東方姫秋葉 〜 Recapture season lit with gold and red!   作:さわたり

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緋想天の天子ストーリー的な
脳内で名前で読んでも気取って変な呼び方をするのがこの人です


「風のドラゴンフライヤー」西山あきつ

秋らしいうすら冷たい風が、私の頬を撫でた。妖怪の山の木の上で一夜を過ごすのはミスだったかもしれない。絡んでくる雑魚妖怪を追い払う必要があるし、何より寝苦しかった。

 

「やっぱ守矢神社に居候するべきかねぇ」

 

登りゆく太陽へ独り言。自分の家を用意しようかとも思ったが、それは面倒だ。やはり秋姉妹の家か守矢神社がいいだろう。

 

「よっこいせ」

 

ゆっくり着地し、辺りを見回してみる。日が出始めたとはいえ、やはりまだ暗い。多分5時前だろうか。寝苦しさゆえだが、早起きできたのには感謝してもいいかもしれない。

 

「暗いなぁ……」

 

何となく口に出してしまうぐらいの暗さだ。まあ当然といえば当然だ。日光達が木に阻まれる地理上、仕方のないことだ。もう少し朝日が楽しめる場所が欲しい。私は開けた場所を目指すことにした。

 

BGM: 水のある秋

 

九天の滝の風景はやはり最高だ。私の友人も喜んでくれるかと思ったのだが、秋っぽさがないとやっぱりつまらないらしい。そう言われるとそんな気もしてる。

 

「ふううぅ…」

 

「おや、ため息ですか西山様」

 

座り込む私の元へと声をかける者。見てみたところ、天狗のようであった。キャスケット帽子とくしゃっとした黒髪が目立つ。

 

「君は?私に天狗の友人は居ないものでね」

 

「あやや、更科様から聞いているかと思いました。射命丸文、社会派ルポライターです」

 

「意外な横文字を聞いたな。知ってるだろうが私は西山あきつ。神様だよ」

 

立ち上がって彼女へと手を差し出してみる。笑顔でほんのちょっとばかり圧力をかけつつ、よろしくねとなおさら高圧的に言ってみた。縦社会の天狗には、神様の立場でマウントを取っておくと付き合いが楽だ。

 

「で、その射命丸君が何の用だい?やっぱり取材」

 

「お察しがいいですね」

 

「事務所を通さなきゃ困るね」

 

「あややや、マネージャーでも居ましたか」

 

「うん、更科って言うんだけどさ」

 

「おっと、予想外ですねぇ…。事後報告じゃダメですか?」

 

「んー、仕方ないなぁ」

 

どうやらジョークをちゃんと拾ってくれるタイプの子のようだ。真面目そうに見えたがある程度のユーモアはあるようだ。

 

「気に入ったよ。でもさ、ある程度の対価は要求しちゃおうかな」

 

「ほほう?」

 

「私に勝ってもらおうか。神様は戦いが好きって相場が決まってるだろ?」

 

スペルカードを見せつけてやると、彼女も仕方ないなとでも言うような様子で構えた。

 

「九天の滝のこの大橋。最高のロケーションじゃないのさ。気持ちの良いウォーミングアップになると思うでしょ?」

 

「かもしれませんが…私が勝ったら本当に取材を受けてくれるんですね?」

 

「ああ、鬼じゃないが嘘はつかない主義だ。嘘だけど。とにかく取材を受けるのは真実さ。私が勝ったらやってもらうことがあるけどね」

 

少し面倒そうにうなずく射命丸。私が構えを取ったのに合わせ、彼女も戦闘態勢を取る。

 

BGM:風神少女

 

「はっ!」

 

スピーディーに蹴り込む射命丸。私は体を横にずらして避け、軽くローキックをぶつけた。

 

「いてて…!」

 

「しゃおら!」

 

怯む彼女へ連続チョップを叩き込み、さらにひじを喰らわせた。また構え直す彼女だが、私がペースを握っているうちに押し切らねばならない。スペルカードを用意する。

 

撫子「あきさらば」

 

「だぁっ!」

 

「ぐえっ!」

 

私の放った花型の光弾を真正面からくらい、ぶっ飛ぶ射命丸。そのまま姿勢を回復し、彼女もスペルカードを取り出した。

 

鴉符「暗夜のデイメア」

 

