中央暦1639年3月15日08時
カナタは執務室で愛飲している紅茶を傾けながらクワ・トイネ公国のここ三ヵ月に思いをはせていた。
「たった三ヵ月...されどこの国と私にとってはこれまでになく充実した三ヵ月だ」
日本という国と国交を結び、彼らとの交渉を始めてからというもの
公国の各部門はカナタが首相に就任してから初めて見る空前の忙しさを見せている。
商務部からは日本の担当者が耳に掛けれるサイズの多機能通信端末、魔法を使わずとも動く鉄のゴーレム、自然の力をもって光を生み出す黒い板と球、自我を持ったような人造の精霊などという御伽噺のような超技術を見せてきたとの報告書が上がり、
軍務部からは先の天の浮舟が実は日本の出した周辺偵察機であったこととその謝罪を受けたことから安堵の声が聞こえてくる。
外務部は日本との国交を深めるべく詳細な条約内容を詰めたり国連という組織に加盟するために窓口開設を急いでいる。
「あとはロウリア王国だが...当然のことだが簡単には武器を輸出してはくれないな...」
「しかし、国連軍というものがあるのでは?」
秘書がそう疑問を呈する。
「あぁ、だがロウリア王国の国境の動きがさらに活発になっている。それまでに彼らが間に合うともわからないし、その後も問題だ」
カナタはそう言って手元の資料をパンパンと叩く。
「ここには将来的に我が国にも国連軍の基地を置くということ、そして将来的に我が国も恐らく国連から派兵要請があるだろう...その時に勝てぬ国と戦争すれば我が国は破滅だ。
ロウリア王国との戦争が避けられない以上もはや断るという選択肢は無いが諸手を上げて歓迎できないのは事実だよ」
カナタは先ほどの弾んだ声を一変させ「どうしようもない」というかのように肩を竦めた。
同日夕方、ロウリア王国王都ハーク城御前会議にて
「国王陛下、陸軍、海軍、ワイバーン騎士団、全て準備が整いました。あとは陛下のご指示のみです」
「魔導士団もいつでもいけますぞ」
身長180を超える大柄の騎士パタジンとローブを身に纏ったヤミレイが王に語り掛ける
「遂に!ついにこの時が来たッ...!」
ロウリア国王ハーク・ロウリア34世は感慨深く呟く。
「ロデニウス大陸制覇!亜人殲滅!祖父上の夢が世の代に叶うとは...皆の者!よくやってくれた!」
しかし、感極まっている国王に、水をさす者が一人。
「陛下?大陸制覇の約束、ゆめゆめお忘れなきよう...」
ロウリア王国をここまで強大にした張本人であり3大文明圏の盟主、パーパルディア皇国の使者だ。
彼の言葉に若干興を削がれつつも鷹揚に頷き王は将軍に説明を促す。
「はっ!今回のロデニウス大陸制覇の参加兵力は40万人です
そのうち30万人をもって国境付近の城砦都市ギムを落とします。
そののちの東方250kmにあるクワトイネ公国首都を一気に陥落させます。
平行して海軍はマイハーク北岸に上陸し経済を締め上げます
公国も対抗してくるでしょうが所詮寡兵です。我らが物量の前には虫けらのようなものでしょう」
「分かった.........クワトイネ公国に対する戦争を許可する!
世の前に勝利を持ってまいれ!」
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