東方姫秋葉 〜 Recapture season lit with gold and red! 作:さわたり
いい朝だ。久侘歌の家はほどよく涼しいし、彼女は相当料理上手。ぐっと体を伸ばし、日光を浴びる。多少暑いが、彼女が一晩で作った残暑仕様特製巫女服は着心地も最高だ。まあ無論霖之助さんの方が上手に作るが。
「よーし、そろそろ出発ねぇ」
「行くのですね!」
「異変って分かってから三日目…ようやくやる気出てきたわ!」
「それは大変結構。目的の相手はおそらく守矢神社にいるのではと思います」
「そうと決まれば行くしかないわね!」
私は飛び立ち、空へと向かった。目指すは守矢神社だ。
久侘歌の家は滝の上の見晴らしの良いところであり、そこから守矢神社まではあまり遠くない。すぐに到着し、庭を掃除する早苗を見つけた。
「あ、霊夢さん」
「あきつとかいう神様を出しなさい」
「西山様ですか?…と、いうとやはり異変解決ですか」
分かっているなら話は早い。ここを通せと言ってみるが、やはり早苗は良しとは言い難い表情だった。
「やっぱり手を組んでるってわけね」
「まあそうなりますね。多分今はカエデの谷に居ると思いますが」
「隠しても無駄よ。出しなさいってのに」
「はぁー…ですからー…」
「もういいわ。あんたをぶっ飛ばして強制捜査よ!」
相手があくまで隠し通すつもりなら私もそうする他ない。彼女も幣を構えた。さっさと倒して仕舞えばいいことだ。
「ぜりゃっ!」
「はいや!」
私と彼女の蹴りがぶつかり、同時に後ずさる。先に反撃を仕掛けたのは私。彼女へ針をぶん投げるが、全て弾かれてしまった。
「はっ!」
続けて早苗からの星型の光弾。陰陽玉でかき消し、そのまま霊力弾を放つ。避け続ける早苗だが、無駄なこと。一気に駆け寄り、サマーソルトを叩き込んでやった。
「たあっ!」
「やっ!」
続けて幣で殴りかかる早苗。私もお祓い棒で応え、打撃戦が始まる。なかなか折れない早苗。さらに隙を見て私の腕を掴み、風を食らわせて吹っ飛ばしてきた。なかなか痛いぞ。
「おりゃー!」
続けてスペルカードを宣言する早苗。星形の光弾が現れ、五つにばらけて飛んだ。もちろん全てを食らったわけではないが、そこそこにもらってしまう。結構痛いじゃないか。
「はァ!!」
私はお札を投げ、さらにアミュレットを飛ばす。いくらかはじき返した早苗だったが、それでも食らっている。その隙を狙って私はキックを叩きつけた。
「あいたたた…」
「それで終わりじゃないわよ!」
神技「天覇風神脚」
さらに四連続で
「やぁっ!」
再び蹴りかかる早苗。そこへ私はお祓い棒を叩き込み、チョップを叩きつけた。さらにスペルカードを掲げる。
珠符「明珠暗投」
「だっ!」
陰陽玉を三つ叩きつけ、さらにお祓い棒をぶつける。
「あぅ…」
それが決め手になったようで、早苗は地面に着陸。降参ですとばかりに手を上げた。
「さあ、あきつを出すのよ!」
「居ないってば!」
「…本当に?」
私の声に対して、本当にいないよと声がかかる。諏訪子だ。まあここまで言うならひとまず信じるしかないだろう。ではどこに居るのかと問うた。
「たぶんカエデの谷ですね」
「カエデの谷?」
「あれ、ご存知ありませんか。まあそれもそれで仕方ないですけど」
「妖怪の山の地理なんざ興味ないわよ」
「そうですか?結構面白いですよこの山」
「いいからどこなのよカエデの谷は」
いい加減早くしてほしい。私のその思いに気付いてか気付かずか、早苗はガサガサと地図を取り出した。そうして指差した谷、そこがカエデの谷らしい。
「ありがと。じゃあ向かうわね」
「ええ、異変解決頑張ってくださいね」
「あんたたち協力者じゃないの?」
「そうですよ。現時点でとっても協力してますとも」
言っている意味が分からないが、まあ早苗はどこかしらズレているタイプだ。気にする必要もないと言うものだろう。私は守矢神社を後にした。
「ここだけ秋っぽいのね」
「あ、博麗の巫女だ!」
「あら?あんた確か…芋の神様」
「正しくは豊穣の神様ね」
そう言う彼女を見て、ようやく思い出した。確か穣子である。彼女だけと言うことはないだろう。横を見ると、静かに姉の方が座っていた。
「あんたは確か静葉」
「…知ってるかしら。秋ってね、液体なの」
「詩はいいからあきつとかいう神様に会わせてよ」
「はいはい。でも悪いけれど…彼女はここには居ないわ」
「またそれ?何処にいるのよ」
「人里だと思うわ」
久侘歌といい早苗といいこいつらといい、人様をたらい回しにするのが好きなようだ。今度は人里だ。
