葉隠透の奇妙なアカデミア 作:ピーカブー
体育祭当日、1-A控室の前で奇妙なポーズを取るジャージ姿の女子生徒、葉隠透だ。
右脚を後ろに伸ばし左脚を前に膝は軽く曲げ、上半身を大きく反らして胸を張って顔は正面に、肩甲骨を引き締めて両腕を頭の後ろに指先同士をくっつけて頭の上で三角形を作ったまま3秒間はドアの前に立っていた。
軽く曲げた左脚でドアを蹴り開けた。
「ドアの外まで声が聞こえてこないなんてさては緊張してるなぁ~」
ソールの内側に油を満たしたシューズ、サティポロジアビートルの腸の筋で編んだマフラー、天然素材100%のウィッグ、荒い目で解けやすい手袋、植物性の保湿ジェル、金属フレームで頑丈なサングラス。厚塗りファンデーションとオレンジ色のチーク、リップは緑色。
今日の私は歴戦の波紋戦士。
こんなマジ装備なのも……リカバリーガールと相澤先生めぇ。
「波紋って結局何が出来るんだ?」
「いろいろさねぇ」
じゃあ体育祭で見せてみろ、じゃねーっつーの。
波紋使ってまで1位取る気はさらさらないよっ!
個性同士の戦いで波紋が役に立つことなんてそんなにないけどねっ。
「葉隠は緊張しねぇのかよぉ~、人人人」
そんなに人ばっかり食べてると吸血鬼になるよ、峰田君。顔も青褪めてるし。
「しないねっ。だって体育祭だよ? 私の個性がなんの役に立つっての」
「いやもうそれ誰も信じてないから」
耳郎ちゃんがイヤホンジャックを指に巻き付けながら貧乏揺すりしてる。
「耳郎ちゃんも緊張してるねっ」
「するって」
スマホが震えた。
なになに……。
「緑谷」
「轟君……何?」
スマホ見てたら耳郎ちゃんが肩叩いてきた。
轟君が緑谷君に喧嘩売ってるって?
今それどころじゃないから。
「客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う」
「へっ!? うっ、うん……」
仗助兄さんからLineが来てる。
珍しっ。
「おまえオールマイトに目ぇかけられてるよな。別にそこ詮索するつもりはねぇが……」
轟が緑谷に宣戦布告してるから見てみな、って耳郎ちゃんが小声で囁いてるけどそれどころじゃないのっ。
『みんなで見てるぜ』という一言とトラサルディーに集まったみんなの写真。
トラサルディー閉めたの……?
私のために……?
「おまえには勝つぞ」
スマホを仕舞う。
さっきまでなかったものが沸々と湧いてくるこの感じッ!
耳郎ちゃんが私の肩に手を乗せて小声で、今じゃないそれは今じゃないから大人しくして、って呟いてるけど気にしない!
「やる気出てきたーッ! 私が勝つぞォッ!」
「空気読んでマジでッ! 今そういうんじゃないからァッ!」
耳郎ちゃんに肩を押さえられてるけど関係ないッ!
「覚悟も決まったから私も宣戦布告だっ!」
椅子から立ち上がって脚を肩幅くらいに広げて右腕をビシッと伸ばし、人差し指もきっちり伸ばす。左手はポケットの中。
控え室のど真ん中で向かい合う轟君と緑谷君を指差す。ギョッとした顔でこっち見てるけど気にしない!
次に爆豪君、口の端吊り上げて獰猛な笑顔浮かべた。でも気にしない!
そこから順番に全員の顔指差してぐるっと一周して最後はお茶子ちゃん。額がしわしわだけど気にしない!
お茶子ちゃんときっかり3秒間睨み合って、右手もポケットに突っ込んで大股で歩いてドアを蹴り飛ばす!
「いやどこ行くんだよォッ!?」
切島君が横に並んで叫んでる。声でかっ!
「この空気どうすんの!?」
耳郎ちゃんが肩にぶら下がってたの忘れてた。でも気にしない!
「入試以来だな、話通じねぇ感じ」
上鳴君が肩をすくめて呆れてる。でも気にしない!
