東方姫秋葉 〜 Recapture season lit with gold and red! 作:さわたり
です
「テウルギストは秋風の神」東風谷早苗
「今年の秋はやけに暑いですねぇ」
汗を拭きながら、私は神奈子様へと話しかけた。神奈子様も神奈子様で、汗を拭きながらぐったりとうなずく。
「……早苗や」
「はいっ?」
「明らかにおかしい。異常気象よこれ。まるで…」
「外の世界、ですね」
私が返した言葉に、神奈子様は今度は力強くうなずいた。神奈子様曰く異変か、そうでなくても何かがおかしいのは違いないそうだ。そうして、私は山を降りるべく守矢神社を後にした。
「コレはコレは。山の巫女さんではありませんか」
「庭渡様?」
私の前に現れたのは鶏の神、庭渡久侘歌様だった。少しあたりをキョロキョロしたかと思うと、彼女は視線を今一度私の方へと向ける。
「紅葉、あまりにも遅いと思いませんか?」
「…ええ、かなり」
「やはり何かしら異常が起きてるとしか思えませんね。それも人為的な」
「そうですね、私も参りましたよこの暑さには。でもご安心を!この東風谷早苗が責任もって解決いたします!」
キマった。胸を張る私に対し、意外にも庭渡様は訝しげな視線だった。
「あなた方が人間、ひいては幻想郷に対し幻想郷に対し協力的である点は疑いがありません」
「きゅ、急にどうしたんです…」
「そして、その行動も早い。…そう、早過ぎる。博麗の巫女さえ、まだただの残暑だと思っている。推定無罪ではありますが、情報を持っている事も考えられます。守矢神社に案内を願います。お話を聞かせていただきたい」
「…それはできません。解決してくると出て行った手前、そんなことできませんから」
「ならば連行するまででございます!」
「それなら突っ切るだけです!」
構えた庭渡様へ、私は駆け出した。同時に彼女が飛び上がり、私も低空飛行へ。妖怪の山にて、戦いが始まった。
「たあっ!!」
鶏の神と言うだけあり、キック技がメインだ。一発目は避けたが、一気に駆け寄られてしまう。続いての攻撃はガードし、大ダメージは避けた。
「でやあ!!」
「っ!」
そして私の幣での反撃を食らい、庭渡様は大きく怯む。素早い上攻撃力も凄まじい彼女だが、防御の手は薄めなようだ。
「おりゃりゃりゃりゃ!!!」
「はっ!」
「…そこっ!」
私の連続蹴りは上手く避けたようだが、そのまま放った霊力弾に直撃。続けて展開した弾幕をかわしていく彼女に、大きめの霊力を叩きつけた。
「…危ないですね!」
「こっちのセリフです!」
ガードしてどうにか凌いだようだ。自分の番とばかりに駆け出し、弾幕で牽制しながらキックを繰り出した。防ごうと構えた幣を弾き飛ばされ、二発目が直撃。
「うぐっ!」
「ハッ!!!」
空中でふらふらする私に、彼女が一気に接近する。だがさっきの弾と連続蹴りが効いているようで、彼女も平気というわけではない模様。庭渡様が目の前に来る瞬間、私はスペルカードを空に掲げた。使う合図である。
神籤「乱れおみくじ連続引き」
「だあああ!!」
空中に投げたおみくじが、爆発と共に降り注ぐ。凶、大吉、大吉。そして、大凶。
「くっ…!!」
「あいでっ!」
大凶だと自分も貰ってしまうのが残念であるが、それにしてもどうやら勝ったようだ。庭渡様は目を回して座り込んだ。
「ふっふっふ、勝ちですね!」
「…見事なお手前。事情聴取は後にしましょう。ひとまず貴女の喉が健康であらんことを」
ウィンクをして私を見送る彼女。私はうなずき、そして妖怪の山をさらに下っていった。
玄武の沢のあたりまで降りた頃。辺りを見渡す私にの前に文さんが現れた。さすが最速というだけあり、風が来たと思った瞬間には目の前にいた。
「記事にお悩みですか?」
「ええ、見てましたよあの戦い。庭渡様に勝つだなんてすごいのね」
「お褒め頂けるのは光栄ですけど。退いてくださいません?」
私が行こうとするが、彼女がそれを阻む。記事が欲しいのだろうか。私は会話を続けることにした。
「何がしたいんですか」
「ネタを掴みたいんです。貴女を記事にしてもいいのですが…『山の巫女、異変解決に向かう!?』じゃあ中身がなさすぎますから」
