PS極振りが友達と最強ギルドを作りたいと思います。 作:五月時雨
明日から隔日投稿になると思います。
多分問題ないと思うけど、何かあったら加筆修正します。
前日に引き続きログインしたツキヨは、街を出て荒野を目指した。
「月曜だけど祝日で休み。なら今日のうちに素材を集めないと!」
昨日は地底湖で青銀色の鱗と、イズと採掘に行ったため、一旦荒野の素材を集めに行くのだ。
「荒野で採るのは、荒野に咲く青い花と銀色アルマジロの甲殻。花は午前中しか咲かないらしいから、先に回収しないとね」
集める素材の情報を掲示板で集めると、アルマジロについて興味深い情報があった。
「無限湧き、ね……」
銀色のアルマジロは、普段は地中に潜んでいるのだが、『一匹のいれば三十匹いると思え』の主婦永遠の天敵。台所の悪魔の如き習性を持っているらしく、多くのパーティが対処しきれずに敗走しているらしい。
「見た目が《例のあれ》じゃないだけ、まだマシかしら」
そうして辿り着いた荒野は、文字通りの荒廃した平野だった。
大地は枯れ、草木は萎れ、無数の岩が転がっている。大型のモンスターがいない上貰える経験値が少ないので、レベル上げにも適さない代わりに、様々な素材が豊富らしい。
「っと。早速目的の花を見つけるとは……幸先がいいね」
なんの気なしに歩いていたが、普通に足元に青い花が咲いていた。イズに見せてもらった画像とも一致するため、これが目的の花で間違いない。
数は最低でも30は採ってきてほしいとのことで、地道に集めるか、運良く群生地が見つかるのを祈るのみだ。
そうして歩いていると、突如足元がもこもこと膨れ上がる。
「……でたね。アルマジロ」
双剣を抜き、少しの間目を閉じる。
深呼吸をし、目を開けた時には、もうツキヨは臨戦態勢だ。
「さぁ、……掛かってきなさい」
全方向から一斉に、銀球のモンスターが飛び出した。対するキヨは持ち前の反射速度で迎撃する。
「【ウォーターウォール】」
背後の死角から来るアルマジロについては、角度をつけた【ウォーターウォール】で逸らし、正面のアルマジロ達を双剣で捌く。
高速回転で突っ込んでくる銀球の中央。アルマジロが折り畳む体の隙間に剣を刺し、斬りつけながら梃子の原理で開く。そして開いたアルマジロを空中でそのまま半回転させ、背中から地面に落とす。
後ろを防ぎながら全て対処していくが、このアルマジロ達は【斬撃耐性大】を持っていて、いくら隙間から弱点を付いても双剣による攻撃では倒せない。
だからこそ、背中から落とすことで身動きを封じたのだ。
ものの一分で、襲いかかってきた20体のアルマジロをひっくり返し、その中央で佇むツキヨ。
「【ウォーターブレイド】」
双剣に高圧水流を纏わせ、斬撃に水属性ダメージを加算する。
「【パワーアタック】【パワーアタック】【パワーアタック】!」
弱点を確実に付くことで【DEX】を乗せた【STR】値による大ダメージを一匹一匹に確実に当てていくことで、無限湧き第一弾は5分とかからず殲滅された。
「ふぅ……これで終わりなら、拍子抜けなんだけど…」
そうは問屋が降ろさないらしい。
最後の一匹を倒した瞬間、再び地面がもこもこもこ!っと盛り上がる。
「五分で追加モンスターね……本来なら殲滅スピードが追いつかず、前のアルマジロを残したまま戦うことになるんでしょうけど…っ!」
双剣に水流を纏ったまま、ツキヨは逃げるわけでもなく、無限湧きアルマジロと戦闘を続けることにした。
「殲滅スピードと湧く時間がほぼ同じだから…どの道逃げられないしね!」
それから一時間ほど戦い続けていると、不意にツキヨにスキル取得通知が来た。
『スキル【血塗レノ舞踏】を取得しました』
「んん?」
