PS極振りが友達と最強ギルドを作りたいと思います。   作:五月時雨

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 もうタイトルからバラしていくスタイル
 いやね?タイトル思いつかないというか、もうこれしかないなって言うか。
 皆様いかがお過ごしでしょうか?
 私は自分の作品を読み返し、過去の設定を思い返しながら『やっべこれ矛盾してんじゃん!』と大慌てでストックに修正をかけてます。
 


PS特化と運営接触

 

 ゲーム内でミィとウォーレンに【最速】と現状を話したあと、ツキヨは第二回イベントについて確認していた。

 

「第二回イベントへの取り組み方は、私が指示したもので決まったということね?」

「あぁ。パーティ編成は自由だし、最初の転移場所がランダムな以上、前半は自由探索になった。一部ミィ様と組みたいっつー連中が騒いだがな」

「私としては、久しぶりにツキヨと二人で探索がしたかったのでな。悪いとは思ったが、皆の意見は取り下げさせてもらった。許せ」

「……ってことだ」

 

 四日目には【炎帝ノ国】で集まり、活動を開始する。だがミィは、それまでの三日間くらいはツキヨと二人で攻略がしたかった。

 ツキヨがそれを拒否することなどあり得ないし、むしろ同じ言葉を素のミィで聞きたかった。そしたら多分、ツキヨは加速を廃絶してミィに抱きつくだろう。

 

「イベント中もメッセージで連絡を取り合うことは可能だから問題ないわ。それにウォーレンさん、そのうるさい連中も()()()()()()()()()()()()?」

「ははっ、よく分かったな。」

「『ミィと私の約束に口出ししない』こと。それが、かつて行ったウォーレンさんとの【決闘】の対価だもの」

「約束を()()()()()()()について言及してないからな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だってことは黙って、既に交わした約束として黙らせたぜ?」

 

 クククッと悪い顔で笑うウォーレンに、ツキヨもまた笑う。

 ミィの事でとやかく騒ぐのはオルグ等の面倒な連中が大半であり、それらは全員、かつての【決闘】を見ていた者たちだ。なら、その時の対価が有効に働く。

 しかも黙らせたのはかつてのツキヨ(勝者)ではなくウォーレン(敗者)。説得力が違う。

 この二人、裏で【炎帝ノ国】をコントロールする時はだいたいこんな感じである。

 そして、それを知らず呆然とする炎帝が一人。

 

「……お前たち、随分と仲良くやっているな」

「ミィ、嫉妬?」

「ち、ちがっ……はぁ。悪代官達のような雰囲気を出していたぞ」

「かつての仲間すら黙らせるとは……ウォーレン、お主も(ワル)よのぉ?」

「いやいや、ツキヨ様ほどではありますまい」

 

「「クククッ………ハハハハハハハハッ」」

「本当にやるんだな……いや、お前たちにはそのくらいが似合っているんだが」

 

 ツキヨもこのノリは嫌いではなかった。

 ウォーレンは尚更である。

 

「さて、話は分かったわ。四日目の集合地点もイベントエリア中央で良いのね?」

「あぁそうだ。それより前に合流しても、それぞれの自由。俺含め『幹部候補』もミィ様とツキヨ様がいない間の指揮なんて取らねぇし、好きに楽しむつもりだ」

「えぇ、そうしてちょうだい」

 

 各自現状、今後の予定の確認を終えた所で、ウォーレンはレベリングに行くということで立ち去った。と同時に二人共だらける。

 

「ふぁー……疲れたぁー…」

「ウォーレンさんの手前、演技は継続だもんねぇ……」

「ツキヨはそれなりにたのしそうだったけど?」

「口調と雰囲気を保っているだけだもん。ほとんど素に近い演技だからね」

「そう言えば最近は冷酷剣士の演技してないね」

「あれは知り合いにすらなりたくない人用だよ。他にもメンバーに厳しいし態度も横柄だけどやることはやって、ちゃんとメンバーの事を考えてるっていうサブリーダー演技もあるよ。厳しい順に冷酷剣士、サブリーダー、さっきの」

「器用だね……そんな所にも器用特化ステータスが出てるー」

「これでも親しい順に使い分けてるからね?

