葉隠透の奇妙なアカデミア   作:ピーカブー

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『ジョジョの奇妙な冒険』から他のキャラが出張してくる予定は今のところありません。


入学試験を受けに行こう01

「ドジャ~ン。迷わずに無事到着、私ってば偉いね~」

 

 雄英高校入学試験会場の前でポーズを取り大きめの独り言を喋る女子生徒に目を向ける受験生はいない。

 見えていないのではなく、積極的に目を逸らしてまるで絡まれるのが嫌だとばかりにそっぽを向いてそそくさと彼女の横を通り過ぎていく。

 彼女のあまりに異様な風体を一瞥すると彼女から距離を取って試験会場の中へと消えていくのだ。

 まず見慣れない制服、これはまぁ良い。杜王町という片田舎の中学校の制服など見慣れないのが当然だからだ。

 スカートからすらりと伸びる脚は黒いタイツに覆われ、ブレザーの袖から出ている手には白い手袋、ここまではまぁ特に目を引くようなところはない。首元に巻き付き端が足首まで届くようなマフラーは少し奇妙だ。

 顔はさらに奇妙だった。ドーランを塗っているかのように白く、真っ赤なリップ、両目全体を覆い隠すようなやたらと大きいサングラス、背中まで伸びるウィッグのような金髪。

 入学試験で変装してくるなど碌な奴じゃないという印象でもって他の受験生から距離を取られていた。

 そして何よりは彼女の立ち姿が奇妙だった。

 骨格の限界に挑戦するような身体のくねり、構造力学の限界に挑戦するような傾き、それでいて微動だにしない奇跡のバランスでもって彼女は――葉隠透は立っていた!

 

「よし、頑張ろう!」

 

 ポーズを解いて会場へ入っていく葉隠透の後ろでどこかの誰か達が青春をしていたが、彼女には何の関係もない話だった。

 

 自分の席に着いて隣を見た透が少年の目元を指さした。

 

「わっ、すごい隈! 試験前は緊張で眠れないタイプと見た!」

「…………」

 

 少年はちらりと透を見てため息を吐いていた。

 

「私葉隠透、よろしくね~。聞こえてるぅ~?」

「…………」

 

 少年はうるさそうに顔をしかめてそっぽを向いた。

 

「ン、ン~? もしかして私、滑っちゃったかなぁ~」

 

 一言も喋っていないくまの酷い少年がゆっくり頷いた。

 

「縁起悪いこと言わないでよもぉ~。ところで、少年の個性は会話に関するもの?」

 

 隈がひどい少年の目つきが鋭くなった。

 

「何故分かったか? 簡単だよ、何よりも簡単。私のような可愛い子に話しかけられて答えない少年はいない、つまり個性によって話せないってこと。わっかりやすーい!」

「可愛い……? 厚化粧のどこが?」

 

 透が手袋を付けたままの手で顔を隠した。

 

「喋ってくれたお礼に……ジャ~ン!」

「っ……!?」

 

 いないいないばぁ。

 本来あるはずのものが、そこにはなかった――!

 悲鳴を飲み込んだ少年の見たものは、初対面にしてやかましい厚化粧の少女の顔ではなく、少女を挟んでさらに隣の受験生の驚いた顔だった。

 

「……透明人間……!」

「筆記試験の準備しようっと」

「コイツ……マイペース過ぎる」

 

 少年の額に青筋が浮かび始めていた。

 

「私、葉隠透。少年は?」

「……心操人使」

「緊張を解そうとした私に感謝していいよ~」

 

 そう言って透は反対側に顔を向けた。

 

「私、葉隠透、あなたは?」

「塩崎茨」

「いばら……!! いばらかぁ、いいね!」

「え? えぇ、ありがとう」

「カメラ殴り壊して念写できる個性とか?」

「どういうことですか!?」

 

 心操人使が二人から見えないところで頭を抱えていた。

 

 

「試験どうだった?」

「……え」

 

