葉隠透の奇妙なアカデミア   作:ピーカブー

10 / 21
ごめんね、緑谷君。主人公なのに。


救助訓練に行こう01

 バスの中がいたたまれない空気になってる。

 砂藤君が気の毒そうに僕を見てる。

 隣の蛙吹さんの表情はよく見えないし、恥ずかしくて見れない。

 僕は俯くしかなかった。

 

 こんなことになって初めて、葉隠さんはかなりヤバいタイプの人間だったことが分かった。

 はぁ、早く救助訓練場に着いて。

 

 

 救助訓練に向かうバスの中、蛙吹さんが僕を見ていた。

「私思った事を何でも言っちゃうの、緑谷ちゃん」

「あ!? ハイ!? 蛙吹さん!」

「梅雨ちゃんと呼んで」

 突然話しかけられてびっくりしたけど、次に言われたことにはもっとびっくりした。

「あなたの“個性”オールマイトに似てる」

 鋭いィッ!?

「そそそそそうかな!? いやでも僕はそのえー」

 何も言い訳が出てこない!? こういうときこそ考えてよ僕!

「待てよ梅雨ちゃんオールマイトは――」

 切島君ありがとう! 助かったよ。

「私、分かっちゃったのよねぇ~」

「ギャーッ!?」

 目の前に真っ白い顔がぁッ!?

「驚かせないで、透ちゃん」

「ビビらせんな! 心臓止まるかと思ったわ!」

「あっ……葉隠……さん?」

 顔を横向きにしてホラー映画の怪物みたいな登場をしたのは葉隠さん。ほとんど喋ったことがないけど性格はかなり自由奔放。自分自身と多分自分の触ったものも透明にする個性を持っている。自分自身はいつも透明でそれを隠すために厚化粧をしている。化粧できない目はサングラスで隠している。いつ轟君の隣から移動してきたのか全く分からないほど足音もしない。僕が知っているのはこれくらい。

 今は吊り革に掴まりながら僕に顔を寄せている。不良っぽいコスチュームのせいでカツアゲされてる気分だ。怖すぎて座席の上で縮こまることしか出来ない。

「緑谷君が個性を発現したの、最近だよねぇ? 2年か3年以内? それとも1年以内? つい最近の話よねぇ? 個性が使えるようになったの」

「え? 突然何?」

 声が裏返っちゃった!

 でも、そうだけど!

「個性の発現は4歳までよ、透ちゃん」

「冷静だな、梅雨ちゃん。俺なんかまだ心臓ばっくばくだ」

 僕もだよ、切島君!

「4歳で個性が発現してたら緑谷君はここにいないわ。4歳の身体で個性使ったら、使った瞬間に木っ端微塵のみじんこちゃんよ。血と肉片だけ残して木っ端微塵のみじんこちゃん、生きてないわ」

「グロいこと言うなって」

「そういえば、その通りだわ」

「えぇ……」

 なんか話が変な方向に行ってるよー。せっかく切島君が違う話しはじめたのに。

「緑谷君と爆豪君って幼馴染なんだってねぇ?」

 そうだけど……それが……なに?

「ちげぇわァッ!」

 ありがとうかっちゃん。僕まだ葉隠さんの登場姿の怖さが残ってて声出せないよ。

「修学旅行で爆豪君と恋バナしたことある? かっちゃんは誰が好きなの? 僕はA組の葉隠さんが可愛いと思うんだ、とかそういう話したことある?」

「ねぇわクソがァッ!」

 ありがとうかっちゃん。声が出せるようになったら葉隠さんに言うよ、かっちゃんと直接話してきてって。

「じゃあ、学校の帰り道で見つけたエロ本を爆豪君と回し読みしたことある?」

「ねぇっつってんだろ厚化粧ォッ! つかなんだその質問!?」

 全部答えてくれてありがとうかっちゃん。

 なんだか話がおかしな方向に向かってるような気がするんだけど!?

「じゃあ、爆豪君とお風呂入って毛が生えてるかどうか確認しあったことある?」

「んな気色悪いことするかァッ!? つかなんなんださっきからァッ!!」

 ありがとうかっちゃん、僕もそう思うよ。

「じゃあ最後に一つ聞きたいことがあるんだけどぉ~。緑谷君って、童貞?」

「はぁぁぁぁぁっ!? えっ、いやあの、えっ!? なに、どういうこと!?」

「そうに決まってンだろうがァッ! 厚化粧ォッ! ぶっ殺すぞコラァァッ!!」

 いやなんでかっちゃんが答えるの!?

 そうだけどさ!

 こっち見ないでよ上鳴君、青山君も! 芦戸さん目逸らしてるんだけど!

 どうしたらいいのこの空気!?

「緑谷君が個性を使えるようになった日、分かったわ」

「へっ!?」

「アア゛!?」

 えっ、あっ、そういう話だったけど、今までの質問何か関係あった!?

「幼馴染の爆豪君にも言ってないのよね? 今でも使えば骨が折れるということは、4歳で発現していたら使った瞬間に即死する。それくらいの超増強型、それがあなたの個性だとすると使えるようになった日は限られると思うの。身体が耐えきれるようになったから使えるようになった、他に理由はないわ」

「なに……言ってる……の?」

「二次性徴が始まったから。緑谷君が幼馴染の爆豪君にも個性が発現したことを言えなかった理由もそこにある。つまり、緑谷君、あなたが個性を使えるようになったのは……精通が来た日! どう、合ってる?」

「えぇぇぇっ!? なに言ってるのこんなところでぇっ!? 他のみんなもいるんだよっ!?」

 誰か助けてぇっ!