最後のアルマジロをポリゴンに変えつつ、周囲を警戒。無限かと思われたアルマジロは、一時間で弾切れだったらしい。
そのまま更に五分ほど立っても、追加アルマジロが現れる様子がなかったため、ツキヨは双剣を鞘に収めた。
「流石に一時間ぶっ通しで集中するのは疲れるわ……でも、甲斐はあったかな?」
―――
【血塗レノ舞踏】
スキル無しに武器で攻撃する度にDEX+1%
最高で+100%
武器での攻撃を外すか【解除】を宣言することで上昇値は消える。
取得条件
一定時間敵を倒す以外の行動を取らないこと。また全ての攻撃を外さないこと。
―――
「単純に考えて、攻撃すればするほどダメージアップするスキルね。でもレベルは…上がんないか。この辺のモンスターの経験値が少ないっていうのは本当みたいね…」
いつまでも無限湧きしていた場所にいるのは怖いため、移動しながらスキルを確認するツキヨ。その間もモンスターが襲ってきたが、全く相手にならないどころか【血塗レノ舞踏】を発動させる材料にしかならない。
今のツキヨは全身に薄っすらと血のように紅いオーラを纏っていて、
「敵を斬ったダメージエフェクトの分、紅いオーラも強くなる【血塗レノ舞踏】。名が体を表してるわね」
そうして暫く歩き、途中で狩ったモンスターで【血塗レノ舞踏】を100%まで押し上げてみると、アルマジロと同じく【斬撃耐性大】を持った砂蛇を一撃で倒すことができた。
「うわぁ……かなり威力上がったわね。銀色アルマジロの甲殻は…200あれば十分よね」
双剣の為だけに相当な数のアルマジロがポリゴンに変わったが、午前中のうちに青い花を見つけなければならない。
3つほど適当に歩きつつ見つけたので採取したのだが、全然足りない。今日はもう無理かと思い、引き返そうとした時、遠くに何か見えた。
「ん?あれは……オアシス、かしら?砂漠じゃないけど、行ってみる価値はあるよね。花が咲いてるかもしれないし」
蜃気楼には見えないので、見える位置に存在するだろう。そう思い、休憩も兼ねて少しだけ早足でオアシスに向かった。
「はぁー…生き返るぅ……」
景色の変わらない荒野を宛もなく彷徨い歩いたため、予想以上に疲弊していたらしい。
小さな湖の畔で、ツキヨはしばしの休憩を取っていた。
「それにしても、ここに群生地があったとはね……街とはかなり離れてるから移動が大変だし、かなり穴場かも」
オアシスは湖があるだけのことはあり、目的の花がかなりの数咲いていた。そのためツキヨはこれの回収に励んでいるのだ。
「午後には地底湖に行って青銀色の鱗を20枚集めなきゃだし、そろそろ行きますかねー」
十五分ほど休憩したツキヨは、指定された数の青い花と銀色の甲殻があるのを確認し、長い街への道を歩き出す
はずだった。
「なに、これ………っ!」
突如地面が揺れた。アルマジロのようなもこもことした隆起ではない。むしろ、その逆。
「地面が、沈んでるの……!?」
さながらアリ地獄。大地はいつの間にかサラサラとした土になり、踏ん張りが効かないために体勢も崩れる。
そうしてわずか数秒の後、ツキヨがいた場所は流砂に呑まれ、何もかもが無くなった。
―――
気が付くと、よく分からない空洞にいた。
見た感じとしては、昨日イズと採掘に行った洞窟とにているが、謎の発光する岩のおかげで光源は保てている。
「いったたたぁ……いつの間にかトラップでも踏んだのかしら…。まさか荒野で流砂が起こるとはね…さすがゲーム」
発生場所間違ってるでしょうが…と愚痴ってみるも、変化はない。
「ここは……地下ダンジョン、かな?ほとんど岩壁だけど、私がいるあたりだけ砂。ってことは、あのトラップがダンジョンの正規ルート?」
掲示板を開き、荒野についての情報を見直してみるも、流砂トラップについてもダンジョンの情報も何もない。
