読者の皆様「それ、ティーダぁぁぁぁぁ!!」
華那「だいじょぶ……だいじょぶだから」
コレット「それ、私のセリフだよ?」
正直、テイルズオブシンフォギアになるだなんて誰が思うだろうか……。いや思わない。
でも、コレット可愛かったです(おい
本編、はじまります
「今……なんて……?」
私は震える声で、ベッドに座る華那に問う。華那は知らないはず。なのに……今、華那は間違いなく――困惑、驚き、悲しみ、様々な感情が入り組んでいる私から、視線を外して、華那は窓の外を見ながら
「ステージⅣ……末期癌って言われる段階。だから、文化祭だけでも、行かせてほしいって、先生にお願いした……って言うか、我が儘言ったの」
華那は目を細めて、窓から見える夕日でオレンジ色に染まる空を見ていた。なんで、そんな落ち着いた声で、淡々と言えるの?華那の今、考えている事が私には分からなかった。だって、自分が死ぬかもしれないというのに、なんでそんなに冷静でいられるの?どうして私にその話をしたの?色々と言いたい言葉が浮かんでは私の中で消えていく。
正直、華那が何も考えないでそんな事を言い出す訳がないのは分かっているよ。でも……でも、華那の口から聞きたくはなかった。そもそも、誰が本当の事を華那に言ったの?友希那先輩やリサさん達が言う訳がない。なら誰が――
「実はね……ここ数日調子よくて、夜お手洗いに行った時に看護師さん達が話しをしているの……聞いちゃったんだ」
「え?」
私が疑問に思っていた事を説明してくれた華那。夜、看護師さんたちの会話?ど、どういう事なの?
「んとね……あれは、三日前かな?」
右手の人差し指を顎に当て、少し首を傾げながら話す華那。三日前?そんな……だって、一昨日も昨日も私は見舞いに来てたんだよ?それなのに、普段通りに振舞っていたというの?
投薬治療も、ずっとしていると逆に体に悪いという事で、ここ三日ほどお休みだったので、治療中に比べればかなり体が軽くて、食欲も回復してきた。と言っても、病気になる前みたいに食べられるかといえばそうじゃない。三食おかゆと、胃に優しいおかず数品とお茶か牛乳。あと、ヨーグルトもついてたっけ。そんな事を思い出しながら、夜の病院の廊下を歩く。喉が渇いたから、デイルーム*1って呼ばれている、見舞いに来てくれた人や、入院している人達が談話できる大きい部屋があるのだけれど、そこに自販機があるので、そこへ向かっている時だった。
「ねえ――の湊華那ちゃんって、――なの?」
「?」
ナースステーションの前を通る前。静まり返っている病棟だったからか、看護師さん達の話し声が聞こえてきた。普通なら、無視して飲み物買いに行くのだけれど、私の名前が聞こえてきたから、私は静かにナースステーションに近づいて、看護師さん達から見えないようにしゃがみ込んだ。なんか、潜入ゲームの主人公みたいな事やっている。
「そうよ……あれだけ若いのにね……」
「手術とかも無理な感じ?」
「ええ。先生が言うには癌細胞が転移していて、手術しようにも……華那ちゃんの体が持たないって」
え……。看護師さんたちの会話を聞いた私は驚きのあまり声を出しそうになって、慌てて両手で口を塞いだ。どういう事?だって、先生は
「ねえ、投薬治療も本当は……」
「ええ……貴女が考えている通りよ。……
混乱する私をよそに、看護師さん達は会話を続ける。そして、私にとってあまりにも衝撃的な内容だった。誰があと三ヵ月しかもたないって?正直に言って、簡単に受け入れられるような内容じゃなかった。なら、今投薬治療やっている意味って何なの?あれだけ苦しい思いしても、三ヵ月しか残っていない?そんなの信じられる訳――
その後も、看護師さん達が話しているようだったけれど、私にその後の記憶はなかった。気付いたら個室に戻っていて、床に座り込んで泣いていた。
「いや……だ……やだよぉ……みんなと……わかれ……たく……ないよぉ……」
両目から零れ落ちる涙を両手で拭うけれど、涙は止まる事なく零れ落ちる。なんで、どうしてという想いと、姉さんや両親、沙綾達の顔が頭に過った。その後は、今までの辛い思い出や、楽しかった思い出が流れてきた。
「やだ……やだ……まだ……まだ……生きて……いたい……」
私はただ駄々っ子のように、静かに泣きじゃくる。今思えば、夜だから静かにしなきゃ――って、どこか頭の中で冷静に考えていたんだと思う。今思い返せばだよ?ただ、その時の精神状態は最悪だった。もう、思考がしっちゃかめっちゃかで、どうしたらいいのか分からなかった。
しばらくして、ゆっくりと立ち上がって――正直、その場に誰かいたら、まるで幽霊のような雰囲気だったかもしれない――ベッドに体を投げるように倒れ込んだ。何も考えないようにしようとするけれど、看護師さん達が話していた言葉が脳裏にこびりついて離れない。
