「お、お帰り白、遅かったな。雨、大丈夫だったか?」
「ん、ただいま。一応雨宿りしてたからね、びしょ濡れにはなってないよ...あ」
玄関を入ると、藍が出迎えてくれた。どうやら昼食が済んだようで両手に食器を携えている。一言二言喋っていると、危惧していたことを思い出した。
「洗濯物は「ちゃんと取り込んだよ、少々ギリギリだったけどな」...ありがと、藍」
今朝早くに干していた布団達はどうやら無事らしい、朝は日がでていたのになぁ...。もう6月とは言えお空も多少不機嫌らしい。
私は履き物を脱ぎ、食卓へ向かう。少し遅いがお昼にしようか。今日は藍の当番だし、のんびり食べよう。
昼食を終えた私は縁側に座って、一人雨の降る空を眺めている。庭先には早くも紫陽花がうっすらと紫色を帯びて佇んでいる。...あの日も、こんな雨だったかな。
物思いに耽っていると、廊下の軋む音が雨音に混じって耳に入ってくる。目をやると、藍がそこに立っていた。
「隣、良いか?」
「ん、勿論」
藍は湯呑み二つとお茶菓子の乗った盆を置き、私の隣に腰を降ろした。どうやら家事も一段落ついたらしい。湯呑みを受け取り一口、...ふぅ。
「.,.今日、紫様は?」
「幽々子様に会いに冥界へ行ったよ、夜になる前には帰るそうだ」
「...そう」
「白は、何か考え事か?...悩みなら聞くぞ」
「...そんな風に見えた?」
コクリ、と藍は頷く。
「ずっと上の空というか...雨の日はいつもそうじゃないか?」
「...私ね、雨、好きなんだ」
あの日もこんな雨の日だったから。と、心の中で続ける
「...私も好きだな、雨。なんというか、うまく言えないけれど...心が落ち着く」
まぁ、尻尾の手入れが大変だがな...と藍は言う。...どれ、と私は立ち上がる。
「ん、どうかしたか?白」
「なに、同僚の労いも兼ねて一つ尻尾の毛繕いでも、と思って」
私は藍の後ろに座り込み、懐から櫛を取り出す。もふもふと柔らかい尻尾の感触を楽しみながらスイーッ、とといていく。
「ちょ、別に自分でやるから...」
「いいよ。私も楽しくてやってるから、藍はゆっくりしてて」
順番待ちの尻尾たちがパタパタと動いている。...口ではそう言うが、まんざらでもないらしい。
「む、...まぁ、そこまで言うなら...」
「はいはい、素直でよろしい」
今日は簡単に折れたなぁ...なんて思いながら毛繕いを続ける。...それにしても、凄いなぁ尻尾。流石は金毛九尾の大妖怪様、立派なことで。
「少し、羨ましいよ...」
「...そうか?」
私も妖狐ではあるが、尻尾は持っていない。...いや
自ら捨てた
まだしばらく日常回です。...まだお話に出てない方とかとも会わせていこうかな。それでは、また読んで頂ければ幸いです