私へと近づきつつ、彼女はカラスを呼び、私へと大量に向けた。どうにか避けていくが、さすがに連続で来られてはそうもいかない。

 

「あいだっ!」

 

くらってしまったのを皮切りに、射命丸が一気に攻め込んでくる。こうなってみてわかるが、彼女はターン制的な戦い方をする。

 

「フッ!ハッ!せいやっ!」

 

「…っと、中々速いね射命丸君!」

 

彼女が攻め込むフェーズになると、こちらが一気に不利になってしまう。うまく有利を取ろうとするが、その隙がないほど彼女はスピーディだ。

 

「幻想郷最速は伊達にやってないですよ!」

 

「へぇ…。面白いじゃないのさ。でも売りはそれだけって感じかな!」

 

ようやくカウンターが入った。正直言って喋ってるだけで舌をかみそうだがそれを悟られるわけにはいかない。

 

「動きに無駄が多いぜ射命丸君!」

 

嘘である。動きの素早さや出の早さ、こいつは1000年越えの熟成された動きだ。一応私も風神の端くれなので、風の隙間を見つけてぶん殴ることができたが。

 

「おりゃああああ!」

 

私の投げが決まり、橋の上に叩きつけられる射命丸。びくともしないこの吊り橋は中々の頑丈さである。

 

「でやっ!」

 

姿勢を立て直す彼女へかかと落としを叩きつけ、さらに蹴り上げ。吹っ飛びつつも反撃を狙う彼女へ、私は羽を震わせながら突進した。

 

「うぐぐ…」

 

唐紅「ちはやふる」

 

グルグル回りながら態勢を崩した射命丸へ、私はスペルカードを見せつけた。姿勢を回復し、まずいとばかりに防御態勢をとる彼女。だがもう遅い!

 

「うあっ!」

 

数本のビームと共に落ち葉型の光弾が彼女へと激突していく。全てくらい終えた頃には、彼女はフラフラと墜落していた。

 

「ざんねーん!取材はまたの機会!」

 

「大変残念です。ところで頼みって…」

 

「こいつの印刷と配布!結果によっては対価支払っちゃおうかな」

 

だいぶブラックな話だが、立場として有利なのは私だ。渡した紙をマジマジと眺めながら、射命丸はうなずいた。内容は、守矢神社での宴の予告だ。

 

「あと…君も来てくれたまえ。一応呉葉と戦った…この異変の関係者なんだからさ」

 

「隠秋異変。そう名づけさせていただきました」

 

「悪くないじゃん。さて、仕事だぞ射命丸君!それいけ!」

 

私が背中を押すと、彼女は渋々と言う感じで飛び去っていった。うまくやってくれると良いが。

 

BGM:踊る水しぶき

 

そのまま下山していくと、玄武の沢へ。ゆっくり歩いたために、かなりの時間が経っていた。もう朝日も登った。

 

「…お?お前確か…あきつ!」

 

「む、君は…魔女?」

 

「普通の魔法使いさ」

 

そう語る黒い服の少女。ホウキに乗るあたりがかなーりステレオタイプの魔女である。

 

「して…魔法少女はなぜ私のことを?」

 

「私は異変解決の専門家だ。呉葉のやつから聞いたんだよ」

 

「というと…君は巫女と一緒に戦ってるのかな?私は西山あきつ、よろしく」

 

「霧雨魔理沙、お前の言う通りの魔法少女だぜ」

 

「にしてもこんな早朝に…どうしたんだい?」

 

「大した用はない。ただフラフラしてただけだ」

 

あたりを軽く見回す魔理沙。散歩しに来たと言うのだから、本当にたいした用もないのだろう。だが、地面に座り込んで風景を眺めるだけで彼女はどこか楽しそうだ。

 

「この見慣れた風景が綺麗だと思う日が来るとはなぁ。秋がちょっと遅かったおかげだぜ」

 

「感謝してくれよ!」

 

「誰がするかよ。おかげで暑かったんだぞ」

 

「結局何が言いたいのさ」

 

「お前のせいってことだ!」

 

魔理沙は私を指差し、笑う。どうやら戦いの口実にでもしたいようだ。正直私も暇といえば暇だ。私もスペルカードを用意した。

 

BGM:オリエンタルダークフライト

 

「ほいさっ!」

 

まっさきに繰り出してきた彼女の技は、まさかのヒップアタックであった。思わぬ攻撃で突き飛ばされてしまい、さらに光弾を喰らってしまった。

 