「流砂のトラップは塞がってるよね……じゃあダンジョンをクリアしないと出られないのか…全く、3日前のミィと同じ状況ってわけね」
やってやろうじゃないか。そう呟くと、一先ずステータス画面から余っているステータスポイントを振り分ける。
「今のレベルが24。振るならAGIとINTかな?DEXも欲しいけど、これはまだ【血塗レノ舞踏】で威力はなんとかなる」
――――――
ツキヨ
Lv24 HP35/35 MP121/121〈+10〉
【STR 15】 【VIT 0】
【AGI 50〈+10〉】 【DEX 60〈+45〉】
【INT 40】
装備
頭 【空欄】 体 【空欄】
右手 【初心者の双剣】左手【初心者の双剣】
足 【空欄】 靴【初心者の魔法靴】
装備品【空欄】
【空欄】
【空欄】
スキル
【スラッシュ】【ダブルスラッシュ】【疾風斬り】
【ダウンブレイド】【パワースラッシュ】【スイッチアタック】
【ウォーターボール】【ウォーターウォール】【ウォーターブレイド】【鉄砲水】
【パリィ】【クロスガード】【リフレクトパリィ】【パーフェクションパリィ】
【状態異常攻撃Ⅲ】【連撃強化小】【精密性強化中】【体術Ⅳ】【MPカット小】【MP強化小】【MP回復速度強化Ⅳ】【双剣の心得Ⅵ】【連撃剣Ⅴ】【挑発】【精密機械】【魔法の心得Ⅳ】【水魔法Ⅴ】【跳躍Ⅲ】【武器防御Ⅳ】【耐久値上昇小】【血塗レノ舞踏】
――――――
「よし。ボス相手でも、躱して勝つ!」
ツキヨは気合を入れ直し、ダンジョンの奥へと進んでいった。
「それなりに強いけど、上の荒野と似たようなものね」
ダンジョンは偶に枝分かれしていたが、殆ど一本道だったため、間違った方に行ってもすぐ戻ることができた。
また、出てくるモンスターの数は問題ではなかった。モンスターは砂蛇。牙から毒を飛ばしたり、砂に潜って奇襲を掛けたりしてくるのだが、それもまた問題ない。
問題があるとすれば……。
「少しずつ、光源が減ってるのよね……ボス部屋、真っ暗じゃなきゃ良いんだけど」
相手は蛇。現実の蛇同様に熱感知でもしているのか、こちらの動きを把握して襲いかかってくる。
そのためツキヨは常に《
「こんなの火魔法か光魔法持ってないと、まともに攻略できないわよ……」
それをまともに攻略しているツキヨがおかしいと、ミィなら愚痴るかもしれない。
ダンジョン自体の長さはそれほど長くなかったのか、十分ほどで最奥の扉に到着した。
「ここまで出てきたのは蛇だけ。荒野にはアルマジロや狼、ハゲタカみたいなモンスターまでいたのに、同じ地下にいるアルマジロすらいないってことは、ボスは間違いなく蛇よね…」
全身鱗に覆われた蛇の弱点をツキヨは知らない。ただ今までは、タイミングを合わせて首(の辺り)を切り落とすか頭を潰していただけだ。恐らく大蛇だろうボスには通用しない可能性がある。
「まぁ、水魔法で弱点を探っても良いわけだし、何とかなる。というかする!」
躊躇せず、扉を開き中に入る。
高さは二十メートルほどで、横幅も同じくらい。奥行きは四十、あるいは五十メートルあるかもしれない。そして、見た感じ地上の荒野をそのまま持ってきたようだった。
地面の質感も転がる岩も………オアシスも
「あ、あー……うん。あのオアシスがトラップだったのかな。それも特大な」
ボス部屋のど真ん中に設置してある、見覚えの有りすぎるオアシス。絶対あそこからボス出る。あれだ、たぶん私が青い花を採ったのがトリガーだったんだ…と思わずため息を付いた。
「たしか、あの花って調合にも素材として使えるし、気温を下げるから鍛冶にも重宝されるって言ってたっけ……。だからトラップとして成立する、と……イズさん、恨むよ……」