「葉隠まさかだよなぁ~、まさかそんなぶっ飛んでることしねぇよなぁ~? しねぇって言ってくれよぉ~!」
峰田君が脚に縋りついてる。でも気にしない!
肩にぶら下がってる耳郎ちゃんと脚にぶら下がってる峰田君ごと控室を出て、私が行くべきは右!
「全員に! 宣戦布告しに行くよっ!」
「やっぱりかよ~!」
「全部のクラス回る気かオメェッ!?」
「轟とのスケールの差よぉ……ブッ飛んでる奴が本気になっちまったぞ、どうすんだオイ」
「私は行かないッ!」
「行くよ耳郎ちゃん!」
肩から手を放そうとする耳郎ちゃんの腕をぐっと掴む。
「舐められてるんじゃあないかなッ! 2週間前はガン首揃えて私達を動物園のパンダみたいにジロジロ見てたのにさぁッ! 当日になっても宣戦布告どころか挨拶一つしてこないなんてさぁッ! 舐められてる気がするよねぇッ! だったらさァッ! こっちから宣戦布告しに行ってやろうじゃあないのッ!」
「漢らしいぜお前らッ!」
「私はちがーうッ! 放せぇッ!」
「オイラは行かねぇ……ってなんで手が離れないんだよぉぉぉッ!」
くっつく波紋。
もぎもぎは峰田君の専売特許じゃあないよっ。
私だって似たようなこと出来るしっ!
「耳郎、お前の犠牲は無駄にしない……って俺も手が離れねぇッ!?」
耳郎ちゃんの肩を叩いた上鳴君もくっつける!
上鳴君がぎゃあぎゃあ騒いで上鳴君を引きはがそうとした瀬呂君、砂藤君、三奈ちゃんも次々くっつけていく。
そのあとでヤオモモと飯田君、梅雨ちゃん、お茶子ちゃんもくっついてた。
だんだん伸びてる。
大きなカブみたいな状況だけど隣のB組控室の前まで来た!
「ノックしてもしもお~~~し!」
返事がないからドアを蹴飛ばした。
「おうおう! 隣のA組のモンだけどさぁ! 敵情視察しにきたくせに宣戦布告にこないなんてどういうことだオラァッ! シケた面して緊張してるとか言うんじゃあないよッ! 全力出せないライバルに勝ったって嬉しくないんだからさッ!」
「えーっと……激励しにきたの?」
誰? 髪の毛オレンジ女子!
髪染めてるなんて不良だっ。
「アレアレアレェ~ッ! 宣戦布告なら2週間前にしたよねぇ~? 君のおつむじゃあそんなことも――」
「物間君話長いからいいや」
「聞けよぉぉぉぉぉッ!」
「あと9クラスあるから次行くねっ」
「クラス全員で電車ごっこですか? 楽しそうなことしてますね」
「好きでやってるんじゃないんだって!」
「触ると離れないんだよぉ~どうなってるんだよぉ~!」
珍しい物を見る目で煽ってくる茨ちゃんに耳郎ちゃんと峰田君が騒いでる。
あと全員じゃないよっ。
その頃のA組控室では、轟が肩を落としていた。
「……お、俺がちぃせぇのかぁ……?」
「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのか……は分かんないけど……でもッ! 皆……他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。僕だって遅れを取るわけにはいかないんだ! 僕も本気で獲りに行く!」
「……おお」
「……っ」
轟に対して真面目に答える緑谷と蚊帳の外で機嫌を悪くしている爆豪の3人だけが控室に残っていた。
B組を出てC組に向かってるけど。
「重たいッ!」
「こんなバカなことやめて控室戻ろっ! ねっ、葉隠?」
ムカデごっこの後ろの方にお茶子ちゃんがいるんだったっ!
「お茶子ちゃん! 最強の力を使うなら今さァッ!」
「ゼログラビティィィィッ!」
「使うなぁぁぁぁッ!」
軽くなったッ!
あと耳郎ちゃんがずっと叫んでる。けど気にしない!
