PS極振りが友達と最強ギルドを作りたいと思います。   作:五月時雨

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 お待たせしました!
 4月に入ってからの2回が挿入投稿になったので、ちゃんとした続きを投稿するのは、一週間以上開けてしまいました。
 地味に加筆及び修正箇所が多く、投稿がギリギリ(過ぎてる)に。誤字ありそう
 


PS特化と【最速】

 

 【超加速】を取得しに来たら別のスキルが取れそうで、どうしようか悩むツキヨは、そのまま五分ほど考え込んでいた。

 

 「【超加速】か【最速】か、かぁ……」

 

 超加速は、文字通り物凄い加速力を得るスキルだろう。だが、【最速】がどの程度『最速』足り得るのかが分からない。

 

 だが、全てのスキルを知っている運営をして、【最速】と銘打たれたスキル。ならば、相応の効果を発揮するのだろうと、ツキヨは【最速】クエストの選択画面でYESを選択した。

 

 すると、棚でずっと何かを探していた老人がツキヨに向き直る。

 

「すまんな。【魔力水】をこれだけ早く持ち帰りながら、近辺のモンスターを一掃できるだけの力を持つお主に、もう一つ頼みたいことがある。

 もし聞いてくれるなら、お礼にわしが持つ最強の力を教えよう。

 ……尤も、わしでも扱いきれず匙を投げた力じゃが……お主ならば、あるいは」

 

(なんか物凄い地雷臭がする……)

 

 最強のスキルは間違いなく【最速】だろう。

 しかし、この老人が扱いきれずに匙を投げたとかいう死にスキルでもある。

 ツキヨは頬が引き攣った。

 

「そ、そうですか……。なぜお爺さんが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は今は置いておきましょう」

「すまんな。【魔力水】をこれだけ早く持ち帰り、近辺のモンスターを一掃できるだけの力を持つお主に、もう一つ頼みたいことがある。

 もし聞いてくれるなら、お礼にわしが持つ最強の力を教えよう。

 ……尤も、わしでも扱いきれず匙を投げた力じゃが……お主ならば、あるいは」

「あぁ……これは答えてくれないんだ」

 

 さっきと同じ言葉をそのままリピートする老人に、きちんと頼みを受諾しないといけないと悟る。

 

「……分かりました。お爺さんの頼みならば、お受けしましょう」

「ありがとう。では、説明させてもらうぞ」

 

 家の奥から最初と同じ湯呑みを持った来て、ツキヨの前に置かれる。

 一口飲むと、ほぼスッカラカンになっていたMPが全回復した。

 

「その茶には、お主が持ってきた【魔力水】が使われておる。しかしそれとは別にもう一つ、別の水も使っているのじゃよ」

「体力と魔力のどちらも回復するようですね」

 

 ツキヨはあれだけの戦闘をしながら、ダメージを一切受けていないが、情報ならばそうだった。

 

「お主に頼むのはもう一つの水……【生命の泉】から【生命水】を持ってくることだ。

 【生命水】とは、一口飲めばたちどころに傷を癒やし、体力を回復させる効果を持つ水での。【魔力水】以上に採取が困難なのだ。

 あの泉には、泉の水を守る強大な怪物がいてな。昔、そやつに手傷を負わされ、わしは戦いから身を引いた」

 

 懐かしむように、老人は棚の端に置かれた短剣に目を向ける。

 

「【魔力水】を守るのは森のか弱い怪物たち。数こそ多いが、足さえ早ければ逃げ切れる。しかしあやつは必ず一度、退(しりぞ)けねばならん」

「一度は倒す必要がある、ということですか。昔と言っていましたが、戦いから身を引いた後【生命水】はどうやって確保していたんですか?」

「わしでもそう飲まんからな。極たまに来る来客のために、樽から少しずつ使っておったが……そろそろ底をつく」

 

 つまり、先ほどのガラス瓶のように少量ではなく、樽一つ分の【生命水】を持ってきてくれ、ということになる。

 だが、一つ問題がある。ツキヨは、【生命の泉】の場所を知らないのだ。当然街でも掲示板でも情報はなく、検証班によって検証されたという情報もない。

 