「にしても意外だなぁ。私達を倒しに来ると思ってた」
「今回は黒幕の正体を知ってるからね。お望みなら倒してあげてもいいわよ」
「遠慮しておくわ。行くなら人里に行きなさい」
「ええ、って…言いたいところだけど。たぶんあんた達も協力者よねぇ」
「別にそういうわけじゃないわ」
「ふーん?でも幻想郷の秋ってからにはあんた達を利用してるってことも考えられるわね」
あれこれ考えるのも面倒だ。ひとまず怪しくて目の前にいるからにはぶっ倒しておいた方がいい。私の言いたいことを察してか、静葉はため息をついた。
「仕方ないわね。やるわよ穣子」
「えぇ〜…。まあやらなきゃダメだよねぇ」
私達を前に構える二人。なかなかいい度胸をしている。
「せい!」
「だっ!」
先に動いたのはあちらだった。穣子の拳を避け、膝蹴りを叩きつけてやる。追撃にお祓い棒を構えるが、その隙を狙って静葉のキックが入った。
「うぐっ!」
避けられない。さらに威力まですごい。予想外だ。穣子も避けたが威力はかなりありそうに見えたし、この二人近接だとかなり強いのでは。
「やー!」
「…っ!」
さらに後ろからラリアットを向けてくる穣子。私は下方へ避けて相打ちを狙うが、静葉がぐるっと回って穣子を避けた。それどころかその勢いを殺さず穣子は突っ込んでくるではないか。
「はいやっ!」
だが、こちらにしっかり突っ込んできているならば分かりやすいというものである。まっすぐ迎え撃てばいい。私は霊力を纏って突進した。
「ぐっ!」
「…くっ」
私がジグザグ上下しながらぶつかり、二人への体当たりに成功した。さらにそのまま振り返り、お札と針を投げつける。
「あででで!針、針!」
「ゆっくり抜きなさいよー」
だが相手は一応神様だ。霊力による攻撃は少し効きづらい。近接に持ち込んだ方が得だろうか。
「はっ!」
すぐさま静葉の方に掴みかかり、お札を貼る。一瞬だけの拘束だが、そのままキックを叩き込むには十分だ。ぶっ飛んだ静葉が穣子にキャッチされた。
「姉さん大丈夫!?…この!」
穣子が手を広げ、まばらなレーザー達を私へ放った。結構出が速い技であり、回避はできず咄嗟の防御に。霊力で張ったシールド越しでも結構熱い。
「せいっ!」
さらにそれを飛び越えるように静葉にかかと落としが入る。私はサマーソルトキックで応え、私と彼女の脚がぶつかる。
「あいでっ」
押されたのは私の方だ。そのまま連続蹴りをもらってしまう。このまま推されるわけにもいかない。相手も疲弊しているし、攻め所と見た。
「夢想天生」
「ぜおりゃっ!」
私の周りへ陰陽玉を展開し、そのまま蹴りかかった。避けようとする静葉をお祓い棒でぶん殴り、そして穣子へはキックをぶち込む。
「どら!」
「うぐっ…」
今だ、全身の霊力を解き放つ!私がびしりとお祓い棒を払ったのと同時に二人揃ってぶっ飛び、紅葉の散る地面の中に突撃した。
「私の勝ちで文句ないわね」
「いてて…」
「…ま、予想通りね。あんた達をぶちのめしても状況は変わらない」
「予想してたなら西山様から倒しに行きなさいよ」
「うるさいわね。あんた達がここに居たせいよ」
私自身暴論だと思うが、このぐらいの適当さが無ければ異変解決なんざやってられない。彼女達は人里にあきつが居ると言っていた。信じてみることにした。
「待ちなさいよ、あんた」
「これはこれは、昨日ぶりじゃないか霊夢くん」
私を振り向いて笑う薄緑の髪の女。妖精のような羽だが、妖精のものよりかなり大きく、身長自体も紫と同じかそれ以上はある。
「変な呼び方ね」
「霊夢と呼ぼうかい?」
「好きになさいよ」
「では霊夢。君がここに来たってことは…私を倒しに?」
「当然でしょ。あんたが何したいか知らないけど秋を奪ったんだからね!」
「フフフ、じゃあ私を倒して異変解決って訳だ」
私を前にケラケラわらう西山あきつ。久侘歌は秋の神だとかなんとか言っていたが、底の読めないタイプだ。
「そうよ」
「フフフ…ハッハッハッハ!!ならこの期に私の正体を明かすとしよう…」
「あー?」
「そう、我こそはこの幻想郷を作りし賢者の一人である!」
「何ですって!?」
「まあ嘘だけどね。一応摩多羅女史とかとは面識有りだよ」
ふざけてるのかコイツ。たぶんそうなのだろうけど、ついでに幻想郷について詳しいという事を伝えたかったのだろうか。ますますよく分からない。
「結局あんた何がしたいわけ?」
「庭渡女史に聞いてないの?外に秋を解き放つのさ」
「本当にそれが目的?だったらこんな派手にやる必要あるのかしら。それも人里で」
