Sisterhood(version51)   作:弱い男

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シリアスさん「唯我独尊。我が道を征く。終わりの始まり。始まりの終わり(?)と、言う訳でドシリアスだよー」

読者の皆さん「いい加減にして!?」

シリアスさん「思いっきり楽しんでいってください(某ヴォーカリスト風に)」

読者の皆さん「無理言うな!?」




#68

 その日、いつも通り――と言っても、入院してからの日常になるけれど――起床して、看護師さん達と会話して、未完成だった詩を書き上げる。先週の土曜日に、姉さんと紗夜さん。リサ姉さんと有咲。そして私と沙綾でBrotherhoodという楽曲を演奏してから、上手くまとまらなかった分が思い浮かんで、次の日から体調と相談しながら書き上げていた。

 書き上げた詩を何度も読み返す。うん。これなら()()()()()()。後は楽曲だけ。さあ作曲だ――と、ならないのが現状。

 

「ゴホッゴホッ」

 

 痰が絡んだ咳を何度もする私。先週の土曜以降、咳の頻度が多くなった。体はまだ動くからだいじょぶと思うけれど、もう……近いかもしれない。でも、まだ完全に治る確率が無くなった訳じゃない。ここで私が諦めてしまったら、支えてくれている姉さんや沙綾達に合わせる顔が無くなってしまう。

 

「だから……まだ……頑張ら……なきゃ」

 

 窓の外の景色を見ながらそう呟く。あ、雪が舞っていたんだ。全く気付かなかったな。なら、ニュースで大騒ぎしているかも。関東、主に都心かな?そこで雪が舞っただけで騒ぐのだから、雪国の人達の暮らしは本当に大変なのだろうと、雪を見て思う私だった。

 今日は土曜日だけれど、羽丘(姉さん達)花咲(沙綾達)も学校行事があるらしくて、午前中は誰も来ない事が確定している。もうちょっと詩を考えてみようかと思ったけれど……今の私にはこれ以上の詩を書ける自信が無かった。

 

 ううん。違う。自信じゃない。気力が無いんだ――

 

「分かって……いる……つもり……だった……んだけど……な」

 

 自虐的な笑みを浮かべながら、そう私は呟いて外を舞っている雪を見ていた。午前中はこの雪を見て、時間をつぶそう――そう考えた時だった。

 

「っ!?ゴホッゴホッゴホッゴホッ!!」

 

 突然喉が熱くなったかと思ったら、咳が止まらない。口を押えた手の隙間から血が流れ落ちる。これは――あの時と――

 

「華那ちゃん!?」

 

 たまたまなのだろうけれど、私の病室の前を通りかかった看護師さんが、私の容態に気付いてくれたようで、血相を変えて私の名を呼びながら入ってきたところまでは覚えているのだけれど、そこでプツリと私の意識は途絶えた。それが――という事を知る事もなく――

 

 

 

 

 

 私達は土曜日だというのに、今日は学校に来ていた。なんでも、学校創立何周年記念行事の為に、OGを呼んだとか何とかで、講演会が行われるそうだ。そうだというのも、私は正直に言ってまともにその講演会について聞いていなかった。というのも、華那の誕生日が近づいてきているという事で、ポピパのメンバーと私達Roselia、そしてアフグロのメンバーを中心に、盛大に誕生日会をしようという話しになっていた。

 

 病人なのだから、盛大に祝うのは無理でしょう?と、私が呆れながら言ったら

 

「でもでも!病院にずっといる華那を元気づけたいんです!!」

 

「華那を元気づけたいんです。友希那先輩……お願いします」

 

「あたしも……華那の笑顔が見れるなら……やったほうがいいと思います」

 

 と、戸山さんに山吹さん。そしてアフグロを代表して美竹さんにまで言われてしまえば、私も承諾するしかなかった。というか、リサや紗夜達は準備に取り掛かっていたらしく、当日に私を呼びだすつもりだったらしい。なんで、私を呼びだすつもりだったのかと聞けば、

 

「サプライズになるじゃん?」

 

「ええ、サプライズですね」

 

「……」

 

