軍拡日本召喚   作:ウエストモール

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結構な間が空いてしまいましたが、更新することが出来ました。文章に稚拙なところがありますが、今の目標はこれを完結させることです。そのため、クオリティが落ちるかもしれません。完結後、大規模な修正をいれる予定です。



兵器紹介
○1式歩兵戦闘車
2001年採用の歩兵戦闘車で、車体の大半が90式戦車と共通になっている。そのため、歩兵を載せる後部以外の防御性能は戦車に匹敵する。主な武装はエリコンKD 35㎜機関砲。副武装として79式対舟艇対戦車誘導弾、74式車載7.62mm機関銃。


Phantom Menace

皇都エストシラント 皇城

 

「──様、日本国は愚かな判断を下しました。文明圏外が我々の物となるのも、もうじきです」

 

 カーテンの閉まった薄暗い一室にて、アディオは誰かに話しかけていた。目線の先にはモニターらしき物体があり、それには黒フードの男が映っている。

 

フードから見えるのは口元だけであり、笑みを浮かべているのが伺えた。そして、男は口を開いて話す。

 

「占領した後、蛮族にはたっぷりと教育を施してやらねばならんな。ところで同志アディオよ、反体制派が動きだしたのは知っているか?」

 

「いえ、存じ上げません。さすがは──様、私目よりも早く情報を得るとは!」

 

アディオは、その情報収集能力に驚嘆して額から汗を流しつつ、フード男を称賛する。

 

「私を舐めてもらっては困る。私の手の者が、様々な勢力に潜入しているからな。無論、反体制派にもだ。お前の手の者だと、反体制派が警戒していて潜入不可能だろうが、私の手の者ならば、怪しまれる心配はない」

 

「それにしても、反体制派は愚かですな。日本国との戦争で疲弊したところを押さえる魂胆でしょうが、我々の圧勝は確実。疲弊することなく勝利します。行動を開始したところで取り押さえ、売国奴として処罰してしまいましょう」

 

「それに関しては、お前に任せよう」

 

「お任せください…」

 

黒フードの男は語り始める。

 

「ついに、大東洋諸国は我々の物となる時が来る。侵略に力を入れていた先代が亡くなった後、ある程度は平和的にしていた。だが、皇国の野望は消えていない。平和的にするのも作戦の内…」

 

「ただ、大使がアルタラスへの要求をあのように変更したのは想定外です。そのおかげで、計画を早めることになってしまいました」

 

「早まったとはいえ、大使が傷つけられたことで侵攻する大義名分を得ることができた。そして、各国に対して強硬な態度を取る理由にもなったわけだ」

 

「その中で、監察軍のワイバーンを落とした日本国が我々に賠償を要求してきたのはご存知ですね?」

 

「もちろん知っている。たしか、対応をお前に任せていたな。東洋の蛮族風情が…」

 

「我々は日本国を侵略するついでに、栄えある皇国に逆らった日本国の友好国も同罪として全て手中に収めるぞ。皇国大躍進計画に基づいて国力をさらに増大させる。そのまま、全ての文明圏を順に併合して、我々の目標である世界を押さえる国家・・・大パーパルディア皇国を築くのだ!」

 

「その志のため、私は精進いたします。パーパルディア皇国・・・万歳」

 

そして、モニターの映像は途切れた。

 

誰にとは言わないが、見えざる脅威(ファントムメナス)は確実に迫っている。

 

 

 陸将ベルトランに率いられた皇国軍陸戦隊3000名は、横隊の地竜を先頭にして方陣を組んだ状態でゴトク平野付近に布陣していた。方陣は歩兵が中空の四角形を形成し、中に指揮官や砲兵が入る陣形であり、皇国ではその前方に横隊の地竜を配置した陣形を考案者にちなんでベルトラン陣形と呼んでいた。この陣形で負けたことは1回もないらしい。

 

「将軍、先行したワイバーンロード隊から偵察報告が来ましたが、伏兵の存在は確認出来ていないそうです」

 

「良い報告だ。ニシノミヤコ上陸戦の際は伏兵(見えざる脅威)によって少なくない被害があった。もう、その轍は踏まんよ」

 

 偵察をしなかったことで被害が出た先例から偵察を行ったが、日本軍による偽装は王国軍が初めて行った偽装よりも高度なものであり、陣地の存在を簡単には見破れない。そして、ワイバーン対策として対空陣地に隠されていた87式自走高射機関砲3台の攻撃準備が整っていた。

 

「87AW、射撃開始!」

 

 突然、少し離れた複数の場所から光弾が激しく撃ち上げられ、上空のワイバーンロード12騎全てが撃墜される。

 

「ワイバーン部隊、全滅!」

 

「伏兵がいないのでは無かったのか!?それに、あの攻撃はまるで対空魔光砲ではないか!」

 

