Sisterhood(version51)   作:弱い男

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シリアスさん「作者は作品すっぽかして」

読者の皆さん「マジで!?(関西弁のイントネーションで)」

シリアスさん「とんずらこいてもうたらしいわ」

読者の皆さん「それ、あかんやん。」


と、言う訳ですので初投稿です()
あ、それと、某箇所で有名なセリフ使ってます。許してください。なんでもしませんから(ぉ


#63

 懐かしい夢を見ていた。私が歌を始めるきっかけとなった時の夢を――

 

「おねーちゃん、じょうずー!!」

 

「ゆきなちゃん。おうたが上手だね!」

 

 幼い頃。私は姉さんについて行って、近くの公園でリサ姉さんと私達姉妹の三人でよく遊んでいた。その時、よく姉さんに歌を聴かせてって言った事を覚えている。あ、姉さんがリサ姉さんに、父さんはもっと上手だって自慢していた。

 この頃は、本当に私達は純粋に音楽を楽しんでいた。次に公園で遊んだ時、父さんも巻き込んで、四人で小さなバンドごっこをオモチャの楽器でやっていたんだっけ……。その時、私は――ううん。今も私は歌が好きだ。喉を痛めて歌えなくなったとはいえ、ギターで音を奏でるのは楽しい。練習している最中、ギターは毎回違う音の表情を見せてくれる。

 

 景色が少し変わったけれど、場所は同じ公園。違うのは父さんがいて、リサ姉さんと私がオモチャの楽器を持っている事。父さんも、ここ最近見せる事の無い、柔らかい笑みを浮かべながら私達と一緒に演奏ごっこをしていた。

 演奏が終わり、上手くできたと子供ながら話している私とリサ姉さん。姉さんも笑みを浮かべながら頷いていた。そんな時だった。

 

「友希那は、歌が好きかい?」

 

「うん!だいすき!」

 

「わたしもすきー!おねーちゃんといっしょにうたうのはもっとすきー!」

 

 小さい頃の姉さんが、ここ最近見せた事の無い、無垢な笑みを浮かべながら父さんの質問に答えていた。その横で、姉さんより小さい私が両手を挙げている。ああ、そうだ。これが私の原点だ。姉さんやリサ姉さんと一緒に音楽をしたい。そう単純に思っていた事が、今は叶わない。

 この頃、確かリサ姉さんがシロツメクサで王冠を作ってくれたんだっけ。それで、三人でバンドしようって約束したんだ。そう。幼い頃の約束……もう叶う事の無い、私以外の二人は忘れてしまったであろう約束。

 

 突然、幼かった私達の姿と風景が消えて、真っ暗な世界に私一人だけがいた。終わりは、きっと……この真っ暗な世界のように寂しいのだろうか。ふと、そんな考えが頭を(よぎ)る。

 

「いや……だ」

 

 小さく呟いたはずの声が暗闇の中で響く。まだ、姉さんの傍にいたい。皆と一緒に色んな景色が見たい。だから、まだ私は……

 

「まだあの世(そっち)には行かない」

 

 一歩踏み出す。闇が深くてどこが出口かも分からない。でも、進まなきゃ。だって、立ち止まってしまったら、すべてが終わってしまうような気がしたから。重い足を動かして、前に進む。こっちの方向で合っているかなんて分からないし、知る訳がない。これが夢ならば、一刻も早く醒めて欲しいぐらいだもの。

 

「?……小さく光が見える?」

 

 なんとなくだけど、前方に小さく白い光りが見える気がした。夢だから何でもありなのね。と、自分の夢を冷静に判断しながらも、少しご都合主義すぎる事に呆れる。まあ、夢だからね。多少は仕方ないかな。そんな事を考えつつ、光の方へ歩いていくと、光の正体はその場に咲いていたシロツメクサ――

 シロツメクサを手に取ろうとしゃがんで手をのばした時、視界がぼやけた。何が起きているか理解できなかった。その後、私の意識も暗転したのだった。

 