「その【生命の泉】とはどこにあるんですか?【魔力水】の話は街でも聞きましたが、【生命の泉】は聞いたことがありません」

「当然じゃな。あの場所は危険すぎるが故に常にわしが秘匿し、()()()()()()()()()()()()()()()()()

「つまり……【生命の泉】はすぐ近くにある、と?」

「わしの頼みを受けてくれるならば、すぐにでも案内しよう」

 

 老人は鷹揚に頷き、ツキヨの返事を待つような視線を向ける。

 ツキヨは湯呑みに残ったお茶を全て飲み干すと、覚悟を決めた。

 

「……良いでしょう。【生命水】を取ってくる。その頼み、確かに承ります。貴重な残り少ない【生命水】のお茶を、二度も振る舞ってくれたのですから、断る理由はありません」

「ありがとうな……では、入り口まで案内しよう。ついてきなさい」

 

 そう言って老人が向かう先は、扉の外ではなく()()()

 この場所に家を建てたことに意味があるとするならば、その行き先は自然と決まってくる。

 

「……もう嫌な予感がするんだけどぉ……」

 

 ツキヨは不肖不肖の体で老人について行くと、大きな樽が目に入った。その奥には、裏手口の扉が見える。

 

「この樽は特別製でな。中の液体を劣化させない力がある。これに【生命水】を汲んできてくれ」

「分かりました」

「しかし、こやつは()()()()()。一所に安置させておかねば、移動中の衝撃で一時間と経たず壊れてしまうだろう」

「……つまり、往復で一時間以内ですか。それも樽を動かした瞬間からスタートとは……」

 

 老人が奥に進み裏手口の扉を開けると、そこには冷たい岩肌と、その中央に人一人通れる程度の狭い入り口をした暗い洞窟があった。

 誰にも見えないように正面をこの家で、左右を壁で覆い隠し、空も屋根で見えない。

 ツキヨは完全にこの洞窟を隠すために、この家を建てたのだと悟った。

 

「うむ。【生命の泉】はこの裏手から見える洞窟の奥にある地底湖だ。なに、泉までは走れば10分とかからん。しかし急げ。

 あの怪物は早く、強く、速く、大きく、疾く、何より厄介だ。是が非でもお主を足止めにかかってくるだろう。

 倒すよりも動きを封じ、逃げに徹しろ。

 やつは大きいが故に洞窟からは出られんから、逃げ切れば諦める」

 

 半分も()()()ことを念押しするとは相当なのだろう。しかも厄介と言うからには、罠、あるいは撤退する相手に逃げ道を塞ぐ攻撃を持っているのだろうことを予想したツキヨは、場合によっては最強の手札を切ることにした。

 

「お主が樽を持った瞬間から、一分一秒を争う……準備はいいか?」

 

 【水爆】は今日はもう使えないため、ツキヨは左手を片方の【白翼の双刃】に。右手を樽に当て、すぐにでもインベントリに仕舞えるようにする。

 目を瞑り、深く……深く深呼吸をして、今日二回目の本気を維持できるよう努める。

 

「…………いつでも。必ず、【生命水】を持ち帰りましょう」

「では……頼むぞ」

「行きます!」

 

 その瞬間、ツキヨは樽をインベントリに突っ込み、洞窟の中に飛び込んだ。

 

 

―――

 

 

 洞窟は一本道で、洞窟に飛び込んでから迷うことなく全力疾走し続けて五分が経過した。

 洞窟に飛び込んだ時、入り口は横一メートル、縦二メートル程度しかなかったのだが。

 

「見るからに洞窟の空間が広がってる……」

 

 洞窟に突入して五百メートルほどは殆ど変化無かったが、そこから徐々に空間が広がり始め、今では横十メートル、縦五メートルはあるだろう。どんどん道が下っていることも鑑みれば、帰りは上り坂で大変そうである。

 