 ウォーレンさんに対してはサブリーダー演技が疲れるっていうのもあるし。

 ……まぁ素に近いから、ボロ出さないようにってだけは気を付けてるけど。

 ミィもガチガチに演技固めちゃうから疲れるんだよ。親しくなった人には、もう少し緩めても良いと思うなー」

「それこそボロを出しそうで怖いから無理……」

 

 二人して演技のキリッとした雰囲気を台無しに、ぽやんとした空気を醸し出している。

 ミィなんてキリッとしてるとカリスマ性溢れているのに、ぽやんとした今飲むのはコーヒー(砂糖とミルクましまし)である。ツキヨもあまりの投下量にドン引きした。

 それ原材料名がミルク、砂糖、コーヒーの順にならない?

 

「………おいしっ」

「………今度、二層で見つけたカフェ行こっか」

 

 コーヒー苦手なら最初から別のにすればいいのに……とも思うが、ウォーレンの手前格好つけたかったのだろう。

 

 と、そんな感じで和んでいると、ツキヨの目の前に青いパネルが現れ、メッセージ通知が届く。

 

「運営から?なんだろ?ミィには届いた?」

「いや、届いてないけど?」

「じゃあもしかして私だけ?何なんだろ?」

 

 そうして、通知の内容に目を通す。

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 プレイヤー ツキヨ様

 

 この度は弊社のVRMMORPG『New World Online』をプレイしていただき、誠にありがとうございます。

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「あ、本当に私宛てだった」

「嘘!?ツキヨ何したの?」

「いや、何にもしてないんだけど……心当たりなんて無いし」

 

 訳もわからないので取り敢えず読み進めていく。

 

 

 

 しばらくして読み終わったツキヨは顔を上げて、ミィに簡潔に伝えた。

 

「運営の人が私と直接話したい……らしい」

「ワケガワカラナイヨ!?」

 

 

 

―――

 

 

 

 余人を交えずに話したいことがあるそうで、ミィには話せる内容だったら後で教えると言って店を出てもらったツキヨ。

 何せ待ち合わせですらない。運営通知に会うかどうかの了承ボタンが有り、ツキヨがそれを押したらすぐに『五分後、ツキヨ様の現在地に伺います』なんて返事が来たのだから。

 それから間もなく、ツキヨが追加のコーヒーを飲んでいると、突然、空気が一変した。

 ツキヨのいる場所も風景も変わらないのに、何処かに転移させられたような、第一回イベントでの転移と同じ感覚。

 

「っ!これは……」

「【決闘】フィールドを参考に構築した特殊フィールドです」

 

 そして目の前に『何か』が現れた。

 兎のように長い耳?を左右に垂らした、二頭身の白いぬいぐるみ。それが三つ。

 何処か愛嬌のある表情で固定されていて、一切の変化がない。

 そんなぬいぐるみがテーブルの上に立っており、男のものらしい声を発していた。

 

「貴方が運営の方、ですか?」

「はじめまして。私はクエスト開発担当の者です。エストとでも呼んでください」

「同じくスキル開発担当をしています。キールでどうぞ」

「私はNWO運営チームの責任者を務めている。私はチーフが良いかな。我々の呼びかけに答えてくれて、本当にありがとう。ツキヨさん」

 

 見分けるポイントが頭と耳の先についたポンポン?の色くらいで、全員同じに見えるのだが、ツキヨは何とか覚えた。

 というか個人情報を晒さないのは運営も暗黙の了解なのだろうか。

 

「……【炎帝ノ国】サブリーダー、ツキヨです。はじめまして」

 

 一応、ゲーム内での役職くらいは話しておこうと、ツキヨも簡単に自己紹介。だがこの愛嬌のあるぬいぐるみ達が運営とは決まったわけではないので、まだ疑いの眼差しを緩めてはいない。

 

「うんうん。やっぱり疑ってるね」

「ほらな?了承してくれたとは言え、余人を挟まないために強制転移させたのはやりすぎなんだよ。拉致みたいなもんだぞ?」

「だが、さっきまで【炎帝】もいたし、隠れた喫茶店とはいえ、プレイヤーが来る可能性はゼロじゃない。無理矢理にでもこうした方が良かった」

「転移は許可をとってからでも良かったってことだ」

 

