ハイスクールD×D~終末世界のJUDAS~ 作:シュレディンガーの熊
捜索を始めて早一週間。未だにこぎくちゃんは見つからない。あれだけ言ったのにまだ見つけることができない自分に歯がゆく思うぜ
とはいえ、悪魔であると同時に学生の身である俺たちは、昼間の間の捜索は使い魔に頼み、学校へ通っている
そう、俺は他人より
さて、昼休みに俺は、クラスメートであるアーシア、ゼノヴィア、イリナの教会三人組とこれまでの捜索について話し合いながら、廊下を歩いていた
「しかし、周辺の町の隅々まで探したというのに、手掛かりの一つも見つからないとは・・・」
「これは明らかにただの人間にできる事じゃないわね」
「ということはこちら側の、か・・・」
「はぐれ悪魔さんとかでしょうか?」
見知らぬはぐれ悪魔にもさん付けするアーシア
「ありえなくはない。だが、我々の活躍を知らぬ者は早々居ないだろう」
確かに。コカビエルの暴走、旧魔王派の襲撃、悪神ロキとの戦闘、京都での英雄派の謀略。たった半年の間で数多くの大事件を乗り越えたリアス・グレモリーとその眷属達。その成果は全勢力に知られているはず・・・
「だから、我々の事を知って尚ここに来る者は、余程の愚者か、自信のある強者のどちらかだろう」
前者であればなんら問題はない。だけどもし後者だったら・・・
ヴァーリや曹操、サイラオーグさん。当然俺なんかよりも上にいるであろう強者達か・・・
ふと考えていると前方に段ボールの山が視界に入った。それはこっちに近づいており、進む先にはイリナが立っている
「―――!イリナ!前!」
「ふえ?ーーーキャッ!」
ドンガラガッシャァァァァンッッ!!
俺達よりも前を歩いて、後ろにいる俺達と話していたイリナは前に気付かず、やってきた人とぶつかってしまった。相手が持っていた段ボールの山が宙を舞い、大きな音を立てて崩れていった
「イリナ!無事か!」
「ごごごごめんなさいですぅぅっ!」
「お、お前は――!?」
「あ!イッセーさんですぅ!」
「イブぅ!?」
そこには以前町を歩いていた時に男たちに絡まれていたところを助けた、どう見ても女の子にしか見えない男の娘、イブがお尻から段ボールにハマっていた
「だれかと思えばイブじゃないか」
「ゼノヴィアさんもお久しぶりです。またあえて僕とっても嬉しいですぅ」ニパー
柔らかな笑みを浮かべて俺達に挨拶するイブ
「・・・あれ?んー!んー!・・・うわ~ん!抜けないですぅぅ!!」
段ボールから抜け出せず涙目でジタバタするイブに苦笑いを浮かべた
「なんていうか、ギャスパー君に似てますね」
アーシアの言葉も分からなくはない。引きこもりではない社交的?なギャスパーってのはこんな感じなのかもしれない
とりあえず俺は手を差し伸べてイブを助けてあげた
「えへへ、また助けられちゃいました」
「お前、この学校の生徒だったのか?」
「いえ、実はあの後もお仕事を探していて、でも何処に行っても見つからなくて、途方に暮れていたところを助けてもらいましたぁ」
学校に通っている俺達より幼いであろうイブが、仕事を探しているなんていうのも凄い。っていうか、悪魔や天使堕天使、吸血鬼と、人じゃないもので溢れてるこの学校で働くというのかよ・・・・
「一体誰が―――」
「私です」
「か、会長さん?!」
馴染み深い声に振り向くと、そこにはいつの間にか生徒会長こと支取蒼那がいた。その後ろには副会長の森羅椿姫さんがいつものように付いていた
「公園で段ボールにくるまってうずくまっている彼の姿がかわいらし・・いえ、見ていられなかったので、私が保護しました」
今妙なこと口走ってたような気がするけど、気のせいだよな?
「そして、イブさんから事情を聞いた会長が、人員不足だった購買部を勧めたというわけです」
「はい。僕、ここの購買部に雇ってもらったんですぅ」
よく見ると口の開いた段ボールの周りにシャーペンやノートといった文房具が転がっていた。さっきの衝突でこぼれたのだろう
「かいちょーさんには感謝の気持ちでいっぱいですぅ」ニパー
「―――っ!・・・なんでしょう、この彷彿とさせる庇護欲は・・・」
「落ち着いてください、会長」
「・・・コホン。そう言えば貴方達、ここ最近頻発する失踪事件を調べているそうですね」
咳を一つついて話題を変えた。というか、こういうのに弱いんですね会長。匙、お前の明るい未来は遠そうだ
「椿姫」
「はい。こちらを・・・」
椿姫さんがどこからか紙束を俺に手渡す。これは、生徒名簿?
「ここ数日になって不登校となっている生徒の詳細です。生徒の安全を守るのも、生徒会の本分です。そして、リアスとともにこの地を管理するものとしても、このような事件は早急に解決すべきことですから」
眼鏡に手を添えて会長は応える
「ありがとうございます」
「リアスを宜しく・・・」
『失礼します』と会長と椿さんはその場を去っていった
「何としてでも、見つけないとな・・・」
「ああ」
「ちょっと!?」
ズボッと段ボールの山からイリナの顔が飛び出した。首だけ見える状態で、涙目で訴えるイリナに視線が移る
「ああ、すまないイリナ。すっかり忘れていた」
「全くもう・・・最近私の扱い酷いとおもうんだけど・・・」
ゼノヴィアが手を差し伸べてふてくされるイリナを起こした
「・・・おい、何か落としたぞ?」
「え?・・――っ!」
何が落ちたのか見てみる。シャーペンやノートが散らばっている中、銀色に輝く何かを見つける。それは十字の形をしたものであった。十字架?
