葉隠透の奇妙なアカデミア   作:ピーカブー

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オールマイトの授業を受けよう03

「はい、というわけでお疲れさん! 4人とも! 良い勝負だったぜ!!」

 

 所変わってモニタールーム、戦闘訓練を終えた4人に親指を立てて白い歯を惜しげもなく見せつけるのはオールマイトだ。

 轟は無表情、障子も無表情だが6本の腕がオールマイトに答えて親指を立てている。尾白は少し悔しそうな顔。透に至っては喜んでいるのか悔しいのかも読み取れない奇妙なポーズで立っている。

 

「よくもオイラ達を騙したなァッ!!」

「潔いねっ! オープンスケベ君!」

 

 峰田は血涙を流しながら、上鳴は唇を噛んで透を睨みつけていた。

 二人の近くにいる八百万と耳郎はジト目で透を見ていた。峰田と上鳴から距離も取っていた。

 

「騙される方が悪いし、私は嘘は吐いてないよっ」

「勝負が始まる前から策を張るそのやる気、悪くない! 葉隠少女の本気がひしひしと伝わってきたぜ!」

「いやそういうわけじゃ」

「次のチームも控えてるから講評といこう! 今回のMVPは! 誰だろうなぁ~? 誰だっ!? えーっと、いや本当に誰!? 教師生活二日目にして成績を付ける難しさにぶち当たったぜ!!」

 

 オールマイトが4人の顔を次々見て頭を抱えてしゃがみ込んだ。

 新米教師がしゃがみ込み、自然と生徒の視線は八百万へと集まった。

 

「ビルを凍らせヴィランチームの動きを封じた轟さん? 核を隠して遠距離攻撃でヒーローチームを圧倒した葉隠さん? 常に冷静、類まれな情報収集能力で隠れている2人を見つけ出し、核を回収した障子さん? キーパーソンの葉隠さんを守るために地味な――いえいぶし銀な活躍をした尾白さん? 威力なら轟さん、攪乱なら葉隠さん、情報戦なら障子さん、フィジカルなら尾白さん……」

 

「地味って言われた……」

「強かったよね~、尾白君」

「あぁ」

 

 凹む尾白を透と障子が慰めていた。

 

「だがシンプルに考えればMVPは――」

「現実的に考えるとMVPは――」

 

 ぶつぶつ呟いていたオールマイトが立ち上がりカッと目を見開いた。同じくぶつぶつ呟いていた八百万が顔を上げた。

 

「轟」

「やっぱり轟だと思うよ」

「まっ、轟君だよね~」

「言われたァッ!?」

「言われましたわ!?」

「えっ? だって、凍ってたら爆発しないんじゃ……?」

「その通りッ!」

「その通りですわ!」

「うん」

「あぁ」

「はい、というわけで、MVPは轟少年だ! おめでとう!」

「ありがとうございます」

「轟少年だけじゃなく他の皆も良い動きだった! 個性と個性、策と策、フィジカルとフィジカル、心と心がぶつかり合った良い勝負だったぜ! ところで葉隠少女、血を吐いていたが大丈夫かい?」

「呼吸が整えばよゆーです……なに?」

 

 障子が6つの目を透に向けていた。

 

「本気だったが」

「殴られたから知ってるよ?」

「では、気を取り直して次の対戦相手は、こいつらだ! Hコンビがヒーロー、Cコンビがヴィラン!」

 

 Hコンビ、蛙吹梅雨&常闇踏陰。

 Cコンビ、峰田実&八百万百。

 

 透の目はモニターに釘付けだ。

 

「気を付けるんだぜ~、静」

「分かってるって」

「引力って本当にあるんだよ、静ちゃん」

「康一さんまで、分かってるってば」

「お~い、牛タン弁当買ってきたぜぇ~」

「ありがとうー、行ってくるねっ!」

 

 仙台駅の新幹線ホームで話したことを思い出す。

 昔から言われてた。

 理由は分からないけど、何故か――。

 ――スタンド使いはスタンド使いと引かれ合う。

 

「いたぁぁっ!」

「どうしたの突然?」

「痛むか?」

「いや、うん、ちょっと……」

 

 いやいるだろうなぁとは思ってたよ。

 雄英高校にスタンド使いの一人や二人。

 もしかしたらクラス内にもいるかもとは思ってたけど、早速見つけたし!