「A組ってすっげー面白いクラスだね!」
「ハーハッハッハッハ! 馬鹿の集まりだなァッ!」
「哀れな子羊に救いの手を」
「真正面から宣戦布告たぁ嬉しいゼェッ!」
B組から物間君、茨ちゃん、姉御、声でかい人も合流して人数がさらに増えた。姉御と声でかい人の名前は知らないけどっ。
「くっついといて何言ってんだ物間~ッ! なんとかしろよぉ~!」
「コレ……君の個性じゃなかったのかぉぉぉッ!」
物間君が叫んでも今の私には関係ないッ!
「すまないッ! B組の女子よッ! 委員長の俺が葉隠君を止めなければならないのにッ!」
「いーよいーよ、正直緊張してたからさっ! なんか緊張してたのが馬鹿馬鹿しくなるねっ!」
「良い人だぁーッ!」
「お茶子ちゃんは個性解除してくれないかしら?」
C組のドアをノックノック。
「ノックしてもしもお~――」
「おはよう」
最後まで言う前にドアが開いて心操君が顔を出した。
「おっはようー! 宣戦ふこ――」
「勝つのは俺だ。分かったら隣に挨拶してこいよ」
「流石は心操君ですね。起きなさい哀れな負け犬よ」
「痛ェッ!? あれ?」
「葉隠瞬殺されてるじゃねえかァッ!」
C組通り過ぎてるしっ!
振り返れば勝ち誇った顔で控室に戻る心操君の横顔が見えたっ。
「やられたァッ! ドラァァァァァッ!」
目の間にあったD組控室のドアを殴り飛ばす。
ドアも壁に透明にして、っと。
「私が勝つ!」
「雑ッ!?」
「ネタ切れだよっ」
「葉隠君ッ! もう時間ないぞォッ! 入場時間が迫ってるッ!」
「帰ろうよ、葉隠」
後ろから飯田君が叫んでる。耳郎ちゃんは呆れてる。
気にしないけどねっ。
「残り7クラス……手分けして宣戦布告しようかァッ!」
深呼吸してくっつく波紋を止める。
「待ってたぜぇッ!」
「その言葉をよォッ!」
B組の声でかい人と切島君が燃えてる。
「飯田ぁ~、足速ぇんだから一番遠いK組行ってくれよぉ~。瀬呂ぉ~、J組行ってきてくれぇ~」
波紋を解いても脚にくっついたままの峰田君を足を振り抜いて前にブッ飛ばす。
油断も隙も無いなぁ、オープンスケベ君め。
「任せておけ峰田君! 行くぞ麗日君、蛙吹君!」
「真面目や!?」
「飯田ちゃん、燃えてるわね」
波紋を解いても背中に捕まったままのお茶子ちゃんと梅雨ちゃんを連れて飯田君が走り去っていった。
速っ。
「しゃ~ねぇ~なぁ。一緒に行くぞ峰田っ、芦戸っ、尾白っ、一緒に来いよっ」
「イェ~イ! イベントっぽくなってきたー!」
「やる気が沸いてくるね、こういうのって」
「オイラは行きたくねぇ~」
思ったよりも飛んで行った峰田君をテープで絡めとった瀬呂君達が走っていった。
「輝く僕を見て☆」
「口田も行くか?」
「(コクコク)」
「宣戦布告か……どうしたらいいんだ……? まぁ乗りかかった舟だ、俺達はI組まで行ってくる」
青山君、砂藤君、口田君、障子君……青山君以外ガタイの良いメンバーが揃って宣戦布告に行った。
「耳郎、ヤオモモ、せっかくだから俺達も行こうぜ、宣戦布告!」
「このクラスノリ良すぎだろ」
「仕方のない人達ですわね……私達はH組、遠いですわ」
あんまり乗り気じゃなさそうな組も。
一人残ってたのは。
「常闇君は?」
「闇が俺を呼んでいる」
「燃えてるってことね」
「ワカッテルジャネェカ」
やっぱり立ち方カッコいいんだよねぇ。
常闇君って。
絶対スタンド使いだよねぇ。
「カッコいいポーズでやろうよっ」
「闇の狂宴」
「カッコいいッ!」
「物間ァッ! 拳藤ォッ! 塩崎ィッ! 早く行くぞオラァッ!」
「まったく……」
「鉄哲、熱くなるなよ」
「正々堂々、善きことです」
B組の皆も気合入ってる。
「……で、俺だけ一人かよォッ!?」