「目立ちたがりなだけさ。文句あるかい?」
そう言って笑うあきつ。もういい、続きはぶっ飛ばしてから聞くことにした。
「行くわよ、秋神さん」
「来たまえ、博麗の巫女。去年の秋の思い出に浸り…そのまま敗北の味をなめろ!」
あきつも空へ舞い、私を前に構えた。宗教戦争の時のように、群衆が見守る中戦いが始まる。
「せやっ!」
まず仕掛けてきたのはあちらだ。繰り出してきたチョップを蹴り返し、そのまま陰陽玉を正面から叩きこんだ。
「いってて…。そう来りゃこうだ!」
スペルカードを掲げ、手を十字に組むあきつ。そうして放った水色の光線はかなり出が早く、避けきれない。腕を組んでガードし、反撃に向かった。
「やぁっ!」
私の投げた針を簡単にかわし、あきつもあきつで私へと蹴り込んできた。私はお祓い棒で弾き飛ばし、そのまま連続で殴りかかる。だが図体の割に細かい動きをするようで、全てをスルスルとかわされてしまった。
「こいつ…!」
「おっと、すごいじゃないか」
あいつの後ろへ瞬間移動して蹴り込むが、それも軽々かわされてしまう。だがそれに続いて放った回し蹴りはしっかり叩き込めたようだ。
「せぇい!!」
「いっててて…さすがだね」
痛そうに横腹を押さえながらだが、余裕気味に言った。別にその顔を崩すことに興味はないが、いまいちよく分からないというのも不気味だ。
「よっこいせ…」
私から距離を取りながら、あきつは光弾を放った。それを食らう私ではないが、近づきづらくなった。それならそれで考えもある。
霊符「夢想封印」
私はスペルカードを投げたのに続け、七つのカラフルな光弾があきつを追尾し、連続で当たった。さらにその隙にキックを叩きつけ、昇天脚を食らわせる。
「いててて…」
「食らえ!」
「食らわないよ!」
続けて私がお祓い棒を構えた瞬間に、彼女はスペルカードを私へと見せつけた。
唐紅「ちはやふる」
「ぜやー!」
前方へ巨大なオレンジ色のビームを放つ。それの回避は成功するが、同時に散っていた紅葉型の光弾を食らってしまう。
「せいやっ!」
さらにあきつの連続蹴りが飛ぶ。どうにかかわせたが、立て続けに攻撃されては面倒だ。私はココで畳み掛けることにした。
ラストワードだ。切り開けた隙間達がレーザーのようにあきつを取り囲み、ジリジリとダメージを与えていく。…そして。
「だぁっ!!」
ぎばっと空間を開け、私が斬り込む。その最後の一撃が決め手となり、私の勝利となった。
「フン、あんたの企みはこれで終わりよ!」
「ふふ…あっはっはっは!」
私が勝ち、あいつの目的は終わりのはずである。それでもあきつは笑っていた。私を来るよう招きながら、彼女は博麗神社へ案内しろと言う。側から見れば、私は首謀者を連行しているようだろう。
「フフフ…んふふふ」
「な…何がおかしいのよ」
「いやぁ、私の企みは達成されちゃったからね」
「何ですって?」
「私の目的は?」
そんなの決まっている。秋を奪う事だろう。それをあきつに対して言うが、それでも彼女はクスクスとした笑いを続ける。
「そう、それも正しい。…でも」
「でも?」
「もう一つ目的があってね。この際だし言っちゃっていいか」
そう言って笑ったかと思うと、すこしだけ加速して私の横に並び、話を続けた。
「至極単純。ここへの移住に際して私の存在を見せつけておきたかったのさ。そうすれば信仰を得ることも楽だろ?」
「まさか…人里に来たのも私に倒される戦いを披露するために?」
「察しがいいね巫女ちゃん。そう、君の株もついでに上げたんだ。感謝したまえ。それに秋がなければその反動とありがたみで、来年の秋には静葉と穣子に感謝するでしょ?そういう事。いやー、友達巻き込んでやった甲斐あったよ」
「…あんたねぇ」
「さて、協力者である私の友達はまだ倒してないんだろう?この異変はそこでフィニッシュ。さあ行け博麗の巫女!ボスラッシュだぞ!」
そう言って振り返ったかと思うと、博麗神社へ着いてもいないと言うのに私の背中を押すあきつ。やっぱり何を考えてるか分からない。
「仕方ないわね。どこにいるのよ」
「九天の滝のあたりかな。でも人里かもなー」
「何よそれ…」
「ま、人里にいても暴れるタイプじゃないしさ。気長に探しなよ」
「私はさっさと秋が戻ってきて欲しいのだけどねぇ…」
不平を言っても仕方がない。まずは人里へ戻るとしよう。あきつへ博麗神社の場所を教え、私はくるっと振り返った。面倒になりそうだ。
どっちも幣ですけど、分かりやすさのために霊夢と早苗で呼び変えてます。
夢想天生は緋想天と心綺楼のミックス演出です。