 なんかぬいぐるみ同士で口論を始めた。

 ツキヨが疑いの眼差しを向けているのがそもそもの原因ではあるのだが、話が進まないので流石に止めることにした。

 

「えっと、確かに疑ってはいます。なので何か、運営と証明できる事を教えていただければ」

「あ、あぁ。すまないね、見苦しい所を見せた」

「すみません。……ならツキヨさんの待っているレアスキルの名前と詳細、取得条件を全て言う、なんてどうでしょう?」

 

 スキル開発担当のキールからの申し出だった。

 確かにいかにツキヨでも、ミィにスキルの詳細を全て話したわけではない。レアスキルの名前くらいは知っていても、全部の効果、取得条件までは知らないはずだ。

 

「……全部ではなく、私が指定したものでも?」

「構いません」

 

 いわゆるクイズ形式である。

 キールが了承したので、ツキヨもそれに乗っかることにした。

 ただし、まだ信用していないので、スキル名は言わずに。

 

「では、私が最初に取得したレアスキルを」

「ちょっ、そう来るか!?確か……」

 

 何やら青いパネルを開き、画面を高速でスクロールさせるように動かすキール。

 そして、とある箇所で手を止めた。

 

「お、あったあった。【精密機械】。弱点攻撃時、このスキル所有者の攻撃力を(STR+DEX)×2にする代わりに、弱点以外を攻撃した時、(DEX−STR)÷2を攻撃力とする。

取得条件は、一定時間内に一定数の敵を倒すこと。またその間の全ての攻撃を弱点に当てること。

 因みに一定時間は十分。一定数は四十体で実は魔法を使うと取れないようになってる」

「……最もデメリットの重いスキルと、それを私が使用した回数」

「ツキヨさんの持つやつはデメリットやら扱いにくいのが大半だが……一番重いのは【殺刃】だね。三十秒近いスキルの予備動作時間を必要とする即死技。一日一回しか使えず、使った後は十二時間ステータスが半減する。ついこの間の修正で【殺刃】使用による討伐時、経験値が半減するようにも修正したね。

 取得条件はレベル25まで武器攻撃を弱点から外さないことと、レベル35までに一定数弱点に攻撃すること。因みに一定数って言うのは累計五万回。

 ツキヨさんは比較的最近になってから、一回だけ使ったね」

 

 今度はスラスラと答え、しかも取得条件にもアバウトな表記のされ方をしていた所を明確に説明している。

 ツキヨとしてもそろそろ認めているのだが、最後にもう一つだけ聞くことにした。

 

「……フィールドに出ることがトリガーのパッシブ効果と、AGIを一時的に上げるアクティブ効果を持つスキル」

「【最速】。フィールドに出ている時、加速という過程をすっ飛ばし、初速から最高速へと至る物だね。もう一つのアクティブトリガーで一分間、AGIを+75%にする効果を持ち、君に呼びかけた理由でもある」

「……はぁ。運営の方々であると信じます」

 

 ここまで詳しく知られている以上、これ以上聞くの時間の無駄だし、偶然にも聞いたスキルが話題の内容らしい。

 

「スキル名も言わないとは徹底してたね」

「いやはや流石だね。ツキヨさんのレアスキルを多く知るのは【炎帝】のミィとウォーレンというプレイヤー。ミィが知り、ウォーレンが知らない【精密機械】、その逆の【最速】の二つを聞くことで、いずれかから情報が漏れたという可能性を潰すんだから」

 

 【最速】は現実でミィに教えていたので、一応ミィも知っている。むしろミィから漏れた可能性を確認したのは【殺刃】の方。【最速】を取った事は話したが、ツキヨはミィにも【殺刃】を使ったことは一度も話していない。

 ウォーレンは【最速】の練習をしていた一週間の間に、話の種にと軽く話してしまった。だからウォーレンは、ツキヨがそれを使用したことは知っている。

 他の【炎帝ノ国】のメンバーはツキヨの詳細なスキル構成を知らないため、懸念はこの二人だったが、それが外れたため、信じる他ないだろう。

 