 かっちゃん、怒鳴ってなんとかしてよぉっ!?

 何真面目な顔して考え込んでるの!?

 こういうときこそ大声で怒鳴ってなんとかしてよぉ!

 というか全然違うよーッ!

 オールマイトから個性を授かったなんて言えないけどさ!

「こっち見んなデク」

「声小さっ!? どうしたの!? 怒鳴ってなんとかしてよこの空気!」

 バスの中がいたたまれない空気になってる。

 砂藤君が気の毒そうに僕を見てる。

 隣の蛙吹さんの表情はよく見えないし、恥ずかしくて見れない。

 他の人は皆僕から顔逸らしてるし。

 

 僕は俯くしかなかった。

 

「葉隠、席に戻れ」

 ありがとうございます! 相澤先生!

「もう戻ってますよ」

 だからいつ移動してるんだぁっ、葉隠さん!?

「爆豪と他の奴も、もう緑谷の個性について詮索すんな」

 相澤先生が僕に同情の目を向けてる。

「うっす」

 かっちゃんも素直だー!

「あと葉隠、お前は時と場所を選べ、少しは」

「選んだ結果がここです、先生」

「あん?」

「朝からずっと後ろの席の二人がギスギスしてて鬱陶しいの。無個性だと思ってた幼馴染が個性発現したのに話してくれなかったくらいでいつまでも拗ねてんじゃあないわよ! 爆豪君!」

 絶対違うと思うけど、そう見えてたのー!?

「ちげぇわァッ!」

「まったく、河川敷で殴り合ってでも和解しなさいよ! 日本の河川敷ってそのためにあるんでしょっ! コミックで読んだわ」

「たぶんちげぇわァッ! ちげぇからこっち見んなデクッ!」

「はい、じゃあ緑谷の個性の話は終わりな。あとは着くまでお喋りしてろ」

「出来るかァッ!」

 僕もそう思うよ、かっちゃん。

「救助訓練ってまた私の個性役に立たないのよねぇ~私の個性が役に立つ訓練っていつになったら来るんだろ? その点轟君の個性超便利だよねぇ」

「葉隠の言葉はあてにならないと思うんだが」

「話し始めてんじゃねぇよッ! クソがァッ!」

 かっちゃんが後ろの二人に向かって怒鳴ってる。

 なんとなく見てれば他の皆もかっちゃんの言葉に頷いてた。

 葉隠さんが自由なのは知ってたよ、受験会場でずっと喋ってたの聞いてたし!

 でもこの状況でよく喋れるよ、本当に。

 轟君が普通に喋ってて逆にスゴイよ!

「ふむ、どうなることかと思っていたが、うまくいったようだな、葉隠君」

「飯田君ッ!? どういうことーっ!? たしかに一度も喋ってなかったけどっ! まっさきに止めそうなのにィッ!」

「あぁ、バスに乗る前に相談されてな。後ろの席の二人がギスギスしていて授業に集中できないから和解させると言ってな」

「余計なお世話だよっ!」

「余計なことすんなクソメガネェッ!」

「ははは、同じことを言っているな、流石は幼馴染だ」

「ちげぇわァッ!」

 幼馴染は違わないよ!

「とにかく終わるまで何も言わずに見守っていて欲しいと頼まれてな。感動したよ! 葉隠君! クラスのことをそこまで考えているなんて!」

「葉隠、そうならそうと俺にも一言くらい言っとけ」

「真っ先に乗ってて言うタイミングが」

「ぜってぇちげぇだろ厚化粧ォッ! バカな見た目のくせに知恵回してんじゃねぇッ!」

 かっちゃんが後ろを振り返って怒鳴ってる。飯田君に怒鳴ってすぐ後ろに向かって怒鳴ってる。首が痛そうだ。

 怒鳴られてる葉隠さんは肩をすくめてる。ジェスチャーがアメリカンな感じでよく似合ってる。

「やれやれだわ」

「俺が言いてぇわァッ!」

「爆豪君っていつも叫んでて大変そうねぇ」

「少し冷静になったらどうだ?」

「クソがァッ! 氷野郎てめぇには言われたくねぇッ!」

 かっちゃんがツッコミに回ってる。なのにめちゃめちゃにイジられてる……!

 さすが雄英……!

 

 どこからか視線を感じて恥ずかしくなって僕は俯いた。

 でもよく考えると言い訳としてはかなり良い出来だったりするんじゃないか。

 突然変異で個性が発現したって言い訳するよりも理由として妥当なんじゃないか、恥ずかしいけどあとでオールマイトにも聞いてみたい。恥ずかしいけど。

 

「ごめんね、緑谷ちゃん。私があなたの個性の話をし始めたから」

「ちげぇぜ、梅雨ちゃん。葉隠は最初からバスで話をするつもりだったんだ。非常口飯田もそう言ってたろ? あと緑谷も気にすんなって」

「良い人だね、切島君」

「これからは爆豪と仲良くやれよ、ダチなんだろ」

「うん、ありがとう」

「ちげぇわァッ! クソ髪ぶっ殺すぞッ!」

 

「もう着くぞ、いい加減にしとけよ」

 相澤先生が少し疲れた声をしていた。

「全然喋る時間なかったねぇ~」

「葉隠に聞きたいことがあったんだが、後にするか」

「誰のせいだと思ってやがんだクソガァッ!」

 かっちゃんの怒号に合わせるようにバスが止まった。

 

→To Be Continued ...




爆豪君はツッコミ役。

誤字報告いただきまして修正しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。