読者の皆さん「(おっ。ついに空気読むつもりだな!勝った!第三部完!!)」
シリアスさん「もっとシリアス度高めよう!!」
読者の皆さん「なんでやねん!!」
前書きのネタが尽きた
_(:3」∠)_
華那が髪を切った――その情報は、華那が髪の毛を切ったその日のうちに5つのバンドメンバー全員に伝わった。驚く人が大半を占めていたと思う。正直、あたしは髪の毛を切ったぐらいで驚く事かな?って、思ってしまった。
まあ、あたし自身が華那とそんなに深いつながりが無いってのも影響していると思う。華那とハロハピって、どうしてもタイミングが合わなくて、なかなか話す機会がなかった。正直、あたしはあんまり他人と関わりたくないっていうのはあったけど、華那は少し話しただけなのに、少し関わってもいいかなって思える存在だった。でも、タイミングがなかなか無かった。
花音さんは、時々迷子になっているところ助けてもらっていたらしいから、結構仲が良いらしいけど。あと、薫さんは同じ学校という事で、結構話していたらしい。あれ?あまり関わってないのって、あたしとこころ。はぐみだけなんじゃ?
「あ……美咲さん……こんにちは」
そんな事を考えつつ、あたしが単独で病室に見舞いに行くと、華那は上半身を起こして本を読んでいた。どうやら、今日は体調がいいらしい。
「こんにちは、華那。……今日は体調いいみたいだね」
「ええ……今日は……いいんです」
あたしの問いかけに、笑みを浮かべながら答えてくれる華那。でも、CiRCLEで少し話した時や、入院したばっかりの時と比べて、かなり痩せて――ううん、やつれているし、声にも力が無い。……それだけ厳しい状況なんだと、あたしは思ってしまった。
華那は知らないけど、こころ――弦巻家の
「――でさ、またこころがさ――」
「あはは……弦巻さんは……相変わらずだね」
見舞いに来たのに、愚痴を華那に零すあたし。いや、華那に最近何があったかって聞かれたから、最近こころの突拍子もない案から、あたしや花音さんが大変な目にあった事を話しただけ。なんだけど、途中から愚痴っぽくなってしまったのは否定できない。そんな話しだというのに、華那はころころと笑いながら、話しを聞いてくれている。ずっと、病室にいるってのはやっぱり退屈なのかもしれない。
「そういえば……美咲さんが……見舞いにきてくれるの……初めてじゃない?」
と、会話が途切れた時に華那が突然聞いてきた。うん。正直、聞かれると思ってた。だって、あたしと華那は他の人に比べれば、そんなに深い関係じゃないから。でもさ……あたしは
「友達なんだから当たり前でしょうが」
「ほえ?」
へんてこな声を上げて首を傾げる華那。あ、ちょっとショックかも。あたしは友達だと思っていたけど、華那は思っていなかったんだね。よよよ……。
「い、いや……そういうわけじゃ……ないよ?ほんと……だよ?」
「いや、なんでそこで疑問形」
慌てた様子の華那の様子がおかしくて、私は笑いながらそう言った。華那も、一瞬ポカンとしていたけれど、すぐに小さく笑っていた。でも、本当にあたしは華那とは友達だと思ってる。それだけは本当だから。
「うん……ありがとう……美咲ちゃん」
あ、さりげなく「さん」から「ちゃん」に呼び方変わった。華那なりの線引きなんだろうと思いながら、その後も華那の負担にならない程度に会話をして部屋を後にした。……のだけど、華那の部屋を出てすぐに、六十代ぐらいの女性が華那のいる病室へと向かっていて、あたしとすれ違ったのだった。華那の親戚?そんな疑問を思いつつ、あたしは病院を後にするのだった。
「……ふう」
今先ほどまで、美咲ちゃんと話しをしていた私は小さく息をついた。話しただけなのに、疲労感が強いのは、それだけ体力が落ちているという証拠なのだろう。話す時も、どうしてもゆっくりとした口調になってしまう。今までみたいに、大きな声も出せない。
「本当……しんどいね……」
「なら諦めるのかい?」
「え……」
突然、聞き覚えのある声がしたので、顔を上げて入口の方に視線を向ければ、そこには――
「都築……おばあちゃん?」
まさかの人の登場に私は驚くしかなかった。ライブハウスSPACEでお世話になったオーナーさん。隣の県でライブの時にお世話になった窪浦のお婆ちゃんとも知り合いで、仲が良い。でも……ライブハウス畳んでから、連絡取っていなかったのにどうして?