「あいだだ…」

 

「とりゃあ!」

 

「あっぶないなァ!」

 

怯んだ私へ急接近し、彼女はホウキを振り下ろした。まだなんともいえないが、彼女の攻撃は遅めだが中々パワーがあるように感じる。避けるのが最善だ。

 

「はいやっ!」

 

うまく隙を見つけて蹴りを繰り出すが、防御されてしまった。続けてグルグル回ってホウキをぶつけてくる。そいつをかわすが、続くように星弾を向けてきた。

 

「っと!」

 

それを葉っぱ型の弾幕で追い返し、さらに蹴り込む。一発が入った。連続で蹴りをぶつけていき、魔理沙を跳ね飛ばす。

 

「ぜええい!」

 

さらに木の葉をかき集めて圧縮。ボールのようにして投げつけた。

 

「こいつ…!」

 

彼女が指を弾いたかと思えば、二宮金次郎像が出現して駆け出してくるではないか。なんとも珍妙な魔法である。

 

「せいっ!」

 

「あっ」

 

面白いし独特だが、避けるのは難しくない。かわしつつ一気に接近し、そのまま背中をぶつけた。さらにひじを叩きつけ、後ろ蹴りをぶち込んでやる。

 

「てめっ!」

 

このまま押され続けてはまずいと言う判断か、彼女はスペルカードを掲げた。私は身を引き、距離を取ることにした。

 

魔符「ミルキーウェイ」

 

極彩色の、星形の弾幕達。一個ずつかわしていくが、かなりのスピードをしている。反撃をしようとした一瞬に隙ができてしまったようだ。正面から思いっきりくらってしまう。

 

「おりゃっ!」

 

さらにホウキに乗った魔理沙が光をまとって突撃してくる。反撃のために拳を繰り出すが、押し切られる。我ながら無謀だった。

 

「やあっ!」

 

「…っと」

 

次の攻撃までもらってしまっては思う壺だ。ギリギリかわして、スペルカードを取り出した。

 

「きたぞ我らの秋神さま」

 

「せやっ!」

 

十字を組んで狙った敵には、必殺技の贈り物だ。おふざけで作った技だが気に入っている。もっとも、多分魔理沙は知らないだろうが。

 

「あだだだ!」

 

「てやっ!」

 

正面から水色の光線を喰らう魔理沙。さらに突風でこちらへ引き寄せ、腹へヤクザキックをねじ込んでやった。顔を歪める彼女を前に、私は先ほどと同じカードを見せる。

 

「きたぞ我らの秋神さま」

 

「だぁーっ!」

 

「うおっ!」

 

ちょっとだけ変化を意識し、ウルトラセブンっぽく腕を組んでみる。まあそんなことに気づく魔理沙ではないだろうが。早苗とかにやりゃよかった。

 

「あいてて…」

 

「私の勝ちでいいかな?」

 

「ああ、楽しかったぜ」

 

岩の上に座り込み、ニヤッと笑う魔理沙。いい感じに暇つぶしもできた。手を振る彼女に見送られ、私は玄武の沢を後にした。

 

BGM:秋姫

 

カエデの谷は、意外にも緑一色であった。ここだけ秋が溜まっていた反動なのか、完全に夏模様である。

 

「やっぱり来たわね」

 

そんな声が、私へとかかる。横を見てみれば、岩に座り込む呉葉の後ろ姿。振り返ってこちらを見る彼女は、楽しそうな表情だ。

 

「おやおや、美人さんが何の用かな」

 

私が差し出したバラを握りつぶし、地面へと投げ捨てた。いつも以上にワイルドだ。

 

「あんたいつイタリア人になったのよ。それも女のクセして」

 

「男尊女卑は良くないよ?それに私って宝塚なら男役やってそうでしょ?」

 

「でもバラは秋の花じゃないわ」

 

「だからこそ特別感があるんじゃないか。私が自分の得意分野じゃない花を送るんだ。苦労はありがたがってナンボだよ」

 

だがこういうジョークは呉葉も慣れたものである。フフッとだけ笑うと、すぐに真剣な表情に変わって岩の上に立った。

 

「あんた、私を騙してたでしょ。負けること前提ってことを」

 

