聞く。中から入っていいとの返事が来たので扉を開けて入る。

 

「どうした?」

 

 こっちの気も知らないお父さんは椅子に座って、持っていた本を閉じて、優雅にコーヒーを飲んでいた。どうした?じゃないよ!こんな高級なギター受け取れないよ!!という事を伝えて、返すと言うと

 

「そのギター。知り合いから譲り受けた物でな。そいつギターあまり弾かないのに、たまたま買ったらしくて、誰か買うやつを探していたらしい。そこで華那に……と、話しがあってな」

 

「……だからって、私。まだ高校生だよ?」

 

「だからこそ、だ。このギターの価値も分かっていて、しっかりと技術を身につけようとする人間……つまり華那なら相応しいと言われてな。断るに断れなかったんだ。だから、使ってやってくれ」

 

 と、お父さんも少し困った表情をしながら説明してくれた。どうやら相手からかなり無理やり押し付けられたようだ。何となくだけどそんな光景が目に浮かんだ。本当に……このギター私が使っていいの?

 

「ああ。その方がギターも喜ぶだろう。使われないで飾られるよりは……な」

 

「華那。このギター……貴女が使うべきよ」

 

 横で黙っていた姉さんが口を開いた。どうしてと姉さんを見れば、いつものように腕を組み、真剣な表情で

 

「今、父さんが言ったけれど、そのギターの価値を理解していて、そのギターで弾くという重圧を理解している貴女だからこそこのギターで演奏すべきよ。私はそう思うわ。ただ……この、最後に決めるのは華那。貴女自身よ。貴女が弾けないというのなら、返すのも手よ」

 

 姉さん……。ありがとう。突然の事で驚いたけど、ありがとうお父さん。怖いけど……このギターでやってみるね。笑みを浮かべてそう伝える。お父さんは安堵した息を吐いて、一度コーヒーを飲んでから

 

「ああ。そうしなさい。お礼はこっちからも言っておくが、華那も知っている人だから、直接伝えておきなさい」

 

「え?私が知ってる人?」

 

 お父さんの発言に私と姉さんは首を傾げた。誰だろう?私が知っている人って誰だろ――

 

「江戸川楽器店の店長だ」

 

「え……ええぇぇぇぇぇぇ!!??」

 

「……頭痛くなってきたわ」

 

 お父さんの発言に、私はまた素っ頓狂な声を上げるしかできなかった。どういう関係なの!?と疑問にも思っている私達にお父さんが説明してくれた。なんでも、昔バンドやっていた頃からの付き合いで、今でも連絡を取り合う仲だとか何とか。それで、急に連絡がきて、店に行ってみればギターケースを押し付けられたそう。

 

「『お前の娘さん、華那に渡してやってくれ』と言われてな。断ろうとしたら、それで弾く姿が見たいから、絶対渡せと脅されてな……」

 

「あ、アハハ……」

 

 疲れ切った表情を浮かべるお父さんに、私は苦笑いを浮かべるしかできなかった。店長さんにお礼言わなきゃ。それと、今後もあの楽器店利用しなきゃ。あとは、そうだね。バイト代貯めて少しでもギター代払わなきゃ……。そう心に決めた私は、お父さんに改めてお礼を言って部屋から出て、自分の部屋に戻ってから、もらったギターにコードを挿して、アンプにつないでの音色を確認して、音色に感動するのだった。

 

 尚、後日。店長さんにお礼言って、少しづつギター代を払うと言ったら、もう既にお父さんが払っていったとの事。お父さん!?何やってくれてるの!?

 それをどこから聞いたのか、お母さんの耳に入ったらしく、緊急家族会議が行われる事になりまして……。結論から言えば、姉さんも私と同じ金額の物をお父さんから買ってもらえる事になった。けど、姉さんは今のところ無いらしく、何か欲しい物が思い浮かんだ時に――と、いう事にまとまりました。

 それとおまけで、お父さんのお小遣いが数ヵ月間無しになったのでした。あの……その、ごめんなさい、お父さん。決まった後の、お父さんの寂しそうな背中を見て、そう心の中で謝罪する私なのでした。

 




高校生で、楽器素人なのにレスポールのギター買った子もいるから……その……多少の事は許してください(土下座

後、投稿ペースがかなり落ちると思います。
転職決まり、また社畜生活が始まるので……
(´・ω・`)
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