 

「う……ん……」

 

 目を開けようとしたけれど、上手く目を開ける事が出来ず、しばらく薄目で天井を見ながら瞬きをする。次第に目が慣れてきた。今、何時だろうかと思って体を起こそうとしたけれど、体が動かなかった。息がしにくいなと思って、口の方を見れば何か透明なものうっすらとだけど見えた。

 

「こき……き?」

 

 声を出したつもりだったのだけれど、あまりに弱々しい声に、自分の声じゃないように聞こえて驚いた。何がどうなっているのか分からない。何が起きたの?混乱する私の耳に、誰かの声が聞こえた気がした。視線をその方向に向ければ、涙を流しながら姉さんが透明なガラス?みたいなのに両手を当てて、何か言っている。

 

「か……目を……!」

 

 今にも泣き崩れそうな姉さん。ああ、また私は姉さんに心配かけてしまったのか。声が出せないから、点滴の射さっていない左手を挙げて、目を覚ましたよ。私はだいじょぶとアピールしてみる。ただ、その私が込めた意味を、姉さんが理解してくれたかどうかは分からないけど……。

 姉さんは、何度も頷いて何か言って、急いでどこかへ行ってしまった。どこに行ったのだろうと、不安を覚えたけれど、すぐに戻ってきてくれるはずだと信じる。少し体を動かそうとするけれど、手を挙げた反動からか、凄い疲れが私の体を襲っていた。

 

 なんで私、人工呼吸器つけているのだろう――と疑問を抱いたと同時に、ああ、吐血して意識失ったんだっけ――と、まだぼんやりしている頭を回転させながら思い出した。それと同時に、私は残されている時間が少ないって事を嫌でも理解した。

 外から廊下を駆けてくるような足音がしてきたかと思ったら、石田先生を連れた姉さんが息を切らせてやってきた。そんなに急がなくてもよかったのに……。

 

「華那ちゃん、私の声聞こえている?」

 

「は……い」

 

 先生が部屋に入ってきたと同時に、そう聞いてきたので私は声を出して返事をした。のだけれど、やっぱり声が上手く出なかった。先生が、今の私の状況を説明してくれたのだけれど、一週間も意識が無かった――だ、なんて私は信じられなかった。

 しかも、結構危険な状態だったらしい。昔の夢を見ていたような気がするけれど、それだけ時間が経っているとは思わなかったな。今目が覚めたばかりだからという事で、もう二、三日は集中治療室で容態が安定するのを待つと石田先生が言っていた。まだ呼吸もうまくできてないようだから、人工呼吸器も外さないとの事らしい。

 

 先生の話しが終わり、ガラス越しに姉さんを見れば、まだ泣いていた。だから、私は小さく手を振ってだいじょぶだとアピールする。姉さんは何度も頷いていた。でも、涙が止まる事は無くて、私はどうすればいいのだろうと悩んでしまった。

 しばらくして、お父さんとお母さんもやってきて、安堵の表情を浮かべていた。危険な状態だったからか、石田先生から体を動かさないようにと注意された。二、三日は退屈な日になりそう――そんな場違いなことを思う私だった。

 

 

 

 

 夕方の六時近くの病院。私は会計待合所の椅子に座っていた。華那が目を覚ました。それは喜ぶべき事。でも……石田先生から()()()()()()()()()()()()()()()()、体の震えが止まらなくなる。

 信じたくないし、そうなってほしくない。現実を受け入れたくない。だから、私は家に帰らずにここで座っている。父さんと母さんは職場の方へ戻ってしまった。華那の事を心配していたけれど、私が行ってきてと言った。華那はきっと、自分のせいで家族が壊れるのは望んでいないはず。そう考えて――

 