「人聞きの悪い。勝った時の条件を言っただけさ。勝てば幻想郷の秋を奪えるし…負けても幻想郷の秋が堪能できる。どっちにせよいいことばかり!」

 

「誤魔化さないで貰えるしら。そもそも私は秋の力を癒して解き放つ役割。あんたの計画通りなら私は要らないじゃないのよ」

 

「分かってないなぁ。こういうのは一緒にやった事実が重要なんだよ」

 

だが呉葉は不機嫌そうだ。でも、長いこと友達をやってる私には分かる。彼女はただ不機嫌ごっこをしてるだけだということが。

 

「フン、何を言ったって無駄。協力者である私にその態度をとった時点であなたは嘘つきなのよ」

 

「へぇ、そうかい」

 

「鬼は嘘が嫌い、よくある話でしょ?」

 

元々人間の彼女が、嘘を口実にしてる時点で本気じゃないのが分かる。嘘も方便。呉葉はそういうタイプだ。

 

「じゃあさ、結局私が悪かったのか…ここの遊びで決めようじゃないか」

 

ニヤッと笑う呉葉。多分「分かってるじゃないのよ」の顔だ。一見喧嘩だが、要するに一緒に遊んでるだけだ。幻想郷を調べた甲斐があるというものだ。

 

BGM:色付く郷に鬼はなし 〜 lost humanity

 

「はっ!」

 

始まるや否や、拳を放つ呉葉。正直彼女と戦うのは何十年ぶりかも分からない。どんなスタイルの戦いだったか、もう一度身を慣らしておくべきだろうか。

 

「よっ……と」

 

彼女の拳をすんででかわし、キックを叩き込む。それをものともしないあたりさすが鬼。至近距離で放ってきた炎の妖術を、イナバウアーの姿勢でかわし、そのまま胸部へ蹴り込む。

 

「いってて…」

 

「せいっ!!」

 

胸を押さえて後ずさる呉葉へ、枯れ葉を固めたボールを投げつける。だがそれを食らう彼女でもない。まあわかり切った話だ。

 

「フッ!」

 

彼女が蹴り返したボールをはたき落としながら、私はスペルカードを取り出した。

 

唐紅「ちはやふる」

 

「おりゃー!」

 

「…!」

 

私が放ったレーザー達の中に紅葉型の光弾が飛ぶ。腕で防御する彼女であるが、連続攻撃ゆえに耐えきれなかったようだ。数発もらっている。

 

「せいやっ!」

 

そこに私が続けて蹴りかかる。だが彼女は私の足をガッチリ掴み、一気に引っ張り寄せてキックの上パンチを喰らわせてきたではないか。かなり痛いぞ。

 

「ぐぎぎ…」

 

「であっ!!」

 

さらにタックルを繰り出してくる呉葉。これを食らってはいけない。大きく回り込んで避け、その背中へ連続キックを叩き込んだ。

 

「いったいわね…」

 

振り向きながら回し蹴りを放つ呉葉。その足の上に一瞬だけ乗り上がり、肩へとキックを叩きつける。肩を押さえる彼女へ、チョップで追撃。

 

「この…!」

 

「はいやっ!」

 

さらに蹴り込むが、防がれてしまった。そこで大きく隙を晒してしまった私に、彼女はパンチを繰り出す。

 

「…っぶな!」

 

それをスレスレでかわし、私はスペルカードを取り出した。

 

裁断術「ものし蜻蛉」

 

「そりゃっ!!」

 

上下にトンボの羽型の光を展開し、彼女をバンと挟み込む。対応しきれず吹っ飛ばされる呉葉。そう、私は裁縫の神でもあるのだ。崇めよ。

 

「この…!!」

 

鬼呪「焼け時雨」

 

対し彼女もスペルカードを宣言。火の玉がバンバンと降り注いでくる。あんまり喰らいすぎるわけにもいかない。隙間を縫ってかわしに専念し、完全にやり切った。

 

「ここだっ!」

 

そして、最後に大技、ラストワードを宣言する。私も散々食らってきたものだ。どうやら呉葉も同じようで、少し表情を歪める。

 

*秋神暴風警報発令!避難不能!*

 

私の全力の突進をくらい、跳ね飛ばされる彼女。そのまま後ろに回り込み、彼女へと振り返った。体制を立て直そうとする呉葉が見ているのは、自身へ手刀とウィンクを向ける西山あきつの姿であろう。

 

「であああああああ!!!」

 

