PS極振りが友達と最強ギルドを作りたいと思います。 作:五月時雨
予定通りの投稿。
ログインしたけどミィは来ていないみたいね。
そして、別の人。素の私の時に出会い、私を助けようとしてくれた人と出会った。
「お、ツキヨちゃんじゃないか」
「あ、ヴィトさん。なんか、久しぶりですね」
「あぁ。ツキヨちゃんがまだ初期装備の時以来だな。といっても、まだ一週間だが」
そっか。この一週間が濃かったから忘れていたけど、まだそれしか経ってないんだ。第一回イベントまで、まだあと三週間残ってる。
「そういやツキヨちゃんは【炎帝】と仲いいんだろ?」
「ミィですか?そうですけど、それが何か?」
「いや、遠くからしか見たことないが、なかなか厳しい言動をしてたからな。このツキヨちゃんと仲が良いのが、ちょっと不思議だったんだ」
『この』とは何だ『この』とは。
そりゃぁ、私もミィも演技してる時は、その感じを意識してやってる節はある。まぁ、だからこそ素の私だけを知ってると不思議に思うのも当然かな?
「あっはは。あのミィは格好いいですからね。それにカリスマ性ありますよ」
はぁ。やっぱり素で話せると落ち着くなぁ。
あ、この一週間で時間を見て集めた青銀色の鱗の追加分、イズさんに持ってかなきゃ。
「ツキヨ様。ミィ様が探しているようです……その方は?」
はぁ……。素で話せる時間が終わった。
「……フレンドのヴィトさんよ。私が弱かった頃に助けてもらった事があるわ。……では、私はこれで。また会いましょう」
「あ、あぁ……またな」
「……アレン、行くわよ。案内して」
「こちらです」
ヴィトさんにメッセージ送っとこう……。親しくしたい人に演技見られるのって、結構恥ずかしいのね。
「いきなり雰囲気変わってビビったけど、あれもアリだな。早速掲示板に…っと、メッセージ?」
―――
fromツキヨ
詳しくは省きます
冷たい方の私が演技って言いふらしたり掲示板に書き込んだりしないでください
私の情報を勝手に掲示板に晒したことを許す対価としますので
―――
「掲示板に書き込んだのバレてやがるし……今後のためにも、黙ってた方が良いか」
―――
ミィではなく、私の下に就いている者の一人、アレンに案内されてミィと合うことができた。
「ごめんなさいミィ。フレンドに会って、少し話していたの」
「そうか。元々集合時間を決めなかったから問題ない。早速、昨日言った人のところに案内する」
「頼むわ」
そうだ、この後ミィに頼んで、イズさんの所に寄らせてもらおう。彼女なら演技のこと黙っててくれると思うし。
あと、アレンには先に少し伝えておこうかな。
「アレン」
「は。なんですか?」
「詳しくは後でミィと詰めるけど、今日のレベリングは少しだけ予定とは違うことをするわ。他の人が来たら、伝えておいて」
「かしこまりました」
それだけ言って、アレンは去っていった。ミィの臣下と違って、私の方はなんか……侍みたいな雰囲気があるのよね、みんな。忠誠心みたいなのが半端じゃないわ。
「ミィ、もう素で良いわよ」
「はぁ…なんかツキヨの臣下って息苦しいよね」
「調きょ……指導が厳しすぎたかしら」
「いま調教って言った!?」
「言ってない。それでミィ、素材集めの前に、少しだけ寄りたい所があるの。良い?」
「ん?良いよーと言っても時間はあんまり無いけどね」
「大丈夫。装備の素材がようやく集まったから渡しに行くだけ」
そうして歩いていくと、少し入り組んだ所にある店に入る。ていうか躊躇もないわね。
「ウェイン、頼みたいことがある」
あぁ。ここは演技の場所なのね。相手はヒゲの生えた色黒のおじさん。職人気質な性格をしてそう。何というか、この人が裁縫師とは信じられない。鍛冶屋じゃないの?
