私は縁側で夜空を見上げていた。...今日は満月みたいね。少しばかり雲がかかっているけれど、その切れ目からは月明かりが淡く、辺りを照らしている。
可愛い式神達はもう眠りについている。話を聞くに、明日博麗神社で梅雨明けを祝う宴会があるそうな...。
ふと、何か空気の流れに違和感があった。...軽く身構えたものの、少し懐かしい妖気に肩の力を抜く。
「...久しぶりね、萃香」
「ん、そんなに経ってたっけか?」
何の前触れも無く、私の隣に一人の少女が現れる。小柄な、10歳程度の少女。只、異質なのは頭部に二つ、捻れた角が生えていること。
「どうかしたの?貴女から訪ねて来るなんて...」
「なぁに、古い友人と酒でも呑もうかと思ってさ」
萃香はそう言うと、手に持っていた酒瓶をこちらに見せてくる。
突然辺りが明るくなる。見上げると、月を隠していた雲が霧散し、月明かりが一層はっきりと地上を照らしていた。
「ほら、月見酒と洒落混もうか」
「...そうね」
悪戯っぽい笑みに私は、変わらないなぁ...なんて思いながら微笑みを返した。
「...藍のやつは元気してるかい?」
「ん...そうね、私が永く眠っていた間も頑張ってくれてたわ...」
あの子達には感謝している。妖怪としての性質上、冬眠を余儀無くされる私。その間、この幻想郷を任せることができる存在にとても助けられている。
「あー、今年は冬も長かったしなぁ...あんまり迷惑かけてやるなよ?」
「...そうね、二人には頼りきりだものね...」
残り少なくなっていた枡を傾け、萃香の持ってきたお酒を流し込む。
「...そういえば、新しく式神が増えたんだって?」
「ん、ありがと...そうね。藍と同じくらい、優秀な子よ」
空になった私の枡にお酒を注ぎながら、萃香が聞いてくる。...そういえば、話してはいたけれど会わせてはいなかったかしら...。
「んー、挨拶くらいしたかったんだが...もう寝てるみたいだしな...」
「そうね、明日も用事があるみたいだから...」
最後の一滴が枡に落ち、瓶を置く。萃香は瓢箪を取り出し呷る。
「...藍とどっちが強い?」
藪から棒に聞いてくる。
「白かしら...貴女とも良い勝負するかもしれないわよ...」
「...へぇ...それはそれは...」
私が喉を鳴らす度に、数度瓢箪を呷る萃香。ぷはぁ、と息を吐き、そのまま続けた。
「...実は一つ、異変でも起こそうと思っててさ」
「...そう、貴女がねぇ...」
「今年は冬が長かった分、春はあっという間だったからねぇ...」
よいせっ、と立ち上がる萃香。
「花見酒、し足りないんだよなぁ。...ま、久々にお前と呑めて良かったよ」
その言葉を残し、鬼の少女は霧のように消えた。...私は手に持った枡に目をやる。
綺麗な月が私を覗き込んでいた
紫さん視点でした。...こういう日常を切り取ったような描写が上手くなりたいですね。それでは、また読んで頂ければ幸いです