 筆記試験の手ごたえに一安心してほっと一息吐いたのも束の間、実技試験が控える緊張感で会場が静寂に包まれる中、能天気な声を上げたのは透だった。

 心操人使が嫌な顔をしたのも無理はない。明らかに独り言ではない言葉を発した透は心操人使の方を向いていたのだ。

 

「国語は滅べばいいと思うの~。私ってほら、帰国子女じゃ~ん?」

「…………知らないけど」

「髪だって金髪だしぃ? 日本に来たの中学からだしぃ、読めない漢字多すぎぃ、書けない漢字も多すぎるしぃ、つーか国語じゃなくて日本語って名前にしとけーって思うよねぇ~、思う思う」

「……いや、え? ウィッグ……だよな、それ」

「うん。あ、そーだった、私の髪見えないんだったねぇ~」

「……はぁ」 

 

 コイツはヤバいと心操人使は思った。

 会話してるようで会話していない、人の話を聞いているようで聞いてない、こちらが黙っても間違いなく一人で延々と喋り続ける鬱陶しいタイプ。

 心操人使の嫌いなタイプだ。そして苦手なタイプだ。

 

「実技試験って何やるんだろうねぇ~、わたしぃ、戦闘向きの個性じゃないから向いてない試験だったらちょっとヤバいんだよねぇ~」

「……嘘、だな」

「うん、嘘。よく分かったね~。人の嘘が分かる個性? 違うかぁ」

 

 コイツ本当にこの状況でよく喋れるな、と心操人使は思った。

 誰一人一言も発しない緊張感に包まれた会場内で緊張感など何も感じないかのように一人で喋り続けるその肝の太さは相当に個性的だ。『個性』が発見される前の古典的な意味での個性的だ。

 

 ほどなく会場前方に一人の教師が現れて心操人使はやっと安心することが出来た。

 周りからの痛い視線からやっと解放されると、信じていた。

 

『受験生のリスナー! 今日は俺のライブにようこそー! エヴィバディセイヘイ!』

 

「Yokosoo!」

 

 嬉しそうに両手を突き上げる透を見て心操人使は絶望した。

 会場内でただ一人、全力でコールを返した彼女を他の受験生達も信じられないといった顔で見ていた。

 コイツこんなヤベェ奴だったのかと目が語っていた。

 

「……正気かコイツ」

 

『サンキュー!』

 

「きゃっ、プレゼントマイクからレスもらっちゃった! 羨ましい? 羨ましいよねぇ~?」

 

『これから試験内容を説明するぜ!』

 

 元気だったのも最初だけ、プレゼントマイクの説明が続くにつれて透は頭を抱え始めた。

 心操人使にもその気持ちは分かった。

 むしろ心操人使の方こそ頭を抱えたかった。

 機械が相手じゃ俺の個性役に立たねーじゃん、と。

 

 試験内容を考えて顔を青褪めさせる心操人使の横で透が顔を上げた。

 

「仮想ヴィランにサーモセンサー付いてなかったらワンチャンある?」

 

『最後にリスナーへ我が校から校訓をプレゼントするとしよう。かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った……『真の英雄とは、人生の不幸を乗り越えていく者』だと! 更に向こうへ『Plus Ultra!!』

それでは皆、良い受験を』

 

「会場どこ? 私E」

「…………」

「嫌そうな顔、さてはE会場以外のどこかだったなぁ~?」

「E会場だ」

「茨ちゃんは?」

「……私もEです」

「おっそろぃ~。ていうかなんで嫌な顔したの?」

「……こっちにふるな。女子同士仲良く話してろよ。さっき真面目そうな眼鏡に注意されてんのによく何も気にしないで喋れるな」

「受験でぴりぴりしてたんじゃないの~? 心臓ちっちゃって思ったけど私が気にする必要なくない? ないね、絶対」

「…………はぁ、態度だけは大物だよなぁ、こいつ」

「あ、茨ちゃんいなくなっちゃった」

「え?」

 

→To Be Continued ...




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