「…!」

 

彼女が身構える暇も与えない。呉葉へと強力極まるハリケーンを叩き込み、一気にぶっ飛ばした。暴風の音で、彼女の声は一切聞こえない。

 

「…うぐっ」

 

そのまま、彼女は地面へと叩き出された。私が出した風に触発され、快晴だった天気はここだけ暴風雨である。

 

「はぁー、あんた強いのね」

 

「いやぁ、ギリギリさ。マジで」

 

雨に濡れながら、呉葉へと手を差し伸べた。それを取ってゆっくり立ち上がる彼女。私のファイトという声に、一発と応えてくれる。いい友人を持ったものだ。

 

「にしても…昨日までキレーな紅葉だったのにねぇ」

 

「だね。反動だろうけど…」

 

「そんな単純な…アレ?ん?幻覚…じゃないわね」

 

「なんの話?」

 

彼女の指差す先は、見上げる山肌達。ゆっくり雨が弱まる中、私は目を疑った。妖怪の山が、美しい緑に変わっていたのだ。燃えるようなオレンジと赤はどこへ。

 

「…呉葉、コレは私じゃないよ」

 

「分かってるわ。…調査しましょう。夏でもないのに緑の中で酒なんて飲んでらんないわ!」

 

「君らしいね。さて、手分けしようか」

 

私の提案に頷く呉葉。二手に分かれ、私はひとまず博麗神社を目指した。

 

BGM:隠されたサカイメ 〜 Welcome to Utopia

 

「…巫女は居ないのか」

 

「ええ、人里に買い出しに行ってますわ」

 

突然後ろからかかった声に、柄にもなく驚いてしまった。独り言だったので、返されるとは思わなかったというのもある。

 

「君…八雲女史じゃないか!」

 

「お久しぶりね、西山さん」

 

「今の名前…。霊夢から聞いたのかい?それとも新聞?まあいいや、どうして君はここに?」

 

「誰かが来るのではないのかなと思ったの。予想通りになりましたわ」

 

扇で口を隠しながら笑う八雲。百何十年前ぶりの遭遇だが、その胡散臭さは相変わらずだ。

 

「…君だろ、夏と秋の境界をいじったんだな」

 

「あら、だったらどうするの?」

 

「ぶっ飛ばさせてもらう。秋神を迎えた上での狼藉とは甚だ思い難い!」

 

威勢良く言ってみるが、正直彼女がやってるとはあまり思わない。たぶん八雲もそれを分かっている。その上で演技にも近い戦いを始めるのだ。やっぱり彼女の考えは読めない。

 

BGM:夜が降りてくる 〜 Evening star

 

「はっ!」

 

「フフ…」

 

私の蹴りを軽く受け流し、彼女は空中にスキマを開いた。飛んでくる卒塔婆を避けきれず、完全に直撃。吹っ飛ばされる私を狙ってさらにレーザーを放つ。恐ろしい追撃である。

 

「……」

 

ニコニコ妖しい笑みのまま、彼女は弾幕を放っていく。私も木の葉型の弾幕で応え、さらに一瞬の隙を見て突風を彼女の背中へと巻き起こした。

 

「…!」

 

驚きながら私の前へと叩き出される彼女へ、私はヤクザキックを叩きつけた。腹を抑えて苦しむ八雲へ、私はさらに連続蹴りでの追撃を放つ。

 

「そおい!…!?」

 

そしてさらに蹴り上げをくらわせようとしたその時、彼女はスキマの中へと消えてしまった。かと思うと私の後ろから現れ、畳んだ扇子をぶつけてきたのだ。思わずぶっとばされてしまう。

 

「あいでででで…」

 

「ウフフ、結構余裕そうね」

 

「本気で言ってんのそれ」

 

笑いながら距離を詰めてくる八雲。私の蹴りを数発喰らったのち数発防御し、隙を見つけて至近距離で光弾を浴びせてきた。反撃しようとする私へ、スキマから巨大な手を出現させて私を掴ませ、ぶん投げた。

 

「…んの!」

 

さらにホーミングしてくるレーザーの追撃。一発一発をギリギリでかわしながら、私はスペルカードを取り出す。

 

撫子「あきさらば」

 

「せいっ!」

 

ナデシコの形の光弾が直接当たり、耐えきれずぶっ飛ぶ彼女。フラフラする彼女へ、さらに木の葉のボールを投げつけた。

 