 隠す気もないくらい普通にスタンド出してるし!

 黒いマントの影からかぎ爪を持った2本の腕がッ!

 スタンドのヴィジョンが見えた――ッ!

 常闇君ッ!

 君はスタンド使いだったの……

 

「常闇がなんか出したぞ!」

 

 ……か?

 あれっ……見えてる……?

 

「今の見えた?」

「うん、影みたいな」

「あっるえぇ~?」

 

 スタンド……だよねぇ……?

 もしかして違う?

 

 個性社会の中でもスタンドは隠すもの。

 ニューヨークでジョセフおじいちゃんと暮らしたときも、杜王町で仗助兄ちゃん達と暮らしていたときも変わらなかったスタンド使いのルール。

 スタンド使いを隠すためなら個性届に嘘っぱち書くくらい当然のこと。

 そういう教えを受けて生きてきた。

 ――スタンドはスタンド使いにしか見えない。

 ――スタンドはスタンドでしか倒せない。

 個性社会の中でもそのルールは変わらない。

 個性社会の中でもスタンド使いは異端の存在であることは変わらない。

 だから隠す。個性届も誤魔化して。

 私は『透明人間』という個性に誤魔化して。

 ジョセフおじいちゃんは『念写』、

 仗助兄さんは『修復』、

 億泰さんは『右手で触れたものを削り取る』、

 康一さんは『音を貼り付ける』、

 とかスタンド能力とよく似た個性として申請している。

 だからみんな、職業はヒーローではなかった。

 ――みんなヴィジランテだった。

 

 いやそんなことどうでもいいのっ、現実逃避するな()

 スタンド使いがスタンド使いであることを隠さないこともきっとあるんだ!

 世界屈指のスタンド使いの町、杜王町の常識が通用しないことだってきっとあるんだ!

 

黒影(ダークシャドウ)!」

「アイヨ!」

 

 喋ってるし!

 

「すっげぇ! なんだあの個性!」

 

 アクトン・ベイビーが見えなかった切島君にも見えるスタンドだっているんだ!

 誰にでも見えるスタンドなんているはず――。

 

「いたわぁぁっ!」

 

 康一さんの奥さん!

 

「どうしたの?」

「まだ痛むか?」

 

 隣にいた尾白君と障子君の怪訝な顔。

 まずいまずい。

 

「うん、ちょっと……ていうか、なんで障子君嬉しそうなの?」

「……嬉しくない、心配だ」

「うん? ありがとう?」

 

 常闇君は……スタンド使いじゃないのか……な……っ。

 久しぶりにクラっと来た。

 やばいやばい、意識が飛びかけた。

 

「ちょっと壁の方に行くね……座りたい」

「保健室行く?」

「そこまで痛くないよ」

「無理しない方がいいぞ」

「無理してないしっ」

 

 ほんとは無理してるけどっ。

 やっばい、スタンドパワー使いすぎた。

 自分の身体の透明化を保つだけで精一杯、みんながモニターを見てる今、透明化を解除してもバレないのは一番後ろ。でもまぁ、もともと厚化粧でバレないようにしてるけど。

 でも、もう先客がいるんだよ~。

 

「爆豪君、隣4・2・0(し・とぅ・れぇい)~」

「アア゛!?」

「はぁ~、疲れたね~」

「ア゛?」

 

 寄りかかって座り込んだときにちょっとずれたサングラスの位置を直す。

 両手はポケットに突っ込んで透明化を解除。手袋は付けてるけど一応念ためね。

 