「よう炎帝の。勧誘なら断るぜ?」
……すごい軽いわね。職人気質ってちょっと撤回したくなった。
「それで後ろの嬢ちゃんは……最近噂になってる『白銀の
「はじめまして、ウェインさん。いつの間にか付けられた二つ名に興味無いの。どうぞツキヨと呼んで下さい」
取り敢えずいつも通り冷たい声音で挨拶。
誰に対しても冷たく接する戦闘の鬼である私が水魔法も使うから、凍る鬼で繋げて戦凍鬼。
「今日の依頼主はツキヨだ。私はただ、コイツを連れてきたに過ぎん」
「へぇ……ならツキヨ、取り敢えず依頼ってのを聞きましょうか」
この人が装備をつくるのにどれくらいの時間がかかるのか。それによって計画を詰めないと。
「組織が大きくなってきたので、視覚的にメンバーを見分けるための装備が必要なのです。デザインを統一したバンダナ、素材の量は最低限、個数は100……何日かかるかしら?」
どんなに遅くても一週間もかけていられない。次の土日までに結成式を行い、組織としての体裁を整える必要がある。
すると、彼は少し考えてから口を開いた。
「デザインの複雑さや作成資金は?」
「下地は赤。炎と白い羽という共通項だけ守っていただけるなら、デザインはウェインさんに任せるわ。多少の差異もやってもらって結構。資金は即金で五百万。二日待ってくれるなら一千万」
もう一度撤回。この人、仕事になると職人気質になる。ならこちらは札束で殴らせてもらう。そして、職人なら疼くと思うのよね。『自分のセンスに任せる』って内容に。
だって、ガチガチに指定するより緩く決め、その人の納得の行くデザインを作ってもらった方が効率がいい。何よりデザインは重要じゃない。
ちなみに炎はミィ、羽は私の装備全体のイメージからだ。
「その程度なら三日。かかっても四日で終わる。が、五百万は貰い過ぎだな。布製品は生産しやすくコストも安く済む。一つ5000G。全部で50万Gってとこか。急ぎなら素材も最低コストだろう?急ぎの依頼料込みでも100万もいらねぇよ」
良かった。五百万は私の全財産だもの。流石に全部は辛かった。
「構わない。これから素材を取りに行くわ。次の土日までに仕上げてほしい急ぎの依頼。その手数料込みで五百万を覚悟していましたから」
「……そうか。なら手数料を取らない代わりに、お前らのグループに受けてもらいたい依頼がある」
―――
「良かったの?バンダナみたいな簡単なもので」
ウェインさんに素材とその必要量を教えてもらい、正式に依頼を終えた私達は、イズさんの工房に向かっていた。
「今回は火急の依頼だから、できるだけ制作期間が掛からない物にする必要があったわ。同時に、素材の量もね」
それに、結果として50万G程度で済んだので、これを恩として感じてほしくないのだ。あまり縛り付けるのは、ギルドシステムが無い現状では好ましくない。
「バンダナは足がかり。あくまでメンバー確認の道具としての物よ。いずれは一装備、全員統一にしてもいいと思ってる」
一人ひとり装備は違うし、中には全部揃いつつある人だっている。私とミィなんて半ば全部固定だろう。わざわざステータスを落として装備を変える人はいない。
「いきなり手間がかかった高価な装備を渡しても『重い』だけでしょう?『仲間意識を作る』。そのためなら、バンダナくらいが丁度いいのよ」
「なるほどぉ…」
今回は素材集めも手伝ってもらったことと、最初だし簡単なものをプレゼント。次から装備を作る時は、きちんとグループ内で話し合ってデザインを決めればいいし、素材集めに資金集めを皆でやれば良い。
さて、そろそろイズさんのお店が見え…たわ。
一週間振りのイズさんのお店に入ると、やっぱりイズさんはカウンターの向こうで棚の整理をしていた。
「いらっしゃい……あら、誰かと思ったらツキヨちゃんじゃない。久しぶりかしら?」
「はい。お久しぶりですイズさん」
「後ろの子は……炎帝さんね。はじめまして、生産職のイズよ」
一瞬ビクッてしたけど、私が演技もせず素の自分で接しているのを見て、少し落ち着いた。
「あぁ、ミィだ。よろしく頼む」
「ふふっ、よろしくね。ツキヨちゃんは結構時間かかったみたいだけど、素材が揃ったの?」
「えぇ。ミィの手伝いであまり素材集めができなかったので、遅くなりました」
「最近、ツキヨちゃんの名前をよく聞くもの。『白銀の戦凍鬼』なんて、こんな可愛いのに残念」
素材を渡しつつ、その話題に持っていけた。
「あはは……先導者には先導者の振る舞いがあるってことで、普段は
「ふふっ……三人の秘密ね、分かったわ」
……ってことで、
「ミィもその演技、辞めていいわよ?」
「ちょっ、言わないでよー!?」
「私以外にも知ってる人が少しくらいいた方がいいのーというか、私が素でイズさんと話してるのに演技するミィが悪い」
「理不尽!」
イズさんは良い人だ。それもかなり。ミィと同じくらい私が信用できる人の一人。だからあえて演技も教えるし、素のミィを分かってくれる人になって欲しかった。
「誰にも言うつもりは無いわよ?言って得することでもないし……はい、アルマジロの甲殻、青い花、青銀色の鱗の納品確認できたわ。ツキヨちゃん、装備の希望は、前回と変わらないのよね?」
「はい。DEX特化の片刃直剣型双剣。色は白銀と青銀、デザインはイズさんのセンスを期待してます」
そういうと、イズさんが気合を入れていた。
「ふふっ……生産職にデザインを任せるって、生産職を試すようなことよ?……俄然燃えるわ」
そんな燃えるイズさんを前に、ミィは諦めたように自己紹介をやり直した。
「はぁ……まぁツキヨが信用してる人だし、別にいっか。改めてミィです。よろしくお願いします」
「えぇ、よろしくねミィちゃん。まぁ、鍛冶が専門の私に魔法使いのミィちゃんは関わり薄いでしょうけど、仲良くしましょう?」
「その内にグループの統一装備でも注文に来るかもしれないから、もしかしたらまた来るわ」
多少打ち解けたようで何よりだね。
ん?イズさんこっち見てどうしたんです?私というより……私の双剣?