「………どうも。それで【最速】がどうかしましたか?使いこなすのに時間こそかかりましたが、チートの類は使っていませんが」

「まじか……」

「チートの方がまだましだった……」

「PS極振りって理不尽なんだな……」

「あ、あの………?」

 

 偶然にも問題に出した【最速】が呼び出された理由だったので、ツキヨはそのまま本題に入ろうとした。まだ、別に悪いことはしていないので、先にそれについても弁解したのだが、むしろ運営三人は頭を抱える始末。

 数秒の後、顔を上げたチーフが恐る恐るといった様子で短い手で頭を抱えながら問いかけた。

 

「すまない、理解が追いつかない。……いや。分かってはいたんだ。だが、どうしても、ツキヨさんに聞きたいことがある」

「なんでしょうか?」

「君はもしかして、()()()()()()()()()()()()()()?」

「?……はい、できますが」

 

 できるようになったのは今日からですが、それが何か?と何でもないことのように答えるツキヨ。しかし、運営としては最悪の返答だ。

 だが、まだだ!チーフはまだ諦めない!

 

「そ、それは、生まれつきできたとか……」

「いえ、スキルを使いこなすために後天的に新たな伝達信号を構築しました」

 

 一瞬で撃沈した。

 

「クエストNPCのお爺さんの言う通り、なかなか使いこなせなくて大変でしたが、今日ようやく完全に使いこなすことができたんです。使いこなすと体が羽のように軽いですね」

「「「は、ははは……」」」

 

 凄く使い勝手が良いです。と明るい笑顔を向けるツキヨに、運営三人は愕然としていた。今ほどこのアバターに細かな表情が働かないのを感謝した日はなかった。

 

「嘘だろ!?嘘だと言ってくれ!いやマジで本当なんですか!?」

「ほ、本当です。システムアシストの違和感が酷かったので、それをどうにかする為に……」

「エスト落ち着いてくれ……いや、俺もお前と同じくらいテンパってはいるんだが」

「チーフ、一人称戻ってます。正直エストと同じ気持ちだけど」

 

 一人は叫び、二人は頭を抱えて唸りだす。ぬいぐるみじゃなく人間のアバターだったら、正直見てられなかっただろう。そして見た目がぬいぐるみだから危機感もあまり感じられない。

 

 

 

 三人が落ち着きを取り戻したあと、チーフが代表してツキヨに説明を求めた。

 

「……すまない。

 ツキヨさん、私達に使えるようになった経緯をなるべく細かく教えてもらえるか?」

「い、良いですけど……その、大丈夫ですか?」

「大丈夫です……」

「問題無い……」

「胃が痛い……」

「一人確実に大丈夫じゃないですよね!?というか御三方全員大丈夫じゃないですよね!?」

 

 三人揃って項垂れているのだ。ツキヨも流石に心配になった。

 だが、チーフから出たのは、ツキヨの思いもよらない返答で。

 

「……ツキヨさんには、我々運営が()()()()()()()()()()()()()()を、ご理解いただきたいのです」

「っ!……それ程の事ですか?」

「本来、我々運営陣の直接的なプレイヤーへの干渉は、チート等規約違反行為を確認した時、悪質プレイヤーへの通報対応時のアカウント凍結措置等が殆どです。しかしそれでも、()()()()()()()()()()()()()()()。ツキヨさんが行ったことはツキヨさんにとっても、我々にとっても、大問題になりかねないのです」

 

 直接ツキヨの前に姿を表し、自己紹介し、問いかける。これが如何に重大案件であるかを証明しており、ツキヨとしては何も考えていなかったかもしれないが、大問題の火種だった。

 

「分かりました……いえ、まだよく分かんないですけど、【最速】を使いこなすためにやったことを説明すれば良いんですね?」

「はい」

 

 それから、ツキヨは語る。

 【最速】を使いこなすために何をしたか。

 

 

 最初は、【最速】に慣れるためだった。

 

 でも、慣れてもシステムアシストが強く使()()()()()という感覚が強すぎた。

 

 システムに合わせて動く。

 

 確かにそれは効率的で、それまで以上の戦果をそれまで以上に早く上げられた。

 

 森一つを数分で殲滅した。

 

