東方姫秋葉 〜 Recapture season lit with gold and red! 作:さわたり
昼過ぎの魔法の森を発ち、私はいま妖怪の山にいた。文の文々。新聞に書いてあった話が理由だ。
「ちぇっ、霊夢のヤツ抜け駆けしやがって」
内容はシンプル。霊夢が異変の首謀者を倒し、協力者を倒すべく捜索を始めたというものだ。私の出る幕なく終わっては面白みがない。私は昨日や一昨日聞いたことを頼りに、妖怪の山を調査しているのであった。
「闇雲に探してもダメかな」
とりあえず人から聞く事も重要かもしれない。私はゆっくり着陸し、聞き込みをする事にした。
適当に歩いていると、私は大蝦蟇の池に着いていた。そこには呑気に昼寝する天子の姿が。邪魔をしては悪いと出ていこうとするが、草を踏んだがさりという音にヤツは目を覚ましたようだ。
「む、魔理沙じゃないか」
「起きちまったか。天人様もこんなとこでお昼寝する時代だなー」
「ここの木漏れ日が気持ちよくてね。天界にはない風景でむしろ面白いな」
起き上がって土を払うと、ぐぐっと背伸びしてこちらを見た。
「お前も寝っ転がってみたらどうだ。私が寝た後などという聖地もそうあるもんじゃないぞ」
「嘘言え。寝床は毎日用意するんだ。聖地がポンポン量産されてたまるかよ」
「いや、聖地量産さ。私そのものが聖域みたいなものだろう」
「お前よりどっちかというと神子の方が似合うぜ」
「かもな。…お前は何しにここへ?」
「これ見ろ」
私が渡した新聞を見て、天子は興味深そうに考え込んだ。
「そうか…霊夢が」
「予想通りすぎてつまらないぜ」
「だったら呉葉をお前が倒すべきだな。先を越されて悔しいんだろ?」
「呉葉。協力者はそんな名前か」
「よく読め。更科呉葉、鬼とあるだろ。それ以前に私は戦ったが」
「いやー、見出しを見ていてもたってもいられなくてな。にしても戦ったのか」
「ああ、なかなか強かったぞ」
胸を張って言う天子。こいつがそう言うくらいなら実際それなりに強いのだろう。私は改めて気を引き締めた。
「そうだ、起きぬけの運動に付き合ってくれよ魔理沙」
「弾幕ごっこか?」
「察しがいいじゃないか。ウォーミングアップってヤツさ」
私へ剣を向ける天子。本当にやる気のようだ。多少面倒であるが、私もこの後戦わねばならないのも事実。体慣らしにしてはいささか強い相手だが、それもよかろう。
「おりゃあ!!」
私が真っ先にホウキで殴りかかるが、天子はこれを緋想の剣で受け止めた。さらに要石をぶん投げてくる。
「あぶねぇな!」
「さすがだな魔理沙」
弾幕で要石を跳ね飛ばすが、それを受け取りぐるんと回ってまた投げ返してきやがった。そう来るか…!
「はっ!ぜらぁ!!」
それを下方に下がる事で避け、さらに魔力をまとわせたホウキでかちあげた。
「ぐあっ…!」
「逃さないぜ!」
吹っ飛ぶ天子の首を掴み、超至近距離で光弾を爆散させる。さらにグルグル回って怯む天子へ、ホウキを叩き込んだ。
「…っ、なかなかじゃないか」
すぐさま体勢を立て直し、私へ接近。胸ぐらを掴んで引っ張ってきたかと思うと、蹴っ飛ばして緋想の剣を叩き込んできた。なかなかの威力をしている。さらに。
スペルを宣言したかと思えば桃を一瞬で平らげた。やはりと言うか、かなり防御が上がる。痩せ我慢でどうにかするあたり、マゾ度が高い技だ。
「どらっ!たぁっ!」
食らってはいるようだが怯まない。彼女の直球な斬り込みをそのままに喰らってしまった。すぐに蹴り返すが、無論ヤツは怯まない。だからこそ、踏み台にして距離を取れる。
「だあっ!」
レーザー達を放つが、それも天子にかき消されてしまう。再び切り掛かってくるあたりで、効果はきれたようだ。私の光弾を避ける一瞬を狙い、スペルを掲げた。
彗星「ブレイジングスター」
ホウキにまたがり、そのまま光を放って突撃する。弾幕はパワーあってこそだ!こういう力押しも必要である。
「うぐおっ!」
そしてうまいことヒットしたようだ。その隙を狙ってすぐさま殴りかかり、さらにキックをねじ込んだ。
「だあっ!」
レーザーを向けてくる天子。だがここで押されてはいけない。続けて畳み掛ける!
