PS極振りが友達と最強ギルドを作りたいと思います。 作:五月時雨
ツキヨちゃんが決して【炎帝ノ国】メンバーの大半から嫌われてるってわけじゃないよって話。
「おはよー美依」
「おはよ月夜。昨日ログインしなかったねー」
「うん」
学校に着くと、やはり美依がもう来ていた。最近は美依が早い。
「一週間の疲れが一気に来てさ。昨日はログインしないでゆっくりしてた」
「月夜はお疲れだったもんね……」
「今日からまた再開するから、ご安心を」
「あぅ……月夜、やめてぇー……」
私に色々と任せてしまって申し訳ない……みたいな気落ちした顔を見せたので、取り敢えず両頬をうりうりしとく。うむ、こっちの方がゲームよりもち肌だ。これこれ。
少しの間美依の頬を触って癒やされた私は、『幹部候補』の運用について相談することにした。
「そだ。美依、今日から試験的にやりたい事があるんだ。話しても良い?」
「なにー?」
「あのさ、【炎帝ノ国】が大きすぎて、私と美依だけじゃ回すにも限界が出てくるじゃん?」
「一度に動かせる人数にも限度があるしね……じゃあ、手伝ってもらう人を増やすってこと?」
「そ。ミィ派でもツキヨ派でもない中立の人に頼んであるから、私と美依をリーダーにグループレベリングの班を二つ作って、一度に動かせる人数を倍にしたい。中立の人には、私達の補佐をしてもらう感じ」
そうすれば一度の運用人数が単純に二倍になるので、私と美依だけの時間も作りやすくなる。
そうすれば美依が演技をしないで気楽に遊べる時間も増えるという寸法だ。
今までは放課後に四グループを月曜から木曜まで一日ずつ、金曜は休みで土日に午前午後で四グループ回す感じに気を抜ける日が週に一日しか無かった。
あの結成式の関係で全員覚えたし、大体のログイン状況も分かった。それを元にグループレベリングの班分けを再編成して、効率よく回すつもりだ。
二日で全メンバーとレベリング、一日休憩という形にするつもりということも簡単に説明する。
「でも月夜、いきなりで連携とか大丈夫?信用とか……」
「ゲームは実力が全てでしょ?年齢や性別に関係ない。私と美依を除いて実力の高い四人……プラス一人にお願いしてあるから、自然と信用は勝ち取るって」
「プラス一人っていうのが気になる……」
プラス一人はウォーレンさんだ。結成式の日に、彼がログアウトする前に少しだけ話せたため、ちょっとした仕返しに『
「その人は単純にミィ派からの信用が高いからね。主に私が重用して、ミィ派からの確執を取りに行くつもりだよ」
「じゃあ、私は誰とやるのー?」
「ふふっ……それはねー……」
それから始業まで簡単に打ち合わせを終えた私達は、いつも通りの日常を過ごして放課後を待った。
―――
「昨日はログインしなくて悪かったわね。何か変わったことはある?」
早速ログインした私は、出迎えたツキヨ派のプレイヤーであるキースに尋ねる。前衛弓使いという異色なプレイヤーで、言うことといえばアレンやナイラーと同じというだけだ。
「………いえ、特筆することは何も。しかし、今日は人数が多いですよね?」
「えぇ。詳しくは後で説明する。あなたは先に噴水広場に集めておきなさい」
「畏まりました」
そうしてキースが行ったのを見届けたので、ちょっとした用事を済ませてこようかな。
そう思い、私は昨日のうちに連絡した相手の所に向かった。
「やはりというべきか、バンダナを着けてるのはミィ派と一部の中立だけね」
用事を済ませた私は、足早に噴水広場に向かう。ミィは既に来ていた。
まだ少し離れているためメンバーには聞かれないだろうが、キレイに別れていた。バンダナを着けてるのはミィ派の殆ど全員と、【MP+10】が付いてるため魔法使いの中立。ツキヨ派は初心者魔法使いくらいしか装備してる人はいない。
ちなみに私は長めの髪を纏めるために装備している。戦うためにはちょっと邪魔だったし。
【MP+10】は嬉しいし。
あと、ミィは私の要素である白い羽が良く見えるように装備してあり、互いに互いを大事にしている事を内外に示す形をとった。
あ、キースがバンダナ取り出して装備した。さっき私が着けてるのを見たからだよね、それ?
