Sisterhood(version51)   作:弱い男

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シリアスさん「どうも、パスパレのデスボ担当のシリアスです」

読者の皆さん「いや、それ。一生出番無いやつ!?ってか、それ某動画のパクリ!?」

シリアスさん「その動画、知っているのかよ!?」


もう(前書き)どうにでもなれ(投げやり


#66

 十二月二十四日。クリスマス・イブという、宗教的な意味では、現代日本で多くの人が行っているパーティーとは全く違う意味合いを持つ日。そんな堅苦しい事を少し考えた私だったけれども、今は病室で妹の華那と一緒にノートパソコンのネット機能を使って、()()()()()()()()()とビデオ通話?というものをしていた。

 

「まりなさん……声届いて……ます?」

 

『うん、大丈夫だよ!バッチリ届いてるよ』

 

『華那っ!私の声、姿見えてるぅ!?』

 

『だぁぁ!!耳元で大きな声出すんじゃねぇ!!バ香澄!!』

 

 と、いつも通りのやり取りをする戸山さんと市ヶ谷さん。ほかのメンバーもかわるがわる画面に向かって手を振り、華那に声をかけていた。パスパレの数名は仕事で集まれなかったらしいけれども、今日は五バンドが集まっているので、画面越しでもラウンジが賑やかで、狭く見えた。

 と、ちょうどその時、ラウンジに設置しているカメラ――パソコンの前に黒い物体が突然現れて、何も見えなくなってしまった。故障かしら?と思っていたら

 

「あ……クロちゃん……」

 

『みゃうん?』

 

 華那がその物体が何かに気付いて、その子の名前を呼ぶと、呼ばれ本人が可愛らしい鳴き声を上げた。ああ……にゃんちゃんだったのね。まだ、まりなさん達が保護しているので、クロはラウンジでのびのび過ごしている。

 まりなさんが言うには、かなりお利口らしく、ゲージから出てもラウンジ内をうろつくだけで、トイレなどのしつけも全くしなかったのに、しっかりトイレに行くとの事らしい。でも、保護した時は子猫だったけれど、結構大きくなったわね。今、まりなさんに抱かれて、私達に見えるように抱かれている。

 

「げんき……そうだね……」

 

「ええ。保護した時に比べて、かなり大きくなったわよ」

 

『にゃ!』

 

 と、まりなさんの腕の中で前足を出して暴れるというより、じゃれるクロ。まりなさんも慣れた様子で、クロをあやしている。な、慣れたものね……。いつか私もあのぐらいにゃんちゃんに……。

 

『そっちも準備大丈夫なようだから、()()()()()()()()!』

 

「……ええ。お願い、まりなさん」

 

 始まるまでに、結構時間かかったけれども、まりなさんが進行してくれたおかげで、()()()()()()()()()()()。今日、全員が集まったのはクリスマスパーティーだから――というわけでなく、十月に華那が吹奏楽部と一緒にやった演奏会の映像を見るため。

 文化祭の時に映像を華那は、部長の植松さんからもらったのだけれども、体調面や治療や検査などで、なかなか見るタイミングが無く、今日になった。本当なら、病室でひっそり見る予定だったのだけれども、誰から聞いたのか、弦巻さんが

 

「みんなで見ましょう!!間違いなく楽しいものになるわ!!」

 

 弦巻さんがそう言い出したので、ネットを使っての配信ライブ的なものになったのだった。そう簡単に準備ができるわけがない――と、始めに思った私に奥沢さんが「こころなら、やりますから」と、疲れ切った表情で言っていたのだけれど、その時の私は首を傾げる事しかできなかった。

 奥沢さんの言葉の意味を理解したのは翌日だった。華那の見舞いに来た私が目にしたのは、黒いスーツ姿の人達が、華那にノートパソコンでネット会議システムを使って、演奏会を他の人と同時に見る方法を教えていたのだから。

 

「あ……姉さん……あのね……」

 

 と、笑顔を浮かべて私に説明してくれる華那。スーツ姿の方々も華那の説明に捕捉を入れるようにして、説明は華那主体にしてくれていた。本当……弦巻さんの行動力には驚かされたわね。

 今回は、見る時に弦巻さんの護衛兼補佐役のスーツの方々が配信をサポートしてくれるとの事らしい。……確か、演奏会の時も会場の収容人数の関係でチケット購入できなかった人達のために、配信という形をとっていなかったかしら?