「まりなから聞いたよ。華那……あんたが入院しているってね」
「え……おばあちゃん……まりなさんと……知り合いだったの?」
驚く私に、少し呆れた表情を浮かべながらおばあちゃんは
「知り合いも何も、あいつは私の弟子だよ。ライブハウスの運営や、バンドへの対応を一から教えたんだからな」
そう……だったんだ。私、SPACE畳んだ後も、何回か都築おばあちゃんに会いにSPACEに行ったんだよ?でも、中は真っ暗で、管理地って看板立っていて入れなかったし……。連絡先も分からなかったし……。
「それはすまなかったね。でも、その時の悩みは解決したんだろ?華那」
「うん……皆が……いてくれたから」
姉さんと喧嘩した時、どうすればいいかなって思って足を運んだ。もう会えないと思っていた。そういう意味では、こうやって会えたのは嬉しい。
「華那……あんた……やりきったかい?」
真剣な表情で私に問いかけてくる都築おばあちゃん。私はゆっくりと、左右に首を振って
「まだ……やりきって……ない……。私……まだ……夢……諦めてない……から」
確かに今の状況は辛いけれど、まだ……まだ私は完全に諦めたわけじゃない。いつか、必ず、姉さん達と一緒にステージに立つ……。
「……そうかい。華那、あんたは強い子だね」
「わふっ……そんな事……ないよ?」
突然、頭を撫でられて、私は変な声を上げる事しかできなかった。でも、以前のような撫で方ではなくて、凄く優しい撫で方だったのは、病気の私に対するおばあちゃんなりの気遣いなんだろうなと勝手に思った。
「で……だ」
「?」
都築おばあちゃんは、何か取り出して、私に渡してきた。これは……手紙?誰からだろうと思って裏返してみると、そこには「|窪浦ヒカル」と書かれていた。え……おばあちゃんから?と、私が動揺していると
「今日は来れなかったけれど、必ず見舞いに来るとさ。それと……『来年のFWFには間に合わせな』だと言っていたよ」
「あはは……おばあちゃん……らしいな……」
呆れた口調でおばあちゃんからの言葉を伝える都築おばあちゃん。そうだよね。来年のFWF予選会で、必ずRoseliaの良さ、Roseliaの音楽を認めてもらわなくっちゃいけない。その為には、私も間に合わせないと……。だって、約束したのだもの。来年は参加者として――
「華那ちゃん!!」
「華那ちゃーん。元気ー?」
「ちょっと、若菜。声大きいわよ」
と、都築おばあちゃんと話していたら、乱入者というか、お見舞いに
なんでも、三人は隣の県だけれど、SPACEの噂は聞いていたらしく、いつか自分達もSPACEのステージに立ちたいと思っていたらしい。というか、隣の県にすら名が届いていたんだ……。都築のおばあちゃんはその三人の様子を見て、小さく笑った後に、また来ると言って帰ってしまった。もう少し……話したかったな。と思ったけれど、おばあちゃんも忙しいから仕方ないよね。
「ねえ……華那ちゃん、大丈夫なの?」
「そうそうー。私達も心配だったんだよー?」
「若菜……ちょっと場を読みなさい」
「あ、アハハ……」
三人の怒涛の勢いに私は苦笑いを浮かべる事しかできなかった。こういう時に姉さんか沙綾がいれば、少し楽なんだけどね。この場にいない人の事を出すのはやめておこう。うん。三人は誰からの情報?
「ポピパの皆が教えてくれたんだ。やっと期末テストも終わったし、三人で行こうってなったんだ」
「うんうん。若菜本当心配だったんだよ~?」
「本当なら、すぐにでも行きたかったんだけどね……。やっぱり隣の県から来るってなると、三人の都合が合わなくて……ごめんね」
「だいじょぶ……隣の県からはやっぱり……遠いよね……ありがとう……三人とも」
隣の県からやってきてくれただけでも嬉しいし、無理だけはしないでほしいかな。とも伝える。三人ともすごく複雑そうな表情を浮かべていたけれど、きっと、私が無理をしていると思っているのかな?無理はしてないよ、ホントだよ?
