第1話
龍虎天真は夢を見ていた
獣じみた轟音、鼻を衝く鉄錆の如く臭い。大地を染める一面の鮮血。
手元には刀のような手触りがある。
そう、刀だ。
道場では木刀は握るが刀は握ったことはない。しかしそれが恐ろしいほど手に馴染んでいる。頼もしいほどに役立っている。戦場に一人、一騎当千。叢雲の如く押し寄せる面妖な術や敵を、躱しては斬って、流しては斬って、躱しては斬って、流しては斬ってーーーー
幾度振ったか忘れるほど、一心不乱に刀を振るい続ける。
比喩ではなく、戦場を縦横無尽に駆け抜ける疾さ、虎の如く。
身に着けた鎧はなく、ただ背中に天と入った羽織をたなびかせる。
特殊な呼吸法を用いることで、その呼吸が天真に超人的な武勇を可能とさせる。
ただしあくまで自然体。
まるで「ただ敵を殲滅」するためだけに特化した龍のように。
どれほどの時間がたったのだろうか。
やがて戦場にたっているのは天真一人となった。
他はいつの間にか灰となって消えた。
術を尽く打ち破り、敵を討ち取り、戦場の勝者となる。
この静寂こそが勝利の証。
立っているのも辛い、満身創痍。しかし天真は、足を引きずるようにして帰途に就く。
来た道同様、孤独な帰り道とはならなかった。
前方から足音と共に少女達がやってくる。桃色髪で天真爛漫な子、黒髪で可憐な子、黒髪で美人な子、そして後ろをついてくるように可愛い似た顔をした子
「「天真さん!」」「「天真兄さん!天真兄さん!」」
少女たちが呼びかける。
少女達の姿を認めて、天真は微笑んだ。
体の底に溜まった闘志や、殺気や、血臭を、全て丸呑みにしてしまう如く。
「今日の戦闘は危ないからついてくるなといっただろう」
「天真兄さんこそ、鬼の根城に一人で行かないでって何度頼んだら聞き分けてくれるの?!」
そういって、可憐な少女は抱き着いてきた。
「そんなに私たちは頼りないですか?足手まといですか?」
美人な人がそう言ってくる。
天真は頭をかくのみ。無言の肯定。
「そうですよね!天真さんは最強の鬼殺隊員ですものね!」
そういうと、プイっとそっぽを向いてしまった。可愛いと思ってしまったのは内緒だ。
となりにいた桃髪の子が涙を浮かべながら
「でも、、、それでも、、、わたしたちは天真さんのことが心配なんです、、、心配する不遜は許してください、、、」
無言で涙を浮かべこちらをじっと見ている少女。
少女たちの頭を優しくなでた。
「不遜なんかじゃないさ。俺こそ許してくれ。おまえたちに心配してもらえる、罪深き幸福を」
天真は少女たちの目元に口付ける。
自分の為に流してくれた涙を、唇ですするように。
少女たちの頬が薔薇色に染まった。
潤んだ瞳の色の意味が変わった。
「私たちのこと愛していますか?」
「おまえたち、そして守るべきものがあるから俺は戦える」
血みどろの死闘は全て、この少女たちのために。
「これからもずっと、俺の無茶を心配してくれ。そうしたらおれも約束するから。どんなに苦しい戦場に赴こうと、どんな強敵とあいまみれようと、どんなに離れようと隔てようと神に引き裂かれる運命だろうとーーー」
「ーーー俺は必ず勝利し、そしておまえたちのもとに帰るから」
少女たちは耳まで真っ赤にしながら、うつむいてそれを聞く。
そんな少女たちを、天真は強く抱きしめた。至近距離で見つめあう格好になった。
互いに顔を寄せていく、まるで今、誓いを立てるが如く、唇と、唇がーーー
そこで天真の夢が途切れ、天真は目を覚ました。
睡魔と共に天真の感覚が急速に遠のいていく。
大あくびをしている間にも思考はクリアになり、整理されていく。
(ちょっともったいなかったな)
さっきまでの現実見がない光景も、いいところで途切れたキスも夢。
現実の龍虎天真はここ。
我流「龍虎剣術」道場の自室にいる。
天真は名前の通り、この道場の師範代である。
17の年齢でありながら剣術を極め、頂点に立ち、今では、門下生を200は抱えるほどの大道場の師範である。
天真はそんな青年だった。
どうでしたでしょうか!!誤字脱字がありましたら報告よろしくお願いします!!感想待ってます!!