「いやだ……まだ……夢……諦めたく……ない……」
枕に顔をうずめて左右に振ってみても、息をしばらく止めてみても、何度も頭の中でリピート再生してしまう。泣きそう――いや、既に私は泣いていた。枕も涙で濡れている。なんで、こんなことになっちゃったんだろう……。でも……一つだけ言える事がある。
「絶対……諦めない……」
体を起こして、涙を拭いながら決意を口にする。そうじゃないと、その決意が鈍りそうな気がしたから。
だから、三ヵ月とかいう
「手紙……が一番……かな?」
まだ流れる涙を拭いながら思考する。気付けば、空が明るくなってきていた。どのぐらい泣いていたのか自分でも分からない。でも、今できる事。やっておかなきゃいけない事はある。
「とりあえず……寝よう……」
眠気なんてあるはずがない。でも……寝なきゃ。ショックは隠せないけれど、寝なきゃ体が本当に悲鳴を上げてしまう。そうならない為にも、無理やりにでも寝なきゃいけない。そう考えて布団に潜り込んで目を瞑る。
「せめて……夢の中だけでも――」
そう呟いたのは覚えているけれど、その後、いつ眠りについたのかすら覚えていない。それだけ、精神的に疲れてしまっていたのだと思う。
そして次の日。私は問診の時に石田先生に、昨日の夜に聞いた事が事実か確認する為に口を開いた。
「先生」
「どうしたの、華那ちゃん?」
いつもなら、問診が終われば笑顔で会話をするのに、今日に限って、私が真剣な眼差しで先生と呼んだからか、先生が少し身構えたように見えた。
「私の本当の病状……末期癌って本当ですか」
「っ……華那ちゃん。突然どうしたの?」
「先生……私の事を思って、伝えないって判断したと思うのですが……昨日の夜、聞いちゃったんです。看護師さん達が話しているのを……私が末期癌で、あと三ヵ月……二か月と少しの命だって事を」
思い出しても体が震えそうになる。だいじょぶ。だいじょぶだから、お願い。震えよ、止まっていて。私の言葉に先生は俯いていたけれど、盛大に息を吐いてから、私の目を見て
「昨日の夜勤は……満園さんと徳永さんだったわね……。今度注意しないといけないわね……。華那ちゃんの質問に答えるわ……それは事実よ」
「先生!?」
「あ、黒瀬さん。いいんです。本当の事を言ってもらった方が、私も覚悟できますから」
先生に付き添って来ていた看護師長の黒瀬さんが、先生を非難するような声を上げたので、私は出来るだけ笑みを浮かべてそう言った。だって、先生の表情を見たら、誰だってそうしたくなるよ。その時、先生は……悲痛な表情を浮かべていたのだから。
今日までの事が夢だったら、どれだけ幸せな事だろう。病気になってなくて、いつも通りにギター弾いて、バイト行って、姉さんと話して、学校行って……。本当、今までの生活に戻りたい。だから――
「先生。私、『もう治療しないでいいです』なんて言いません。だって、諦めたくないんです。もう一度日常に……あの舞台に、今度は皆と一緒に演奏をしたいから」
あの時の光景を思い出す。会場にいた全員の視線が私に向けられて、私と吹奏楽部の演奏で盛り上がってくれた。あの音楽を、ギターを演奏するのが心の底から楽しいと思えた瞬間。それはあの頃――幼い頃――公園で姉さんとリサ姉さんと私の中で交わした約束への一歩だとあの時は思った。
……きっと、姉さん達は忘れてしまっていると思う。だって、幼い頃の約束だなんて、
多くの人は忘れるからね。私が覚えているだけでもいい。シロツメクサの事は――
「華那ちゃん……」
私の言葉に悲痛な表情を見せる石田先生。ダメですよ。石田先生。医者はそんなに表情に出しちゃダメですよ。あ、なら、一つ我が儘言わせてもらおう。
「先生。黙っていた事に対しての、お詫びって訳じゃないんですけど……一つお願いがあるんです」
「なにかな?」
困ったかのような笑みを浮かべる先生。ちょうど今週、学校生活の大イベントの一つがあるのを思い出した私は、頭を下げながら
「今度の金曜日に一時帰宅させてください。翌日に文化祭に行きたいんです」
「それは……許可できないわ」
私のお願いに先生は言葉を詰まらせたけれど、首を横に振りながらダメだと言ってきた。だと思った。それぐらい私の体が酷い状況で、病院にいなきゃいけない。でも――
「今の状態で一時帰宅するのは無茶なのは分かっています。でも……文化祭に出るのは
頭を下げてお願いする。静まり返る病室。先生も悩んでいると思う。でも、文化祭に行けなければ、