「なかなかやるのね」

 

ちょっと苦しそうに笑う八雲。かと思うと、彼女もスペルカードを掲げたではないか。

 

「無人廃線車両爆弾」

 

「…嘘だろっ!!」

 

電車がスキマから現れ、さらに爆発。ギリギリで回避できたが、そのまま食らっていたら敗北は確実だ。恐ろしい技をさらっと使ってくる。

 

「危ないことしてくれるじゃんか!」

 

距離を詰めてくる彼女を前に、私はきりきり羽を震わせた。訝しむ八雲だがもう遅い。爆音をそのままにくらわせてやった。

 

「…!」

 

「せいやっ!」

 

そのまま上昇からの降下キックを叩き込み、追撃に軽くレーザーをぶつけた。しかし彼女はすぐに体勢を立て直し、スペルカードを取り出した。

 

式神「八雲藍&橙」

 

「…行きなさい」

 

上下しながら接近してくる化け猫と妖狐。化け猫は知らんがあの九尾は確か藍とか言ったか。まあ今はどうでもいい。迎撃のために、私もスペルカードを宣言する。

 

裁断術「ものし蜻蛉」

 

「えっ」「うおっ!」「…!」

 

上下からの羽でばちーんと挟み込み、三人まとめてぶっ飛ばす!これが決め手になったようで、地面に着地した八雲へ二人は心配そうに近寄った。

 

「あの…紫様…?」

 

「あー負け負け。あ、あなた達は帰っていいわよ」

 

「えぇー…呼んでおいてそれですか。…仕方ないですけど。失礼します。ほら、帰るぞ橙」

 

「お疲れ様です紫様ー!」

 

楽しそうな三人だ。見ていて微笑ましく思ってしまう、が。今はそんな事はどうだっていい。ここから見える妖怪の山が緑色なのも想定内。

 

「そうだ、霊夢にあとで伝えといてよ。この秋の消滅が私のせいじゃないってこと」

 

「もう言いましたわ。分かりやすかったもの」

 

「ならいいんだ。やけに準備がいいね。しかし八雲女史ともあろう者が…なんだっていきなり私の元へ?」

 

「蹴りかかってきたのはあなたよ。博麗神社に飛んできたのも」

 

「それだって予測済みでしょ?何の意味もなく博麗神社で待ってたりするもんなの?」

 

正直疑問なのはそこだ。タイミングが良すぎる。ここに来た時には彼女がいて、しかもそれっぽく準備もしている。私に対して何か企んでいるような気がする。

 

「『ハングリーであれ、馬鹿であれ』。難しく考えすぎよ、あなた」

 

「ご忠告ありがたいけど…私Windows派なんだよね」

 

「あらそう、私はMacの方が好きなのだけれど」

 

「別に式神の趣味を教えるために神社に来たわけじゃないんだろ?」

 

「ついでに言うと貴女に用事があったわけでもないのよ」

 

そう言って、彼女は楽しそうに山菜を取り出した。セリやイタドリ、山わさびにワラビ。めちゃくちゃうまそうだ。

 

「それもしかして」

 

「貴女に用事が無いってわけでも無いのかも」

 

「やっぱり宴会用か。でもさー、秋の風景がないとなぁ。最悪中止かもよん?」

 

「それはありませんわ。必ず秋は帰ってくるもの。…いえ、貴女達が必ず取り戻す、かしら」

 

「知ってそうな口ぶりじゃないか。やっぱ君相手なら考えすぎで十分なぐらいだよ」

 

「それって褒め言葉?」

 

「好きに受け取りなよ」

 

それに対して、八雲はなんとも言い難い微笑みを浮かべた。昔がどうだったかはあまり覚えてないが、とにかく食えない女だ。

 

「…まあなんにせよ」

 

扇子をたたみ、踵を返してスキマを切り開ける。彼女はこちらへ振り返りながら、言葉を続けた。

 

「幻想郷へようこそ!」




あきつは←がガードではなく回避で、タイミングよくやらないと結構厳しいです。でもダメージは一切もらわずしかもめくられる心配もないという、慣れたらめちゃ強いけど慣れるのが難しい。極端なキャラです。性能的にも近接だけど遠距離もちょびちょび交えなきゃいけない中距離キャラ。呉葉に比べるとだいぶめんどくさいです。
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