切島君の悲しい叫び声に笑えてくる。
その頃のA組の控室はと言うと。
「み、みんな……戻ってこない……ね」
「…………」
「…………」
「……誰か助けて」
顔を引きつらせる緑谷が轟と爆豪に睨みつけられていた。
『ヘーイ! 白熱しろオーディエンス! 群がれマスメディア! 今年もお前らの大好きな高校生たちの青春暴れ馬! 雄英体育祭が始まりEverybody! Are You READYYYYYY!』
控室にも響くプレゼントマイクの声に緑谷は安堵した。
「……助かった……けど! 誰も戻ってこないよ!?」
「知るか」
「ケッ」
控室から出ていく轟と爆豪を緑谷が慌てて追いかけた。
入場ゲート前まで来たときにようやく、後ろから走ってくるクラスメート達を見て緑谷はホッと一息吐いた。
「遅いよ、飯田君」
「すまない緑谷君! ちょっとK組まで宣戦布告してきたところだ!」
「反対側だよ!?」
「はっはっは、いいウォーミングアップになった!」
「みんな始まる前から汗だくだよ?」
『ヒーロー科! 1年!! A組だろぉぉぉぉぉッ!!!?』
A組を筆頭に各クラスの生徒達がスタジアムに入場したが。
「なんか半笑いでこっち見てるクラスが……多くないっ!?」
緑谷が他のゲートから入場してきた生徒達を見回してから「一体何してきたの皆!」と叫んだ。
「ジャミングウェイがだだ滑ってた」
耳郎が呆れ顔で上鳴を指差し、あんなん滑るに決まってんだろぉぉ! という上鳴の慟哭がスタジアムに響いた。
スタジアムに響いた慟哭に実況席のプレゼントマイクが「え、何突然、滑るって、俺?」と隣に座る相澤に訊ねる声もスタジアムに響いていた。
「飯田ちゃんも滑ってたわ」
蛙吹が普段と変わらない真顔で呟き、麗日は少し恥ずかしそうに頭を掻いていた。
上鳴は飯田の肩を叩いていた。
「瀬呂が滑ってたせいだろぉ~」
峰田は瀬呂の足を蹴っ飛ばして喚いて、瀬呂が落ち込んだ顔で飯田と上鳴と一緒に肩を組んで、しゃ~ないよなー、滑るってアレ、と苦笑いしていた。
「僕は輝いてたよ☆」
青山と一緒にいた面々は暗い顔で滑り組に加わってどんな風に滑ってたのかという話を聞いていた。
「わりぃ……俺も滑っちまった!」
切島が手を合わせて緑谷に頭を下げた。
「私達は滑ってなかったよね」
「闇とは理解されぬもの」
「うっそ、滑ってたの!? 言ってよぉ~!」
なんにも気付いてなかった透が表情は読めずとも落ち込んでる常闇と顔を見合わせていた。
「静かにしなさい!」
今、スタジアム内の男性達から一番視線を集めている18禁ヒーロー、ミッドナイトが鞭を振るい、生徒達は私語をやめて背筋を正した。
「選手宣誓! 選手代表、1-A爆豪勝己!」
呼ばれた爆豪が両手をポケットに突っこんだままゆらゆら歩きながらマイクの前に立った。
「せんせー、俺が1位になる」
『絶対やると思った!』
向けられるブーイングに怯む様子もない爆豪が振り返った。
「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ」
「BoooooBooooo! 一番目立つとこで宣戦布告するなんてずるいぞっ!」
「爆発さん太郎!」
「爆発さん太郎って……ぷぷぷ」
切島が選手宣誓から戻ってきた爆豪に殴られていた。
「さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう! 運命の第一種目。今年は! コレ!」
ミッドナイトの言葉に合わせてスタジアム内のスクリーンに『障害物競走』の文字が表示された。
コースはスタジアムの外周4kmを一周。コースを守れば何をしても構わないとルール説明をしているミッドナイトを遮る声が響いた。