 

「――という事なので、後は華那さんのタイミングで演奏会の映像が流れるようにしますので」

 

「ありがとう……ございます……それと……」

 

 説明を受けていた華那は笑顔を浮かべていたけれど、すぐさま少し暗い表情になって、言いにくそうにしていた。どうかしたのかしら?でも、すぐに意を決したのか、スーツ姿の方々に頭を下げて

 

「ごめんなさい……ご迷惑を……おかけ……して」

 

「え……あの、華那さん。あ、頭を上げてください。我々も華那さんが喜んでくれるのが一番なので……」

 

 と、まさかの事態だったのだろう。華那の隣で親切に説明していた女性がオドオドといった形で華那に頭を上げるようにお願いしていた。まったく……華那は。そう思いながら、私は華那に声をかける。

 

「華那。華那が迷惑かけているわけじゃないわ。今回は、華那と一緒に皆で見たいという思いからやるのだから、素直に『ありがとう』でいいわ」

 

「姉……さん……うん。その……ありがとう……ございます」

 

 と、改めて頭を下げて礼を言う華那。黒服の方々はそれを聞いて、安堵の笑みを浮かべていたのだった。本当……華那の自己評価の低さはどうにかしないといけないわね。

 

「それじゃあ……はじめて……ください」

 

 その華那の言葉に、私は現実に引き戻される。どうやら、向こうの準備が整ったようだ。それと同時に、画面が暗くなった。右下に小さく正方形の枠があり、そこにラウンジの様子が見える仕組みになっていた。

 本当、テレビでよく見るワイプ?だったかしらね。その仕組みまで使うのだから、かなりお金がかかっていそうなのだけれど……気にしたら負けね。多分……。

 

 最初に文字が浮かんできた。指揮者植松ミカさんから始まって、次はギターの華那の名前。そして次が各オーケストラ編成のメンバーときた。その表記が何故か英語表記だったのはプロの映像作品を意識しての事だと思う。その後に出てきたのはステージ裏の映像。全員で円陣を組んでいる場面だった。

 

『それじゃあ、今日の演奏。楽しんでいきましょう!!羽丘吹奏楽部!!』

 

『ファイト!!』

 

 全員で掛け声を出している姿。その中に一人、私達Roseliaと同じ衣装に身を包んで、緊張した表情を浮かべた華那が植松さんの隣にいた。植松さんが何か言いながら華那の肩を揉んで、緊張をほぐそうとしていた。まったく……。

 

「……植松先輩……のお陰で……緊張少し……ほぐれたんだ……」

 

「そうだったのね……」

 

 華那が懐かしそうに、解説をしてくれた。そして映像はステージを正面から撮っているカメラからの映像になって、吹奏楽部の部員が順番にステージに出てきた。植松さんが吹奏楽部の最後に入場し、そして最後にギターを持った華那が入場し、自分の位置に立って会場へ一礼した。

 映像の中の華那が持っているギターは、あのレスポールのアクアブルーだった。このギター、今回が初めてのお披露目だったのよね。植松さんが指揮棒を振り、演奏が始まった。始まってすぐに、私は華那達の演奏に引き込まれた。

 

 最初に演奏したのは#1090。華那の演奏は丁寧に、一音一音大切に。触れて壊れてしまわないような丁寧さ――で、だ。その時の私は、華那たちの演奏を見る事はしないで自分の出番に備えて、裏で発声練習や、最後の打ち合わせなどしていたから、ここまでの演奏をしていたのかと驚きを隠せなかった。

 

 イチブトゼンブのオーケストラアレンジ。そしてMC入ってからの紅蓮華、REDの流れ。どう考えても赤繋がりよね?それを聞いたら、華那は苦笑いを浮かべていた。ええ、言わなくてもわかるわ。どうせ、植松さんの提案でしょうね……。

 

 ただ、まだ四曲だけしか見ていないけれども、華那の演奏技術。夏の頃に比べても格段と上がっているのが分かった。人の心に届くというのかしらね。こう……音色で訴えかけてくる。そんな感覚に私は陥っていた。それに……華那は本当に楽しそうに演奏していた。

 本当……なんでこうなってしまったの?そんな思いが私の中に生まれた。でも、今は華那にそれに気付かれるわけにはいかない。華那も、ラウンジにいるみんなも楽しみにしていたのだから、私一人の感情で台無しにするわけにはいかない。

 

 その後も、演奏は続いていき、Roselia(私達)が登場する場面になった。あの時、歌ったOrchestral Fantasiaでは、かなり感情を込めて歌った影響で、予定していた動きじゃない動きを私がしたので、カメラがついてきていなかった。

 

「久々……だよね。……感情……ここまで込めて……歌ったの」

 

 華那が目を細めて、そう呟いた。言われてみれば、華那と一緒に演奏した時に、ここまで感情を込めていたかと言われれば、込めていなかったと言わざるを得ない。あの時は、ただひたすら正確に歌おうとしていて、歌い方として何が正解かだなんて知らずにいたのだから。

 

「そうね……久々に、華那と演奏できたから、自然と力が入ったのかもしれないわね」

 

「それは……違うよ……姉さん……」

 

 私の言葉を否定する華那。その言葉に、私は首を傾げながら、華那の方を見る。華那は映像を見ながら、まるで子供の成長を遠くから喜んでいる親の微笑みのような……そんな慈愛の表情を浮かべながら

 

「Roseliaを……組んでから……姉さんは……良い意味で……変わったよ。音楽と……向き合うのも……一つの視点……じゃなくて……多くの視点から……音楽と……向き合える……ように……なったんだよ」

 

「……そう……ね。これも、華那のお陰よ。ありがとう」

 

 そうね。確かにRoseliaを結成してから、本当に多くの事を経験してきた。辛い事も、嬉しかった事もあった。でも、リサや紗夜。燐子にあこ。誰か一人でも欠けてしまっていたら、Roseliaはここまで続かなかったでしょうね。だから、これも全部、華那のお陰よ。そう言いながら、私は華那を撫でる。