「……今一瞬……デメリット……キャパオーバーか」

「何ぶつぶつ言ってんの? 緑谷君みたい」

「アア゛!? 一緒にすんなや厚化粧!!」

「スーハー、フゥー……少し楽になってきたっ」

「話聞けやァッ!」

 

 周りにプッツンすると怖すぎる大人が多すぎたせいで全然怖くない。

 モニターの中では鋼鉄の板で内側から補強されたドアを黒影が殴りつけてる。

 鋼鉄を破る力はなさそう。

 

『堅いな、ならば』

『カベダァッ!』

「うわ、つよっ」

 

 平気でコンクリートの壁壊してるし。

 強くない? あのスタンド。

 アクトン・ベイビーよりパワーもスピードも上っぽい。

 見た目は近距離パワー型っぽくないのに。

 

「コンクリくらい俺だって壊せるわァッ!」

「うん、見てたから」

 

「……おや、爆豪少年が普通に喋ってる……気のせいだったかな」

 

 モニターの中ではぶち破られた壁からカッコいい立ち姿で現れる常闇君。

 やっぱりスタンド使いだーっ!

 スタンド使いの立ち姿は何故かカッコいいから!

 様になってるッ!

 

「あの立ち方クソカッコいい!」

 

 結局勝ったのは、ヒーローチームだった。

 八百万さんがチェーンソー出したのはビックリしたけど、峰田君がもぎもぎで黒影を壁に貼り付けたのもビックリした。壁ごとぶち壊して叫ぶ黒影にもビックリした。結局、常闇君が二人を引き付けている間に壁を上って潜入した蛙吹さんが核を回収した。

 

「体調悪そうだな、葉隠」

「Yes! I'm fine! Thank you!」

「英語……」

 

 ビックリしたぁ。

 訓練の終わった常闇君が壁に寄りかかりながら話しかけてきた。

 焦った焦った。

 

「立ち方カッコよかったよ~」

「ん? あぁ……」

「基準そこなのね、透ちゃん」

「蛙吹さんはもっとカッコいい立ち方で登場した方が良かったと思うな~」

「練習しとくわ。私のことは梅雨ちゃんと呼んで」

「うん、よろしくね、梅雨ちゃん」

「具合悪いの? 思いっきり殴られてたものね」

「悪くないよ。ただ許容量上限ギリギリなだけ」

「それだけ良い戦いだった」

「あ、ありがとう、常闇君」

「許容量上限になるとどうなるの? 異形型ってそういうデメリットあまり聞かないわ」

「生理痛の10倍くらいヒドイ」

「今すぐ保健室に行った方がいいわ」

「精神的なものだし、治らないから我慢するしかないの。常闇君とかそういうのないの?」

「ないな」

 

 ないんだ。

 スタンドパワー使いすぎて精神力がゴリゴリ減っていくとかないんだ。

 気を張り続けて疲れるとかないんだ。

 スタンド出して戦ったあとの全身疲労とかないの?

 

「つよっ」

「ダロォ?」

 

 ぬぅっと出てきた。

 

「びっくりびっくり」

「顔に出ないのね」

「透明人間だから」

「驚かせてすまない。俺の個性、黒影(ダークシャドウ)だ」

「ヨロシクナ!」

「私気付いちゃったんだけど~、表情読めない組が集まってるねっ! いつも怒ってて逆に表情読めない爆豪君も含めて」

「一緒にすんなやァッ!」

「あ、上鳴君達が動いた」

「てめぇコラ厚化粧! なんで俺が喋ると無視すんだゴラァァッ!」

「タイミングが悪いよね、爆豪君が喋ると状況が動くんだもの。ちょっと黙ってて」

「んだと!」

「……強いな」

「……えぇ、そうね」

 

 ちゃっかり離れてる常闇君と梅雨ちゃんは強かだった。

 