「先生ーッ!」
軽く手を挙げた一人の少女、葉隠透だ。
「フライングはアリですかーッ!」
ぴょんぴょん飛び跳ねながら叫ぶ透に集まる視線にはそれでもヒーロー志望なのかこの厚化粧、という侮蔑の感情が込められている。
「うーん、ナシねッ!」
ピシャリ、とミッドナイトの振るった鞭の音が響いた。
『そりゃそうだろォッ! インビジブルガール!』
『やる気があったとは思え……なくもないが、他の奴にやらせないために訊いたんだろ』
実況のプレゼントマイクとまだ紹介はないが解説だろうと思われる相澤の声がスタジアムに響いた。
自分がフライングするためというよりも他にフライングさせないための質問だったと誰もが納得しかけたが、続く透の言葉に場が凍り付いた。
「空飛ぶの禁止だってよ、障子君ッ! 爆豪君ッ! あと飛行系個性持ちのみんな!」
白々しいほど爽やかに響く透の声に、名指しされた障子と爆豪が透を見た。
ニヤリと笑ったその顔を。
「いやそういう意味、だったのか……?」
「なんでだよッ!」
爆豪が叫びながら地団駄踏んでいた。
『始まる前からこの攻防よォォォッ! 種目上飛行系個性は間違いなく有利! 蹴落とす気満々だ!』
『……主審の判断に任せるしかねぇな』
「はぁ~、油断も隙も無い子ねぇ~ッ! ルールをもう一度説明します! 第一種目はゲート上部の3つのランプが消えた瞬間にスタートです。コースさえ守れば何をしたって構いませんッ! さぁさぁ、位置につきまくりなさい!」
「良かったねっ、二人ともっ!」
「ブッ殺すッ!」
「よくにこやかに話せるな」
自分のことのように喜びながら透が飛び跳ねていたが、爆豪は目を吊り上げていたし、障子は呆れてため息を吐いていた。そして周りは爆豪の顔に引きつつ、ゲート前に移動を始めていた。
「早く行かないと……ゲート前混むぞ」
「いってらっしゃーい」
「アアン? 厚化粧てめぇ、なに企んでんだ?」
「なにも?」
スタジアム中央で透と爆豪が睨み合った。睨んでいるのは爆豪だけだが、サングラスのせいで透の目は見えず、睨み合っているように見えた。障子は二人をちらちら見ながらスタートゲートの方へ歩き出した。
『始まってもいねぇのにスタジアム中央で火花散らしてる奴ら! 他の奴らはスタート位置についてるがいいのかぁぁぁぁッ!?』
『何やってんだアイツら』
「私、思ったのぉ~。いちばん後ろから全員ぶち抜いて勝つのがいっちばんカッコいいよねぇ~ッ! そう思わなぁ~い?」
透が左手をポケットに突っ込み、自然体だった姿勢から膝を曲げながら上体を後ろに一気に倒しながら右手を伸ばして爆豪を指差した。膝から腰、腰から背中まで弓なりに反らして重心を限界まで後ろへ移動させたその姿、倒れそうで倒れない、独特の美学を追求したポーズの極限がそこにあった。
「指差すなコラ」
歯軋りして顔のパーツが吊り上がってる爆豪を鼻で笑い、伸ばしていた指先をスタジアムの観客に向けて爪先立ちになっていた脚を捩じるようにしながらぐるりとゆっくり回転した。
『WoooooooooW!』
『最後尾から全員ぶち抜く宣言! 熱いアピールにオーディエンスも盛り上がってきたぜぇぇぇッ!』
『最後尾が爆豪に入れ替わったな』
透が一回転したときには前にいたはずの爆豪の姿は消えていた。
「俺が一位になる。完膚なきまでの一位にッ!」
爆豪の声が後ろから聞こえ、透が振り返った。
ギラついた目だ。
楽しそうに笑いながら透が前を向けば、ゲート上部のランプが2つ消えていた。
透が大きく息を吸って、吐き出した。
3つ目のランプが消えた。
「スタートッ!」
ミッドナイトの声がスタジアムに響き、生徒達が一斉に走り出した。
→To Be Continued ...