いや、むしろユニークシリーズを手に入れるチャンス!と気合を入れ直したツキヨは、意を決してオアシスに近づく。
そして、その距離が五メートルになった時。
「っっ、来た!」
オアシス全体に魔法陣が広がった瞬間、水中から姿を表したのは、予想通り巨大な蛇。ただし、頭だけが白く、身体は全て水で構成され、代わりにオアシスの水が枯れた。
「あのオアシスそのものが、ボスの一部だったってことね……というか水で構成されてるってことは…【ウォーターボール】!」
一縷の望みをかけて放たれた水球は、少量の飛沫を上げながら水蛇に吸収された。HPの変動は、ない。
「【水無効】……いえ、少しは飛沫が飛んだのだから、【水耐性大】くらいかしら。流石に無効は無い、と思いたいし、絶対に【斬撃耐性大】あるいは【斬撃無効】持ってそうね……水は斬れないし」
うん、詰んだ。と、内心で絶望する。
攻撃手段がないためどう足掻いても倒せない。
だが、そんなツキヨの事情など知ったことか!と咆哮を上げ、巨体に似合わぬ速度で迫る水蛇。
「暫く、攻略法を探るしかないわね!」
唯一触れられそうなのは、蛇の頭部。しかし、平べったい頭部を見ても、ツキヨの腰ほどもあるのだ。口を開ければ二、三メートルは優に超すだろう。
突進を躱してやり過ごすと、蛇の通った道が水浸しになる。乾燥した足場が急に濡らされたため滑りやすくなっているだろう。
地下に広がるボス部屋という名の荒野を高速で移動する蛇の体長は、およそ十メートル。巨体をくねらせて方向転換し、同時に咆哮。蛇の周りに、大量の魔法陣が現れた。
「魔法!?」
見た目は全て【ウォーターボール】。ただし大きさがツキヨの身長ほどもあり、ツキヨが使うものとは段違いだ。それらが一斉に逃げ場を奪いつつツキヨに放たれる。通常ならこれだけで終わるだろう攻撃。しかしツキヨは普通じゃない!
「……魔法を使うのは驚いたけど、まだまだ穴だらけね」
ツキヨは、あろうことか前進。高速で迫る巨大水球を前に、その全てを紙一重で掻い潜る。
「【鉄砲水】!」
小さいが、威力の高い魔法を展開。狙うは眼。
モンスターだが、生物としての本能のようなものがあるのか、【鉄砲水】が当たる直前に目を閉じて防御した。それこそが、大きな隙を作るとも思わず。
「【ダブルスラッシュ】!」
両手の双剣それぞれで【ダブルスラッシュ】を発動。合計四連撃をもって、頭と水の体の境界面を打つ。そして、見た。
「ま、さか……こいつの正体!」
一瞬だけ斬り裂かれた水の身体。否、それは身体などではなく、
ツキヨは一度距離を取り、息を整える。
「……なるほどね。あの身体を構成すること自体が、ボスの魔法。【血塗レノ舞踏】の効果が切れてないってことは、あの水はボスの本体であって本体ではない。どれだけ斬っても
そうと分かれば、狙うのはボスの体でも頭でもない。
「枯れたオアシスに残るあの魔法陣!」
それさえ壊せば、あの水の身体は制御できなくなり、本体を直接狙えるようになる。
それに気付いてからは、蛇の攻撃が一層苛烈になった。
ツキヨとオアシスの間に常に居座り、一部の隙すら見せず妨害に徹してくる。
「あぁもう邪魔!【スラッシュ】【ウォーターボール】【ダブルスラッシュ】【ウォーターボール】!」
相手がいくら高い【水耐性】を持ち攻撃を吸収してこようが、魔法陣さえ壊せれば関係ない。そのスタンスで牽制に剣を振り魔法を乱射する。
一応、スキルによる剣圧で一瞬だけ水を斬り、露出させた骨に水魔法を当てることで、地道にHPを削っていってはいるが、この攻防は既に一時間続き、二割程度しか削れていない。
また、距離も取れない。距離を取れば仕切り直しになるだけでなく、ツキヨの攻撃は届かず、一方的に攻められる。避けるのは容易いが鬱陶しいという悪循環を巡ることになる。