「若菜……沙綾ちゃんに連絡!」
「あいあいさー」
「ちょ、待ってよ二人とも!?」
香織ちゃんが若菜ちゃんに指示を出して、若菜ちゃんがすぐさまスマホを取り出して連絡を取ろうとしていた。それを見た由紀ちゃんが慌てて二人を止めようとしていて、本当仲が良いんだなぁって場違いな事を思う私でした。でも、なんで沙綾?とも思った。
その後、少しだけ談笑して、三人は帰って行った。なんかついでにCiRCLEに行って、ライブやっていたら見ていくそう。勉強熱心だなぁと思いながら、楽しんでいってねと伝えて、三人を送り出した。
Kolor’sの三人が帰ってから、私は少し疲れたのでベッドに横になって小さく呟いた。
「そっか……もう期末テスト……終わった……のか……」
そう。二学期の期末テストが終わったという事は、もうじき冬休み。諦めてはいないけれど……皆と一緒に卒業ってのは難しいかもしれない。今の状態だと、まだ治療には時間がかかるから、出席日数やらテスト受けてないって事で、留年って扱いになるのかな?
「そっか……このままだと……皆の……一個下に……なっちゃうのか」
天井を見ながら呟く。ただ、いつどうなるか分からない状態なのは、自分自身がよく分かっている。先生はそうならないって言ったけれど、次に意識を無くすほどの事があればきっと――
そう考えた時、背筋が寒くなる錯覚が私を襲った。ゆっくりと体を起こして首を振って、その考えを否定する。まだ。まだ私は諦めてない。それに、この病棟には、私より小さい子も小児がんと闘っているんだ。年上の私がそう簡単に諦めてどうするの。
そう、自分に言い聞かせながら窓から見える夕焼けを見る。もうじき、寒さと共に雪が舞い、冬が本格的に訪れる。その季節が過ぎるまで時間はあるけれど、また桜が咲く春がやってくる。
本当にあっという間に季節は巡る。ついこの間、高校に入学したばっかりだと思ったんだけどなぁ。春はバンドメンバー集めで必死に動き回っていたっけ。夏は……FWFの予選会に行って、姉さん達の演奏見て……。秋は吹奏楽部の皆さんと演奏会……。と、そこまで考えてから、私は気付いた。
「まだ……演奏会……の動画見てない……」
そう。植松さんから頂いたDVDをまだ私は観ていない。自分がどんな演奏していたのか。どんな表情をしていたのか。会場の皆はどんな表情をしていたのか。今度、姉さんに持ち運びの再生機とDVD持ってきてもらおう。それで一緒に観よう。
「それと……ちょっと……やってみようかな?」
私は、ある事を考えていた。これなら、クラスの皆が病室に来なくても、メッセージは送れるし、私が元気だって姿見せられるよね?そうと決まれば、姉さんに頼んでみよう。と、いう事で、姉さんにスマホでメッセージを送る。
しばらくしてから、姉さんから返事が来た。スマホの画面には「分かったわ。明日、出来るように用意するわ」との文章が表示されていた。私は小さく笑みを浮かべて、姉さんに「ありがとう」と返した。
さてと、クラスの皆に伝えるメッセージを考えないといけないね。ノートをとって、手当たり次第に、今伝えたい事と、思い浮かぶ単語を書き出していく。それをつなぎ合わせてまともな文章にしていく。ただ、ペンを持つ手に力があまり入らないから、書く時間はかなりゆっくりになってしまったけれど、静かにその様子を見ていた看護師さん達が言うには、とても楽しそうな表情を浮かべていたとの事。覗いていたんですか!?って、こころの中でツッコミを入れた私は悪くない。うん。
もうじき二学期の終業式が近づいてきていたある日。帰りのショートホームルームで、上条先生が何故かプロジェクターとノートパソコンを持ってきた。それを見たあたし達のクラスのほとんどは何事かって思った。あたし自身、なにを見せられるのかと、疑問を抱いていた。今日は華那の見舞いに行きたいのに、なんでそういう時に限って……。そうあたしが思っていると
「実は、今日。入院中の湊から、全員宛にメッセージが届いてな。それを見てもらおうと思う」
「え……」
先生の言葉に、教室がざわめく。あたしも素っ頓狂な声を上げたと思う。華那からのメッセージ?なんで急にそんなものが?突然の事に困惑するあたし達をよそに、先生はパソコンとプロジェクターとコードで繋いで準備していた。
