イツアリなリリはヘングレと一緒に……   作:白百合姫

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前回のあらすじ。
自身のお昼寝用テリトリーとしていた場所を何者かに奪いとられたチェシャキャット・リリ。
身の危険を感じとったリリは一度引き、戦友であるヘンゼルとグレーテルの2人と共に取り戻しに向かった。
しかし敵の罠にはまりヘンゼルが重傷を負ってしまい、さらにはゴーレムが現れた。
グレーテルはヘンゼルの治療を。そしてリリは単騎で敵ゴーレムと戦闘に……。

今回は百合展開です。正直見なくても次に書く予定の下で一応話は分かる様にはしますので、興味がある方はごゆっくりしていってください。

飛ばして読む方は次の下の時に前書きに書くようにします。


イツアリなリリはヘングレと一緒に……中

グオォォォォオオオオオオオオッ!!!!!!

 ゴーレムの一際大きな咆哮。それは地鳴りの様に重く響いた。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 ……へ…………さ……

 近くて遠い。近いのに遠い?

 ………ゼルねえ……ま!

 何か懐かしい。憎い声。でも愛らしい声。

「いい加減起きろヘンゼルゥゥゥゥ!」

「あいったぁ!?」

夢見ごこち。そんなヘンゼルだったが両頬をスパンと強く挟み込まれ、意識を引き戻された。

そして目を開けると、目の前にグレーテルの泣き顔が逆さで広がっており、後頭部には柔らかい感触……膝枕をされていた。

状況がよめない。そんなヘンゼルに未だ泣き止まないグレーテルがゆっくり口を開く。

「姉様、死にかけてたのよ……。ワタシをかばって、爆発受けて……」

「あぁ……そっか、それでか……」

ヘンゼルは頭を打っていたのかあまり記憶がなく曖昧だったが、それでも目の前のグレーテルが自分(ヘンゼル)を治療し助けてくれた。そして少しヒリヒリする(ほほ)に伝う彼女の涙だけは理解できた。

「それで、それでワタシ……」

「ねぇグレーテル」

未だ泣きじゃくるグレーテルにヘンゼルはそっと手を伸ばし上半身を持ち上げ……

「……んっ」

グレーテルの頬を手で抑え、唇に軽くキスをした。

「なっなななっ!姉様一体何を……っ!!」

「助けてくれたお礼。本当はほっぺかおでこにしようと思ったんだけど、ちょっとやりにくかったからね」

ヘンゼルの突然の行為に驚いて口元を腕で隠すグレーテル。

しかしどこかまんざらでもない真っ赤なグレーテルに対しヘンゼルはしたり顔。

満足した様にヘンゼルはグレーテルの膝枕にもう一度頭を沈める。

「…………もう」

グレーテルも頬を膨らませながらもヘンゼルを受け入れる。

その顔にはもう涙はなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「ん……止まった」

リリの放った魔法を最後に、ゴーレムはバラバラになって動きを止めた。

眼下のゴーレムが瓦礫へを戻った事を確認したリリは傘を閉じて地面に降りた。

リリがゴーレムの腕や身体を分解した魔法は「チューズ・ウェイ」その魔法で傷付けた相手の身体を脆くするリリの有するデバフ魔法だ。そしてその効果を改変。殺傷能力を無くして脆くする事と、対象をゴーレムの魔力にのみに限定して放ったのだ。

それは魔法の糸で結び作られた、動く岩人形のゴーレムにとっては致命傷になりうる攻撃で、岩と岩を繋いでいた糸が千切れてしまったのだ。

「はやく、戻らないと……」

リリはヘンゼル達の安否が気になって仕方ない。そんな様子だったが、岩に刻まれた魔法陣を使い物にならない様に傘の先端で傷を入れて陣を壊していく。

「んー…………?」

リリはふと妙な気配を感じた。しかしそれには特に危険を感じなかった為、無視して全ての魔法陣を無効化し足早とヘンゼル達の元へと走って向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「あーーーー……なーんか暇だなぁ」

