PS極振りが友達と最強ギルドを作りたいと思います。 作:五月時雨
時間軸は前話から一週間後。さて、特訓の成果はいかに。
月夜が【最速】の感覚に慣れるためにNWOで常にフィールドに出るようになってから一週間。
既に第二回イベントまで数日となった今日。未だ、月夜は【最速】を掌握しきれていなかった。
「何か足りないんだよねー……」
「足りないって?」
「未完成のパズル……は違うなぁ。部品は全部揃ってるのに、組み合わせが違って噛み合わない……って感じ?」
ここ一週間、月夜は学校でも家でもNWOでも、常に【最速】を掌握することに意識を割いてきた。だが、やはりまだ使いこなせない。扱いきれない。
そんな月夜の悩みを、美依は黙って聞く。
「何とか三十分から一時間程度ならズレずに戦闘できるくらいには慣れたけど……」
「まだ『使われてる』って感じが抜けない?」
「うん……まぁ強力なシステムアシストを受けてるんだから、動かされてるって感じるのは無理ないんだけど。やっぱり違和感が凄いんだよね」
美依には既にスキルの詳細や問題点を含め全て話していて、【炎帝ノ国】から一時離脱した理由も説明した。
あれからウォーレンが偶に
「まだ足りないんだよね……。
複雑な構造を持つ人間の筋肉を瞬間的な全力可動を持っていくために必要な、元来人に備わってる信号とは全く別の、より短く情報密度の高い『戦闘用の信号』を作らないと」
「えぇと……ごめん。何言ってるの?」
「あっ、ごめんごめん。私としても漠然としてて感覚的な事なんだし、美依に言っても分からないのは当然だよね」
本来の情報密度では到底足りないが、それを補っているのがシステムアシストなのだ。ならば、大本の情報密度を高めれば、システムアシスト無しにスキル効果を発揮できる上、それによる支障も解消されるはず……と月夜は考えているのだが、そんな人体の神秘にあくまでゲームで手を伸ばして良いものか。
「人のあらゆる動作は、脳から送られる信号によって処理され、実行に移されてる。VR世界なら、その信号をハードが読み取ることで
「うんうん」
「その信号の処理や伝達速度なんかが、反射速度にも関わるんだけど、それは今は置いておくね」
「月夜の物凄い反射速度とは別系統ってこと?」
「そ。【最速】に必要なのは密度……一度に送れる情報量が普通の動きをする為のものだと【最速】は使いこなせないんだ。《神速反射》の恩恵……と言えるかは分かんないけど、伝達速度は申し分ない。後は密度。高密度情報を送れる伝達回路を構築しないと……」
今の
「で、でも……そんなことできるの?
要は頭の中に自分の意思で新しい情報伝達神経を作るって事でしょ?」
「全く新しいものを作るというより、今あるモノを作り変える……アップデートするって言った方が正確だけどね……手応えはあるんだよ。
最近は違和感が減ってきたし、毎日NWO内で走って、戦って、齟齬が無くなってきてるから」
それでも、まだ足りないと月夜は言う。
少しずつ信号の伝達が良くなっているのは実感している。かなり身体も動くようになった。
でも……。
「でも、それじゃまだ
ゲームなのに、精密作業に没頭した後のような疲れだけが残る。楽しくない。
本音はそれだけだった。
「だから掌握して意地でも使いこなす。あんな死にスキル作った運営を驚かせる。
あーもう!あんな人の常識を超えたスキル考えたのどんな
「……それを紛いなりにも使える月夜も、私は大概だと思うよ」
その上で完璧に使いこなしたら、もうそれは単なるプレイヤースキルなんてレベルを大きく逸脱した技術だ。
そんな存在は―――
――正真正銘の
―――
月夜は朝から美依に愚痴に付き合ってもらったが、そろそろ【最速】を使いこなせないと本格的に不味いと思っていた。ウォーレンに指定した期限は迫ってるし、【廃棄】は運営に負けた気がする、と。
何よりもうすぐで掴めそうなのだ。最近はログインしても走るか戦闘の中で順応させるかしかしてない分没頭できた。ずっと本気モードだから六時間でログアウトだけど。