 そうして走り続けることしばし、モンスターが一体もおらず、だが洞窟の中は光源もなしに異様に明るい。青白い光が洞窟内を満たし、【血塗レノ舞踏】【剣ノ舞】を解除し忘れていたツキヨのオーラがやけに目立つ。

 

「そろそろ着くと思うんだけど……っ!」

 

 まだ着かないのか、ツキヨがそう愚痴りそうになった途端、地続きだと思っていた地面が唐突に消え、崖っぷちに踏みとどまる。

 

「あっぶな……って、あれは……。あれが、【生命の泉】……洞窟の明るさの正体か」

 

 明るすぎる空間だったため地面が無いことに一瞬気付くのが遅れたが、崖の真下を覗くと眩く青白い輝きを放つ泉が目に映った。

 ここまでかかった時間は八分。確かに十分とかからなかったが、樽を満たし、崖を登り、上り坂をモンスターから逃げつつ走り抜ける。

 残り五十二分で。

 

「言葉にするだけでハードモード……ま、やってやろうじゃん!」

 

 気合を入れ直し、崖から飛び降りる。身体能力に恵まれたこの身体(アバター)は、ダメージを受けずにひらりと静かに着地した。

 そして、周囲を警戒しながら泉に近付こうとすると、崖の端がなだらかな坂になっていることに気付いた。

 

「飛び降りちゃったけど、帰りはあそこの坂を上がれば大丈夫かな」

 

 言いつつ泉の畔に到着したツキヨは、インベントリから樽を取り出し、泉に投下。

 直後、樽の上に『4:59』という時間が現れ、カウントダウンが始まった。

 

「うわ……ガラス瓶みたいに一瞬じゃ溜まらないのね。……まぁ樽大きいし仕方な……っ!」

 

 悠長に考える時間は、残されていなかった。

 

 

 突如ツキヨの【気配察知】に反応があり、同時にツキヨの頭上から甲高い咆哮が響き渡る。

 

「うるっさ――っ!」

 

 現れたのは巨大な多頭蛇。体高五メートル以上はある全身が洞窟の壁と同じ岩石のような鱗を持つそいつが、猛スピードで突っ込んできた。

 

「【跳躍】【水君】!」

 

 ツキヨは横っ飛びで射線から外れると、両手に高圧水流の円刃を展開し、そのまま蛇の身体を斬り裂く。

 

「妙に蛇に縁があるよね、私ってさぁ!」

 

 初めてのボス戦は身体が骨だけの、水を纏う大蛇。次にミィと戦ったのは毒竜……広義で見れば蛇と同一視される存在だ。そして今回は九つの首を持つ、通称九頭大蛇(くずおろち)

 二層に上がるためのボス戦を除き、全て蛇と戦っている。

 九頭大蛇は【水君】の攻撃が効かないようで、再度咆哮。地面に大量の小魔法陣が出現し、岩の巨杭が次々に出現する(そそり立つ)

 

「……まぁ、私の我流剣技も蛇に肖ってるし、奇縁とでも思っておこうかなっと!」

 

 岩の杭は逃げ場なくツキヨを包囲するが、一つにつき数秒で砕けて消えるのを見たツキヨは、紙一重で躱しながら杭が砕けた場所を安全地帯として次々に飛び回る。

 自らの我流奥義【八岐大蛇】(やまたのおろち)よりも一つ首の多い九頭大蛇。そんな相手が泉を守る怪物。

 

「蛇は古来より日本じゃ水神の一種とされてるし、泉を守るのも間違いじゃあないね……というかこの攻撃、私じゃなきゃ避けきれないよ!?」

 

 そんなことを言っていれば、九頭大蛇が三度咆哮をあげ、空間そのものが悲鳴を上げる。

 

「っ、退路が……っ!」

 

 杭の出現が止む代わりに、今度は逃げ道が潰された。

 地響きを鳴らす方向を見れば、ツキヨがここに来た崖の上が岩壁に塞がれた。

 

「……なるほど、これがお爺さんが言ってた『一度は退けろ』って意味なんだね」

 

 倒せずとも、あの岩壁の能力が解けるように九頭大蛇をダウンさせないと、逃げることもままならない。ツキヨは泉に浸かる樽の時間を確認し、タイミングを図る。

 

「あと一分三十秒でダウン取れるかな?