「イリナさん。それは・・・」
「な、何でもないの!なんでも!」
イリナはさっとそれを拾い上げポケットに突っ込んだ
「あ、ほらもうすぐ次の授業が始まるわ!」
「あ、ああ。じゃあなイブ」
「は、はいです・・・」
イブに別れを告げた俺たちは、イリナに背を押されながら教室へと戻った
《オイ。アレが何だか気付いたよなぁ、イブ?》
「・・・」
《ククク・・・・祈る準備をしとくんだなぁ?》
「・・・・」
………………
放課後
「ゴメン!急用を思い出したから先帰ってて!」
「おい、イリナ!」
これから部活だと言うのに、ゼノヴィアの制止も振り切って、イリナは教室を飛び出してしまった
「イリナは私が追おう。イッセーとアーシアは部室に行って部長に伝えて欲しい」
「ああ。分かった」
鞄を一誠へと投げ渡し、ゼノヴィアはイリナを追いかけていく
一先ずゼノヴィアに任せて一誠とアーシアは部室へと駆け出した
「そう、イリナが・・・教会の件もあるし、少し心配ね」
部室にて事情を説明すると部長はそう告げた。協会の件?
「え?あの教会がどうかしたんですか?」
「その教会のことですけど、天界や教会本部から要請されたものではないらしいですわ」
それって不正規に建てられたってことですか?
「ああも堂々と出てきたものだったから、気付かなかったわ」
あまりの迂闊さに歯噛みする部長。まぁ確かに、お手製の菓子まで振舞われ、爽やかに挨拶してきた神父を怪しいとは俺も思わなかった
「皆さん、ただいま戻りました」
「おうお前ら、面白い情報を手に入れたぜ?」
とここでロスヴァイセさんとアザゼル先生の教師組が部室に入ってきた
「何か収穫はあったのかしら?」
「はい。行方不明の生徒さんの自宅を調べてみましたら、こんな物を・・・」
ロスヴァイセさんが布越しで掴んでみせたのは十字架だった
これってさっきイリナが落としたものに似ている
「まだ詳しく調べてねぇが、コイツの製法からして、そんじょそこらの一般人が手にできる代物じゃねぇ」
それってつまり特殊な製法ってことか?
「それとだ。町中に仕掛けておいたカメラが、行方不明になった一般人達を捉えていた。ここ一ヶ月にいなくなった奴らは皆、どうも直前に同じ場所に向かって行ったようだ」
それってまさか・・・
「ああ」
「この町にできた新しい教会だ」
………………
「イリナを見失ってしまった。ここは・・・教会の近くか」
イリナを追っていたはずなのだが彼女を見失い、いつの間にか教会の敷地内に迷い込んでしまったようだ
「・・・ん?あれは聖神父」
レンガ造りのある建物ーーー形から聖堂だろうーーーの裏手で怪しい動きをする彼を見かけた私は、近くの茂みに身を潜めその様子を伺った
なぜこのような人気のない場所に彼は来たのだろうか・・・
聖堂の壁に触れて何かを探っているかに見える。すると、ゴゴゴゴと、壁の一部が動き出した
重々しい壁の奥へ聖神父が入っていくと、壁は再び閉じていった。閉じ切った壁に耳を当てるゼノヴィア。カツーン、カツーンと足音を拾う。足音は段々と小さくなり聞こえなくなったのを確認するとゼノヴィアは辺りの壁を手探りで調べだした
「確かこの辺り・・・!」
スゥ、と指先に触れていたレンガの一つが奥に沈んだ
ゴゴゴゴ
すると、目の前の閉ざされた壁が再び開かれた。成る程、そういう仕掛けだったのか
壁の向こうは下に向かう階段だった。光の届かない空間だが所々の壁際に置かれた燭台の火が仄暗くも照らしていた
「隠し扉に地下空間・・・一体何を隠しているのだ?」
音を立てぬようゆっくりと、階段を降りた
やがて階段は終わり、平坦な地下階層に着いた。降りた先にはただ一直線に道が続いているようだ
『・・・シイ・・・・ウゥ・・・』
道の奥深くから何かが微かに聞こえる
『・・・ウゥ・・・アァ』
これは---声だ。何か苦しんでいるような、呻き声の様なものが極僅かであるが聞こえた
まさか、誰か監禁されているのか?
いざという時に備え細心の注意を払って声のする部屋へと向かった
・・・正直なところ、最初から間違いだった。ここに自分一人で中に入らず、リアス部長達に連絡するべきだった
声のする所―――半開きの扉からは小さな光が漏れている。私は恐る恐る扉の隙間から覗いて――――ソレを見つけてしまった
これはなんだ?いや、なぜこうなった?
目前に存在する異形に私は目が離せず、声も出なかった。私の意識はソレだけに奪われていた
故に私の背後に誰かがが立っていることに気付けなかった
「見てしまったんだね?」