 華那は、少しくすぐったいようで、目を細めながら映像を見ていた。そうしているうちに、最後の楽曲になった。最後楽曲は華那の尊敬するギタリストのグループの楽曲「兵、走る」だ。

 

「桜吹雪……本当……この景色……綺麗……だったんだよ」

 

「ええ」

 

 桜吹雪を意識した、桜の花びらの型をとった紙吹雪。その中で演奏している華那は笑っていた。本当に演奏が、この景色を見られている事に……そして、この空間にいられることが嬉しそうに。

 

「だから……また……この景色……見るために……あきらめない」

 

「華那……」

 

 まだ、二ヵ月前の事なのに、どこか懐かしそうに話す華那。それと同時に、まだ諦めていないと。でも、華那も気付いているはず。もう、残された時間が――

 それなのに、まだ諦めてないと、病気に打ち勝とうとしている。それがどれだけ苦しくて、険しい道だと理解しているはずなのに。私はその言葉を聞いて、目が熱くなった。華那の前で泣く訳にはいかない。今日のこの上映会。華那は楽しみにしていたのだから、心配かける訳にはいかない。

 

「姉さん……だから……姉さんも……前に進んでね?」

 

「ええ……約束するわ」

 

 笑みを浮かべて、私を見る華那。それに応えるよう、できるだけ笑みを浮かべる。きちんと笑みを浮かべる事ができたのだろうか。そう不安に思ったけれども、華那が笑みを浮かべていたので、私もうまく笑みを浮かべる事が出来たのだろう。

 演奏が終わり、エンドロールが始まった。その時流れていた楽曲は、演奏会で演奏しなかった楽曲だった。これは……

 

「光芒?」

 

「いつ……録音して……たんだろ?」

 

 華那も驚いていた。なんでも、何回か練習していて、アレンジも出来てはいた。だけど、この楽曲がアルバム楽曲という事もあり、知名度の問題から演奏を断念したそうだ。完成度は高い。それに、この楽曲の歌詞は――

 

「だい……じょぶ……。まだ光は……見えている……よ」

 

 華那はそう言って笑う。この曲をエンドロールに使ったのは偶然なのだろう。でも、今の華那への、強いメッセージとも捉える事ができる――そんな楽曲選択だった。

 

 

 

 

「華那、本当楽しそうに演奏してるよね!!」

 

「ええ!笑っているもの!」

 

 吹奏楽部の演奏会の上映を見ていた、香澄と華那の演奏をこころが自分の事のように話していた。最後、エンドロールに未演奏曲が使用されていて、あまり知られていない楽曲だから、皆の反応は乏しかった。でも、私と紗夜先輩はあのアーティストの楽曲だと気付いていた。

 

「山吹さん、気付きましたか?」

 

「はい……。光芒ですね……」

 

 華那が好きなアーティストの楽曲。二〇〇七年に発売されたアルバム楽曲の一つ。ファンの中では評価が高い楽曲らしいけれど、一般認知度は低い。でも、私と紗夜先輩は華那から教えてもらって知っていた。その歌詞の意味も……。

 

「偶然なのでしょうけれど……華那さんもきっと、吹奏楽部からのメッセージとして受け取っている事でしょうね」

 

「はい……」

 

 光芒の歌詞を思い出しながら、私は紗夜先輩の言葉に頷く。光芒の最後の大サビの部分の歌詞が、病気と闘っている華那へのメッセージと思えた。エンドロールも最後に入り、ギターソロ入った途端、黒い背景にスタッフ名の文字だけだったのが、華那達の練習風景が映し出されて、華那が演奏するギターソロシーンが映し出された。

 

『光を求め 歩きつづける

君の情熱がいつの日か

誰かにとっての 光となるでしょう

誰かにとっての 兆しとなるでしょう』

 

 

 最後の大サビのメロディを華那が薄目にしているのだろうけれど、目を瞑って演奏していく。そのメロディと華那の演奏風景は切なく、それでいて力強いものだった。その演奏を見ていた皆、華那の演奏に引き込まれるように真剣に見ていた。何人かは泣いているようで、すすり泣く音が聞こえてきた。

 華那……華那の演奏、誰かを元気づけて、感動させられるぐらいすごいんだよ?だから……だから、諦めないで。また、あのステージに立てる日が来るから――

 

 その後は、華那と友希那先輩とオンライン上で今回の演奏会についての感想を言い合ったり、雑談をしたりしたのだった。途中で、華那と友希那先輩が騒ぎすぎだと、看護師さんに注意されていて、ラウンジにいた皆で笑ってしまった。そんなに騒いでいるようには見えなかったけれど、病院内って事で、注意的なものだったのだと思う。

 こんな穏やかな日が続いて、華那が元気になって退院できる――そんな日が来るようにと、私は心から願わずにはいられなかった。でも、神様って本当に不平等で、クリスマスが終わって、年末。そして新年になって数日後。華那の体はどんどん弱まっていくのだった――

 

 

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