 ……【飛翼刃】【ウィークネス】!」

 

 【白翼の双刃】を抜き放ち、五メートルほど伸長させ、弱点を探す。

 

「……やっぱ首の付け根かぁ。毒竜と同じだけど、他にも部位破壊狙えそうだね……」

 

 ツチノコのように大きく膨らんだ腹部。その後ろに伸びる細い尾の付け根に、首、目や口は勿論、地面に接しているため狙えないが腹側の岩鱗は柔らかいようで大きな弱点が見える。

 

「さぁ……行くよ?」

 

 

 ツキヨの声に合わせ、九頭大蛇もまた突進する。その速度はツキヨよりも遥かに速く、長い首でツキヨの逃げ場を塞ぎながら襲いかかる。

 

「単純……【跳躍】」

 

 ならば、とツキヨは一瞬で懐に潜り込み、九つの首の付け根を伸びた刀身で斬り払―――

 

 

「きゃぁっ!?」

 

 

 おうとした所で両手の剣に衝撃が走り、大きく吹き飛ばされる。

 なんとか体勢を立て直して着地したものの、先程よりも大きく距離が開いた。

 

 

「冗談きっつ……。()()()()()()()とか」

 

 九頭大蛇の大雑把な攻めはしっかりと見えていた。なのにあの一瞬、()()()()()()()()()()()()()()()

 そういうスキルか?いや、今は見えている。なら、一瞬だけのスキル?それとも――

 

「っ!くぅぅっ!!」

 

 次の瞬間、再び九頭大蛇が目の前から消失し、悪寒を頼りに双剣を盾代わりに辛うじて防ぐ。

 

(見えない……広く平坦な洞窟内で……移動時の地響きも独特の唸り声も、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!)

 

「くっ……ぅああああぁぁぁ!!」

 

 取れるのは防御のみ。【神速反射】を持っていながら、そのツキヨの動体視力さえ置き去りにする九頭大蛇の移動速度に混乱する。

 【神速反射】をフルに使い、【気配察知】と地響きの位置、唸り声が聞こえる角度から位置を逆算しても()()()()()()()()()()()()()圧倒的な速さ。

 

(まずい……一分半なんてとっくに過ぎてる……もう樽は満タン。ダメージこそ受けてないけど、どこかで【パーフェクションパリィ】を使わないと……でも、この速度の大蛇に正確に当てるのは無理……本当に見えない)

 

 

「っ………うぅぅぁぁ……【飛翼刃】!」

 

 今ツキヨにできるのは、双剣を最大まで伸ばし、全身を繭のように覆い隠して即席のシェルターにすることだけ。下手に隙間を作れば、そこが穴となり九頭大蛇に吹き飛ばされる。

 

()ってよ【白翼の双刃】……っ!」

 

 自分の周囲全体から地響きが鳴り、唸り声が無数に聞こえる。今も九つの首による攻撃を受け続け、直接の被害こそ無いものの耐久値はガンガン削れる。老人の家を出てから今で20分が経過した。防戦一方で何もできない。

 

(どうする……どうするどうするどうするどうする!考えろ考えろ考えろ考えろ!

 私の【神速反射】でも追いきれない速度のからくりは何?あの巨体がどうしてあんな速度を出すことができるの!?

 唸り声も地響きも聞こえるほど近くにいるのに、その敵を完全に見失うとかあり得る!?

 これだけ近いのに風切り音すら聞こえないなんて……聞、こえ……ない?)