 でも、それは全くもって()()()()()()()

 

 スキルに従い、合わせ、対応する。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 このやり方ではいつまで経っても使いこなすどころか、スキルに使われているだけだ。

 

 だから、兎に角走り続けた。

 

 必要なのはシステムアシストに頼らず、高密度情報を送れる伝達信号。

 

 きっと加速を廃絶した動きをし続ければ、動作に脳が追いつく事が可能ではないかと思った。

 

 確証なんて無かった。

 

 脳が追いついたとしても、それを扱いきれる保証も無かった。

 

 だけど、【廃棄】は運営に負けた気がした。

 

 だから、―――

 

 

 

「だから、兎に角こんな死にスキルを作った運営の度肝を抜くために頑張ったと言うのが、【最速】を使いこなすまでの全てです」

 

 

 

 

 

 

「えぇと……マジで?」

「マジで」

 

 大マジにマジで真剣に頷くツキヨ。

 三体のぬいぐるみは閉口。

 

「それで【最速】に何か問題が出たんですか?」

「………いえ。問題は【最速】の方ではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことの方ですね」

「?それがなぜ?使いこなすために必要だったからしたまでですが?」

 

 ここまでのツキヨの話を聞いて、運営三人が想定していた『使いこなす』と、ツキヨの言う『使いこなす』に齟齬があることに気付いた。

 

「えっと、我々が想定していたのはあくまで『スキル動作に合わせて、支障なく戦闘が行える』ことが限界値だったんです。事実、運営内部で複数人の被検者を募り、約半年に渡るスキル実施テストを行った結果、『脳機能の変容等人体への影響は善悪問わず一切無い』という結論に至っていました」

「はぁ……?」

「つまり、ツキヨさんは結果的に()()()()()()()()人体()()()()()()()()()()()()()()と示唆してしまった……と言うことなんですよね」

「特に脳は、医学的にも科学的にもブラックボックスな部分が多々あります。完全な仮想世界を実現したのも、つい近年のことですから」

「脳波。体を動かす電気信号を読み取り、脊髄を通る前にそれを拾い上げ、アバターに反映する。言葉にすればそれだけですが、それが非常に困難だったからですね。しかし言ってしまえば『ただのゲーム』であるNWOが、人体の機能に影響を与えることは、あってはならない」

 

 それは、今後のNWO運営にとって危機的な情報だった。

 ツキヨの例が悪影響かについてはまだ分からないが、()()()()()()()()()()()()が広まれば、最悪の場合ゲームの運営停止すらなりかねない。

 悪影響が出てからでは遅いのだから。

 人に生来備わっている機能そのものに影響を与え、変容させてしまう。

 それは医学的にも科学的にも、そして倫理的にも、絶対に起こしてはならない。

 

「なので、我々としては早期の原因究明と、以後同じ現象が発生しないよう、万全の措置を取らなければならないのです」

「またこの件が公のものになれば、ツキヨさんにもご迷惑がかかりかねません。インターネット社会は怖いですから」

 

 メディアによってNWOが人体に影響を及ぼすことが広まれば、その実例として間違いなくプレイヤーツキヨが挙げられるだろう。

 そして今の社会、プレイヤーツキヨではなく『NWOで遊ぶだけの一般人(赤羽 月夜)』という個人を特定されるかもしれない。

 その事を、ツキヨは丁寧に説明された。

 

「つまり、私のしたことは運営にとって想定外かつ非常に厄介で、【最速】をプレイヤースキルで実現できるとは夢にも思わなかった……と」

「そうなります。僅か数日のうちに我々の想定した『使いこなす』に至った時点で、『……この、理不尽プレイヤースキル極振りが!』と阿鼻叫喚しましたよ」

 

 ツキヨはもう既に運営の度肝は抜けていたらしい。更に言えば、やはりウォーレンの意見が正しかった。ツキヨのやったことは運営の想定を大きく逸脱してしまっていた。

 そして一度チーフは間を取ると、ツキヨに接触した最大の理由を告げた。

 

「今回お呼びしたのは、その原因究明にご協力頂きたいということです」

「……それはVR世界で?それとも」

「それとも、の方です」

 

