俺がブラックラグーンで面倒を見て貰うだけの話   作:黒髪と土埃

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第1話 すごいダメ男が転生の間に着やがった!しかし女神として慈しみを持ってダメ男を転生させてあげる!

12月も後半に差し掛かり、東京の町は綺麗な雪景色で、それに夕方の時間帯で夕日が雪をキラキラと彩る。

 

多くの人がクリスマスの準備をしていてその日を心待ちにしていた。

 

 

 

そんな華やいだ町の一角、2LDKの2人で住むには十分な広さの部屋で女が男に馬乗りになって何かを振り下ろしていた。

 

とても可愛らしく笑う面倒見の良かった彼女がクズな彼氏に包丁を振り落としているのだ。

 

 

 

 

高校の卒業後に喫茶店でアルバイトをしていた、その時に出会ったのが大学生の同い年の彼女だ、肩あたりで切り揃えられた流れるような艶のある黒髪は今も変わらない、よく喋るような人ではなかったけど優しく人の話を聞くときに目をじっと見つめてくる可愛らしい癖があった。

 

同い年と言う事で少し先輩な俺が教育係として彼女にバイトの仕事を教えていた、3か月もするとずいぶんと仲良くなってご飯を食べに行ったりと2人で過ごす時間が増えていった、そうするとそういう事に興味があった俺は彼女を誘って何度かラブホテルで体を重ねる機会もあった、半年程その関係が続き彼女からちゃんとした関係になりたいと言われた、女に興味はなく彼女が性処理をしてくれるのなら別に付き合ってもいいかと思い正式に付き合う事になった。

 

 

 

 

 

改めて宣言するが俺はダメ人間でクズ人間だ、26年間生きてきた人生のどこを取っても誰が見てもダメな人間で、もちろん俺の人生にもいい人だった時期だったり少なくともいい人だった瞬間はいくつかあっただろう、多分…、しかし8年間付き合った彼女に今現在めった刺しにされてる事を考えると総評として俺はダメ人間で、めった刺しにされて当然なんだと自分でも思う。

 

彼女は大学卒業後に無事に大手の通信系の会社に就職し安定した収入と地位を手に入れた、それに引き替え彼女が就職してしばらくしてアルバイトを辞めた俺は、仕事も探さずに家でゲーム三昧、その癖たまに家を出たと思ったら飽きてきた彼女の代わりにと他の女と浮気をしてくる様なやつだ、そりゃどんなに愛していて懐が広かろうとも気が持たないだろう、結果として彼女は愛の深さ…と言うよりも俺への依存がそのまま彼女の精神への負担となって結局は狂ってしまったんだろう。

 

 

 

「大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好き!大好きぃぃ!」

 

 

そして彼女はぶしゅぶしゅと肉と血の音をさせる俺に馬乗りになっている、彼女は俺の目をまっすぐ見つめながら愛を叫ぶ。

 

 

 

 

(最初、彼女の俺を真っ直ぐ見つめる目に惹かれたんだっけな、多少なりとも俺は彼女に好意を抱いていたんだな。)

 

 

包丁をふり落とされながら見つめ合っていると少なくともこんな風に人の目を見る彼女に惹かれていた事を思い出す。

 

 

(人はこんなに狂ってしまうのか、正直ドン引きだな来世があるならこんな俺を支えてくれる奴がいると良いな)

 

 

完全にあきらめながら腹を刺される痛みを感じて来世はもっと懐の広い人に面倒を見て貰おう、と思っていた彼はもはや手の施しようがない奴である。

 

 

(あぁ、君が幸せになれること・を・・いの・る・・ょ)

 

 

何事にも無責任な彼は、彼女に対する罪悪感と少しの愛情から、かすれる意識の中で最後にせめて自分が死んだ後に彼女の幸福を願う。

 

そして意識は暗闇に溶けていった。

 

 

 

 

 

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(ん?ここはどこだ?)