ボタンを掛け違えてるような『しこり』。あと何か一つきっかけがあれば使えそうな【最速】の原理。きっとそれが掴めれば、月夜は
美依の手前、新しい信号を作るしかないと行ったけど、毎日一日六時間ぶっ続けで走り続けたから、脳の信号はほぼ出来上がってると思うから。
「……くよ?」
その信号のお陰で少しはズレずに戦えるようになった。だが、それでも何かが足りないのか、システムアシストが先んじて
「ね……ってば!……つ…よ……!」
システムに頼らないために信号を少しずつ構築したのに、それより強くシステムが反映されるからどうしても齟齬が生まれる。
なら一体どうしたら……
そう頭の中がグルグルしていると、
「ねぇ、月夜ってば!」
「あう!……美依?」
考え込んでたら美依に頭を叩かれた。と言っても、ポコンッて感じの優しいものだが。
「次、私と月夜の番だよ?早く位置について」
「そう、だったね。ごめん、ぼーっとしてた」
(あ、そっか今は体育の授業中。先生がやることないからって偶にやる100メートル走。正直やる気は全体的に低い。スキルのこと考える時間じゃない
考え込んでたけど、いつの間にか美依と私が走る番になってたんだ)
「全く……考え込むのは良いけど、
そう美依に言われ、刹那の中で月夜の脳裏に一つの記憶が浮かび上がった。
(そういえば、ウォーレンさんにも全く同じ事を言われたっけ)
月夜はここ最近、毎日走ってたから忘れてた。
目の前には平坦な道がひらかれ、近くには見知った人が自分を見ている。少し離れたところには、何人もの人が月夜を見たりそれぞれ話したりと思い思いにしている。
(あの時は不安、焦りがあった。それに今も種類は違うけど、似たような思いがある)
考えると、風景が何もかも違うのに、その時の光景が鮮明に思い浮かぶ。
あの時、焦りの中で唯一できたこと――
(そう……体の動きを、感じたんだ)
自分の体がどのようにアシストされ、どう動いたのか。理屈を九頭大蛇で看破したからこそ、自分の体に働く力に注視できた。
0から100への急激なストップ&ゴーにより、踵を上げた瞬間から最高速へ。振る腕は刹那の中で振り切られた。それを、
それからは、体感したものに沿う伝達信号を作ることに注力した。
使いこなせる確証なんてない。
でも、九頭大蛇と対戦して、その弱点を見切ってなお、それが最強最高で最速に至っていたから、それを使いたいと思った。
VR世界とは勝手が違う。
でも……それでもせめて――
「美依が見ててくれるなら、それに恥じない私でいようかな」
「月夜……?」
そう思い、できるかどうかも分からないが、あの時と同じスタートの姿勢を取る。
頭の中ではシステムによって動かされた理想の動きを、その感触をなぞりながら。。
その動きはたしか―――
「こう」
瞬間。
身体が羽のように軽くなり、
スタートの合図と同時に風のように早く速く疾く走り抜けるや、
美依の、クラスメイトの、教員の動体視力を軒並み置き去りにした。
誰もが声を上げられないまま、月夜がものの十数秒で100メートルを駆け抜ける。
見る者全ての思考すら置き去りにされ、タイムは測られなかったが。
「え…………」
月夜はその全てが自分の手によるものであることを理解するのに、決して短くない時間を要し、
「『な、なにそれぇぇぇえええええええ!?!?⁉』」
美依の声が、周りにも負けないほど響き渡ったのだけが、耳に届いた。
「うっ、そぉ………」
美依は、目の前で起きた現象に目を白黒した。
やはり、見間違いではなかったらしい。
(いきなり月夜が消えて、気が付いたら月夜がゴールしてた……)
あまりに瞬間的だったことで意識が持ってかれ、美依は理解できなかった。
(スタートの合図が聞こえたのは良い。けど、その瞬間から、月夜の体がブレた)
《神速反射》にここまでの力はない。せいぜい出だしの不意を点かれる程度で、姿を消すほどの効果はない。
(なに、今の?今までの月夜の動きとも全然違う!本当に何も見えなかった……!)
