デビルズネスト付近想像在り。
記憶が戻ったと仮定してお読みください。
手紙が届いた。宛名は何も書かれていなかった。
私自身に
封筒はシンプルな物で、真っ白無地。柄もなければ文字もない。
ただ、私の名だけが書かれてあった。
誰が書いたのか、なんて分からなかった。
知り合いは
「開けないのかい?」
受け取った本人である母は、私にそう聞いた。
「だって、誰が書いたのか分からないのよ。怖くない?」
「読んだら分かるじゃあないの。それに、脅迫とかなら捨ててしまえばいいわ」
そう言われて、それもそうか、と納得した。
が、人前で開ける主義ではなかったので私は自室に戻ることにした。
開けてみると、思ったよりも存外汚い字が出てきた。
普段、文字を書かない人なのかなとも感じた。
私はゆっくりと目を通し始めた。
「……う、そ。なに、これ」
書かれていることは、衝撃以外の何物でもなかった。
グリード。
酒場デビルズネストを拠点に活動する、何でも屋のような人。
一度や二度、では済まない程、私は彼と話したことがある。
元々あの酒場に母も父もよく行っていたから。
大人になった私も、比較的よく訪れていた。
知らず知らずのうちに、仲良くしていた―――――ような気がする。
自然とそうなっていったから、どういう
気が付けば、デビルズネストは崩壊していた。
マーテルも、ドルチェットも、ビドーも、ロアも。
皆、居なくなっていた。
―――――もちろん、グリードもその姿を消していた。
デビルズネストは荒廃し、誰も近寄らなくなった。
無論私もそうなったし、母もそうなった。
この手紙には、その『グリード』に何があったのか―――――その顛末が書かれていた。
ホムンクルスだとか、転生だとか、意味の分からない言葉ばかりあって。
なにも、私には、なにも分からなかった。
ただ、分かっていることは。
「……生きてるってこと?グリードが?」
その時。
頭に濁流のように言葉が、感情が、“思い”が溢れ出した。
「なんで教えてくれなかったの」とか、「何で皆黙っていたの」だとか。
そんな不満ばかりではなくて。
生きてくれている事の喜びと、愛おしさと。教えてくれた、特別感があった。
そこまで感情が爆発して、漸く。
『好きだったんだ』と気付いた。
どれ程時間がかかったのだろう。こんな、ちっぽけで単純な感情に気が付くのに。
話しかけたりしてたんだって、今になって気が付いた。
「……ばーか」
私も、こんな手紙を寄こした
二人とも揃って馬鹿だな、なんて笑った。
今になって手紙を寄こしたのはきっと何か理由があるのだろうことは、私にも理解できた。
ただ、最後に「二度と会う事はないだろうが」なんて、余計な文言はいらなかったと、私は思った。
「あら、どうしたの。ちょっとご機嫌ね?」
「えへへ、ちょっと、ね」
「ああ、そうだった。あの手紙、なんだったの?」
私は少し考えてから、こういった。
「さあ、どうだったかなぁ」
グリードが昔仲良くしてた子に決戦前に手紙を送る話。
どっちみち生き残ってもシンにいかなくちゃいけないのでああなりました。
失恋気味なことですが、彼女にとっては区切りをつけられるこの手紙は
有難いものだったのではないでしょうか。