(恐らく、こいつの魔法は『纏うこと』と『放つこと』の二種類。そして一度『纏い』、『放った』ものを再度『纏う』ことはできない)
その仮説を裏付けるように、既にボス部屋はそこら中水浸しになり、何度も水を放出した為に身体が細くなっている。再吸収できるのなら、その水を集めれば良い。そうすれば誰にも倒せないボスの完成だ。それをしないという事は、できないという事に他ならない。楽観的かもしれないが、その可能性に賭けるしかない。
(だからこそ、魔法陣を壊す主目的の他に、水を放出させきることが肝要。『纏う』対象が砂にでもなったりしたら目も当てられない。今度は防御力すら高くなっちゃう)
隙を見てMPポーションでMPを回復し、魔法を連射。ミィ命名の《神速反射》を用いた『自力時間加速』により、ツキヨの主観時間は既に三時間を超えているが、それでも二割。
(体感三時間…なら実際一時間ちょっとかな……このまま削っても五時間かかる。今日はもうアルマジロで一時間、それにボス部屋に来る前からやってるから、保たせるにはあと一時間以内に間を取りたい)
間を取るとは、ツキヨの反射速度をもってしてもギリギリの攻防で、後ろに下がるということ。
水蛇に一度とはいえ負けを認めるということ。
「………そんなの冗談じゃない!」
瞬間、ツキヨがギアを上げた。
「【ウォーターブレイド】!」
あるいは、限界を超えたのかもしれない。これまで感じていた
「二刀【
瞬間二点同時攻撃。
両の双剣から放たれた、合計瞬間四連撃は、【ウォーターブレイド】の効果も合わさることで【ダブルスラッシュ】にも劣らぬ威力でもって、水の身体を一部吹き飛ばす。
「まだまだぁ!」
今度は片手につき瞬間四連撃。計八連撃。
直前の倍以上の水量を水蛇の身体から抉り取り、骨にまでダメージを与えた。そして、ようやく気付いた。このボスの、弱点を。
「はぁ……はぁ……ふふっ…へぇ、あなたの弱点は、その体を構成する骨。背骨かな?その一つ一つを繋ぐ、
ここに来て、コンディションが最高に達したツキヨにとって、そして瞬間連撃を主とする我流剣技において、その一瞬を付くのは児戯に等しい。
【蛇咬】によって多量の水を吹き飛ばされ、HPを削られた蛇の身体は、大木の如き太さを誇った最初に比べて小枝に等しい。
弱点ダメージによって一気にHPは残り六割にまでなり、今の蛇の水量であればツキヨの剣は水の層を突き破ってダメージを与えられる。
「強敵だったよ、水大蛇。でも私も疲れた………そろそろ、終わりにしよう」
疲労はある。でもそれ以上に昂ぶっている。たぶん、今ならできる。その確信があったから。
だから、精一杯の殺意と覇気を蛇にぶつける。
蛇がツキヨの纏う『意』を感じ取ったかは分からない。しかし、どこか恐怖するように後退した蛇は、最初の位置。オアシスまで戻ると、パシャンというあっけない音と共に、纏っていた水を落とした。
「何をする気?」
それは、本来ならHPが五割を切った時に起こる現象。ミィ共々、なぜこんな現象を気迫だけでボスに起こさせるのか。
水のベールを脱ぎ捨てた蛇は、その頭を細く、頼りない背骨で支えながら垂直に身体を伸ばす。
そして、肺など持っていないはずの身体で力強い咆哮を上げると、周囲の岩がゆっくりと浮かび始めた。
「は、ははは……そうだよね。水の体が脱げたなら、もっと強い身体を求める。でも、あなたは岩の体で動けるのかな?」
動けないのだとしたら、このボスの行動が意味するのはたった一つ。蛇の身体を中心に、巨岩が高速で回転し始める。その回転力を破壊力として、ツキヨに放つために。
「だからいずれ攻撃に転じるはずだよね?でも、私は言ったよ。
ツキヨは防御を捨てて走る。間の距離は二十メートル。その距離を詰めれば、チェックメイト。
