武装探偵、通称『武偵』。日々凶暴化する犯罪に対して政府が数年前に導入した新たな職業である。そんな武偵を育成する高校の内の一つである『東京武偵高』。そんな高校に通う少年、『三条 刀真』。これは、彼の戦いの記録…………。
彼と、その仲間たちによる青春活劇(予定)物語である。
−三条 刀真(さんじょう とうしん)視点−
「もう! 許さない! ひざまずいて泣いて謝っても、許さない!」
目の前で、緋色のツインテールを振り乱した小柄な少女が叫ぶ。
「はあ……」
どうしてこうなったんだよ……。
それは、数十分前に遡る。
「「やべぇ!今日始業式じゃねえか!!」」
東京武偵高男子寮の一室。
俺─三条 刀真と、ルームメイトの『遠山 金次』(とおやま きんじ)は二人同時に叫んで飛び起きた。今日は武偵高の始業式が始まる日。武偵高の教師陣は腕利きのプロ武偵ばかり。もしもこんな日に遅刻でもしてみろ!
地獄の拷問フルコースを喰らうことになる……!!
「キンジ!!俺昨日も早く起きろって言ってたよな!!」
「刀真だってついさっき起きただろ!!」
あーだこーだ言い合いながら、武偵高指定の防弾・防刃仕様の制服に身を包む。そして俺は、使用している刀一振りと、帯銃義務のある拳銃─グロック18cを装備する。わちゃわちゃしているちょうどその時。
ピン、ポーン
慎ましやかにチャイムが鳴った。
「このチャイムの鳴らし方は……。はーい」
「あ、三条君。おはよう。」
ドアの外に立っていたのは、黒髪長髪の大和撫子だった。
「ああ。おはよう。星伽さん」
彼女の名は『星伽 白雪』(ほとぎ しらゆき)。ルームメイトであるキンジの幼馴染で、我らが生徒会長を務めるすこぶる優秀な生徒だ。
「おはよう、キンちゃん!」
「白雪、その呼び方は止めろって言ったろ。」
「あっ……。ご、ごめんね。でも私……キンちゃんを見てたらつい、あっ。またキンちゃんって……。ごめんね、キンちゃん……。あっ。」
このやり取りを見ればわかるように、この星伽白雪、キンジにぞっこんなのである。朝から何見せつけてくれとんじゃワレェ。
「お二人、早く飯食わないとマジでヤバいぞ」
「そういえばそうだった!!」
「それじゃあ、私は先に行くね。キンちゃん、また学校でね。三条君も。」
「はいよ。」
「それじゃあ星伽さんまた後で。」
彼女が生徒会の準備等の為先に出て行ったあと、俺達も学校へと自転車で向かうことにした。
「よし、空気入ってるな。」
「キンジ、飛ばすぞ!!」
「そりゃそうでもしないと間に合わんからな!!」
そう言って、俺達はペダルを勢いよく漕ぎ出した。その瞬間だった……。
ピッ
「「ピッ……???」」
突如サドルの下から聞こえた電子音に嫌な予感を感じる俺達。
『その チャリには 爆弾が 仕掛けて やがります 』
………………。
「「爆弾……???」」
『チャリを 降りやがったり 減速させやがったりしたら 爆発 しやがります 』
「「BA☆KU☆HA☆TU☆???」」
額を冷や汗が流れ落ちる。
「刀真……。後ろ……。」
「おい、マジかよ……!!」
キンジに促されて振り返ると、セグウェイに銃座を取り付けた自走UZIが数台俺たちの後を付いてきていた。
「キンジイィィィィッ!!全速力で漕げええっ!!」
「言われなくてもそのつもりだあぁぁっ!!」
ー僅か数分後ー
「「なんか増えてる!!」」
さっきまでちょっとだけだったのに見た限りじゃ10台くらい増えてるんだけど!!
「なぁ、キンジ」
「何だよ!刀真!」
「今まで……有り難うな。楽しかったぜ……」
「何諦めてんだよ!!」
「いや、俺だけならいくらでもやりようあるけどさ。“今の“お前には難しいだろ?何なら“あっちの”お前に今からなるか?」
「断る!!俺は、あっちの俺になりたくないんだよ!!」
「だろ?だから、これでお別れかな〜っと。」
「だから!諦めてんじゃねえ!!」
その時だった。
「キ、キンジ!あのビル!」
「お、おい……。あれ人か!?」
少し離れたビルの屋上に人影が見える。その人影が此方を見た気がした……刹那。
「「うおおおおおおおあああああっ!!飛び降りたあぁっ!!」」
人影が屋上から飛び降りた!!そして、
「なっ!パラグライダー!?」
「まさか、あれで俺たちを……!?」
その人影はこちらへと滑空し、みるみる距離を詰めてくる。
「おい!来るな!!この自転車には爆弾が!!」
「そこのバカ二人!!さっさと頭下げなさい!!」
そして、抜銃し、後ろのセグウェイを正確無比な射撃で壊滅させた。
「すげぇ……!!一瞬で照準を合わせて撃ったってのか……!?」
「キンジ、感心してる場合じゃないぞ。まだ爆弾はくっついてんだからな」
「おい、お前!!さっきも言ったがこの自転車には爆弾が取り付けられてる!!爆発したらお前も巻き込まれるぞ!!」
「ちょっと黙ってなさい!!何より!!」
「武偵憲章第1条『仲間を信じ、仲間を助けよ』!!行くわよ!!掴まりなさい!!」
やっぱり、あのパラグライダーに掴まるのか……。
「あー、俺はいい。自分で何とかできる。この隣の親友をセーブしてくれないか。」
「なっ!刀真、お前!!」
キンジがパラグライダーに掴まる。直後、みるみる減速した自転車がセグウェイの残党に突っ込み……。
ドオオオオオオオオオオオンッ!!!