「将軍!あの攻撃がこちらに飛んできた場合、大損害が出ることでしょう。ここは、支援に来た戦列艦の砲撃で排除させるべきです」

 

「そうだな。支援砲撃を要請する」

 

 将軍が海を見ると、戦列艦20隻全てが砲列甲板の左舷側の大砲を出しており、砲撃準備が整っていた。

 

 次の瞬間、“ドン”という音とともに先頭の戦列艦が煙に包まれる。ベルトランはすでに勝ったかのような気分に包まれ、ニヤリとする。ただ、後続の艦の動きがおかしいことに気づき、我に返る。煙が晴れると、地上を砲撃したはずの戦列艦がおらず、代わりに水面へ多くの木材と水兵が散乱していた。

 

「栄えある皇国の戦列艦が破壊されているだと?一体どこからの攻撃だ?」

 

 彼が海を見渡すと、見慣れない灰色の艦が航行しているのが見える。それは日本海軍のフリゲート艦、“いしかり”だった。その艦をよく見ると太陽が描かれた旗がはためいているのが分かり、それが日本の艦であることに気づく。

 

「目標アルファ1を撃沈!」

 

「よし、残りのアルファ2から20までを攻撃する。撃ち方始め!」

 

 引き金を1回引くたびに1隻が爆発して沈み、127㎜砲が次の目標を指向する。引き金を19回引いたとき、そこに存在していた戦列艦は全滅した。

 

「全目標、撃沈を確認。敵兵の救助を行う」

 

ヘリコプターで漂流者を救助した後、フリゲートはその場を離脱した。

 

 陸戦隊の間に恐怖が伝播し、いつ崩壊してもおかしくない状況であり、ベルトラン自身も恐怖していたが、兵士を落ち着かせようと試みる。

 

「皆の者、落ち着け!この戦で勝てば、我々の部隊が優先的に首都の人間や物資を好きに扱う権利が与えられる!つまり、上玉の美男美女を独占出来るのだ!」

 

 兵士達は落ち着きを取り戻すどころか、興奮して士気が高くなっていった。

 

「士気の高い我々に敵はない!今こそ愛国心を示すときだ!陸戦隊前進!」

 

部隊は進み始める。

 

「敵部隊、前進を開始」

 

 前進する様子は、砲兵部隊の遠隔操縦観測システム(FFOS)によって常に監視されており、その気になれば火砲による攻撃を加えられる状態であった。しかし、そう遠くない地点に集落が存在し、誤射の危険性があるために火砲による遠距離からの攻撃は不可能だった。

 

「敵部隊が離れたところで、歩兵戦闘車の部隊による攻撃を実施。ヘリコプターと火砲は待機せよ」

 

 第1戦闘団団長の天野は、82式指揮通信車の中から部隊に通達する。

 

「敵部隊、所定のラインを通過」

 

「よし、歩兵戦闘車は前進せよ」

 

 異変を感じたベルトランが望遠鏡を除くと、10体の鉄の塊が向かってくるのが見えた。彼は知らないが、それは日本陸軍の1式歩兵戦闘車だ。

 

「何だあれは?とにかく、こちらに向かってくるとあれば全て敵だ!あれを討ち取れば大きい手柄になる!あれを殺せ!」

 

 最前列の歩兵が地竜と地竜の間に入り、マスケット銃の発射準備を行う。2列目と3列目の歩兵は最前列の歩兵が次弾を装填するまでの時間稼ぎをすべく、その後ろに待機していた。

 

「敵さんも歓迎してくれてますよ、車長」

 

「ああ、物騒なクラッカー(マスケット銃)をこちらに沢山向けていやがる。これは俺への歓迎パーティーというやつか」

 

 彼は車長兼部隊長であり、今回のために特別に編成された歩兵戦闘車のみの部隊を指揮するという大役を背負っていた。

 

「では、我々はもっと物騒なクラッカー(35㎜機関砲)でドッキリを仕掛けるとしよう。各車は敵の最前列を目標として攻撃、ドッキリを仕掛けてやれ」

 

「「了解」」

 

そして、全ての35㎜機関砲が陸戦隊へと指向された。

 

「あの怪物を撃て!」

 

 最前列がマスケット銃を撃った後、流れるように2列目と3列目も順番に発砲し、再装填した最前列の歩兵がまた発砲する。こうした連続射撃が繰り返されるが、銃弾は虚しく正面装甲に弾かれてしまった。

 

「陛下より賜ったこの銃が効かぬだと!?」

 

「お返しだ。目標、敵先頭集団!射撃開始!」

 

 地竜と先頭の歩兵がまとめて掃射され、流れ弾が後方で待機していた一部の兵士に被害を与える。ベルトランの足元には、複数の小さな穴が穿たれた。

 