私だって、諦めてはいない。でも……もし、本当に二か月とちょっとの命だったら……そう考えると……治療もしなきゃいけないけど、やり残した事の無いようにしなきゃ。都築のおばあちゃんにもよく言われたからね。「やりきったかい」って。最後の瞬間に、やりきったって想えるようにしておきたい。だから――
「……わかったわ。一時帰宅、認めます」
「本当ですか!?」
渋々――ううん。苦渋の決断といった方がいいかもしれない。顔を上げて見た先生の表情は、苦虫を何匹も嚙み潰したような、そんな表情をしていた。本当は帰したくないのだと思う。もし、体調を崩したら、進行が早まる可能性もあるのだろう。それを考慮すれば、病院にいて欲しいと先生が思うのは当然だと思う。
その後は、帰るにしても、文化祭に行くにしても、体調が少しでもおかしいと感じたら、すぐに病院に戻ってくることを約束して、一時帰宅が正式に決定したのだった。
「その時にね。家帰ったら、手紙を書いておこうって決めてたの」
「華那……私……私……」
私は黙っていた事に対する罪悪感と、華那が本当の事を知った瞬間の華那の心情を思って涙を零していた。上手く言葉が出てこない。そんな私を華那は優しく抱きしめて
「沙綾は悪くないよ……私が逆の立場だったら、同じ事していたもん。それに……姉さんに頼まれたんでしょ?黙っていてくれ――って」
「かぁ……な……」
華那の腕の中で涙を零す私は、名前を呼ぶだけしかできなかった。そこまで理解していて、どうして……どうしてそんな穏やかな表情を浮かべていられるの!?
「さっきも言ったけどさ……私、最後まで諦めないから。だから……沙綾。そんなに思い詰めないで。ね?」
「華那……っ!……」
私の背中を撫でながら、華那が優しく語り掛けるように宥めてくれたのだけれど、私は気付いてしまった。華那の体が震えている事に。華那は平然と振る舞っているけれど、華那だって不安なんだ。それに気付いた私は、華那を抱きしめていた。
「さ、沙綾?」
華那の困惑の声が私の腕の中から聞こえた。でも、これだけは伝えないといけない。
「華那……弱気吐いたっていいんだよ。ずっと、平気な振りするのは、華那の心に凄い負担かかるよ。私がそうだったんだから……泣いてもいいんだよ」
涙を流しながら、私は華那にそう伝える。バンドを辞めて、家の事を中心に生活していた私。部屋で一人になると、突然、無力感というか脱力感に襲われてしまい、しばらく立ち上がる事も、何か行動を起こそうとする事も出来なかった時がある。今思えば、心に凄い負担がかかっていたのだと思う。
そんな時、華那が会いに来てくれて、学校であった事の愚痴を言い合ったり、買い物に一緒に出掛けたりしたお陰で、何とか心を保つ事が出来た時期があった。華那がいなかったら、私はまたバンドを……ポピパにいなかった。だから、今度は私の番。
「こわい……こわいよ……さあや……」
涙声で、私の腕の中で懺悔するかのように声に出す華那。私は黙って華那の頭を撫でながら、華那の言葉を聞く。
「みんなと……いっしょに……いたい……。また、ステージで見た……あの景色を……今度は皆と……一緒にみたい……。なのに……なんで……なんで……!」
「……華那」
華那の心の叫びにも似た感情の吐露に対して、私は黙って華那の頭を撫でながら聞く事しかできなかった。華那がいなくなるという恐怖。それは私や、友希那先輩達も持っている。今まで、華那が普段通りに振舞っていたからこそ気付けなかった。華那が抱えている感情に。
「ごめんね……ごめんね、華那……」
涙を流しながら謝る私。力になれない事に対して、黙っていた事に対しての謝罪。謝って許されるような事じゃないのは理解しているのだけれど、私は華那に謝る事しかできなかった。
その後、落ち着いた華那から私は手紙を受け取った。でも、私は信じたい。この手紙が不要になる事を。華那が……また前みたいに
しばらく二人して抱き合うようにして泣いていたけれど、二人とも落ち着いた時に華那が口を開いた。
「……ごめんね、沙綾。沙綾ばっかりに負担かけて……」
「大丈夫だよ。このぐらいしか力になれないから、逆に頼ってくれて嬉しいよ」
まだ、泣いた影響で目が真っ赤な華那が謝ってきたけれど、私はそう言って気にしないように伝えた。大丈夫。大丈夫だから。そう自分に言い聞かせる。その後、華那が本当の病状を知っている事を誰にも伝えない事を約束して私は病院を後にした。
結構長い時間話していたからか、日が沈みかけようとしていた。あの夕日のように華那が消えてしまうのではないか。そんな不安が頭を
華那が本当の病状を知って、病室で泣いているシーンで、作者が感情移入して泣いていた事をここで正直に言っておきます。(どうでもいい
あと、今後の更新についてですが、ここ最近やってきていた毎週更新ではなく、再び不定期更新に戻ります。
ご了承ください。