錯乱する美依は、訳がわからない中ではあったが100メートルを完走し、その時聞こえた――
「あぁ……そっか。ようやくわかった……」
ぽつりと呟かれた、その言葉が。
「つ、くよ……?今のは――なに?」
何を理解したのか。その答えは、なんとなくわかる。この一週間、
問う美依に対し、月夜は――。
「
月夜が述べているのは当然、ここ数日の悩みについてだった。
弱くなった。使いこなせない。噛み合わない。
美依にだけ溢した、己の悩み全て。
ようやく、月夜の中で全てが噛み合い、うまく行った。だから――。
「詳しくはまた後で。でも……これでようやく本当の意味で……
確信を持って出た月夜の言葉に、美依はこの一週間が無駄では無かったことを理解した。
因みに、月夜のタイムは取り直しになった。
―――
ようやく、全部が噛み合った。いや、正確には、
足りない何か。噛み合わない歯車。それを埋めるのは、私の意識の問題だった。
私は、生まれた頃からやって来た『普通の動作』を無意識の内になぞろうとしていた。
そして、システムアシスト無しであの動きは出来ないと思い込んでいた。
それこそが、完成しなかった原因。
これまで何度も、何時間も使用してきた加速を廃した動きは、確かに私の身体に染み付いていた。けれど、
たとえ『戦闘用の信号』に作り変えたとしても、脳が勝手にアシストを要求していた。
だから、無意識の内に通常の動きをトレースしようとしていた。
これまでの一週間は全く無駄じゃなかった。
私は……私の身体は、
けど、それもここまで。
高速で動こうとする
私ならできると。不可能じゃないと。
作り変えられた脳の伝達信号が正確には噛み合い、システムに動かされた『理想』の通りに動く。
なら、もうシステムアシストが働いていようと問題ない。システムアシストと私の伝達信号は今を以って、
だから、もう何も問題ない。
作り変えた伝達信号と噛み合った身体。
今ならスキル無しに加速を廃絶したロケットスタートも可能だ。
まぁゲーム内では
その点だけは気をつけよう。
美依にも説明しなければならない。何がどうしてできたかなんて、流石に美依の理解を超えているような気がしないでもないが、それが事実だから仕方ない。
けど、本当に良かった。後はゲーム内との簡単な擦り合わせで済む。
使いこなせるかどうかなんて分からなかったけど、ウォーレンさんに頼んで時間を作って良かった。なんかもう人としての限界を突破した気がしないでも無いけど、ひとまず。
「―――【最速】、習得完了だね」
―――
意気揚々とログインしたツキヨは、早速フィールドに出て現実で行った時と齟齬がないか確認することにした。
結果――。
「うん。問題なし。システムアシストも働いて入るけど、それよりも私の動作の方が優先されてるみたいだね」
全く問題なかった。
予想通り【最速】に働くシステムアシストは、伝達信号の不足分を補い、体を動かす事だったようで、
「気持ち一つ。認識一つでこうも掌握できるとは……まぁこれも、一週間丸々走り続けたからこそなんだけど」
そうでなければ、イベントまでに掌握など到底不可能だっただろう。そういう意味でウォーレンやそのサポートにあたったミザリー達に感謝しなければならない。
とはいえ、流石のツキヨもスキルを完全に使いこなすために、
作り変えたとはいえ、今のツキヨは二つの伝達信号を持っていると言える。
生まれつき持っていたごく普通の伝達信号。
作り変えた、高密度情報伝達が可能な戦闘用の信号。日常生活であれば前者で十分だ。普段から《神速反射》は使えるのだから、それだけでも脅威だろう。
しかし、フィールドで戦う時は後者が必須になる。前者では無駄に神経をすり減らすがために。
「ま、それは追々で良いかな。とりあえずミィに説明ないとだし、街に戻ろー」
元より街から比較的近いところで確認をしていたので、ツキヨは持ち前のAGIですぐに戻った。
街に戻り、二層でも見つけた路地に入った隠れ喫茶。そこがミィとの待ち合わせ場所なのだが、向かう途中、ツキヨは序でとばかりに丁度良い人を見つけた。
その人はいま運よく、他のプレイヤーが周りにいない。
「これは………うん、驚かそう」
三十メートルほど離れた場所に、白を基調とした赤刺繍のあるアーマーコートを着た槍使いを見つけ、メッセージで自分の存在を気付かせる。
周囲をキョロキョロと見回し、離れた場所にいるツキヨに目を止めると、ツキヨに向かって軽い足取りで近づいてきた。
だが、それ以上はツキヨが許さない。何の為にメッセージで事前に気付かせたと思っている。
瞬間、ツキヨは『戦闘用の信号』に意識を入れ替え、踵を上げた瞬間から最高出力を得る、加速の工程を廃絶したロケットスタートで槍使い――ウォーレンに接近した。
「消え――っ!?」
「たわけじゃないわよ?」
急激なストップ&ゴーにより、ウォーレンの動体視力が追いつかなかっただけだ。