星符「サテライトイリュージョン」
体の周りに七色の光弾を展開。突撃して連続的に食らわせる。数回ならぶつかれる玉で、天子は防戦のまま攻めあぐねていた。いまだ。
「どりゃ!」
ホウキを縦に振り下ろしてぶん殴り、さらに至近距離で星弾を発射。天子の斬りかかりをカウンターのキックで受け返し、さらに柄でぶん殴る。
「せぇぇい!!」
そしてグルグル回りながらに打撃を叩き込んだのがそのまま決め手となり、私は勝ちをもぎ取った。
「やるな魔理沙」
「お前はむしろ弱くなってないか?」
「寝起きだからな。さて、体も動かせた事だしここを発とうかな」
「好きにしなよ」
「そうそう、お探しの鬼は九天の滝の橋にいた。会えるといいな」
ニヤッと笑って砂を払う天子。どうやら散歩にでも行く気だ。私は手を振って彼女を見送り、山の捜索を再開した。目指すは橋。彼女のアドバイスを受け取ることにしたのだ。
「あー?魔理沙じゃないのよ」
「マジかよ。そうか、お前も鬼を追って」
まあ、霊夢がいるというのもごく自然な話だ。九天の滝の橋で、彼女は捜索中であった。正直先を越されたくはない。
「お前はなんか情報掴めたのか?」
「大したもんないわよ。更科呉葉って名前、鬼って種族、紅葉柄の着物と朱色の髪って外見情報。そして山か人里にいるかっていう曖昧な所在地」
「人里?そこにいる可能性もあるのか」
「あきつとか言う神様が言ってたのよ」
「いいことを聞けた。それじゃあどっちが先に解決か勝負ってとこだな!私は人里を調べるぜ!」
「待ちなさい。こんだけ探して居ないんだもの。人里だわ」
そう言ったかと思うと、霊夢は私へとお祓い棒を向けた。どうも、やらねばならないようだ。どちらが解決に向かうか、勝負である。
「だっ!!」
「…やっ!」
私の殴りかかりを避けながら、霊夢は光弾を放った。私はそいつを跳ね返しつつ、距離を置いた。
「おりゃっ!!」
私が放った星型の弾幕をスルスル避け、構える霊夢。その習慣あいつは私の視界から消え、上方からキックを放ってきた。瞬間移動とはなんとも御し難い。
「あだっ!」
「せいっ!」
私への蹴りに続けて、お祓い棒で殴りかかってきた。そいつをホウキで受け止めるが、その隙に霊夢はすぐさま距離をとってスペルカードを用意した。
「せい!はっ、はっ!やぁっ!!!」
私に近づいてきたかと思えば、連続でサマーソルトを放つではないか。いきなり出されては避けられない、魔法陣を展開して防御するが、その上からでもなかなか痛い。
「このっ!」
オカルトの特性を使うことに。私の合図と同時に音楽室の肖像画が出現。目からのレーザーが霊夢を連続で襲う。それでも霊夢は怯まない。
「はっ!」
投げてきたお札をはじき返し、私はレーザーを向けた。霊夢はそいつをかわしながら急接近。しかし、私はその霊夢の首を掴むことに成功した。
「おらっ!」
至近距離で放つビームに吹っ飛ばされ、その隙に私がスペルカードを取り出す。
魔符「ミルキーウェイ」
「いけっ!!」
私の放った極彩色の星弾達。隙間を縫ってくる霊夢であるが、流石に避け続けるのは辛いものがあるようだ。ついにくらってしまい、そのまま立て続けに叩き込まれていく。
「いい度胸ね…!」
今度は霊夢がスペルカードを宣言。七色の霊力弾達が私を追尾した。弾幕でかき消すのは難しそうだ。私はガード体勢を取る。
