PS極振りが友達と最強ギルドを作りたいと思います。 作:五月時雨
閑話でございます。
これの前に22話が投稿されているので、読んでない方はそちらを。
一応22話と繋がってはいますが、書く必要もなく、今後に全く影響もないストーリーです。
昨日日間ランキングに載ったことと、UAが一気に伸びたことのお礼に急遽構成し、直ぐに文章に起こしました。
誤字等のセルフチェックは毎回してますが、投稿直前にやった文章の再構成箇所や、今回の様な急な字起こしだと誤字が出てしまいがちなのでご了承下さい。一応チェックはしたけど。
明日もきちんと0時に投稿します。
21:50 一層の街 噴水広場
そこには、赤い鎧に大盾を持つ男性プレイヤーと、純白の戦乙女がいた。
「律儀に来るとは思わなかったぜ」
「あら?私、そんな怖い人に見える?」
「見える」
「即答なのね……」
大盾プレイヤーは、名をクロム。
NWO発売当初から大盾でプレイする古参で、トッププレイヤーの一角を成す。
純白の戦乙女は、名をツキヨ。
つい最近、彗星の如く名を
これまで接点など無かったこの二人が噴水広場の前で親しげに話す様は、多くのプレイヤーの注目を集めていた。
「偶然、時間が空いていたのよ。【炎帝ノ国】の方は21時に終わって暇を持て余していたから、本当に気紛れ」
「サブリーダーだっけか?よくやるな」
「流れでなっただけよ。ミィ……【炎帝】が現実でも友人だから、放っておけないだけ」
終始ツンケンとした態度なものの、
それがイズの店で感じた格好良さ、凛々しさとはまた違うツキヨの表情だと感じ取り――つい、クロムは口を滑らせた。
「噂じゃ永久凍土より冷たいだとか、極寒の地より這い出た鬼だとか言われてたが、ツキヨって案外優しいのか……?」
「……その噂を広めた者を教えなさい」
「い、一部の掲示板で囁かれてたんだ……さすがに誹謗中傷が酷いって事で運営が直ぐに削除してたから、出処は分からねぇ」
「そう……悪かったわね」
目が、据わっていた。
この時のことを思い返す際、クロムは毎回同じ言葉を口にする。
『あれは人殺しも厭わねぇヤツの目だった……』
と。
―――
掲示板でクロムが言った時間通りに掲示板のプレイヤーらしき人が揃った。
「うお、まじで白銀じゃねーか!なりすましの線も考えてたんだが……」
一人は、背中に巨大な大剣を背負う男。
「本当にクロムに白銀かよ……ナニコレ?俺みたいな中堅プレイヤーがこんなとこ居ていいの?」
一人は、ある程度装備が揃っているものの、まだ装備の統一感があまり無い槍使い。
「トッププレイヤー二人が注目する大盾の初心者……これはイベントで探さなければ」
一人は闇夜に溶けるような、漆黒のローブを纏った魔法使い。
そして、何故か最後は
「おぉ!今この時まで疑っていましたが、本当にツキヨ様でしたとは!」
【炎帝ノ国】ツキヨ派が誇る前衛弓使いと言う変態プレイヤー、キースだった。
「……なぜ貴方がここに居るのよ」
「ツキヨ様がいる場所こそが我々のいる所!……と言いたい所ですが、私は本当に最初からあの掲示板の住人でございます。掲示板ではツキヨ様に数々のご無礼。誠に申し訳なく……」
キースがそう言ったことで、ツキヨはむしろ納得した部分があった。
「はぁ……なるほどね。どうして私がプレイヤーネームを明かした瞬間に集まれたのかと思えば」
「勝手ながら、三人を呼ばせていただきました」
「本当に勝手ね……で、罰は終えたのかしら?」
厳しい胡乱気な視線を寄越せば、キースは視線を横に逸らし、どこか言い訳じみた返答をする。
「……流石に我ら如きがツキヨ様に比肩するは不可能であり、ツキヨ様の絶対的神聖性を削ぐ行為かと愚考し……」
「正直に言いなさい」
「はぃ……一時間ソロ耐久は不可能だったため、四人で協力しました」
「それで構わないわ。ソロ耐久は元より不可能と思っていたから。……元々私の方も衝動的に言ってしまった部分もあるのだし」
後半はキースには聞こえず、特に問い詰められることも無かった。
そして、こんな二人の空気に置いていかれたプレイヤーが四人。
「あー……ツキヨ?そいつが名無しの弓使いって事で良いんだよな?」
「悪かったわね。えぇ、そうよ」
「はじめまして皆々様。私はキース。ツキヨ様の忠実なる
「黙りなさい」
「―――畏まりました」
明らかにクロムを筆頭にドン引きしていたので、首元に【白翼の双刃】を突き付けて黙らせる。
そのくらいしないと暴走して訳のわからないことをしだす時があるのが、彼ら四人組の欠点だった。
