夢から覚めるには   作:やんくる

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第2話

「おはよう、霞。今日もよろしく頼む」

 

この人が今の提督。強面で口数がすくなく、仕事がとても早い。秘書官なんて居なくても彼一人でほとんどの仕事をこなしてしまうだろう。実際私が来る前は1人で行っていたらしい。そんな彼の秘書官をしているのは、艦娘としての役割を果たせないから。今の私には、これしかできないから。

 

提督室にペンと紙をめくる音だけがする時間が流れる。平穏な時間だ。提督はアイツと違って真面目に書類を捌いていく。アイツは少し目を離すとすぐにサボって。その度に私が声をかけてやらないといけなかった。アイツは私に怒られる事を楽しんでいたような―。

「霞。手が止まっているぞ。」

―いけない。少し呆けてしまっていたようだ。

「すみません、提督。」

「構わない。もうすぐ昼時だな、間宮の所から昼食を持ってきてもらえるか。」

「申し訳ありません、承知しました。」

そう言って私は机を離れる。今日はいつにも増してアイツのことを思い出してしまう。夢を見ること自体はいつも通りなのだから、少し不思議だ。朝潮姉に言われて少し意識しているのだろうか。気を入れ直そう。アイツのことを思い出すのは1人の時だけだ。

 

食堂で間宮さんから食事を二人分受け取って提督室に戻ると、第一艦隊旗艦の金剛さんが報告をしていた。

「ということで、今回も無事完全勝利したのデース!あなたの金剛がMVPだったのネ!」

「あぁ、流石だな金剛。よくやった。」

「もっと褒めて欲しいネー!」

金剛さんは提督に恋愛感情を持っている。《金剛》という艦娘が提督に好意を持ちやすいというのは有名だが、ここの金剛さんもその例に漏れない。

「失礼します。」

私は邪魔をしないよう、そっと横から提督に食事を渡して自分の席に付く。彼女が出撃でMVPを取ってきた時は、しばらくここで提督と話し続ける。それが彼女にとって何よりの報酬であり、私の存在が邪魔してしまっているようで申し訳ない。

 

お昼ご飯はサンドイッチ。提督が仕事をしながら食事ができるようにと、間宮さんが毎日準備している。秘書官になってからは私も毎日サンドイッチだ。毎日食べても飽きないよう、間宮さんが四苦八苦してくれている。普通の食事を用意するよりも大変なのではないだろうか。今日も美味しい。

「そうそうカスミー?」

「なんでしょうか。」

「もうすぐさっき邂逅した響がここに来るの。面倒を見てあげて欲しいのネ!」

「なんで私が...?出撃できる子にてとりあしとり面倒を見てもらった方が良いのでは?」

「その子、どうやら貴女の時と同じみたいなのヨー。」

私と同じ()()持ちということか。どこに地雷が埋まっているか分かったもんじゃないし、普通の扱いは出来ない、か。

「なるほど、そういうことなら。」

「お願いするのデース!それじゃあ私もご飯食べてくるネー!」

それにしても《響》か...《響》は引き継ぎやすいとは聞いていたけど、まさか同じ鎮守府に来るとは。

「霞。解っていると思うが―。」

()()()います。前の事は話さないし、話させません。面倒はかけないようにします。」

「そうか。それならいい。」

私みたいな存在は大本営からしたら都合が悪い。戦争初期の事は、大本営からしたら汚点以外の何物でもないのだ。今回来る響がどの時代のどこで沈んだ響かは分からないが、余計な事は話させないし、私も知る必要が無い。

 

コンコン、と控えめなノックの音がする。

「失礼します。」

そこに現れたのは、真っ白な髪に白と紺のセーラー服、白い帽子に白銀の艦装を付けた少女。信頼をその名に与えられた駆逐艦、Верныйだった。




タイトルのゴロが悪かったので少し変更しました。
1話あたりの文字数、もう少し多い方が良いですかね...?
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