 リサと紗夜の言葉を聞いて頭を抱えた私は悪くないはずよ。紗夜も華那の事になると突拍子もない事を行うようになってしまったので、注意しなければいけないわね。やりすぎ……だと。

 

『――で、羽丘学園の三年間が今の私を――』

 

 何かの分野で有名になったOGが講演をしているのだけれども、私の頭には全くと言っていいほど話しが入ってこなかった。本当なら、華那の見舞いに今すぐにでも行きたい。あの子が少しでも寂しい思いをしないですむようにしてあげたい。そう思っていたから。

 

「湊……湊……」

 

「?上条先生?」

 

 講演の途中だったのだけれど、華那の担任である上条先生が私を手招きしながら、小さな声で呼んできた。その時点で私は嫌な予感がした。上条先生が私を呼ぶ――華那の身にに何かあったのではないか?そんな嫌な予感――

 

「こっち来てくれ。説明はするから」

 

「……分かりました」

 

 指示に従い、前を横切る事になった子に「ごめんなさい。通るわ」と小さく言って、私と上条先生は講演が行われていた体育館から出る。上条先生の歩く速度は、夏休みに華那と一緒に忘れ物を取りに行った時のように、ゆっくりではなく、何か焦っているような――かなりの速足だった。しばらくして、生徒玄関まで来ると上条先生は歩みを止め、私を見て

 

「今、病院から連絡があって……湊妹が危篤*1状態……との事だ」

 

「え……」

 

 危篤?誰が?昨日まで、私に話しかけて来てくれていた華那が危篤?その言葉を聞いて私は頭の中が真っ白になってしまった。その後の事は、よく覚えていない。上条先生が運転する車に乗ったのだと思う。その前に、何か上条先生と話したと思うのだけれど、私が気付いた時には華那が運ばれた集中治療室の前に立っていた。

 

「華那……」

 

 看護師さんや医師の石田先生が行ったり来たりして、何とか華那を救おうと動いてくれていた。華那の呼吸は不規則で、それでいて弱々しく、今にも消えてしまうのではないのかと思うぐらいの呼吸だった。

 人工呼吸器もつけられ、ベッドの横には心電図モニターと呼ばれるものが設置されていて、一定のリズムで機械音が鳴っていた。その機械音が華那が(かろ)うじて生きていると、教えてくれていた。

 

「あ……先生」

 

「友希那ちゃん……。ご両親はまだ……だよね?」

 

 集中治療室から出てきた石田先生が、私にそう聞いてきたので、小さく頷きながら「まだです」と返す。石田先生は眉間に皺を寄せて「そう……よね」と、呟いてから

 

「全力を尽くすから、友希那ちゃんは……華那ちゃんの事……信じであげて」

 

「先生……分かりました……」

 

 本当の事を伝えるか悩んでいる様子の石田先生。だって、その表情が今にも泣きそうな、そんな表情に見えたのだから。その表情で、華那の容態はかなり危険なのだと、医療に詳しくない私ですら理解してしまった。それと同時に、私にできる事が全くない事にも。

 

 華那が眠る、集中治療室の前に設置された椅子に座り、祈るように――いいえ、実際に私は祈っていた。華那がもう一度目を覚まして、何事もなかったように「おはよう、姉さん」と、言ってくれる事を。

 それに……私と華那、そしてリサと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が……。華那とリサは忘れてしまっているかもしれない。でも、()()()()()()()()()()()()。あの()()()()()()()()()を――

 

 

 

 

「華那が……危篤!?」

 

 学校の創立記念行事が終わってすぐ、友希那先輩から緊急招集がかかった私達はCiRCLEのラウンジに集まっていた。招集がかかったのは、私達ポピパにアフグロ、パスパレにRoselia。そしてハロハピと、いつものメンバー全員が揃っていた。

 でも、招集をかけた本人でもある友希那先輩がいない事に、全員不審に思っていた。全員が集まったのをまりなさんが確認してから、重い口を開いた。それが、華那が意識を失って危篤である事――

 

「友希那ちゃんは今病院で華那ちゃんの所にいるから、説明できない事……責めないであげてね?」

 