「やべぇ…想像以上に白銀が女王様だった……」
「不覚にもちょっと良いなって思った自分がいる事に驚愕を隠せない」
「落ち着け。その先は闇しかないぞ」
「ツキヨ、やっぱお前怖えわ」
「おぉ槍使い殿!我らとともにツキヨ様を崇め奉り、誠心誠意お仕えする意思は―「死になさい」
コフッ……」
槍使いに迫ったキースに足払いをかけ、全力で引き倒し、上から踏みつけるツキヨ。
情けとか容赦とか優しさとかを一切感じさせない冷徹さをもって、キースの言葉を無かったことにする。
「この場に弓使いなんていない――いいわね?」
「「「「サ、サー!イエッサー!」」」」
「私を男にしないで」
「「「「イエス、マム!」」」」
―――
「さっきのは怖すぎたんだが……どっちが本当のお前なんだよ?」
「どっちもよ」
フレンド登録をするだけのために集まったので、夜も遅いため多くがログアウト。
しかし、ツキヨは『どうせ身体は休んでるようなもの』精神で徹夜レベリングをしてみようとそのまま残り、クロムは明日は休みとのことで徹夜でやり込むらしかった。
「何かの縁だし、一緒にレベル上げ行かないか?大盾の俺一人じゃダメージ力に欠けてな……代わりにツキヨの事も守るからよ」
ツキヨは徹夜でのプレイは初めてだ。多分、日付けを跨いだ後辺りから集中力が落ちてくる。
だから、クロムからの提案はありがたかった。
「助かるわ。一度、徹夜を経験してみたかったのだけれど、時間が過ぎるにつれて集中力が落ちるかもしれない。大盾のトッププレイヤーに守られるなら、心強いわね」
「そう言ってもらえるのは、素直に嬉しいな。
……じゃ、行くか」
「えぇ。大抵の場所では戦えるわよ」
「言うねぇ……なら、最前線なんてどうよ?」
「構わないけれど、夜のレベル上げは初めてだから、しばらく『慣らし』をさせてもらうわ」
「それくらいなら構わねぇよ。俺も、何もいきなり最前線に突っ込むって訳じゃないからな」
夜は昼間に比べて視界が悪く、モンスターの奇襲も多い。そのため、初めてのツキヨは夜の戦闘に慣れるために最初はやりやすいフィールドでやることを条件に、最前線に行くことを同意した。
「流石ァ。短期間でトッププレイヤーの一角になるだけはある、な!」
モンスターの突進を大盾で受け止め、流し、短刀で一撃を入れながら、クロムは感心したように叫ぶ。
「そちらこそ、その堅実な戦い方は一朝一夕で身につくものでは無いでしょう!?」
モンスターに遮られているため、二人の声は大きい。その声が余計にモンスターを集めていたりするのだが、ツキヨは余裕で全て捌き切る。
「【カバームーブ】【カバー】!
……てか、何だよそのクソ目立つオーラ」
「あら、ありがとう。
秘密よ……けど、【炎帝ノ国】に入ったら教えてあげるわ」
ツキヨが戦い続けるほど強くなる赤黒いオーラと青白いオーラ。対極の二色のオーラに目を奪われたクロムは、ツキヨの背後を狙ったモンスターが偶然目に付き、遮二無二にスキルで間に割り込んで受け止める。
お陰でツキヨのお礼というレアイベントが発生したが、それにかまけている余裕はない。
「モンスターには気付いていたけど助けてくれたお礼に、一つ見せてあげるわ」
「聞こえてんぞツキヨ。……ったく。その反応速度は異常だな、【炎斬】!」
「ふふっ、私の最高速はこんなものじゃないけどね。【水君】!」
ツキヨは両手に連動する大きな二つの水流の円刃を作り出すと、自分とクロムを中心に
それだけで、二人を囲むモンスターは次々に両断され、粒子へと変わる。
最前線で戦うトッププレイヤーの中でも、一撃でこれができるのは一握りだ。
「ちょ、なんだそりゃ!?そんな威力の、しかも操作できる魔法があるなら最初から使えよ!?」
「言ったでしょう?お礼だと。
第一回イベントが控えているのに、一時的に組んだだけのパーティメンバーに手の内を明かしたく無かったのよ」
「あ、あぁ……。確かにそうか。悪かったな」
ツキヨの言い分を聞くと、あっさりとクロムは引き下がった。
囲んでいたモンスターの大半が片付き、散発的に襲ってくる数体を確実に処理すれば良いため、少しだけ余裕ができる。
「元々、イズの双剣の慣らしのつもりだったのだけど……クロムがいてくれて助かったわ。かなり楽ができるもの」
「一撃も喰らわず、全部避けきって捌き切るような前衛は、守り甲斐がないがな」
「意識したつもりはないのだけど、私の戦闘スタイルは回避盾と言うもの。むしろ私は守る側だもの。守り甲斐がなくて当然よ」