「…………」

「ねーねー、なーんか暇だなぁ」

「………………」

「ねーってばー」

「うるさいぞ。私が今焦っているのが分からないのか?」

「えー……それはそうだけどさぁ……仕方ないじゃない?」

「遊び過ぎたのが敗因だろう?そのゲーム?とやらでは負けなしなどど(うそぶ)いていた割には大した事ないじゃないか」

「あー……いや負けたのは確かにそうだけどさ、アレは反則だよ!あの猫耳っ子の超ミニスカとか江戸過ぎ。しかも空飛んだ時に見えたスカートの中は服装通りの超江戸……江戸江戸の江戸だよ幕府がいくらでも出来ちゃうじゃん?」

「…………もういい少し黙っててくれ。お前の言葉を理解する暇など、とうにないのだ」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「ねぇ、グレーテル」

「…………」

グレーテルの膝枕で寝ていたヘンゼルは目を閉じたままグレーテルの名前を呼ぶ。グレーテルは静かにヘンゼルの頬に優しく手を触れた。

「グレーテルはどうして、ボクを助けたの?」

ヘンゼルの頬に触る手が少し強張る(こわばる)。それだけでグレーテルの緊張が伝わる。

「ヘンゼル姉様を殺すのはワタシなの。他の奴になんて殺させないわ」

「本当にそれだけ?」

「……姉様がワタシを庇ったからよ。貸しを作ったままにしたくなかった」

「ふぅん……それだけ?」

「………………」

ヘンゼルの質問責めにグレーテルはそっぽ向いて黙ってしまう。ヘンゼルは目を薄っすらと開けてグレーテルの横顔を見て、ふふっと笑った後に一呼吸置いて話し始める。

「ボクはキミが憎い。何十、何百回とキミを蹴り殺しても足りない。キミを殺すのはこのボクだ……って」

ヘンゼルの言葉にグレーテルの眉がピクリと動く。

「でね……そんなボクがキミを助けた理由は、無意識に身体が動いちゃったんだ。危ない!って思った時には覆い被さってた」

グレーテルはヘンゼルを目だけで見る。すると穏やかな表情のヘンゼルと目が合う。ヘンゼルは目を合わせたまま話を続ける。

「それでね、気絶してる時に夢を見たんだ。すごく懐かしい……。貧乏で苦労も絶えない姉妹の夢。

鈍臭い姉が朝寝坊をして、妹が呼びに来てくれるんだ。なかなか起きないボクをキミがやれやれと起こしてくれた頃の夢。

最後にはバシッて頬を叩かれて目が覚めたんだけどね」

そう言ってふふふと微笑むヘンゼル。

「………………」

「グレーテル。どうして泣きそうな顔になってるのかな?」

黙ってヘンゼルの話を聞いていたグレーテルは突然指摘され、ハッとなって自分の両頬に手を当てる。いつのまにか複雑な気持ちが顔に出てしまっていたらしい。唇はきゅっと結ばれ目も軽く潤んでいた。