しばらくして、窓側の子にカーテンを閉めるように指示を出して、全員に静かにするようにと言ってから、先生がマウスを動かした。その直後に、黒板に華那の病室が映し出され、ベッドの上で上半身だけ起こしている華那の姿が映った。
『姉さん。もう始まっているの?』
『ええ。もう始まってるわよ』
どうやら動画を撮っているのは湊先輩のようで、そんなやり取りが入っていた。その時点で、普段ならみんな笑うのだろうけれど、今回はみんな笑えなかった。
あたしは華那の見舞いによく行っていたから、華那の状態を理解はしていたけれど、大勢で行くのはダメだって事で何人か代表者を決めて、クラスとしてお見舞いに行っただけだったから、華那があれだけ痩せている姿を見れば、誰だって言葉を失うと思う。
『えと……みんな……元気にしてるかな?山ちゃんと……めぐちゃん。ノッブちゃん達……が代表で……お見舞いに来てくれて……ホント嬉しかったよ。でね……そろそろ……学校も……終業式だから……今回こうやって……動画で皆に……近況報告しておこうって……思って』
と、そこまで言って、一息つく動画の華那。あたしは華那が普通に話す事すらかなり体力を使う事を知っていたけれど、他の子達はかなりショックを受けているように見えた。動画の華那は笑みを浮かべて続けた。
『……姉さんと上条先生に……お願いして……撮っている……訳なんだけど……アハハ……ごめんね……ちょっと……話すの……ゆっくりで……聞きにくいかも』
「そんな事ないよ」と誰かが泣きながら言った。あれだけ元気だった華那がここまで弱々しくなっているだなんて誰が思うだろうか。クラスの人間のほとんどが泣いていた。ただ、尾田さんと沖野さんの二人は見舞いに行っていたからか、尾田さんは目を瞑り腕を組んで、沖野さんは背筋を伸ばして、黙って動画を見ていた。
『もう……十二月……中旬で……みんな……期末テスト……どうだったかな?……私はね……病室にいるけど……こうやって元気……だよ』
と、笑みを浮かべている華那。正直、みんなそんな訳あるかと言いたいはずだけれど、黙って動画を見ていた。
『うんとね……ちょっと……治療が……長引いていて……三学期……戻れるか……分からないんだ……だから、皆と……一緒に進級は……難しいかも……』
その言葉にあたしはハッとした。そうだ。華那は今入院していて、学校にまったく登校できてない。という事は、出席日数が必然的に足りなくなるし、期末テストだって受けてないから、評価もされない……。
『でもね……学年変わったとしても……皆とは……クラスメイトだと……思っているから……もし、新学期に……私が登校して会ったら……今までと同じように……接してほしいな……なんてね』
そう言いながら笑う華那。その後も、自分自身じゃなくて、あたし達クラスの事を心配した発言が出てきて、全員、静かに華那の言葉を聞いていた。クラスの半数は泣いていた。
『だいじょぶ……心配しないで……。私、必ず……戻るから……だから皆……学校生活……楽しんでね……湊華那でした』
と、最後にそう言って右手を弱々しく左右に振る華那。その手はかなり細くなっていた事に、何人気付いただろう。動画が終わっても、クラスの雰囲気はお通夜状態だった。それを見た先生が教壇を一回叩いて、あたし達の視線を自分に向けさせた。
「湊の状態に気落ちする気持ちも分かる。だがな……湊は前を向いて病気と闘っている。その湊が今のお前たちを見たら心配するだろうな……。お前達、病人に心配させるつもりか?」
厳しい言葉が飛んできた。でも、確かに先生の言う通りでもある。華那は病気と闘っているのに、あたし達、クラスメイトに動画を送って、心配するなって言っていたじゃん。その華那に心配させちゃダメだよね。
「まあ、すぐに気持ちを切り替えるなんてできないと思う。だが、湊が前を向いているんだ。お前達も一歩……いや、半歩でもいい。前を向いて踏み出そう。湊が戻ってきた時に、心配されないように――な」
先生の言葉に、それぞれが返事をする。涙声の子もいれば、力強く返事をした子。本当それぞれだった。でも、皆思う所があったようだ。あたし自身も、先生の言葉と華那の動画に思う所はあった。だから、華那。戻ってきた時に、あたしの姿キチンと見てよね。一歩と言わず、何歩か先に行くから。そう心に誓ったのだった。
ただ、唯一の不安要素があるとすれば……医師の診断通りなら……華那の余命が残り一ヵ月ちょっとしかないという事――