「まりなさん……華那が危篤って冗談じゃないんですよね?」

 

蘭が震えた声で、確認していた。私も信じたくなかった。りみは泣いていて、おたえが宥めていた。香澄は呆然としていて、有咲は唇を噛んで下を向いていた。だって、昨日まで話しをしていたのに……なんで今日になって急に――

 皆で、華那を元気づけようって、誕生日パーティーの準備だってしていたのに……どうして、どうして――

 

「正直、皆ショックだと思う。でも……皆、華那ちゃんの事、信じてあげて」

 

「まりなさん?」

 

 下を向いていた皆が、まりなさんを見る。まりなさんも今にも泣きそうな表情で、目に涙を浮かべていたけれど、それを必死に耐えながら

 

「華那ちゃん……今も必死になって……生きようって戦っているんだよ。わたし達は願う事しかできないけれど……華那ちゃんを待ってあげよう。ね?」

 

 無理やり笑みを浮かべて、私達にそう語りかけるまりなさん。いつも笑顔で、私達が練習やライブしやすいようにと、色々サポートしてくれているまりなさんが見せた涙。それを見て誰も何も言えなくなってしまった。

 

「そう……よ!華那が目を覚ました時に、笑顔でいられるようにしましょう!!」

 

「こころ、今そういう――」

 

 突然の提案に美咲が強い口調でこころを止めようとしたけれど、こころは

 

「だって、華那が目を覚ました時に笑顔でいられなきゃ、華那を心配させてしまうわ!なら、今からでも笑顔でいられるようにした方がいいじゃない!」

 

 両手を広げてそう断言した。確かにそう……だけれど……私は、華那が目を覚ましたら泣くと自分で分かっていた。笑顔を浮かべるだなんて出来る訳が――

 

「出来ないって思っても、泣きながら笑えばいいのよ!だって、華那が目を覚まして、皆が泣いていたら、逆に心配してしまうもの!」

 

 と、私はそこで気付いた。こころの目にも涙が浮かんでいるという事に。あのいつも笑顔でいるこころが涙を見せた事。そして、それを悟られないようにしようと必死になっているという事に――

 

「笑顔……」

 

「確かにそうだよな。華那だって、まだ生きようって必死に抗っているんだ。アタシ達が暗い顔してたら、華那だって心配しちまうよな」

 

「そう……だね、巴ちゃん。うん。華那ちゃん目覚ました時、皆で笑い合おう!」

 

「おー……つぐがまたつぐってますなぁ」

 

「モカ!そんな事言ってる場合じゃないでしょ!」

 

 と、アフグロのメンバーが話している声が聞こえた。そうだよね……華那だってまだ諦めずに戦っているんだ。私にできる事は……祈って待つだけ。なら、笑顔……には遠いかもしれないけれど、華那が目を覚ました時に心配かけないようにしないといけないよね。

 

「華那……大丈夫だよね?」

 

「こればっかりは分かんねぇよ……ただ、信じて待つしかできねぇよ」

 

「ひっぐ、かな……ちゃん……」

 

「りみ……」

 

「りみりん……信じよう。華那が目を覚ましてくれるって」

 

 りみを抱きしめて、私はそう言ってりみを宥める。私の腕の中で泣きながら、りみは小さく頷いた。紗夜先輩が日菜さんを宥めていたり、あこが燐子先輩に抱き着いて泣いていて大変だったりしたけれど、皆なんとか落ち着いて、今は華那を信じて待つという事になった。

 ただ……嫌な予感というか、華那がいなくなってしまう……そんな不安が心の中に残っていた。結局、その日。華那が目を覚ます事は無かった。病院にずっといる友希那先輩からの連絡では、一進一退の状態が続いているとの事らしい。

 ただ、危険な状態には変わりなくて、信じて待っていて欲しいとグループトーク内に文章に書いていた。友希那先輩だって辛いはず。しかも、まだ家に帰っていないらしい。時間を確認すれば、もう既に夜の十時を回っていた。

 

「友希那先輩……」

 

 目を覚ますまでずっと華那のそばにいるつもりかもしれない。明日……様子を見に行こう。そう決めて、私は友希那先輩に差し入れを持っていくために準備をするのだった。

 