「並の前衛を超える攻撃力で何言ってんだお前?どう考えても回避重視のダメージディーラーだろうが……え?マジで回避盾なのか?」
「マジもマジ、大マジよ。ミィの方が火力が高いもの。必然的に私が
「ありえねえー……お前より威力高いとか、流石【炎帝】って所か」
関わったのは短時間だが、二人の戦闘スタイルは不思議と噛み合った。
ツキヨはクロムの防御力に目を剥き、背後からの奇襲を気にかける必要がなく。クロムがいるために本気にならなくても、この最前線で余裕を持って戦えている。
クロムもツキヨがノックバック効果を持つ斬撃や魔法で動きを封じたモンスターを手早く対処する。また対処が遅れたモンスターには、ツキヨの速射性のある【鉄砲水】に助けられていた。
互いに互いをカバーし合い、『一人でもできるけど二人だからすごい楽』という状況を作り出していた。
方や全くダメージを受けない回避盾。
方や防御力がゲーム内で最高の大盾。
なかなか死なないことは継続戦闘能力の高さを示し、三時間ぶっ続けで戦っても余裕がある。
しかし、本当に余裕なのはツキヨだけだった。
「くそっ。もうちょいで手持ちのポーションが無くなるか……」
クロムはこの時、今までに無いくらい順調に戦えていた。ツキヨをバックアップし、ツキヨのバックアップを受けた絶妙なバランスの中、クロムは被ダメージを極限まで減らすことができ、ほぼ勢いでフィールドに出たのにも関わらず三時間も一度も死なずに戦い続けることができている。
だが、それもここまで。
手持ちのポーションは底をつきかけ、HP回復にも限界が見えた。
【バトルヒーリング】スキルがあったとしても、この最前線で受けるダメージに今の回復量では追いつけない。
「悪いツキヨ。そろそろ回復が限界だわ」
「え……?あぁ、そうか。ポーション」
「悪いな。俺も今日はマジで調子良かったし、できるならこのまま丸一晩戦い抜きたかったんだが……ダメージに回復量が追いつかねえ」
申し訳なかった。
ツキヨは今、イズから受け取った双剣で流れるような刺突を放っている。
見たことのないスキルと、目にも止まらないほど早いスキルではない連撃。
楽しそうに無邪気に笑い、先程の冷酷さが嘘のよう。これが戦場でなければ惚れてるところだ。
だが、ここまで。
ツキヨのモチベーションを下げてしまい申し訳ない。最後に足を引っ張ってしまい心苦しい。
しかし、ここまで。
そんな、クロムの心の声は。
「はぁ……仕方ないわね。
【聖水】――【聖命の水】!」
パシャン――という、自らにぶつけられた水球の弾ける音で消し去られた。
クロムは一瞬で全快まで回復し、更にしばらくの間HPが回復し続けるバフが付いたことに気付き、目を剥く。
「回復したでしょう?……続き、やるわよ」
「え……、は?いや、何が……」
「【聖水】。味方のサポートスキルだから、第一回イベントでは使い物にならないのよね」
それは暗に、何度でも回復してあげるからもっと一緒にやろう、ということで。
「クロムのサポートは助かる。だから、私もあなたの回復くらいはしてあげる。それの回復にクロムの【バトルヒーリング】があれば、十分足りるでしょう?」
本当に、十分過ぎるくらいに足りていた。
HPは回復し、一瞬呆けている間に受けたダメージも数秒で回復した。
バフが切れるまでの効果時間も五分はあり【バトルヒーリング】無しでも多少は戦えるほど。
思わず、クロムの口から笑いが溢れた。
「は……はははっ。くはははははははっ!!
まじか、まじかよ。こんなバフ掛けてもらったんじゃ、もう死ぬわけにはいかねえよなぁ!」
堅実なプレイングはそのままに。
だが、大胆に。
死を恐れず、大盾を構え、武器を振るう。
その姿に、ツキヨもまた笑みを浮かべた。
「そうよ。夜はこれから――楽しみましょう?」
「おうよ!
久々に思いっきり楽しませてもらうぜ!」
そうして一夜限りのパーティは徹夜で戦い続け
初めて授業を居眠りをした。
防振り9巻と一緒にコミック3巻とコミックアンソロジーを買いました。
アンソロジーって作画がいろんな人で物語も色々で好きなんですよね。
色んな人の色んな作品があって良いと思える。
その中でミィが出てた話を、今回みたいな閑話として拙作に合わせて書き起こしたいです。
あと原作の書き下ろし番外編とかも拙作に再構成してお送りしたいですね。
今回閑話を書くのだって、コミックアンソロジーを手に取ったから思いつきました。
ありがとー!