 

 あれ……?と、ツキヨはふと我に返った。焦っていて冷静さを失っていたが、聞こえるのは九頭大蛇が巨体故に発生する振動と息遣いだけ。

 ()()()()()()()()()()()()

 ツキヨは目を閉じ、深く深くいらない情報を切り捨て、集中する。

 

(集中しろ……もっともっと深く。蛇の息遣い……()()。地響き……()()()()()()。もっと根本的な何かを……)

 

 目を開け、視認した一瞬を逃さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――音は、聞こえなかった。

 

 

「な、るほど、ねぇ……見えない訳だ」

 

 ツキヨは九頭大蛇の打撃を受け続け、観察し、聴き、ようやく理解した。大蛇が異常なまでの移動速度を発揮したからくりを。

 

(……蛇の移動には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という、0から100への急激なストップアンドゴー。どれだけ反射速度が優れていようが、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ならもうそこに、見える見えないは関係がない。動き出しを捉えられない時点で、速度は実際より数段早く見えてしまうのだから、対応なんて出来っこない。

 例え【神速反射】が異常な反射速度を備えていようとも、それは人としての機能がただ常人離れしているだけ。加速過程が無い以上、やっぱり置いていかれる。

 九頭大蛇の猛攻がやみ、距離が開いたところでシェルターを解除する。

 

「あっ―――」

 

 と同時に双剣が砕けた。

 蛇の猛攻を耐え凌ぎ、ツキヨにダメージ一つ与えない代わりにその刀身を代償にした。

 そして、次の瞬間にはもう一度復活する。

 より強く、より鋭く、より長く。

 

「あ、そっか。【破壊成長】……ありがとう」

 

 最長まで伸ばしていた刀身は今や倍に伸び、第一回イベントで発揮した長さにまで伸長する。

 時間は短い。集中し、見極めるのに時間をかけすぎたため、既に残り時間が二十五分しか残っていない。帰りの時間を考えれば、今からじっくりダウンを取って、壁を解除して、猛攻を凌いで――などできるはずも無い。

 ゆえに――。

 

 

「………ふぅ、やるか」

 

 

 ツキヨは切り札を切る。

 【飛翼刃】が強制的に解除され、元の長さに戻った右手に持つ【白翼の双刃】にうっすらと闇色の粒子が集まり、少しずつその色を濃くする。

 元から、残り時間が二十五分を切った時点で使う予定だった。どうやっても勝てない相手だからこそ、帰りの移動時間が倍必要なのを見越しての二十五分。

 

 

 

「九頭大蛇………認めるよ。この戦い、勝ったのはどう見てもそっちだ。私にはまだまだ、アナタの相手は早かったみたい。

 だけど………()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 左手の剣を納刀し、右手一本で構える。【殺刃】の予備動作は長い。

 スキルを起動してから三十秒間、他の全てのスキルが発動できなくなる。発動中のものは強制解除される為、今まで纏っていたオーラも消えた。

 できることと言えば、敵に接近するために走るか、回避行動だけ。途中で攻撃を当ててしまえば確率で即死できるが、結局一撃だけであり、可能性は低い。

 その三十秒で刀身は闇色に染まりきり、一際強く輝くのが完了の合図。

 それから一分間、一太刀だけ即死攻撃となる。それも、()()()()()()()()

 だが、九頭大蛇とツキヨの速度は隔絶し、当てることがそもそも困難。

 

 でも、と、ツキヨは小さく笑う。

 

「来なさい。この一刀で、終わりにしてあげる」

 

 当てる必要は無いのだ。

 十分に大蛇とは距離が開いている。

 ならば大蛇の方から()()()()()()()()()()

 

 残りは五秒。

 

 九頭大蛇が一際大きな方向を上げる。

 

 四秒

 

 首を後ろに大きくしならせ、突進のエネルギーを溜める。

 

 三秒

 

 長い尾がとぐろを巻き、エネルギーを最大まで高める。

 

 二秒

 

 全ての予備動作が終わる。

 

 一秒

 

 ツキヨの視界から九頭大蛇の姿が消失し、地響きだけがその存在を教える。

 

 ――――――零

 

「―――【殺刃】ッ!」

 

 

 瞬間、ツキヨは構えた剣を大きく振りかぶり―――まっすぐに()()()()()

 その刀身は闇色に染まり、殺刃の即死効果を十全に発揮できる。

 【殺刃】には他の攻撃スキルのようなモーションが存在しない。

 何故なら【殺刃】とは即死の一撃を放つことができるという説明文でありながら、その実()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だからだ。

 どちらかと言えば、ツキヨが好んで使う【ウォーターブレイド】に近い。

 そしてこの攻撃、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ツキヨは気付いていた。九頭大蛇が使う移動法が、0から100へのストップアンドゴーだと。それこそが()()だと。だがそれは同時に、()()()()()()()()()()()()()()ということに他ならないことを。

 

(動いてる間は常にトップギアなんだから。

 攻めてる時は無類の攻撃力を持ってるよ。私が知る限り最速だ。でも、だからこそ急激な状況変化、つまり―――奇襲に極めて脆い!)