 その翌日。私とリサさん。紗夜先輩の三人で様子を見に行った。友希那先輩は華那のいた病室にいるとの事で、私たち三人は病室に向かった。そして、病室にいた友希那先輩を見て言葉を失いかけた。だって、あの友希那先輩がここまで疲労困憊で、今にも倒れそうなぐらいだなんて思いもしなかったから。

 

「ゆ、友希那!?」

 

 慌ててリサさんが友希那先輩の体を支える。今すぐにでも倒れそうな……そんな状態だった。たった一晩。そう。一晩だけだけど、今までの心労が友希那先輩を襲っていると思えば、よく、今まで平静を保っていられたと私は思う。私だったら――

 

「大丈夫よ……まだ、華那が目を覚ましていないのに、私が倒れる訳にいかないでしょう?」

 

 と、支えられながら、無理に微笑む友希那先輩。その表情が華那が無理している時に見せた微笑みとダブってしまった。姉妹揃って同じように無理しすぎです。

 

「だからって、ほとんど寝てないんでしょ!?寝なきゃダメだよ!」

 

「そうです。友希那さん。そんな状態で目を覚ましたばかりの華那さんに心配かけるつもりですか?」

 

「でも――」

 

「でもじゃないですよ、友希那先輩。お願いですから、少し休んでください」

 

 フラフラな状態でも休もうとしない友希那先輩に私達は懇願する。お願いですから、友希那先輩。友希那先輩が倒れたなんて華那が知ったら、自分のせいだって思い込んでしまいますから。だから、少し休んでください。

 

「そう……ね。なら……言葉に甘え……る……わ」

 

「わわっ!友希那!?」

 

「友希那さん!?」

 

「友希那先輩!?」

 

 友希那を支えていたリサさんにもたれかかるように目を閉じた友希那先輩。突然の事に慌てる私達だったけれど、友希那先輩の規則正しい寝息が聞こえてきたので、安堵の息を吐いたのだった。

 三人で一度、華那がつかっていたベッドに友希那先輩を横にして、看護師長の黒瀬さんに事情を説明すると

 

「やっと……休んでくれたのね。ありがとう貴女達。正直、今にも倒れそうだったから私達もヒヤヒヤしていたのよ。……姉として心配なのは痛いぐらい分かるけれど……休むのも必要だったから。本当にありがとう」

 

 と、頭を下げられたのだった。危篤と知らせが入って、病院に来てからずっと友希那先輩は何も食べずに、ずっと集中治療室の前で華那を見ていたそうだ。友希那先輩と華那の両親もやってきて、休むように諭したそうなのだけれど、首を横に振っていたそうだ。

 

「しばらく病室使っていていいから、友希那さんの傍にいてあげてもらえるかしら?」

 

「はい」

 

 黒瀬さんからのお願いに、私達は頷いた。病室で眠る友希那先輩をリサさんは優しく撫でながら

 

「無茶しすぎだよ……友希那……」

 

 眠っている友希那先輩に話しかけるように呟いていた。紗夜さんも思う所があるみたいだけれど、腕を組んで目を瞑って黙っていた。友希那先輩が倒れるように眠るだなんて想像できなかった。それだけ、心労がかなり溜まっていたのだと思う。その後、友希那先輩は五時間眠ったままだった。

 

 友希那先輩が起きてから、すぐさま四人で食事をとった。昨日から何も食べていない友希那先輩の体を心配しての事だ。看護師長の黒瀬さんも強い口調で「食べてきなさい」と仰ってくれたので、かなり渋々といった表情を友希那先輩は浮かべていたけれど、しっかりと食事をとってくれたので、三人で胸を撫で下ろしたのだった。

 

 結局、その日も、華那が目を覚ます事が無く、華那の誕生日を迎えたのだった――

 

*1
死が近づいており、回復する見込みが薄い状態の事。ただ、回復する事もまれにある





危篤って上記の事でしたよね?(震え声
あと、何回か書いておりますが、私に正式な医療知識はありませんので、そこの描写が怪しいのはご容赦願います。
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