 

 

唐突に意識が戻ると教会でいくつも並んでいる長椅子の1つ、真ん中のやや前方の席に座っていた、正面には神父が説教する時に立つ講壇(こうだん)とその後ろに大きな十字架がある、ここに来るまでの記憶がなく最後の記憶では彼女に腹を刺されていたので恐らくは死んだ、あんなに腹をめった刺しにされれば人は死ぬだろう、ならここはどこなんだろう?結局は初めの疑問に戻るのである

 

 

 

「お待たせしましたお待たせしました~」

 

しばらくしてから前にあった大きな十字架から光があふれると、光から溶け出す様に金髪の美女が妙にリズミカルに挨拶しながら現れた、いや降臨したといった方が正しいだろう。

 

 

「こんにちは、私は転生担当の女神です!」

 

「あなたは天寿を全うできなかったのでここに呼ばれました!」

 

 

女神は説明を始めるが俺は返事も体を動かすことも出来ない。

 

 

「日本人が大好きな異世界転生ですよ!やったね!」

 

 

(この女神元気かよ!でも異世界転生か…俺Tuee出来るのかな?)

 

「おっ!ワクワクしてきてますね、適応が早くて素晴らしい!もちろん私は女神なので思考が読めますし願いをかなえてあげようと思いますよ!」

 

 

「貴方の生涯の記録を見ました!ふ~む…」

 

 

「なるほど貴方は天性のヒモ男ですね!男性や女性に問わず誰もが貴方の面倒を見たくなってしまう!素晴らしい才能ですね!、ですが来世はそれだけでは生きていけませんよ!」

 

可愛らしく人差し指を顔の横に持ってきて、先生のような口調で注意する

 

 

「貴方の適正や思考等を確認させて頂いた所・・・貴方本人に何か力を与えるよりも貴方の面倒を見てくれる人を用意した方がいいですね」

 

さすが女神様だ俺の事を分かってくれている、俺は決して能力が人よりか劣っていたわけではない、だが仕事はまともに出来たためしがない、最初はうまくいっていても金の為に働いている事にすぐに飽きてしまうのだ、俺に金稼ぎは向いてい。

 

逆にだらける事には情熱を注げたし同じく人に甘える事にも定評があった、人は自分より動かない人間を警戒しないし頼られると喜ぶ物だ、さらに手放しで褒めてやれば人は俺に依存するので面倒を見て貰うのは楽だった

 

 

(俺は寄生虫の様に生きてきたが決して人に依存していたんじゃない、他人が俺に依存するんだ、無防備に頼られ信頼され褒められ感謝されると人は快楽を覚えて俺の面倒を見たくなる、そしてそれを繰り返す内に俺から離れられなくなるんだ)

 

もちろん全員が俺にハマるわけではない、面倒見が良くて依存体質の奴が特に俺にハマるんだ

 

 

「おぉ~、なかなかに悪い人間ですね!」

 

女神が心底楽しそうに言って、こう続けた

 

「貴方には7人の従者を用意しました、彼らは普通の人として生まれますが貴方の面倒を見る様に運命を操作してあります、彼らは決してあなたを裏切りません!彼らを見れば自分の従者と言う事が分かりますので心配はしないでください」

 

「転生先の基準で十分チートな方々ですので安心して寄生してあげてくださいね!」

 

「では来世では天寿を全うしてくださいね!」

 

その言葉を最後に俺の意識は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(転生してから14年、こんな所まで来てしまったか…)

 

 

じりじりと太陽光が人を殺す勢いで降り注ぐタイに彼はいた、それも悪徳の町とごく一部の界隈では有名なロアナプラである。

 

船から降りた彼の周りには彼に日笠をさしているメイドや周囲を警戒している護衛や荷物を持つ男達がいる。

 

(14年で女神の特典である7人の従者は見つけた、いろいろあってこんな所に来てしまったがこいつらに任せとけば大抵の事はどうにでもなるだろう)

 

相も変わらず人に任せっきりのこの男、周りに控える7人の男女は年齢も国籍もバラバラだが、7人すべてが何かしらのスペシャリストであり、自分の専門分野では誰も寄せ付けない程の実力を持つ。

 

 

(ロアナプラか、平和にだらだら過ごせればいいなぁ)

 

彼、現在はカルトギと名乗るその男は少年から大人になる途中である、優しい目つきとフワフワのパーマ大抵の人は彼を可愛いと称し警戒心など抱かない…だが彼は女神も認めるクズである、そう彼は悪ではないしましてや善などでもない、根っからのクズなのである!

 

勿論そんな彼の平和な生活への期待は裏切られる事になるのである。


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