まぁ、こういう時リーダーが率先して装備しないと、下は装備してくれなくなるよね……。
「皆、今日もよく集まった!今日からは私とツキヨをリーダーとして別々のグループに分け、メンバーをシャッフルしながらレベリングする。せっかく【炎帝ノ国】というグループになったんだ。固定グループではつまらないだろう?」
ニヤリと笑うミィが可愛い。さて、続きは私から引き継ごう。
「とはいえミィだけ、私だけでの指揮では行き届かない部分もある。なのでこの場からで四人選出し、各グループに二人ずつ補佐をつける。……ミザリー、シン、マルクス……それとあなたよウォーレン。前に出て」
「ちょっ……」
ウォーレンさんだけがビックリしてる。はははっザマーみろー。……キャラぶれた。
他の三人は一昨日の時点で覚悟していたのだろう。軽く返事をして前に出た。ヴィトさんは今日は仕事でいない。ってわけで……ウォーレンさん、よろしく。
「……やってくれましたねツキヨ様よ?」
「なんの事か分からないわ」
後でフィールドに向かいながら説明すれば良いや、と適当にすっとぼけておいた。
「さてミィ。私の方で補佐を決めても構わないかしら?」
「ああ。問題ない」
「では……ミザリーとシンがミィに付きなさい。こちらは私が前衛も回復役もできるけど、そちらのミィは後衛。それに回復系のスキルは無いわ。代わりにこちらは【ヒール】を使える人を少し多めにもらう。シンは前衛として高い殲滅力を持つから、ミィと交代で支えられるでしょう。マルクスには私が前に出た時の後衛のサポートをしてもらう」
「ツキヨさん、分かりました」
「俺もそれでいい」
「……僕も、できる限りやるよ」
「ウォーレンは別でやってもらう事がある。移動しながら話すわ」
「了解だ、ツキヨ様」
ウォーレンさんの戦力としての実力は、グループにいる他の人よりは高く、他の補佐三人よりは低い。だから使いづらいのだが、はっきり言ってこの人に期待しているのは実力ではなくミィ派との連携時の私直属の繋ぎ役。実力は関係ない。
「私からは終わりよ。後はミィ頼むわ」
「分かった……ではグループ分けの後、早速レベリングに行くぞ!」
―――
「それでツキヨ様。何で俺なんだ?」
最近では目的地だけ指定して、道中もそれなりにモンスターを倒しながら向かう。そのためツキヨやミィ、そして今回から補佐の四人は後ろから支持を出していく形になる。
「はっきり言うとあなたは、他の三人に比べて弱い。それはいいわね?」
「ま、悔しいですがその通りですねぇ。だが俺が聞いてんのはそれじゃねぇ。なんで他の中立じゃなくミィ様派の俺を指名したんだってことだ」
「
それで、ウォーレンは理解したらしい。第一、一昨日の結成式でも似たような事をしたのだ。それを今後もやれと言うっているだけだ。
「なるほど。最も確執があったが故に、誰よりもツキヨ様とミィ様派との繋ぎ役ができるってーわけですかい」
元々はツキヨとしてもそれが目的だった。しかし、今日になってウォーレンにした命令を思い返し、いっそ完全に巻き込んでしまえ!とのことで少し補足を加える。
「補足すると、あなたは『幹部候補』であり、私とともに各派の調整役をしてもらう。私は中立とツキヨ派、あなたはミィ派。派閥による対立が起こらないよう、裏で【炎帝ノ国】をコントロールしましょう?」
前を歩くメンバーに聞こえないようにと小声ながら、世界を裏で牛耳りましょう?みたいな黒い笑みを浮かべたツキヨ。
ウォーレンの『幹部候補』としての役回りは、ツキヨの片棒を担がされたのだ。
「ギルドシステムが実装した時、ウォーレンさんには私直属になってもらいます。お覚悟を」
「お覚悟って……ってか、さっきは敬称は付けてなかったはずでは?」
「あなたと同じよ。表と裏で使い分ける……ただそれだけ」
他意はないわ。と冷たく返すツキヨに、ウォーレンは、少しは自分のことを認めているのかと目を見開いた。
「へぃへぃ。アンタからの命令もありますしね。きっちり働かせていただきますよ。それに……現実じゃあり得無いような役回り、俺なりに楽しませてもらうぜ」
「それで良いわ。ゲームなのだから、楽しまなくては損というものよ」
ちなみに、後ろでコソコソと邪悪に笑う二人を見て、グループのメンバーは不思議に思っていたとかいなかったとか。
「それでツキヨ様。ずっと東に歩いてますが、どこに向かってるんで?」
「そろそろ見えてくるわ………ふむ、丁度一パーティが死に戻りしたわね」
東の森を迂回して抜け、やってきた荒野。この辺はモンスターのレベルは低く経験値も少ないため敬遠されがちなのだが、生産職プレイヤーからは高い耐性系を持つモンスターが多く、いい素材が取れると人気がある。
「さて皆。今日はバンダナを作ってくれた生産職からの依頼できたわ」