そして瞬く間にウォーレンとの距離を詰め、正面に立った……否。ウォーレンからすればいつの間にか立っていたツキヨが不敵に笑い、消えたわけじゃないと続きを紡いだ。
それだけで、ウォーレンは全てを理解した。
「は……はははっ。おめでとう、と言っておくぜ。完全に使いこなせたみたいだな?」
「えぇ。これもウォーレンさんのお陰よ」
「俺は何もしちゃいねぇよ」
ウォーレンからすれば、確かにそうだろう。だが、一週間前のウォーレンの言葉と、ミィの言葉が偶然にも重なった結果、そして何より
「現実じゃミィに先に見せてしまったけれど、ゲーム内で見せたのはウォーレンさんが最初よ。一番助けてもらった貴方には、一番に見せるべきと思った」
「いや……なんかとんでもねえ事言わなかったか、おい。はぁ?アンタ今の動き現実でもできるのか?」
「ふふっ、ゲーム内のスキルから着想を得た、言わば後天的プレイヤースキル。一週間前は異様に強かったシステムアシストも、今は他のスキルと変わらないわ」
スキル効果を現実でも再現する。否。自分のものにするとかあり得るのだろうか?ウォーレンの頭の中は混乱の嵐が吹き荒れる。
だが、それと同時に、目の前の戦乙女はそれすらも可能にしてしまうのだろうとどこか納得もしてしまった。
「……馬鹿みてぇな反射速度っつー先天的プレイヤースキルに加え、今度はゲームスキルをプレイヤースキルとして使いこなすとは……運営も想定外だと思うぞ?」
「いや、使いこなすにはこうでもしないと無理だったのよ?想定内でしょう?」
「ぜってーちげえ」
事実、ウォーレンの言うとおりだった。
――――――
今日もいつも通りの作業をしている運営陣は、ふと、ツキヨの現状が気になった。
「そう言えばツキヨはどうなったんだ?」
「ん?今日も走ってるんじゃないか?」
「もう【最速】は使いこなしてるのに、なんでまだ走ってるんだろうな?」
運営の言う『使いこなす』と、ツキヨの考える『使いこなす』には認識に違いがあった。
運営陣が想定するのは【最速】の動きに対応し、ある程度の戦闘行為も可能になること。
つまり、ツキヨが考える『スキルに使われている』状態を指していた。確かにこの状態のツキヨは三十分以上ズレもなく今までと同じクオリティを今まで以上の戦闘力をもって実現していたのだ。
一撃も弱点から外さず、一撃も喰らわず、紙一重で躱し、逸らし、弾き、反撃する。超高次元の戦闘を加速を失った世界で実現させていた。
これには運営も舌を巻いたものだ。
『やべえ一週間も経たずに使いこなしてんだけど!?』
『ツキヨちゃんどんだけだよ!?』
『あぁ……祈りは通じなかった……』
などなど。ものの数分で森のモンスターを全滅させた時は、場が阿鼻叫喚の渦に包まれたものだ。
しかしその後、また変わらず走り出すツキヨに疑問が生まれた。
『なんでこの子、使いこなしてるのにまだ走ってんの?』と。
だから気になったのだ。使いこなしてるのにまだ変わらず走り続けるツキヨが、今日何をしているのか。
それから間もなく、一人のスタッフが声を上げた。
「あ、ツキヨ、ログインしてますね。見てみますか?」
「……おう。どうせ変らないだろうが、今はやることも少ないしな。暇つぶしに観察しよう」
「では、映像出します」
そうして現れたのは、街の中で比較的奥まった場所に佇むツキヨ。
「お、走ってないぞ!」
「やっぱあれだけ使いこなしてるんだからな。流石にもうやらないだろ」
「もう十分すぎるくらい強……」
瞬間。
ツキヨに注視していた運営陣が全員、ツキヨを見失った。
『は……?』
次の瞬間には、見失ったツキヨが【炎帝ノ国】のプレイヤーの目の前に立っており、仲良く会話しているではないか。
これを見た運営陣は全員が顔色を悪くし、汗ダラダラに上擦った声を上げた。
「ま、まて……。いや、待て待て……なぁ、確か【最速】ってフィールドでしか働かないよな?」
「それ以前にスキルは街の中じゃ【決闘】以外発動できませんよ」
「だよな………」
『ははは………』
なんだ何かの見間違いかぁ……紛らわしいなぁ……と全員がから笑いを上げるが次第にそれは小さくなり。
『ちょ、ちょっと待てぇぇぇええええええ!?!?⁉』
次の瞬間、絶叫が轟いた。
「何だこれ!?イヤほんとお前何なんだよ!」
「何が起こったかわかんねぇ!映像解析しろ!ハリーハリー!」
「今の動きどう見たって【最速】の加速を廃した移動だよな!?どうなってんの!?」
「俺らの想像を突き破ってくるのはメイプルだけにしろよ!」
「か、解析出ました!やはり【最速】と同様のものです!」
『頭おかしいだろぉぉぉぉおおおおお⁉⁉⁉』
「なんでよりにもよって魔法並みに現実じゃ不可能なモノを自力で使えるようになってんの!?実は再現可能だったの!?」
「一応再現は可能だ!全身の連動する筋肉を瞬間的に一斉可動させるだけの信号量を送ればな!」
「それには伝達信号量が絶対的に足りねぇだろうが!まさか自前で作り変えたのか!?