「それにしてもツキヨちゃんはもう装備一式揃ってるでしょう?その双剣も。まだ他に武器が必要なの?なんなら、貰ったお金返金するわよ?」
「あー……この双剣、スキルが付いてて、強力ではあるんですが扱い辛くてですね……できれば、普段使いできる装備が欲しいんですよ」
「なるほどねぇ……そういう事なら分かったわ」
「ツキヨ、スキルのこと私聞いてない。まだ隠してるスキルあるの?」
「言ってないもん。扱いが難しいから、下手なままミィに見せたくないだけー。お披露目は第一回イベントよ」
【飛翼刃】の練習は人のいない西の森の奥でコソコソやってるけど、ようやく50メートル先の精密動作ができるようになった。この操作の練習で【魔視】や【遠見】が取れてしまった。【魔視】はMPを消費して視力を引き上げるスキルだ。……さて、そろそろ時間ね。
「ミィ、時間食ったわ。そろそろ集合よ……ごめんなさいイズさん。今日はこれで失礼しますね」
「うぅー……絶対!絶対に見せてよね!?」
「分かったわ。装備が完成したら連絡するわね。だいたい、四、五日くらいかしら」
「今週は何かと忙しくなるので、取りに来れるのは来週だと思います」
「わかったわ」
「じゃあ装備楽しみにしてます!行こ、ミィ」
「わかった!」
そうして急いで向かうと、既に今日組むメンバーがそろっているのが見えた。
「ミィ、切り替えて……るようね」
「当然だ。ツキヨこそ切り替えろ」
「……分かってるわ。ミィが可愛くて、つい」
「なっ……はぁ。もういい。急ぐぞ」
「えぇ。了解よ」
―――
「ふふっ……あんなに可愛いのに演技だとすっごく凛々しくて……お姉さん、二人のこと気に入っちゃったわ……」
―――
「諸用が長引いてしまった。悪いな」
「アレンから既に聞いているでしょうが、変更の内容に関係があるわ。許してちょうだい」
『いえ、問題ありません』
相変わらずの揃い具合が面白いけど、先に説明しようか。ミィにアイコンタクトを送り、ミィから切り出してもらう。
「変更の件だが、移動しながらその訳を話す。付いてこい」
「説明はパス。露払いするからミィお願い」
いわば、説明中だけの護衛である。簡単なお仕事だ。
街から出て移動中は、モンスターが度々襲ってくる。その度に説明が遮られては面倒なので、ツキヨは補足が必要な時に備えて説明を聞きつつ、モンスターを討伐していた。
「というわけで今までハッキリとしていなかったが、この度正式に私達は一つのグループとして、活動していく。その為の証明装備を集めるのが、変更理由だ」
「補足として、今後NWOにギルドが実装された時のギルドメンバーにもなるわ。今回の件は、その前準備と思いなさい。証明のためだから装備そのものは簡単なものだけれどね」
「はっ。して、ツキヨ様、未来のギルド名と団長は決まっているのですか?」
いやナイラー、このグループの発足から考えて分かろうよ。アレン共々私を慕うのは良いけど、空気読め空気。
「団長はミィ。ギルド名は候補を上げれば、最終的にミィが決定するわ」
「システムのある無しに関わらず、副団長はツキヨに任せるつもりだ。私が不在時は全権代理ということになる」
ちょっ、聞いてない聞いてない!ミィめ、昨日私が候補上げたことの仕返しだね?