「あででっ!」
それでも何発かもらってしまった。そこに霊夢の針攻撃。私はホウキで打ち返し、さらに魔力を込めて光弾をバラバラに飛ばす。
「…っ」
さすがの霊夢も避けるのに難儀しているようだ。だが、面倒になってきたのか霊夢は全身に霊力をまとってジグザグに突進してきた。蹴り返すが押し切られてしまう。
「こうなりゃさっさと終わらせる!」
ラストワードという奴だ。近づいて放ったかち上げがしっかりぶつかり、さらにぶん回したホウキを叩きつける。
「っ!」
霊夢はが飛ばされた先には、『学校のトイレ』が出現し、手が引きずり込んでしまう。あとは閉じてやれば終了だ。もっとも、中で何が起きてるかは知らんが。
「いてて…」
「博麗の巫女はお疲れか?」
「そうみたいねぇ」
「ま、今回いいとこを持っていくのは私の役目ってわけだ。そこで見てるといいぜ」
「ここからじゃ見えないわよ」
そう言って飛び去っていく霊夢。向かうは人里だ。
「夜になってからってのはどういうつもりだ?」
それはこの鬼、更科呉葉の提案であった。まだ夕方ごろであった人里で、戦うつもりはないとかなんとか。
「人間は鬼が怖いはずよ」
「目の前で戦ってる分には楽しむはずだ。それに祭りに鬼が紛れ込んでも節分が始まるだけだ。お前が思うほど人間は物怖じしないぜ」
「変な話ね。だったらコレは必要ないのかも」
手に持っていた笠を引きちぎりながら言う。角を隠すには十分なサイズのものだ。
「にしても…あんたも人間でしょ?」
「魔法使いだよ。まあ人間も兼ねてるが」
「…まったく、鬼と人間で殴り合いって………鬼側が全力じゃないとしても、ぶっ飛んでるわね幻想郷って」
「どいつもこいつもな」
「楽しいところね、ほんと」
木箱に座ったまま酒を一気に飲み干し、呉葉は笑った。綺麗な星が見える夜空だ。
「お前もここに引っ越すのか?」
「あきつにはそうするよう言われてるわ。まあ、多分ここにいれば楽しいし季節と一緒に飲んで暮らせるし。悪くなさそうね」
「そうだな、それには通過儀礼が居るんだが…」
そう言ってやると、ニヤッと笑って呉葉は立ち上がった。おおかた察しはついているようである。
「あきつがブッ倒されたのもそれを折り込み済みだったのかしら。まったく…本気で秋を奪うぞだなんて人を唆しておいて」
「鬼を唆しておいて、だろ?」
「違いないわね。その通過儀礼とやら、受けて立とうじゃないのよ。あきつの奴は巫女にやられたらしいけど」
「フン、お前の相手はこの私ってわけだ」
私が構えるのに対し、呉葉が一気に仕掛けてきた。凄まじいパワーでの殴りかかり、これぞ鬼というものである。
「だっ!」
「せいっ!」
私のホウキをがっしり掴んだかと思うと、至近距離で蹴りを叩き込んできた。流石のパワーだ。近接は不利と判断し、私は弾幕を広げた。
「やっ!」
「…!」
かと思えば、呉葉も呉葉で炎の妖術を使ってくるではないか。妖力とともにぼうぼうと飛んでくる小さな炎達。避けるのはかなり難儀だ。
「あっちち…」
「そんなに熱いなら冷ましてあげるわよ!」
さらにスペルカードを取り出し、宣言。同時に彼女の後ろから黒い濁流が現れ、私を襲う。防御しようにもできず、かなり吹っ飛ばされてしまった。
「この…!」
彗星「ブレイジングスター」