「自力で再現したってことはもうこれプレイヤースキルなんだよな!?何それ人体すげぇ!」
「落ち着け混乱しておかしくなってるぞ!」
「これがプレイヤースキルにされたら【最速】の意義が半分なくなってるだろーが!ツキヨおまっ、なんてことしてんの!?」
「メイプルとは違う方向に突き抜けんなよ!メイプルはまだ手を打てるよ!?システムの内側で設定以上の結果を出しちゃうだけだからさぁ!」
「ツキヨお前ありえないことしてるからな!!俺たちにも不可侵な部分で突き抜けたらもうどうしようもないんだけど!?」
「もし仮にツキヨが【最速】を【廃棄】しても、もうあくまでプレイヤースキルになっちまってるから手出しできねぇんだけど!NWO最強の剣士(短時間)がマジモンの最強剣士になってるんだけど!」
……なんかもう、酷かった。
現場は阿鼻叫喚の地獄絵図となっている。
プレイヤースキルは、運営にも手出しできない、プレイヤー個人個人が持つ才能に依る所が大きい。それを実現させているのが脳だからだ。
脳が『これはできる』と知っているからこそ、それがゲーム内のアバターでも可能にしているのであり、ツキヨの脳が『加速を廃絶したストップ&ゴーならできますけどー?』と判断してしまった今、もはや手出しが不可能な場所に飛んでいってしまった。
修正なんて、不可能。
【最速】のスキル効果を変えてもツキヨは自力でできる。もはやツキヨが
それから間もなく。
衝撃こそ抜けていないまでも、少しは平静を取り戻した運営陣は、総じて肩を落とした。
「……【最速】どうします?」
「……一応、このままにしとけ。ツキヨについてはもう手出しできん。自力でスキル再現とか頭のネジ五、六本吹き飛んでるんじゃないか?」
「人として超えちゃいけない一線は軽く超えてるな」
「プレイヤースキル極振りってこんな理不尽な存在だったっけ……?」
「【最速】の剣閃って確かヤバイ追加効果持ってなかったか……?」
「あぁ……疾すぎて、鋭すぎるが故に、
「もう最初からヤバかったのがこれ以上ヤバくなっても、何とも思わなくなってきたな……」
「確かに……その場に斬撃を残すくらい、ツキヨなら現実で自力で再現しかねないな」
「と言うか
『あっ………』
「あれだけ明確に出ちゃってる異常性だ……多分もう不可逆化してる。もし悪影響でも出たら……」
「そう、だよ……特に【最速】は、
さっき以上にダラダラと。
全員が顔を真っ白にして。
ほぼ全員が気絶した。
まぁ……ね。拙作でやばいものは、スキルでもプレイヤースキルでもなく。
赤羽月夜という存在そのものが、何よりもやばい『人の枠を超えたナニか』なのです。
たった一週間で修得できた理由はいくつかありますが、それは拙作が続いていけばいずれ明らかになります。もし、万が一いや億が一凍結したら、この後書きに書いておきます。
もう一話あって原作二巻に突入するんですけど、原作1巻をリスペクトで閑話を一話くらい入れようかと検討してます。
次話は、今話の総まとめというか、全体を綺麗に片付けます。多分。
【最速】の元ネタは脳機能を変容させてるから、スキルとして導入するのはグレーゾーンだと考えていたんですが……まぁそこは、運営さんがちらっと触れましたね。次回、そこをもう少し掘り下げられればなぁ……と思ってます。
が、そしたら盛大な加筆が必要でめっちゃダル……嘘です。う そ。
ちゃんとグレーゾーンも運営は考えてたんだよホントだよ?作中の設定で『それヤバイでしょ?』ってヤツは、読者が納得できるように細かい設定を積むのが心情なので。
……誰だ設定厨って言ったやつ!その通りだから反論しないぞっ!
あ、《神速反射》は例外。あれはクロスオーバー且つ月夜ちゃんの先天的な特性なので。