「あ、そうだ轟君」

「なんだ? 俺も無表情組か?」

「間抜け面とか言ってごめんね」

 

 透明にした手を合わせて謝る。

 

「いや、もう気にしてない」

「あっ、あと若白髪とか言ってごめんね。脱色してるんだよね?」

「してない。それも気にしてねぇから」

「あっ、あと」

「まだあんのかよ」

「怒るな、轟」

「もう怒ってねぇよ」

「プッツンしてた轟君になら核の場所がバレないとか思っててごめんね。絶対騙せてると思ってたよ」

「…………それも、もういい」

「ふっ」

「笑うな、障子」

 

「……強いな」

「空気の読めない子は強いわね」

 

 常闇君と梅雨ちゃんがさらに離れてる。

 

 全員の個性はとりあえず見れたけど、常闇君の他にスタンド使いはいない……かな。

 黒影(ダークシャドウ)が本当にスタンドなのかは今は置いておくことにして。

 訓練が終わってビルの外、太陽が眩しくて頭が痛い。

 

「お疲れさん!! 緑谷少年以外は大きな怪我もなし! しかし真摯に取り組んだ!」

 

 大声が頭に響く。早く終わって……。

 放課後は図書館行ってみようかな。

 昨日は茨ちゃん達と会ってたからしょうがないとして。

 そろそろ調べ始めないと。

 いざ連絡来た時に何も調べてませんじゃぶっ飛ばされそう。

 

「放課後になったら反省会やろうぜ」

「いいね~」

 

 切島君と芦戸さんが話してる。

 あ、私はパスで、って伝えとこうっと。

 

「君のレーザーもカッコよかったけど、僕のレーザーの方が輝いてたよね」

「うん、そうだね」

 

 なぜ絡まれるんだろう?

 レーザー撃って目の敵にされたとか?

 

「コスパ悪いからあんまり使わないんだけどね~。集中力使うし、それなのに威力出ないし、疲れるし」

「お腹壊すよねー」

「それはないねっ」

 

 なんか青山君落ち込んでるし。

 

 精神力使いすぎて眠気に襲われながらも授業は乗り切った。

 緑谷君は戻ってこなかった。

 後ろの爆豪はずっとイライラしてた。

 さっ、気持ち切り替えて、図書館へ行こう。

 

「それじゃあね~、障子君、尾白君、また明日~」

「帰るのか?」

「反省会しようって皆言ってたけど」

「ちょっと用事あってね~。明日にでも反省会の内容教えてねっ」

 

 一個隣は障子君、その隣は尾白君。

 訓練といい、縁があるなぁ、この席順。

 

「葉隠も反省会やっていこうぜ」

「用事あるからパ~ス。私のこと褒めといてね、上鳴君」

「褒めるまでもねーんじゃね? 一戦二戦が気合入りすぎだろ、あれ。爆豪も轟も才能マンかよ」

「まぁクラス最強はお茶子ちゃんで決まりだよねっ!」

「え……なんで?」

 

 入試のときも見たけど、上鳴君間抜け面似合うなぁ~。

 

「なんでうちなん?」

 

 やっばい、最強に目付けられた。

 図書館行こうっと。

 

「バイバーイ」

 

 はてなマークを浮かべて近づいてくるお茶子ちゃんにピースサインを返して教室を出た。

 

「うちなんでおちょくられたん?」

「しらね」

「あと、なんかうちめっちゃ怖い人達に睨まれてるんだけどっ!?」

「最強だからじゃね?」

「拗ねてるん?」

「す、拗ねてねぇし」

 

 

葉隠透、雄英高校敷地内を30分彷徨い歩いて図書館に辿り着いた。

途中で爆豪勝己と緑谷出久の青春シーンを目撃したが見ないフリをして通り過ぎた。

透明野郎に出来て俺に出来ねぇわけがねぇ!! とか叫んでいたが気にしないことにした。

 

→To Be Continued ...




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