 ふと、華那の本当の容態を伝えた時の事が頭を過った。最初、本当の事を隠していたから色々と言われた。ただ、白鷲さんや奥沢さん。そしてアフグロの面々はやっぱりといった様子を見せていて、その面々がその場を抑えてくれた。私の気持ちを汲んで――だ。だからそんなに紛糾することなく、その場は収まった。きっと全員、最悪の事態を覚悟してくれた――と、私は思っている。

 

「友希那先輩……」

 

「来たわね……山吹さん」

 

 私は、華那が目を覚ました事を全員にスマホのメッセージで伝えた。しばらくは安静にしなくてはいけない事も書いて――だ。ただ、山吹さんだけは来るだろうと私は思っていた。

 他のメンバーとはまた違った繋がり……いえ、絆と言うべきかしらね。華那は歌えなくなり、ギターへ。山吹さんは一度音楽を離れた。その間も、交友していた二人。だからこそ、山吹さんは華那の事が心配になってやってきた。そうでしょう?

 

「はい……会えないと分かっていましたけど……友希那先輩に話しは聞けると思ってました」

 

「だと思ったわ。待っていて良かったわ」

 

 私は山吹さんに、私の隣に座るように促す。山吹さんは小さく頷いてから私の隣に座った。どこから話せばいいか……少し考えてしまう。華那が目を覚ましたことは伝えてある。だけれど、どう説明すればいいのかしら……。

 沈黙が私達の間に流れる。山吹さんも何を聞けばいいのか躊躇っているように見えた。どうしたものかしらね……。そう考えていた矢先に口を開いたのは山吹さんだった。

 

「友希那先輩……華那の容態は……」

 

 不安そうな表情を浮かべて私に聞いてくる山吹さん。やっぱりそう聞いてくるわよね……。そう心の中で呟きながら、私は天井を見上げて、先ほど石田先生から聞いた事を山吹さんに伝える。

 

「今度……意識を失うような事があれば……()()()()()()()()()()()と先生に言われたわ」

 

「それって……」

 

 私の言葉に絶句する山吹さん。私も最初聞いた時山吹さんと同じように言葉を失った。覚悟しておいて――つまり、華那が死ぬ――という事を石田先生は私達家族に伝えてきたのだった。

 華那の病状はかなり危険な状態で、正直に言って、目を覚ましたこと自体が奇跡に近いとまで言われた。だからこそ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()との事らしい。先生が本当に悔しそうな表情で話していたのが、私の脳裏に焼き付いている。それだけ、先生も華那の治療に全力を尽くしてくれているという事なのだと思う。

 

「今……華那は……?」

 

 なんとか絞り出すようにして出してきた声で、私に問いかけてきた山吹さん。その声が震えていたのは、気付かないフリをしておく。私は小さく息を吐いてから

 

「今目を覚ましたばかりだからか、状況を理解できてないみたいだったわ。『なんで私、人工呼吸器つけているの?』と思っているようにも見えたわ。しばらくは、容態が安定するまでは、面会はできないわ……」

 

「そう……ですか……」

 

 暗い表情を浮かべる山吹さん。正直、今すぐにでも華那が目を覚ましたのを、その目で確認したいのだろう。華那に残された時間はもう……少ない。それは、山吹さんも理解したようで、体を震わせて涙を流していた。

 

「なんで……なんで……華那が……こんな事に……」

 

「山吹さん……」

 

 私は、その光景を見る事しかできなかった。正直に言って、私も山吹さんと同じ気持ちだったから。抱きしめてあげればよかったのかもしれない。でも……華那の姉である私が、山吹さんを抱きしめて何が言えるというのだろうか。大丈夫?何が大丈夫というのか。華那は今、私達がこうしている間も苦しんでいるのに、大丈夫と言うのは違う。

 なら、ありがとう?それも違う。確かに、華那のことを思ってくれている事への感謝はある。でも、それを今伝えるべき時じゃない。なら、私はなんて声をかければいいのかしら――

 

「すみません……取り乱しちゃって……」

 

「いえ……私もさっきまで泣いていたから、気にしなくていいわ」

 