 

 そして、これの対処は不可能。

 なぜなら、飛翔する剣の刀身には、【殺刃】が付与されているのだから。

 触れた瞬間に九頭大蛇は()()

 

 

 

 

 ―――九頭大蛇は大爆発とともに、その身を粒子へと変じさせた。

 

 

 

―――

 

 

 

 樽を回収したツキヨは、ステータスが半減し重く感じる身体をおして洞窟を抜けた。

 洞窟の先には老人が心配そうに待っていた。

 出発してから戻るまでにかかった時間は、58分。本当にギリギリだった。

 

「本当に助かったぞ。お主には感謝してもしきれんな」

「九頭大蛇は倒しました。無事にここまで【生命水】を持ってこれて良かった……」

「なんと……あの怪物を倒したのか!わしが長年討伐を諦めておった怪物を一人で……」

「あの加速を無くす移動能力の弱点を付ける攻撃があったからこそですが……まぁお爺さんの念願?が果たせて良かったです」

「お主は本当に信じられぬことをするな……お礼のはずだった【最速】すら霞むようだ」

 

 テーブルに設置してある椅子に座るツキヨの前に、老人が何かの巻物を置く。

 

「これがわしが渡せる最高の力じゃ。使えばスキル【最速】を覚えられる。遠慮はいらんぞ」

「ありがとうございます」

「なになに、私も扱いきれなかったスキルじゃて。しかしあの怪物を倒したお主ならば、きっと使いこなせよう」

 

 

 少年のような嬉しそうな笑みを浮かべた老人に、ツキヨも小さく笑いログハウスを後にする。

 新たな力を手に入れて。

 

 

―――――――――

 

【最速】

 スキル取得者が戦闘可能フィールドにいる間、あらゆる行動から加速を無くす。

 一分間、AGIを75%上昇させる。三十分後、再使用可。

 




 
 【魔力水】があるなら、【生命水】があってもいいじゃろ?と。
 ちなみに、ツキヨが使う【聖命の水】もこの水と同一だったり……的な裏設定はありません。
 九頭大蛇……ボスをどうするか、本当に悩みました。
 結果として、一輝くんに挑む諸星さんに。最後の決め手もパクり……参考にしました。
 しかも【飛翼刃】での防御は倉敷くんだし。

 【殺刃】、本当に面倒じゃろ?
 ツキヨの回避能力があれば大丈夫な気もしますけど、使用後のステータス半減が痛すぎて、早々ツキヨちゃんこのカード切らないからね。
 切るとしたら、銀翼レベルの相手にかな。それも、本当にどうしようも無くなった時だけ。
 『全てのスキルが使えなくなる』の範囲は、全てのアクティブスキルです。パッシブで発動してる【精密機械】だったり【属魔の極者】だったりは対象外です。
 アクティブとパッシブの双方を含むスキルは、アクティブ効果のみ使えなくなります。

 九頭大蛇、発動までの30秒何をしてたのか。
 そもそもツキヨちゃん、ダメージと言えるダメージをほぼ与えてないから、初期の攻撃パターンである岩杭を乱立させてました。
 そのくらいなら普通に躱せるから、描写は大胆カット。つまんないからね。

 今回でようやく第一巻の終わりが見えた感じです。36話でようやくってヤバイよね。
 文字数、既に20万字超えてんだぜ。
 因みに、もう2〜3話くらいあります。第二回イベント開始直前までが1巻なので、もう少し1巻は続くんじゃよ。
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