グレーテルは焦って顔を隠そうとするが、ヘンゼルがそっとグレーテルの頬に手を添えて捕まえる。

「ボクの妹……グレーテル。ボクはキミが憎い。そしてどうしてもキミが愛おしいよ」

グレーテルの目の潤みが大きくなって、やがては涙としてヘンゼルの顔に落ちる。顔を背ける事も出来ないグレーテルはギュッと目を瞑って視界を閉じる。

ふと、グレーテルの膝からヘンゼルの重みが消える。

「……んんっ」

やがて訪れる唇への感触。ヘンゼルが頭を上げてグレーテルにキス。

「んっ……んん」

グレーテルも今度は逃げない。涙は途絶えないまま、向けられる愛を……姉妹とは思えない歪んだ愛を静かに受け入れる。

「んっく……ぷはっ」

長く続けたキス。離した唇からは薄く糸を引いて、すぐに切れた。

「はぁ…………姉様。気絶から目が覚めた時にしてきたキス……ほっぺとかにしようかと思ったけどなんて言っていたけれど、本当はワザとね?」

「……うん。そうだよ」

グレーテルの疑いに素直に答えるヘンゼル。その顔はあくまで穏やかに、しかし頬はグレーテルに引けを取らない程に赤い。

「ボクはグレーテル……キミが愛おしいんだ。ボクを醜いと嘲り、蹴り殺したグレーテルをボクは憎い。でも先生と一緒に笑うキミが可愛かった。リリを可愛がるキミが愛おしかった。他のグレーテルは変わらず全員殺す。でもキミだけは……キミとだけは今度こそ一緒に居られる。そう思えたんだ」

ヘンゼルの想い。先生と共に居る事で殺し合わずに過ごせたからこその、憎しみ以外に抱いた感情。

「でも姉様。ワタシと一緒にと言っても、それは姉妹の愛なの……?唇にキスをするだなんて姉妹の域を超えていると思うわ」

グレーテルの疑問はもっともだろう。それに対してヘンゼルは少し考える素振りを見せて、答える。

「ボクらは最初普通の姉妹だった。でも失敗した踏み外した。なら同じ普通の姉妹に戻って同じ過ちを繰り返すなんて馬鹿らしいだろう?だから今度こそ間違えない。姉妹よりも強固な絆が必要なんだ。だからグレーテルをボクのお嫁さんにするって決めたんだ」

「…………本気なの?」

「………………」

グレーテルの問いに、ヘンゼルはただ無言で見つめ返してくる。嘘だと思えるのならそう思え。そんな確固たる意志を持った目だった。

「ボクの想いに応えてくれるなら……キスをして。グレーテル」

もはや迷いのないお願い。グレーテルの反応を待つより早く、ヘンゼルは目を瞑ってしまう。

「…………」

グレーテルは少しして、ふぅっと一息吐く。そして膝枕で寝ているヘンゼルに向き合う。

サラリと垂れてくる自分の髪の毛を耳にかけ、ヘンゼルの唇にゆっくりと、自分の唇を近付けて……。

「グレーテル……何してる?」

「っっ!!!?」

グレーテルはバッと声のした方向を見る。そこには無事戦闘から戻ってきたリリが立っていた。

そして非常に不思議そうな顔でグレーテルを見つめている。

「あ、あのねこれは…………姉様が苦しそうだったから、大丈夫か確認しようと思って顔を近付けていたのよ」

キスしようとしていました。なんて言えるはずもなく、咄嗟に言い訳を考え冷静を装い答える。

「そう……なの?でもヘンゼル、なんだか元気そう」

リリが首を傾げてヘンゼルを指差す。グレーテルもそれにつられてヘンゼルを見る。

「………くっ……ぷふっ」

笑いを堪えて頬を赤く染めたヘンゼル。その楽しそうな顔はとても苦しそうには見えなかった。

「〜〜〜っ!」

「あいったっっ」

ヘンゼルの楽しそうな様子を見たグレーテルは一瞬で沸騰。膝枕をしていた足を開き、ヘンゼルの頭が地面にドサッとぶつかる。

「うー……酷いなグレーテル」

「ヘンゼル姉様に言われたくないわ」

「……それにしても黒だなんて、グレーテルも大人になったね」

グレーテルの膝枕からまっすぐ落とされたヘンゼル。その頭上にはグレーテルのスカートの中が見える状態。

ごっづんっっっ

何の遠慮もなくグレーテルの下着を覗き見たヘンゼル。

グレーテルからもまた、遠慮のない一撃が降りかかったのだった。

 

 

to be continued




憎悪は基本そのままと言ったな。あれは本当だ。
しかし終始変わらないとは言っていない。

というわけで……また良ければ次回作も読んでいただけると嬉しいです。
投稿はまた遅くなるというか不定期なので悪しからず…
ゆったりとお待ちくださいませ!!
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