 つまり、現実で。

 きちんと現実で脳の伝達信号を調べ、なぜ変化したのか、どういう過程を経るのかなどを見なければならない。

 VRハードは脳の信号を読み取ってアバターを動かす。つまりNWOの運営、あるいはVRハードの制作会社には、この伝達信号を読み取る技術があるとのことだ。

 

「その技術を利用し、本社に設置してあるVRハードで伝達信号の測定を行わせて頂きたいという思っています」

「……きちんと精査するためには一般に販売されているVRハードではスペックが足りないので、現実の方で本社にお越しいただく必要がありますが」

「現実世界でも同じ動作が本当に可能なら、それそのものの観測もさせてもらいたいです」

「もちろん、ツキヨさんには拒否権があります。我々の想定が甘かったこと。危険性を明確に見抜けなかったこと。今後悪影響が出る可能性があることへの対応は山とあります。

 それを、ツキヨさんが背負う必要はなく、プライバシーの点からも感情の点からも、ツキヨさんが我々に協力するメリットはありません。脳の信号を他人に測られるなど嫌でしょうから。

 ツキヨさんが拒否しようと、我々は原因究明に全力を尽くす所存です。

 ツキヨさんにご協力いただければ、より早く原因究明に繋がるでしょうが無理強いはしません。

 ……そして、これだけは言わせてください。

 

 今回の件は想定の甘かった我々運営側の完全な落ち度です。誠に申し訳ありませんでした!」

 

 チーフの謝罪で、三人の操作するぬいぐるみが一斉に頭を下げる。二頭身だから頭頂が床に付き、真っ白い玉にしか見えない。しかし、込められた気持ちは真剣だった。

 ツキヨとしては死にスキルを作った運営の鼻を明かしてやりたかっただけなのに、いつの間にか謝罪されているという状況。

 自分がやったことの危険性は分かった。

 NWOが今後どうなるか不透明になったという、三人の……運営陣の考える危機も理解した。

 自分と同じように伝達信号を変化させ、それが悪影響になってしまう事例が出るかもしれない。

 

 何より、NWOを一緒にできなくなれば()()()()()()

 だから、ツキヨは決めた。

 

「……その。顔、上げてください。そのままでは返事もできませんので」

 

 ぬいぐるみたちを元に戻して、ツキヨは一呼吸置く。

 確かにツキヨが協力するメリットはない。むしろ見ず知らずの人に、自分も良くわからない伝達信号なんていうデリケートな事を観測されたくなんてない。

 しかし、運営の考える危機感も分かる。

 メディアにでもこの件が漏れた時、ツキヨが被る影響についても説明された。

 プレイヤーの事を考え、状況を伝え、意思を伝え、親身を対応する。

 例え、運営とプレイヤーという、密接でありながら隔絶した間柄を破壊したとしても。

 

 ならば、と。

 ツキヨもまた、相応の対応をするべきだろう。

 

「……私で良ければ、協力させてください。ただ、協力した際に取る情報の管理をしっかりとしていただければ」

「ありがとう。情報の管理徹底は当然です。個人情報が多分に含まれるでしょうし、電子データはバックアップも取らず厳重に管理し、紙面等に残る一個人としての貴女の情報はツキヨさんの協力が終わり次第、その場で破棄することを約束します。……あ、相応の謝礼もさせていただきますよ。脳の働きを測定されるなんて、一般的な実験の被検者とは隔絶しているので」

「そうですか……。では、その時はありがたく受け取らせていただきます」

 

 ただ、ツキヨとしても今回は自分の知りたいことを知れるチャンスでもあると思っていた。

 それは、《神速反射(マージナルカウンター)》の反射速度。

 ツキヨの最高速は瞬間八斬撃を放てるほど。一般から逸脱した自分の反射速度がどれ程のものなのか、数値として見てみたいという好奇心があった。

 

 

 

 

 

 

