鋼の錬金術師のSS詰め箱   作:カルディス

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転生物と失恋ものです。
ちょびっとグリリン要素が出てきます。腐ではないです。


『そんな君が』リン・ヤオ

「ねぇ、リン」

「……」

「ねぇリンってば!」

リン・ヤオは屋根の上にいた、ある一人の少女を連れて。

彼女はこのひと月の間にセントラルに堕ちてきた、別世界の人間だという。

彼女は錬金術とはまた違う不可思議な術を使った。

それにより戦線に加えられた彼女は、明日、約束の日に戦場に向かう。

そのまま、帰らぬ人になる可能性もある。

そのまま、基の世界に帰ってしまう可能性もある。

考えたリン・ヤオは、彼女を今夜一時的に連れ出すことに決めた。

最後になるかもしれない、会話をするために。

 

「なア」

「何?」

「明日、だナ」

「……うん、そうだね」

「もウ、帰るのカ?」

「そうかもしれない。わからないよ」

「本当二、突然だったのカ」

「うん、本当だよ。だから、規則性がわからない」

「つまり、戦いの最中に消えるかもしれないのカ」

「そう、なるかな。我ながら馬鹿みたいだよ、本当」

彼女は空を仰ぎ見た。自身が堕ちてきたであろう空は、星を瞬かせていた。

「……ね、リン」

「なんダ?」

「リンが私を呼んだ理由は?もう真夜中だけど……」

「……言いたいことガ、あっテ」

「うん」

彼女はリン・ヤオの言葉を待っていた。

「――――君が、好きダ」

「……え」

「君が、好きダ」

「えぇ、は、え」

彼女は酷く狼狽えていた。

「なんで、そんな、だって」

「だってもクソもなイ。――――だから、失いたくなイ」

彼女は狼狽えながらも、下を向いた。

そして口を開いた。

「私と君は、生きてる世界が違いすぎるよ」

「わかってル」

「わかってないよ、リン。そもそも君は皇帝の子で、私は一般人。その上、生きてる世界も違うの。」

「そんなこト、分かってル!」

「なら、なんで……!」

生きる世界も、身分も、生活も。

何もかも違うのに、どうしてこんなことをいうのか。

彼女は理解できなかった。

リン・ヤオはただ、こう言った。

「好きだからダ」

「……う、そ」

「嘘じゃなイ」

リンは、普段意図的に閉ざしている目を開けた。

「この目に誓ってそう言おウ」

「……」

「だからもシ、生きて帰れたならシンに来てほしイ」

彼女は、黙ったままだった。

 

「ごめんなさい」

漸く口を開いたとき、彼女はそう言った。

「私、アナタの好意は受け取れない」

「どうしテ?世界が違うかラ?」

リンは、激高することなく静かに尋ねた。

ただ、知りたくて。どうしても、彼女の本意を知りたくて。

「……私、いままで恋とか恋愛とか、したことなくて」

「だかラ?」

「私、きっと貴方を傷つけてしまう。いつ消えるかも分からない。国も、文化も地位も違うし……」

リンはそれを聞いて、納得できなかった。

彼女に、嫌いだとか、他に好きな人がいるとか、明確な理由がないことはリンを安心させ、同時に絶望させた。

「……たとえ、グリードが望んでいるとしてモ?」

「……!リン!」

彼女がグリードに気があるような振りをしていたのは、周知の事実だった。

実際にそれを利用して侵入したこともあった。

それはリンを苛立たせることもあれば、リンに優越感を与えることもあった。

リンとグリードは共生していたからである。

ともに生きているからこそ、嫉妬することもあれば、逆に悦に入ることもあった。

だからこそ、リンは言葉を選ばなかった。

彼女が、どうしようもなく欲しかったから。

好きだから、愛していたから。

結果的な副産物でこそあれ、彼女が傍に居てくれることがリンの望みだったからだ。

好きだと気付いたのが遅かったからともいえる。

 

好きだということに気が付いたのは、グリードが体に侵入してきた後だった。

グリードが自身の体を使って彼女と接触するたびに、嫉妬がリンを襲った。

それで漸く気が付いた。

「君ガ、好きなんダ」と。

 

「ごめん、なさい」

それでも、彼女は首を縦に振らなかった。

挙句の果て、彼女はこう言った。

「好きになってくれて有難う、リン。―――嬉しかった」

そんな事をいう彼女は、残酷だった。

だが、リンはこうも思った。

(あァ、だかラ。だから彼女を好きなったんダ)

思わず、リンは彼女を抱きしめた。

彼女も驚きこそしたが、抵抗することはなかった。

 

星は、瞬き続けている。

月は静かに佇み、二人の影を屋根に作った。




好きっていってくれるリンと、それをやんわりと拒む女の子の話。
彼女も好きではあるけれど、いつ消えるか分からない我が身と、
彼の心に傷が残ることを懸念したようです。
それでもリンも、グリードも彼女が……
この先は御想像にお任せします。
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