「ちなみに現状の候補は【炎帝ノ国】。他に良いのがあれば好きにしなさい」
「【炎帝ノ国】……ミィ様の威光を最も表現していると思います!」
「他には考えられません!むしろ決定にいたしましょうミィ様!」
「では僭越ながら【双覇ノ戦火】と」
アレン!?それミィも含んでるけど、殆ど私じゃない!?
「我々のグループの代表はツキヨ様とミィ様の両名であり、その輝きは夜空に燦然と輝く星です。故に覇道を征く双星、幾度の戦を経てなお消えることのない意志の火。の意を込めさせていただきました」
む、無駄に良いことを言ってくれるわね……。でもそれとは別に私の得物が双剣であること、装備からの見た目が戦乙女であることも多分に含んでるわよね?今の説明も夜空って私のツキヨに掛けてるのよね?まず代表プレイヤーにミィより先に私を言う辺りに作為的なものを感じるんだけど。
「では私からも【集いし
「なかなか良い。どちらも候補に加える」
ナイラーまで無駄に良い感じの説明をしてくるから却下しづらい…。仕方ないから諦めよう。何なら直前まで【炎帝ノ国】を推せばいい。というか二人して先に私の名を挙げるの辞めなさい?他の20人ほどからの視線が痛いんだけど。ここに私の配下はあなた達二人しか居ないんだからね?
「……お喋りはそのくらいにしてもらえる、ミィ。そろそろ素材のモンスターが出るエリアになる」
なるべくウェインさんに余裕を持って良い装備を作ってもらいたいから、今日中に素材を集めたい。一つは南の森に出る蜘蛛の糸を500。二つ目に染料になる樹液を100。それぞれ倒す、採取するのは楽だが100人分だからとにかく数がいる。
今いるメンバーは私とミィを含めて24人。一人あたりノルマは糸20、樹液4。簡潔にそれだけ伝えて散ってもらうか……いや、この辺りは強いモンスターもたまに出る。となれば地道に集めるしかない。
「装備を作ってもらう生産職の人の都合を考えて、なるべく早く集める必要があるわ。全員働いてもらうわよ」
何なら明日追加分を持っていっても良いのだから、焦らずやっていきましょうか。
―――
「と、言うわけで完成したのがこれよ」
「おー」
グループを立ち上げるための素材集めから一週間。その間素材を集め、レベリングのグループ毎に毎回同じ説明をし、日取りと場所をセッティングして、最後に今朝短時間ログインして受け取ったこの全員分のバンダナ。
登校したら、もう来ていた美依にウェインさんから受け取ったバンダナをスクショした画像を美依に見せつつ話す。
基本色は赤で注文通り。デザインは炎と羽で、一つ一つ羽の枚数が違ったり翼みたいになってたり完全にばらばらだったりと色々あるけど、共通項はきちんと守られている。
バンダナなら腕でも首でも頭でも好きに付けられるし、証明書代わりになら嫌がられないだろうと思う。というかミィが言えば解決する。今後は少しずつ統一していきたいって意思を示せば、最初だからと納得するでしょうし。
………それにしてもイズさんから、もう双剣ができた連絡は貰っている。いつ取りに来てもいいとは書いてあったけど、早く取りに行きたい……その為だけに一週間頑張ったんだもん……。
「美依を手伝うって言った時から覚悟してたけど、調整役って面倒だよ……」
「一週間、レベリング以外の時はだいたい走り回ってたもんね、月夜」
美依は、ログイン中は私といるか臣下といるかの二択で一人になる時が少ない。だから全体準備や諸々の調整。美依が挨拶するだけではつまらないから【料理】スキル持ちへの料理の依頼、街の中にある講堂みたいな広い場所をお金を払って数時間貸し切ったり、グループにいる全ての人が参加できる時間の調整をしたり……。この一週間、勉強以外はこの計画に費やした気がする。
とはいえ築いたイメージがあるから、走り回ったっていうのは比喩で凄い堂々と歩きましたがね。内心テンパってた。
「人数も83人まで増えたし、少しの時間でも全員が参加できるように調整してくれてありがとね、月夜」
「うん……。なるべく参加しやすいようにログインの多い土曜日の夜、日曜日だと翌日に仕事や学校があるから、多少脅しもしたけどね。途中参加あり、途中ログアウトもあり。最短参加者の滞在時間は30分だから、最初に美依と私が話す以外はほぼ交流を深めるための自由時間よ。その間の挨拶周りでバンダナは渡しましょう」
計画はアバウトなものだ。21時から0時まで講堂を貸切っての交流会。参加時間が23時過ぎになる人もいるための措置だ。普段グループ毎の交流以外が薄いため、動き回れるように立食形式。夜だから軽い夜食的な摘めるものを用意してもらった。
