葉隠透の奇妙なアカデミア 作:ピーカブー
始まりは中国 軽慶市――
“発光する赤子”が生まれた――
以降各地で「超常」は発見され――
――超常の歴史は中国軽慶市で“発光する赤子”が生まれたことに端を発する。
『現代歴史第八版』『超常史第十三版』『個性全史初版』『超常黎明期から現在まで』『個性のウワサ話』『個性医学』『種の進化と個性因子の発現』
「et cetera」
うぅ、活字が頭に入ってこない。どれも同じことしか書いてない。
つーか、このくらい簡単に調べられるなら承太郎さんだって調べてるよねぇ、とっくに。
安請け合いしすぎだった、と今更後悔していた昨日の放課後。
席に並べた本に目を通して左の山から右の山へ。
他の皆が戦闘訓練の反省会中にこんなことしてるのは、雄英高校の合格通知が来た次の日まで遡る。
「雄英高校合格おめでとう」
「ありがとうございます。お元気ッスか?」
「早速用件に入るが調べて欲しいことがある」
「いいッスよ。調べて欲しいって私に調べられることですか?」
トラサルディーでのパーティーの次の日、おじいちゃん達に高校進学の電話を入れてから3時間後、承太郎さんから電話が来た。この時に断った方が良かったかもしれない。
「超常の歴史は中国軽慶市に“発光する
「えぇ、そうッスねぇ~」
「その緑色の赤ちゃんについて調べて欲しい」
「赤ちゃんの……何を?」
「なんでもいいが……カルテ、全身の写真……全身がなければ上半身の写真だけでも構わない。他には父親と母親、成長した後どこへ行ったのか。“発光する赤子”以上の情報全て、ということになるな」
「う~ん、そういえば……何も知らないッスねぇ~。そういう調査はスピードワゴン財団に任せた方が」
「既に頼んである。忙しい時期に悪いが、頼んだぞ」
「はぁ、はい、いいッスけど」
調査初日にして暗礁に乗り上げまくってますよ。
それになんか康一さんも不吉なこと言ってたんだよねぇ~。
「嫌な予感がするなぁ~、それはぁ~」
話したときに康一さんはほっぺたを両手で押さえてなんかぐねぐねしてた。
「僕がイタリアに行ったときと同じようなこと言ってるんじゃあないか、もしかして~。気を付けてね、静ちゃん、ほんとに! ちょっとでも危ないと思ったらすぐやめて承太郎さんに連絡した方がいいよ」
「うん、そうする~」
承太郎さんからの頼み事を康一さんに話したときの顔を思い出して今すぐにでも連絡したい気分。
だって絶対やっばいやつじゃん、これ。
こんなに何も出てこないのおかしいよ。
何冊も本をめくってるのに出てくるのは“発光する赤子”だけ。それ以上の情報は何もないし。
承太郎さんが多分わざと口に出した“緑色”っていう情報も出てこないし。むしろ発光するところはどうでもよくて、緑色の赤ちゃんっていうところを気にしてたと思うんだよね~。
身体的特徴も気にしてたけどその情報も何も出てこない。
パッと見て分かる異形型個性なら“発光する”と一緒に出ててもおかしくないはずなのに。
それ以外に身体的特徴って言ったら……。
「特徴的なアザしか思いつかないしっ! そんなわけないよねぇ、まさか……ははは」
これ絶対誰かが隠してるやつじゃん。
それを私に調べろってことは――。
ヒーローかヴィランが、もしくはヒーローとヴィランの両方が隠してる超機密情報なんじゃあないのかな、これ。
でも100年以上前の話だし、もう亡くなってるよね。
……そう言い切れないのが嫌だなぁ~。
昨日からずっと頭の中でぐるぐる回っていること、それは承太郎さんからの調査依頼。
考えれば考えるほどヤバい案件に見えてきてちょっと背筋が寒くなる。
左脚に体重を、右脚はゆるく曲げて、右腕は左側のスカートのポケットに、左手で顎を支え、頭はやや左側へ傾ける考えるポーズをしていても、答えは何も出てこない。
「あ、あのっ、オールマイトが教師をやっていることについて……」
「はぁ、学校いこ」
ルーティーンのポーズを解いてマスコミに背を向けてゲートをくぐる。
「……なんなのあの子」
教室に着いてもなんだか上の空で。
でも、やたらと後ろの席がギスギスしてて考え事に集中できない。
「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績見させてもらった。爆豪、おまえもうガキみてえなマネするな、能力あるんだから」
「……わかってる」
励ましてるのはいいんだけどますますギスギスするから二人で個人的に話して欲しい。
「で、緑谷はまた腕ブッ壊して一件落着か。“個性”の制御……いつまでも「出来ないから仕方ない」じゃ通させねぇぞ。俺は同じこと言うのが嫌いだ。それさえクリアすればやれることは多い。焦れよ、緑谷」
「っはい!」
発破かけるのもいいんだけどますますギスギスするから呼び出して二人だけで話して欲しい。
というか爆豪君イラつきすぎだしっ。
前の席の私にも分かるくらいイラついてんじゃないよ、まったくもう。
「あと、緑谷。戦闘訓練のV渡すから放課後職員室来い。保健室で寝てて見れてねぇだろ」
「はい! ありがとうございます!」
「さて、HRの本題だが、急で悪いが今日は君らに……」
また何か面倒そうなことになった。
「学級委員長を決めてもらう」
『学校っぽいの来たァッ!!』
一緒に叫んじゃったけど、私関係ないやつだこれ。
なんやかんや騒がしかったけど緑谷君が委員長になってた。
「僕3票ーッ!?」
投票数数えて仕切ってる飯田君がやればいいのにと思ったけど。
副委員長の八百万さんは似合いすぎてる。
どうでもいいけど、後ろの席がさらにイライラ度上げてる。
「あら? 一票足りませんわ」
「えっ、あっ本当だ。19票しかない。数え間違いかな?」
気付いちゃうんだ、そこに。
八百万さんが投票用紙を全部ひっくり返して1枚取り上げた。
「そういえば……1枚白紙がありましたわ。こんなことをしそうなのは――」
「…………」
なんでこっち見るの?
「なんでこっち見るの、障子君?」
とりあえず目の数が一番多い障子君に小声で話しかける。
「俺だけじゃないが」
「無効票1枚入ってたくらいどうでもよくないかなっ?」
ため息で返された。
日も浅いのに信頼もクソもないって梅雨ちゃんも言ってたし。
私もそう思うし。
昼休み中に雄英高校敷地内にマスコミが乱入したらしい。
午後一には委員長が緑谷君から飯田君になってた。
最初からそうしてろと言いたい。
あと、後ろの席がイライラしすぎて私もイライラしてきた。困る。
早く席替えしてほしいけど相澤先生がそんな非合理的なことしないのも分かってる。
私の席って一番ハズレの席なんじゃないかなぁ、もしかして。
→To Be Continued ...