ツキヨは前に出て、メンバーがとても嫌な予感のする場所をバックに話す。
バンダナを最優先で作ってもらう代わりに提示された、素材アイテムの採取依頼。
「ちなみに依頼は『銀色アルマジロの甲殻200個』。一時間ほど耐久すれば手に入るから、精々頑張りなさい」
『む……無限湧きじゃねーかぁぁああ!?!?』
そう。
かの有名な地獄の無限湧きアルマジロである。
荒野に、20人を超える絶叫が轟いた。
―――
「鬼か!?サブリーダーは鬼か!?」
「鬼だろだって『白銀の戦凍鬼』だぞ!?」
「はいそこ聞こえたわよ。五匹追加」
「「ぎゃー!?」」
「全員落ち着け!落ち着いて前衛はアルマジロの動きを止めろ!後衛がとどめを刺せ!アルマジロは武器系への耐性は高いが、魔法耐性は持ってないぞ!」
最初に出てくる20体は、彼らでも対処できた。ツキヨから「五分経過で追加されるわよー」という声が掛かり、急いで討伐した。五分後、30体も頑張った。自分たちよりも多いモンスター群に奮戦した。
しかし、40体でストップ。討伐スピードが五分を超過し、次の50体が追加で襲いかかる。
これが無限湧き。次第に処理できなくなる地獄のループ。そこで仕方なく指揮系統をウォーレンとマルクスに任せたツキヨが乱入し、常に正確に40体だけをメンバーの元へ飛ばし、残りは全てツキヨが受け持った。
「ツキヨ様がほぼ全て受け持ってる!お前らは確実に一体ずつ仕留めるんだ!」
「アルマジロは背中から落とせば身動きが取れなくなるぞ!前衛の俺たちはできる限りアルマジロをひっくり返すんだ!」
『おぉぉおおおお!!』
その横では、ツキヨが向かってくる全てのアルマジロに対して正確に【パリィ】を入れ、すかさずスキルなしで一撃だけ入れる。また背後から向かってきたアルマジロを紙一重で交わし続けることで【血塗レノ舞踏】と【剣ノ舞】を最大強化している。
最大強化したら【ウォーターブレイド】で水属性斬撃ダメージを追加してとにかく弾き、躱し、斬り刻んでいた。
「あ、ありえない……」
「後ろに目でも付いてんのかよ……」
「……あれは、人間やめてる。絶対やめてる」
「マルクスにウォーレン。聞こえてる。10体」
「「ふざけんなぁ!?」」
それから一時間。必死に頑張ったメンバーは、最後の方には五分で60体まで処理できるようになり、マルクスとウォーレンも自らが戦いながらも視野を広く、全体の指揮がある程度できるようになった。
「い、1ダメージも受けてねぇ……」
「『白銀の戦凍鬼』ヤバすぎんだろ……」
「最後なんて一人で80体受け持つとか……トッププレイヤーってこんなんばっかなのか……?」
たぶん……いや絶対違う。そうであってくれと全員が願った。ツキヨがおかしいだけだ、と。
「ふむふむ……よし、甲殻は308個。目標分達成したわね。お疲れ様。これで統一装備を作るための一歩が進んだわ」
『えっ……?』
今この鬼サブリーダー、なんて言った……?
統一装備ため…??そう言えばいずれ作るって言ってましたね?え?もしかして今回のって……
「お、俺達の統一装備……?」
「言ってなかったわね。依頼は本当よ。ただ、依頼から差し引いた108の甲殻は、【炎帝ノ国】の生産職メンバーに流してスキルレベルを育ててもらおうと思っている。それでスキルレベルが上がったら、統一装備の作成に移るわ」
「じゃ、じゃあ今回のこれは……」
鬼だ何だと喚いたが、自分たちがきちんとした統一装備を作りたいと、結成式で要望を出したから……?え?この人実はやっぱりいい人なの?
「そうそう気をつけなさい……そのまま休憩しててもいいけど……」
クルリと反転し、スタスタと歩き出すサブリーダー。え?どうしたの?と座り込んだ全メンバーが思った時。
もこもこもこもこ!と見覚えがありすぎる土の盛り上がり現象が起こった。
思わず、メンバー全員の顔色が真っ白になる。
「そこ、10分でまた初めから湧くわよ?」
その表情は、心底楽しそうな氷の冷笑だった。
『あ、悪魔がぁぁぁぁああああっっ!!』
今回出たメンバーみたいに、態度が気安い人もそれなりにいます。
もちろんツキヨを苦手な人も居るけど、今回ツキヨに弄られた人たちみたいなのもいっぱい居ますよって話でした。
前にツキヨが一人でやった時は甲殻200ちょっとしか落ちなかった感じになってるんですが、一時間耐久でアルマジロ1000体近く出てるって後から気付いてドロップ率低いと思い直しました。
ので、今回はちょっと増量。
さっさと第一回イベントやって、サリーも出したい……いや、まだメイプルも出てないんだけどさ……。
演技は格好いいのに素が可愛すぎるミィ。
普段キリッとしてるのに幽霊に対してだけはガクブルするサリー。
……ギャップにやられてるな、私