最初に美依、私から一言以外は途中で抜ける人から順番に挨拶周りで全員と話す以外は
多分気分で決闘とかの催しもすると思う。建物は破壊不可だし決闘なら周りの物壊れないし。私に勝ったら副団長の座をあげるって言えば、大体の人が釣られると思う。
「必然的に美依と私は最初から最後までいることになるから、頑張ってね」
「うん……寝ないように頑張る」
「まぁ、最後の方の数人なら私だけで対応できるから、最悪寝落ちしても大丈夫だよ」
「うぅん。演技で気が張ってると思うし、寝るに寝れないと思う」
ログアウトしたら気が抜けて即寝るわけね。
「最初の挨拶は演技で乗り切るけど、グループ名【炎帝ノ国】で決定かー……」
「ふふっ、やっぱり私の候補が優勝ね」
美依の言う通り、グループ名は【炎帝ノ国】で決まった。私の臣下が全体の三割ほどいるけど、五割の【炎帝ノ国】支持者を覆すのは無理だったようだ。凄いホッとした。ちなみに残りの二割はどちらにも属さない中立。
「全く……なんで彼らグループ名に私の名を推してくるのよ……」
「【凍炎郷】に【白炎の乙女】、直接的なのじゃ【銀世界】や【水底への誘い】【比翼騎士団】もあったねー」
アレンやナイラー、その他にも30人弱いる私の下に就いた人たちは、【炎帝ノ国】の対抗案を一同に挙げていた。しかも面倒なことにミィの下…長いからミィ派で良いか。ミィ派を納得させる理由まで添えて。
……まぁ、ちゃんと双方が納得する説明が用意できるから、ミィ派とツキヨ派の分離が起きてないのだけど。
美依の要素を盛り込みつつ、殆ど私から付けたような名前ばっかりだった。中には美依の言う通り銀髪や【水君】に因んで付けたものもある。速攻で却下しようとしたけど、美依に止められた。
【比翼騎士団】なんて私とミィが支え合って高みに至るだとか言ってたけど、私の装備名……は知らずともイメージから取ったのは丸分かりだし。
結果として【炎帝ノ国】に決まって良かったと思う。私由来の名前を含んでしまうと、事実上のトップは二人いると取られかねない。だが美依だけを表すこれは私と美依の力関係を示し、また最初の候補に決定することで、候補を上げた人のグループ内での地位を向上させないために有効だ。
美依が象徴としてトップに立ち、私は調整兼補佐。他は平等というのが、現状最もいい。
「彼らには一度徹底的に教えた方がいいかな…」
「ツキヨの臣下も増えたもんねー」
「まだまだミィ派が多いし、彼らもそれが分かってるから決定的な派閥の分離は起きてないけど……不安材料ではあるよ」
まぁ派閥が別れても、上の美依と私が協力してるんだから問題ないように見える。
だけどなぁ……
「ミィ派……特に私の最初を見てる人たちからの潔癖にも似た恐怖心が抜けないんだよね……」
「あー……」
絶対に私と話さないし、目があえば青い顔で逸らすし。レベリングの時も徹底的にミィ派と美依としか話さないし。
必要なのは意識変容。演技のミィに合わせた冷徹で厳しい上から目線な剣士ロールだけど、『ミィの不利益は絶対にしない』と言う事を理解してもらいたい。それだけでだいぶ違うはず。
「その内に協力系のイベントが出るのを待つしかなさそう、かなー……」
「だね……」
「私達の演技、基本的に私が引っ掻き回してミィが諌めてるものね……お互い口悪いから親友どころか険悪ムード多め」
「確かに……よく言われるんだよー月夜と本当に親友なんですか?って」
うーん……口調は対立してても、だからこそ信頼を寄せているってスタンスなんだけど、部分的に見たら分かりづらいね、私達。
「本格的に対立する前に手を打っとかないとね」
「どうするの?」
「さっきも言った、パーティで協力するようなイベント待ちかな」
長期に渡るものなら、【炎帝ノ国】全員に私と美依のスタンスを見せることができる。
それにやりたくはないが、対立した後にもやりようはある。
「もし決定的に対立しても、すぐにフォローできる準備はしておくよ」
まぁ、本当にどうしようもなくなったら私がギルドを立ち上げてしまえば良い。ツキヨ派を引っこ抜いて。その上で【炎帝ノ国】と連携するとでも言えばいい。
「まぁ明日の結成式で前に立った時、私の考えを話させてもらうつもり」
そこで、少しは緩和できるように頑張ろう。
ツキヨさんは頑張り屋さんです。ただ空回りしかねないくらい真剣に考えてるんです。一人でシリアス空間を作り出しちゃうんです。