 それから、運営陣との話し合いは進み、ツキヨがあと一ヶ月ほどで夏休みに入るという事を鑑みて、夏休みに入ってから本社に顔を出すことになった。

 また、正確な日取りは流石に未定であるため、ツキヨのアカウントで運営への直接メッセージを送れるようにインストールしてくれるらしい。

 と言っても、運営からツキヨ個人に送られるメッセージに対する返信のみだが。

 また、本社に行く時は本人さえ良ければミィも同行していいとの許可をとった。

 これは、ツキヨが現実で加速を廃した移動を初めて成功した時の状況を、他人目線での情報を集めるためだ。リアルでも友人でその時を見たと話すと、運営側から食いついた。

 そして最後に【最速】クエスト。

 これは、原因が分かるまでは発生しないようにするらしい。ただ【超加速】は取得できるし、原因が分かったら修正の後に開放し、止めていた間に条件を満たしたプレイヤーにも、その時発生するようにするらしい。

 この辺りは、ツキヨでは関与できないだろう。

 ただ、運営の三人はたとえクエスト発生を止めても『あんな鬼畜超えてルナティックな条件をクリアできるプレイヤーが二人といてたまるか!』

 とのことで、多分大丈夫だろうとのこと。

 

 その油断が今回の件を招いたと学んでほしいと、ツキヨは願った。




 
 運営陣の見た目はアニメ版の運営達です。アレのぬいぐるみがあったら絶対にほしい私です。
 私は、運営が主人公とか、周りの人とかに直接接触を図る小説は好みません。読まないわけじゃないけど、それってフェアじゃないですよね。理由はどうあれ。運営ならば、全てのプレイヤーに公平かつ公正な態度を取るべきです。
 けど、今回は運営としても非常事態であり、性急に何とかしなきゃいけないことだったので、仕方なくこうなりました。
 性急になった理由は作中にある通りで、以下の点で纏めてあります。(作中を読んでもよく分かんなかったら読んで)

・原因究明
 これは、運営の会社で十分なデータを取って『問題ない』と判断したのに起こってしまった、ということに対する運営として当然の対処ですね。
 それと、現状唯一の実例であるツキヨちゃん本人に、協力依頼ですね。
 運営だけでは限界があるかもしれないし、実例であるツキヨちゃん本人が協力してくれれば、ちゃんと原因が分かるかもしれないからね。

・ツキヨちゃんの保護、関係構築
 これは、まぁ情報管理の観点から。
 ツキヨちゃんが周囲にこの件を言いふらしたり、他にもハッキングされてこの事を誰かに知られたりとかで白日の下に晒されたら、ツキヨちゃんのプライバシーが著しく損なわれてしまうからですね。

・NWOが配信停止に追い込まれる可能性
 これは上2つの観点から生まれる危険性です。
 『人体に不可逆的な変容を齎すゲーム』なんて、普通に怖いです。マジ恐怖です。
 だから、この件を原因が分からないまま白日の下に晒されるのは危険であり、最悪『NWO』を停止せざるを得なくなります。だから火急の原因究明と、ツキヨちゃんという実例の確保が重要になりました。

・そしてこれは作中には出てませんが、ツキヨちゃんへの注意喚起です。
 今後、【最速】のように扱いにくいスキルを取得したとしても、今回のような人間離れした試行錯誤をすると、今回みたいに運営が出張ることになり、めっちゃ大変なことになりますよって最初に話すことで、これ以上ツキヨちゃんが無茶な試行錯誤をしないようにやんわりとブレーキかけてます。

 それが通じるかどうかは、ツキヨちゃんの今後に注目ですね。

 そして結果的に、運営の1つ目の目的、原因究明にツキヨちゃんが協力することになりました。1ヶ月後。つまり、ギルド対抗戦の直前ですね。その頃にはまたツキヨちゃんもおかしくなってるだろうし、運営からすごい問い詰められそう。
 それと、少なくともギルド対抗戦までは草案が頭の中にあるので、原因究明がなされるまで凍結は起こらないと思います。前話の後書きは半ば無駄になります。健康状態は良好なので、作者が失踪しない限り大丈夫です。

 今回で原作1巻は一応の区切りとなりまして、次回から原作2巻に突入いたします。ようやく第二回イベントですよ。
 約40話かけて1巻終えました。字数にして25万字超えてます。
 ここまで約二ヶ月。皆様のご愛読に助けられ、続けられています。

 今後とも、暇になったら(よろしくお願)読んでください(い申し上げます)
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