だが蛇も安安とは行かせないとばかりに、連続して巨岩を放ち始めた。
「良いの?そんな
そしてツキヨは、自らに隕石の如く迫る巨岩に【跳躍】で飛び乗った。
《神速反射》が最大限機能しているからこそ、この程度の岩の雨はツキヨにとって
巨岩の砲弾を足場に空中を駆けるツキヨと、それを狙い次々に
そこにある天井に、
「………【ウォーターブレイド】【跳躍】」
水の刃を纏い、地の底に向かって【跳躍】する。
自由落下に【跳躍】の初速を加え、水属性追加ダメージを付け、使うのは斬る速度が速ければ速いほどに威力が上がるスキル。
「【疾風斬り】!」
二刀によるそれは蛇の胴と首を完全に断ち切り、
蛇ゆえの生命力の高さか、身体が骨になろうとも死なないが故の特性か。一割だけHPを残し、着地したツキヨを背後から首が狙う。
「……言ったよ。終わりにしようと」
使うのは、現実でも使用できなかった、理論上の我流奥義。瞬間八点同時攻撃。
「……二刀【
十六の斬撃が、蛇の頭を叩き割った。
――――――
『【連撃剣Ⅴ】が【連撃剣Ⅵ】になりました』
『【水魔法Ⅴ】が【水魔法Ⅵ】になりました』
『【跳躍Ⅲ】が【跳躍Ⅳ】になりました』
『スキル【水君】を取得しました』
『スキル【切断】を取得しました』
『レベルが25に上がりました』
『スキル【剣ノ舞】を取得しました』
『スキル【ウィークネス】を取得しました』
「あぁぁぁあああ………勝ったぁぁあ……ってなんかいっぱい来たぁ……」
もう疲れたんだけど……最初三つくらいはスキルレベルが上がっただけなの分かるんだけど、四つくらいスキル取得したよね…?
「あ、宝箱もある…ユニークシリーズぅ……」
《神速反射》の影響で疲労感がすごい。NWO始めてから一番長く使った上、現実じゃ身体能力が足りなかった仮想奥義使ったから…とにかくやばい。けど良い。良い疲労感。達成したことの充実感のある疲労。取り敢えずユニークシリーズを見たい。凄い気になるぅ…っ!
疲れた身体を引き摺って、宝箱に到着。
「宝箱を開けるのは、何気に初めてだな…」
ゆっくりと蓋を持ち上げて、中身を確かめる。
「あ……ははっ、はははは!」
中にあったのは、北欧の伝承にある
それとミィと色違いの純白のマント。
装備全体として、純白の翼を広げたような意匠になっている。
それに合わせたような純白のブーツには、こちらも所々に装甲が付いている。
更には、白地に金色の装飾がなされた鞘に収まる二刀の白銀の片刃直剣
最後に両側に翼のような意匠が施されたティアラのようなもの。
「良いよ……凄い良い!」
デザインも何もかも。そして赤と白でミィと対比しててすっごく良い!
さっそく確認しなきゃ!
―――
【ユニークシリーズ】
単独でかつボスを初回戦闘で撃破しダンジョンを攻略した者に贈られる、攻略者だけの為の唯一無二の装備。
一ダンジョンにつき一つきり。取得した者はこの装備を譲渡できない
【舞騎士のマント】
【INT+15】【MP+20】【破壊不可】
【比翼の戦乙女】
【INT+15】【MP+15】【破壊不可】
スキル【聖水】
【白翼の双刃】
【DEX+40】【AGI+15】【破壊成長】
スキル【飛翼刃】
【比翼のロングブーツ】
【DEX+10】【AGI+25】【破壊不可】
―――
さっそく装備してみると、ティアラのようなものはバトルドレスの一部だったようで、頭部分にはマントが装備された。
それにしても【比翼】ね……。
比翼…全体の意匠として、イメージは鳥なのかな?分かんないけど、全部気に入ったよ。
片手剣として片方ずつでもスキル発動ができ、片方剣スキルの二刀流、双剣スキルのどちらも使えるとなると、片手剣スキルも取ったほうがいいかな?