「お得意の捏造はいかがですか!」
「人聞きが悪いわね。真実を掴むためにも貴女には吐いてもらわねば!」
そう言って、彼女は団扇をこちらへと向けた。これ以上絡まれても面倒だし、逃げられるスピードではない。私は幣を構え直した。
「そもそも私だってよくわかってないんですどね、この異常気象の原因」
「……気付いてるんでしょう?秋の生命力が明らかに減っていることに。その上で駆け出したからには知らないなんてことないはず。それに先ほど庭渡様と話していたあたり…キナ臭い!」
彼女は弾幕を展開した。有無を言わせるつもりはないようだ。
「はいやっ!!」
空を蹴ったかと思えば、彼女はそのまま凄まじいスピードで接近してくる。本来蹴るものなど無い空間だが、スピードのあまり空気抵抗がそのまま足場になっているのだ。燃えないのだろうか。
「…っと!」
そんなことを考える余裕はなさそうだ。彼女の激しい連続攻撃は、避けるので手一杯である。鳥の神様と鳥の天狗で二連戦。やはりスピードで立て続けに来られると困るというものだ。
「だああ!!」
やけくそ気味なキックだが、一瞬の隙は作れた。そこに連続で弾幕を叩き込み、続けて幣を叩きつけた。怯みながらも上昇する彼女。続けて文さんはスペルカードを宣言した。
下方、要するに私へと竜巻が発生する。直撃して一気に体勢を崩した私へ、彼女も体勢を立て直しながらであるが迫ってきた。
「たっ!」
勢いに乗せて団扇を振り下ろす文さん。私はそれを幣で受け止め、蹴り返して距離を取った。さらに弾幕で牽制して距離を取る。…相手が射命丸文ならこの技だ!!
妖怪退治「妖力スポイラー」
文さんの体から妖力が弾幕の形になって私へ向かう。霊力へ変換されたパワーが私に吸い込まれていき、さらに文自身から飛び出た弾幕が、彼女を巻き込むように飛ぶ。
「こりゃ卑怯ってものですよ!!」
弾幕の写真を撮りながらするする間を抜けていく。何発か貰っているようだが、それも大ダメージではない。無論、この技のポイントは妖力を奪うことなので問題はないのだが。
「やれやれ…!」
「やれやれはこっちのセリフです!」
再び近接格闘をする気らしい。スピーディーな攻撃をガードし、見つけた隙に一気に蹴り込むことにした。だがそのキックも避けられ、続けて放ったパンチもいなされてしまう。
「とった!」
彼女は空へかけ上がり、とどめとばかりにきりもみキックを放つ。この際スカートがえげつないめくれ方をしているのはどうでもいい。ともかく、チャンスである。私は見せつけるようにスペルカード取り出す。
奇跡「客星の明る過ぎる夜」
「これは…!」
ちょうど彼女がいるあたりから、閃光が放たれる。ど真ん中で食らった彼女は、そのままふらふら墜落。ようやく体勢を立て直すが、戦意は喪失したようだ。
「これで懲りました?」
「懲りたら新聞記者じゃありませんよ。ま、今は諦めるとしますが」
「でも私は助かりましたよ。貴女のおかげで秋の生命力ってヒントが得られて。谷のあたりに反応あり!行ってみましょう」
驚いた。奥まった谷のあたりだけが紅葉していて、過ごしやすい気温なのである。さらに木の実なんかもいっぱい成っていて、どうもここだけ『秋』という感じである。
「貴女は…?」
「ん?懐かしい匂いだね」
奥の石に座り込む女性へ、私は声をかけた。ショートカットの薄緑の髪とオレンジのシャツが特徴的で、何より背中のトンボの羽が目を引く。妖精達の羽なんかよりずっと巨大だ。
「懐かしい…?」
「ケロちゃんと…これカナちゃんもだよね?巫女の格好なのにすごく神様っぽいね」
「ああ、私現人神なんですよ!ふふん!」
「へぇー、こいつは面白い」
胸を張る私を前に、その女性は立ち上がった。所々のしめ縄が、神奈子様を少し思い出させるデザインだ。その風格からも、神霊であることはよーくわかった。
「これ、貴女の仕業なんですよね?竜田姫様」
「おっさすが。二重の意味で正解だ。いかにも私の仕業だし、私は竜田姫さ!」
「何が目的ですか。ことと次第によっては…!」