「先頭集団及び地竜隊壊滅!後方にも損害あり!」

 

「銃は効かぬか・・・牽引式魔導砲を使え!」

 

当初よりも小さくなった方陣の中でベルトランは命令する。

 

「撃て!」

 

 城門を破壊する威力を持つ大型の弾が1式に命中するが、相手は90式戦車を元にした歩兵戦闘車であるため、主力戦車並みの防御力に対して刃が立たない。

 

「大砲も効かないのか…」

 

 そのまま、何事もなかったかのように歩兵戦闘車はバックで撤退を始めた。そして、入れ替わるかのように空から何かが飛来してくる。それは、バタバタと音を立てていた。

 

「未確認騎が3騎接近!」

 

 それは、日本陸軍が採用した攻撃ヘリコプターであるEC665ティーガー。機首下に装備されたリボルバーカノン式の30㎜機関砲による掃射で、陸戦隊の右翼と左翼を削り取り、彼らを中央に追い込む。

 

 ベルトランは呆然と立ち尽くした。すでにワイバーンや戦列艦、地竜を失い、歩兵も多くが戦死している。

 

「将軍、我々は中央に追い込まれています!今すぐにでも降伏すべきです!」

 

生き残っていた1人の士官が進言した。

 

「降伏したところで殺されるか奴隷にされるだけだろう。今まで我々は降伏した兵士や民間人をなぶり殺しにし、奴隷にしてきた。それがこちらにも帰ってくるのだぞ。それに、宰相の怒りを買うことになり、家族が反体制派として処刑されてしまうだろう」

 

「ですが将軍、このままでは全滅します。ここは、少しでも生き残る可能性に懸けましょう。家族についてですが、日本により皇国が占領されたときの混乱に乗じて逃亡できるかもしれません」

 

「しょうがない、降伏の合図を!」

 

 隊旗を預けられている兵士が前に進み出て、隊旗を上下さかさまにして左旋回に振り始めた。これは、第3文明圏での降伏を示す合図である。

 

 日本陸軍派遣部隊第1戦闘団は、ヘリコプターによる攻撃で皇国軍陸戦隊を中央に追い込むことに成功した。すでに榴弾砲とMLRSが向けられており、いつでも殲滅できる。

 

「中佐、敵部隊の動きに変化があります」

 

「どうした?」

 

 天野中佐は攻撃を指示するつもりだったが、部下の報告で指示を一時的に保留する。

 

「旗を左旋回で振っているようです」

 

「降伏の合図か?」

 

「もしかしたら、大規模な魔法攻撃の準備かもしれません」

 

「何の意図があるのやら…」

 

 そして、しばらく悩んだ天野の脳内にとある考えが浮かぶ。天野は思わずその考えを口に出した。

 

「連中に慈悲を与えるべきなのか?」

 

「今なんと?」

 

「今まで弱いものに対して虐殺を行ってきた連中が不利になって降伏してきたところで、“はい、そうですか”と簡単に許していいのだろうか?」

 

「それはそうですが、日本人の被害者はいませんよ?」

 

「仮に降伏を許した場合、連中は裁判に掛けられるだろうが、何人かは軽い刑で済んで再び野に放たれる。そいつらが日本人に危害を加えないと言いきれるだろうか?」

 

周囲がいきなり静まり返る。

 

「そういえば、日本政府は皇国上層部に対して降伏の際には白旗を上げるように通達したそうだ。いまの連中はどうだ?」

 

「「あ・・・」」

 

そこに、攻撃する大義名分があった。

 

「連中はこちらから通達したように白旗を上げておらず、高威力の攻撃魔法の準備をしている可能性がある。この世界で日本人が虐殺される事態を起こしてはならない。敵部隊を砲撃せよ!撃て!」

 

 無慈悲に命令が下され、120発ものロケット弾や5発の榴弾が発射される。空中で爆発したそれらからは大量の子弾と榴弾の破片がばらまかれ、陸戦隊に降り注ぐ。

 

「降伏したというのに!作法も知らぬとは!おのれ蛮族!末代まで祟ってくれるわ!」

 

 次々と兵士達は体を引き裂かれていき、ベルトランもその後を追った。

 

 降伏の際は白旗を上げるようにする日本からの通達が皇国上層部から部隊に伝わっていれば、この悲劇は無かったかもしれない。彼らは、皇国上層部という名の見えざる脅威の被害者である。

 

 一方、海上でも皇国軍は蹂躙されていた。海に投げ出された将軍シウスは拘束され、ニシノミヤコ守備隊は王国軍の前に降伏した。

 

 フェン王国の戦いと呼ばれた戦いは日本の完全勝利に終わり、王国ではこの日を記念して祭りが催されるようになった。


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