「ユニークシリーズはミィが言った通りだけど、【破壊成長】って…嫌な予感するなー…」
まぁ、予想通りだと思うけど、確認しようか。
―――
【破壊成長】
この装備は壊れれば壊れるだけ強力になって元の形状に戻る。
修復は瞬時に行われるため破損時の数値上の影響はない。
―――
「やっぱり…剣を壊れるほど振るいたくは無いんだけど…成長の為って割り切るかな…」
あとは、武器のスキルかな?
―――
【聖水】
水魔法に聖属性を加える。
悪魔、
【飛翼刃】
【白翼の双刃】専用スキル。
スキル発動中に毎秒MP3を消費し、重量を変えずに刀身を【DEX】×1メートルまで伸長、収縮し、自在に操ることができる。
長く伸ばすほど耐久値の減りが早くなる。
【破壊成長】を繰り返すことで、倍率が向上する。
―――
「聖水は発動時に水魔法に聖属性を加える、かぁ。……【聖水】っと……へぇ、魔法名もいくつか変わって特攻ダメージ以外にも魔法によって別々の追加効果がある、と。これはまた今度ちゃんと確かめよー」
そして、それ以上にやばい方に目を向けた。
できれば逸らしたいけど。
「それに双剣強いよ……名前からして刀身が飛ぶのかと思ったけど、蛇腹剣ってことでしょこれ……重量を変えずにしかもDEXがそのままメートルで、しかも装備による追加分もしっかり計算に入ってるってことは…うわ、現状で120メートル。操れる自信ないよ…長さを含む操作は脳波で、か」
そうしてよく見てみれば、双剣の刀身に薄っすらと等間隔の『節』があるのが分かった。節は銀色でパッと見分かりづらい。
「双剣が双剣してないし、ここまで来ると取得したスキルの確認も怖くなってくるなぁ…」
脳波コントロールって私の《神速反射》に対応できたら、かなりエゲツないことになるよね……。まぁ、練習あるのみかな。
「さて、取得スキルの確認を………ん?ミィからメッセ?なんだろ?」
確認しようとしたら、ミィからフレンドメッセージが届いたので、そちらを優先する。これ以上やばいスキルを立て続けに見る勇気がないよ…
「なに、これ………」
書かれていたのは、たった四文字。
でも、あのミィが、なんで?
心臓の動機が早い。ボスと戦っていた時よりも早くなっているのが分かる。でも、だからこそ急いでミィの所に行かなきゃ。
「待ってて、ミィ…………!!」
私は急いでユニークシリーズで上がった【AGI】を最大限使って街に走った。
―――
from ミィ
たすけて
―――
装備の見た目イメージは『落第騎士の英雄譚』4巻で初登場した時のエーデルワイスさん。露出が多いからツキヨちゃんには少し控えさせて上げてください。あとはマント付ければ完璧です。
知らない、知りたい人は原作名とエーデルワイスで検索すればすぐ出ます。
あのエーデルワイスさんの美しさは原作屈指だと思う。流石世界最強の剣士。
双剣のデザインを片刃ように変更して目を赤くしたらツキヨちゃんです。とは言えエーデルワイスさんより若いですが。
そして双剣のスキルは倉敷君だけどね!
良いとこ取りしたらこうなった!
双剣だけ破壊成長なのは倒したボスが蛇で不死性の象徴だから。しかも脱皮という形で蘇るっていう不死なので、傷ついても復活すると言う不死で【破壊成長】にしました。
2020/2/24
ツキヨさんのデザインから青を除き、完全に純白にしました。そっちのがイメージにあったので。
武器名、スキル名一部変更
比翼と蛇骨が混ざってて統一感が無かったので、見た目の方に全体的に寄せますが性能は変わりません。