幣を向けてキメ顔。今の私はきっと最高にかっこいいだろう。そう思うのを知ってか知らずか分からないが、竜田姫様はニヤッと笑い、構えをとった。
「幻想郷の秋を奪いたかった。コレはやられる答えかい?」
「ええ、理由は叩きのめした後に聞きましょう!!」
竜田姫様は挑発するように私を招いた。それならば乗るのみ。蹴りかかる私へ、彼女は余裕そうに対応した。パンチとキック、そして幣とのコンボを繰り出すが、彼女は全てかわしてしまった。
「せやっ!!」
そして一気に距離を詰められたかと思うと、私の腰を掴み、さらに腕もガッチリ掴まれた。そのまま床へ投げ捨てられる。柔道で言うなら大腰である。もっとも、空中大腰なんて技柔道界にはないが。飛べないし。
「…っと」
叩きつけられ、怯みながら今一度飛び上がる私。そこへ、竜田姫様からの鋭いキックが入った。…が、コレはガード。そして至近距離はありがたい。
秘術「グレイソーマタージ」
「あいっっ……て」
数個現れた星形の光が、五つに弾けて拡散する。目の前で何発ももらい、竜田姫様はよろよろ距離を取った。
「やぁっ!!!」
「あぶないなっ!」
そして再び殴りかかる。だがやはり避けられてしまう。次の一発は当てることに成功し、大きく怯ませた。そこからはこちらのターン。どうやら彼女、ガードは苦手なようだ。
「…ぐっ…へあっ!」
何発か食らったところで、彼女は私へ膝蹴りをぶつけた。そして一瞬距離が取れた隙に、竜田姫様はスペルカードを掲げた。
ガードする私を前に、彼女は手を十字に組んでビームを放った。言い訳のしようが無いレベルでスぺシ○ム光線である。ガードしつつもわりと遠くまで飛ばされ、さらには防ぎきれず少し食らってしまう。
「だああああ!」
今の光線はどうも威力が高くない割に消耗が少ないらしい。彼女はすぐにこちらに向かってきた。そしてすれ違いざまに羽をぶつけてくる。どうでもいいがチャリに乗っているときにセミが顔面に激突するとものすごく痛いの注意。私は通学中によくやられました。
「とうっ!」
Uターンして今一度向かってくる竜田姫様。さっさと決着をつけねばならないと、私は大技を使うことにした。あいにく都市伝説は用意してないが、それに負けない技を考案済みである。
「…!?」
旋風が彼女を襲う。風は彼女の得意分野なようで、あまり苦ではない様子。だが、それで終わりではない。蛇とカエルが大量に彼女へ突撃したのだ。弾幕と周りの神霊のパワーで作った弾幕ではあるが、その迫力は十分なはずだ。
「やあああああああ!」
大きくのけぞった私は彼女へ指さし、ウィンクを飛ばす。最高にキマった。あとは叩き込むだけだ!!
一気に接近し、すれ違いざまに幣で斬りつける。時代劇で見る居合のモーションが参考だ。
「うぐっ…!」
それが決め手になったようで、彼女は地面へ墜落した。余裕そうに着陸するが、戦いを続けるつもりはないようだ。
「貴女の負けです!大人しく…」
「まあ待ってよ。負けたのは私だけ。協力者がまだ負けてない」
「だったらそちらも倒すだけです!」
「でもその前に…。私は君を脅すことができるよ」
「…話だけ聞きましょう」
「神奈子と諏訪子は私の千年来の友人!なんなら今から会いに行ってもいいよ?」
どこから取り出したのか、酒を片手に笑う彼女。しかしそれではいそうですかと言うわけにもいかない。私は彼女を止めた。
「ダメですよ!だいたい友人だからなんだって言うんですか!」
「協力してもらうのさ。秋を奪うと言っても数年分だし…被害は最小限にするさ」
「その秋の生命力はどうすんですか?」
「外に放つの。あっ、守矢神社こっちだよね?」
「…???いや、まあそっちですけど」
「あと私の名前は西山あきつ。それで覚えといて」
この後どれだけ聞いても彼女は煙に巻くばかり。もう一回戦う余裕もないので、そのままついていくはめに。
勝負にも試合にも勝ったものの、異変はなぜか解決せず…。
いきなりの久侘歌で驚いたかもしれません。久侘歌がどういうキャラか。それは自機、もとい主人公になってからのお楽しみです。
あっ、music roomとかも作るんでご期待ください。聞けませんけど。