盛大に爆炎を上げて爆発した。つーか、なんだよあの威力!!チャリ一台吹き飛ばす量じゃ無いだろ!!
とりあえず、キンジはセーブされたことだし。
「ちょっと本気出す!!」
残党がこちらに来れない今しかチャンスは無い!!
「そおおおおい!!」
立ち漕ぎの状態から、ペダルを起点に上空に跳躍する。
そして……。案の定、チャリが盛大に爆発する。
それを見て腰の刀に手をかける。
「三条流抜刀術。空風多々羅(からかぜたたら)!!」
抜刀の勢いで爆風を吹き飛ばす!!炎や煙が一瞬で吹き飛ぶ。そして、俺はチャリの残骸の上に着地した。
ふぅん(愉悦)。決まったぜ……。まぁ、見てる人いないんだけどな。さて、キンジはどこまで行ったかな?
「………!おっと。」
宛もなくふらふら探していると、4台のセグウェイが体育倉庫の前でUZIを乱射している。
「この数ならなんとかなるか……???」
いや、その心配はいらないらしい。
目の前でUZIが煙を上げて破壊された。そして、その前方に立つのは我が親友であるキンジ。その手には、キンジの愛銃、
『ベレッタM92FS』通称、キンジカスタムが握られ、硝煙を上げていた。
あいつ、“あっちの”キンジになってやがるな……。一体何で……?ま、とにかくだ。
「キンジ!無事だったかこの野郎!!」
「フッ、当たり前だろ?」
「相変わらず見事な腕だな。UZIの銃口に弾丸を入れるなんて、到底できるモンじゃねえよ。」
「……。お、恩になんか着ないわよ。」
体育倉庫の跳び箱から先程キンジを助けた少女が顔を出した。
「あんなオモチャぐらい、あたし一人でも何とかできた。これは本当よ。本当の本当。」
こういった瞬間、可愛らしい顔をギューンと赤面させ、
「そ、それに、今のでさっきの件をうやむやにしようったって、そうはいかないから!あれは強制猥褻!れっきとした犯罪よ!」
こう叫ぶとキンジを睨む。
あー、キンジ……。お前、この娘で“なった”んだな……。
「……。アリア。それは悲しい誤解だよ。あれは不可抗力ってやつだよ」
そう言いつつキンジは跳び箱に自分のベルトを投げ入れる。
「あれが不可抗力ですって!?」
あ、出てきた。
「ハ、ハッキリとあんた……!あ……あたしが気絶している隙に……ふ、服を脱がそうとしてたじゃない!!そ……それに……む……むむむ……」
ダンッ!!
あ……足踏みだけで床にヒビが……!!!
「胸見てたあぁっ!!これは事実!強猥の現行犯!!あんた一体何するつもりだったのよ!!」
キンジ……。お前一体何したんだ……???
「せせせ……責任取りなさいよ……!!」
「よ……よしアリア、冷静に考えよう」
……ん?アリア……???この名前、どこかで聞いたことがあるんだが……。何だったか……?
「俺は高校生──しかも今日から2年だ。中学生を脱がすわけないだろう?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!あたしは中学生じゃないっ!!」
アリア……アリア……アリア……???アリア……アリア……!!!アリア……!?
「わ、悪かったよ。インターンで入ってきた小学生だったんだな。助けられたときかモゴゴッ!!」
急いでキンジの口を塞いで余計なことを喋らないように抑える。
『おい、何するんだよ!!』
キンジがまばたきでこちらに言葉を伝えてくる。
「キンジ、こいつは……!!!」
「こんな……こんなやつ、助けるんじゃなかった!!」
手遅れだったか……!!!
「あたしは……。」
バキュン!!
「ヒィ……!!!」
危ねぇ!!銃弾がスレスレを飛んできたぁ!!
「高2だ!!」
目の前の少女が二丁拳銃をぶっ放す。
「もう! 許さない! ひざまずいて泣いて謝っても、許さない!」
「待て待て待て待て!!」
そう言いながら俺は銃弾を全て躱す。
「何よ!あんた、犯罪者の味方するの!?」
「違うわ!別にそんなんじゃない!!」
「じゃあ何でよ!!」
弾切れを起こしたのか、少女は拳銃をホルスターに収め、背中の鞘から二振りの刀を抜いた。
「お?二刀流か。なら、少しだけお相手しよう」
俺も刀を抜き、構える。そして、
足を地面に思いっきり落とす!
ダァン!!
という音と共に土煙が舞い上がる。
「ゲホッ!!ケホッ!!刀を使うんじゃないの!?」
「ハッハッハー。誰が刀で相手するって言ったのかな〜?」
そして、キンジと共に逃げ出す。
「この卑怯者!でっかい風穴──」
「空けてやるんだからぁ!!」
やべぇ……!!次会ったら殺されるぞ……。
これが俺とキンジ、そして神崎・H・アリアとの衝撃的な出会いだった……。