波があるなら逆らうだけだ。私もスペルカードの使用を宣言し、そのままエネルギーを放出しながらホウキに乗って突撃した。
「っと!」
だが避けられてしまう。そう簡単に食らってはくれないようだ。私はすぐさま向き直って弾幕を展開。星弾を連続で叩き込んだ。
「やぁっ!」
続けて水圧弾を放ってくる呉葉。私は今一度星弾で応え、さらに隙を狙い一気に回り込む。
「ほらよっ!」
次の攻撃はレーザーである。真っ直ぐでなおかつパワフルな光がアイツを狙う。
「…やれやれ!」
だがアイツは避けるのも面倒になってきたようだ。スペルカードを取り出して掲げた。力押しするつもりだ。
しかし、その力押しもだいぶ肉体的である。肉体強化型の技を使った上でレーザーを食いながら急接近し、殴りかかってきた。
「だっ!」
「ふっ!」
私は下へ避けつつホウキに魔力を溜めてかちあげようとした。が、それを腕で止められ、頭突きを食らう。
「いってぇ…!」
流石にかなり怯んでしまう。さらにアイツは、今度こそ拳を叩き込むつもりのようだ。
「…おっと」
「っぶね!」
すんででかわせた。呉葉の腕を軸にグルンと回って上方へ飛び、私はスペルカードを構える。至近距離にいるならそれを利用するほかない。
恋符「マスタースパーク」
「いけぇっ!!」
アイツを前に八卦炉を構え、魔力を溜め込む。呉葉が炎の妖術を構えたその一瞬、私は全てを解き放った。
「っぐあ!」
巨大なビームが呉葉を襲う。そのまま地面へと押されていく。奴の視界は今真っ白なはずだ。
「…負けだよ」
私の放射が終わり、ぷすぷす煙を立てながら呉葉が上半身を起こした。
「通過儀礼終了だぜ」
私が差し伸べた手をニヤッと笑って受け取り、呉葉は立ち上がる。楽しかったとでも言わん表情でこちらを見て、背を伸ばした。
「幻想郷って、終わった後に宴会とかするのかしら?」
「ああ、首謀者を巻き込んでやることも多いぜ。知ってたのか?」
「いいえ。でも元々終わったら酒盛りの予定だったもの。勝ったら外の世界の秋を眺めながら。負けたら幻想郷の秋を眺めながら」
「だったら好都合だぜ。お前の友達さんと話しておきな。どうせ明日だろうよ」
「そいつはちょうどいいわ。それに…アイツってば負けること前提で幻想郷来てたって黙ってたもの。一回文句の一つでも言ってやらなきゃ」
「それこそ弾幕ごっこでだな」
「腕がなるわね。フフフ」
肩を鳴らしながら、朱色の髪を風に揺らして呉葉は去っていった。
翌日、幻想郷が秋に包まれたのは言うまでもないだろう。紅葉と豊穣に、人々は一層感謝しているそうだ。
「じゃあ、あきつが人里に居たのって覚えてもらうためなのか」
「そーらしいわ。私達も利用してたって事ね」
霊夢は呆れ気味に言う。単純な作戦だが結構効果があったらしく、秋の豊か具合は今までの中でも相当のモノらしい。
「今日の夜らしいわね、宴会」
「なんだよ『らしい』って」
「さっき文が配ってた紙にあるわよ、守矢神社だって」
「ほほーう。ま、呉葉も宴会を楽しみにしてたんだ。デカい宴になるぜこりゃ」
今夜がますます楽しみだ。私は遠くの真っ赤な山を眺め、深呼吸をした。
さて、これにて一旦の完結です。
『赤と金の原風景』はEDテーマです。
ただし、まだ呉葉とあきつのストーリーがあります。これの更新はまだ未定ですが。