 気の利いた言葉をかけられない自分が嫌になる。その後も私達の会話は続かなくて、途切れ途切れでしか続かなかった。華那の事や、バンドの事。今後、私達に何ができるかという話しにもなったけれど、ただ、私達にできるのは華那を見守る事。それだけだと思うという結論しか出せなかった。

 

「本当……嫌になるわね。妹が苦しんでいるのに、何もできない自分()でいるのは……」

 

 私はそう自虐的に言うしかできなかった。本心であるし、変われるのならば、華那の苦しみを私に――そこまで考えてしまった。山吹さんもそう考えていたようで

 

「私も……親友だって華那が……言ってくれていたのに……何もできない……」

 

 その後、黙り込む山吹さんと私。いったい、華那に私達は何ができるというのだろうか。それを考えても答えが出る事は無く、私と山吹さんは重い足取りで家路についた。そして、華那との面談が許可されたのは四日後の事だった。

 

「あ……沙綾。来て……くれたんだ」

 

「華那、寝ていていいよ」

 

 ノックをしてから病室に入る。華那が私の姿を見て、体を起こそうとするけれど、私はそれを制止して、ベッドの横に置いてあった丸椅子に座る。意識が戻ってから、華那の姿は本当に弱々しくなってしまった。このまま、本当に消えてしまうのではないかと思うぐらいに……。

 

「体調はどう?」

 

「う……ん。悪くはないかな?アハハ……」

 

 と、苦笑いを浮かべる華那。そう言うって事は、あまり良くないって事。なんで……なんで華那がこんな苦しい思いしなきゃいけないの?

 

「沙綾、そんな顔しないで……私はまだ諦めてないよ?」

 

 弱々しくニコリと笑みを浮かべ、華那は左手で私の頬を触りながら言った。でも……このままじゃ……奇跡でも起きない限り……。そう私が小さく呟いた声を聞いた華那は小さく首を振って

 

「あのね……沙綾。奇跡はね……起きないから奇跡って言うんだよ。現実に起きている事は全部……必然。決められた事なんだと……私は思っているの」

 

 弱々しくあったけれど、諦めた様子ではない華那。私はうっすらと涙を浮かべながら「でも」と言いかけて、華那に止められた。

 

「だからね、これは私が乗り越えなきゃいけない……試練なの。またギターを弾けるようになって……今度こそ……皆と一緒にあのステージに立つ為の……」

 

「華那……」

 

 華那の言葉に、私は何も言えなくなってしまった。涙が零れ落ちて、華那の顔がしっかり見えない。そんな私を見た華那が左手をのばして、私の頭を抱きしめるようにして

 

「だからね……沙綾。そんな思い詰めないで……。いつも通りって訳にはいかないと思うけど……沙綾は沙綾で……ポピパとして……音楽を……いつもの……日常を過ごして……。ね?」

 

「華那……華那っ!」

 

「ごめんねぇ……沙綾……本当、ごめん……」

 

 涙を流す私をあやすように、頭を優しく撫でてくれる華那は、何度も私に謝罪の言葉を伝えてきたのだった。華那は悪くない。そう伝えたけれど、華那は「心配かけているから」って言うだけで、頭を撫で続けてくれるのだった。

 しばらくして、落ち着いた私は、華那に一度だけ取り乱した事を謝ってから、華那にできるだけ日常を過ごす事を約束して、華那に無理をさせない為に、病院を後にした。

 

 帰り道、空を見上げて願う。神様。いるのならお願いです。私の大切な親友を奪わないでください。また元気に、私達と一緒に日常を送れるようにしてください、って――

 もうすぐ冬が来る。この冬を越せれば……きっと華那は――。そんな安直な想いを抱きながら、私は家路についたのだった。

 




前書きのネタは「SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820- Day2」の一幕から。
分かる人いないだろうなぁ……。
まっ、前書き読んでる人といないからいいか(白目

後、一応ですが前書きで替え歌やったので楽曲使用入力してあります。ご了承ください。
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