PS極振りが友達と最強ギルドを作りたいと思います。 作:五月時雨
「図書館……かな?」
「みたいだね。本型のモンスターとか出るかも」
迂回したために少し時間がかかったが、問題なく、建物に着いた。
煉瓦造りの建物で、かなり古びている。苔や蔦などの植物が壁面を所狭しと埋め尽くし、建物自体もかなり劣化しているように見える。
中に入ると、大量の本棚とそれを読むためにある様なたくさんのテーブルと椅子。
ツキヨの【気配察知】にもモンスターの反応がないため、今のところ大丈夫そうだった。
「もしかしたら、ここが運営が言ってた、フィールド上にあるモンスターが来ない場所……の一つなのかもね」
「それにしては迷路みたいに入り組んでるね……案外、ボス部屋だけの小ダンジョンかも」
「どちらにせよ、今のところはモンスターいないんでしょ?」
「うん。私の【気配察知】に反応が無いし」
「なら少し休憩して、中を探索しよー!」
「おー!」
手頃な棚から本を取り出し、暇つぶしに読んでみるも、攻略に役立ちそうな情報は無かった。
休憩と言いつつもきっちり情報が無いか探す二人。抜け目ない。
「めぼしい情報はないねー」
「全部読むには時間がかかりすぎるし、足で探索した方が良さそうだね。はいお茶」
ツキヨはインベントリから飲み物を取り出し、本片手に休憩するミィの前に置く。
「ツキヨ準備いいねー」
「ゲーム内だから飲んだり食べたりしなくても問題はないけど、それじゃ精神的に参っちゃうでしょ?【炎帝ノ国】全員分は流石にインベントリを圧迫するから無理だけど、私とミィの二人分の食べ物と嗜好品くらいは持ってきたよ」
これができるのは、偏にツキヨの武器が壊れても復活すること、ツキヨ自身がHPポーションを使わないこと、イベント前に殆どの素材を換金したことに起因する。
現在インベントリに入っているのは、大量のテーブルと食料、飲み物、暇つぶし用品、ミィ用のポーションとMPポーションである。ツキヨ自身は近接でも戦えるため、MPは自然回復でも問題ないと判断していた。
『薄明・霹靂』についてもイベント前にイズに耐久値を戻してもらい、万全の状態である。
因みに飲み物は緑茶ほうじ茶玄米等の日本茶各種、ココアにアールグレイ、ダージリン、レディーグレイ、アッサム、珍しいものではプリンスオブウェールズやバタフライピー等、一層の隠れ喫茶で茶葉を購入できると分かってから爆買いした。イベントの為ではなく、普通に普段から飲みたいだけである。
すぐに飲める状態で四、五リットルの大きなポットに全種類作ってきた。インベントリに入れておけば酸化も劣化もしないので、常に最高の状態で飲めるので嬉しい限りだった。
「コーヒーもあるよ?砂糖とミルクも」
「明日の朝はそれがいい!」
「ふふっ、了解」
ツキヨの準備したものは、とてもイベントのためとは思えない所で準備が良かった。
程なくして休憩を終えた二人は、図書館の中の探索を始めた。
図書館の中に沢山の部屋があり、ツキヨ達がいたのは本当に入り口から入ってすぐ、全体の一割も進んでないところだった。
二人は一部屋ずつ確認していき、何か役立つものが無いかと探している。
「【最速】のシステムアシストが切れてないから、一応戦闘可能フィールドではあるんだよねぇ」
「それにしては、モンスターが一匹も出ないね」
あるのは本、本、本だけである。
そろそろ何かしら変化がほしいなーと思った。
その時。
「っ!……ミィ」
「どうしたの?」
ツキヨが足を止め、ある扉を真剣に見つめていた。
「中にプレイヤーがいる」
「……モンスターじゃなくて?」
【気配識別】で一番分かりやすいのが、モンスターとプレイヤーの識別だ。全く別の気配として感じ取れるため、それに間違いはない。
そして真剣に見つめてこそいるが、ツキヨの警戒は低かった。
「感じられる気配がかなり小さい……まだレベルが低い初心者クラス」
「この部屋に転移したのか、ここに何かあるのかだね。様子見てみる?」
「確率は低いけど、私やメイプルちゃんタイプの初心者の可能性だって無視できない。ミィもいつでも魔法使えるようにしてて」
「……自分が異常枠だって自覚あったんだ?」
「むぅ……茶化さないで。……いくよ」
こくり、とミィが頷くのを確認し、ツキヨは静かに扉を開け、中を覗き込む。
その部屋は、それまでよりも少しだけ広い作りになっていた。
本棚はこれまでも同じく所狭しとあるが、部屋の中央にポッカリと広い空間があり、一人のプレイヤーが座って何かしている。
ミィに近い赤色の癖毛、後ろからでもわかる色白の肌。座っているから分かりづらいが、身長はミィと同じか、少し低いと思われる。
全身が初期装備で傍らに初心者装備の杖が放置されていた。
「よし。始めようかな」
部屋の外から覗くツキヨたちに気付かず、何かを始めるらしいプレイヤー。少し覗き込めば、そのプレイヤーの前に真っ白なパズルのピースが積み上がっている。
ツキヨとミィは、これをどうするべきか悩む。
まだバレていないが、突然声をかけたら驚かれるだろう。下手に声も出せないし……
と言うことで、久しぶりのハンドサインさんの出番だった。
(『奇襲 突撃?』)
(『不許可 友好 構築』)
(……『了承 代案 接触 特攻』)
(『了承 演技 継続』)
翻訳すると、このようになる。
(バレる前に倒した方が安全じゃない?)
(ダメだよツキヨ!相手は初心者。何か情報持ってるかもだし、仲良くなった方が良いって!)
(……分かった。でも流石に驚かせずに接触は無理だと思うよ)
(いっそ演技で堂々と入ろう)
明らかに突撃やら特攻やら訳の分からないサインも出ていたが、そこはそれ。二人なりの理解があるのだろう。
相談を終えた二人は、次の瞬間には演技に入っていた。
(……いくぞ)
(いつでも)
存在に気付くよう、派手に扉を開ける。
バンッと大きさ音が響き、扉の向こうにいた赤毛プレイヤーがビクッ!と肩を揺らしたのを視界に収める。
「あら、先客がいたわね」
「モンスターの居ない安全な建物だ。開始直後とはいえ、こういった場所の確保は必須だからな。当然といえば当然だ」
まるで今知ったかのような雰囲気で話し出す二人に、赤毛プレイヤーは髪色と同じ赤の瞳を大きく見開いていた。
「わー、まさかトッププレイヤー二人と遭遇するとはね」
中性的な顔立ちの少年は、杖を構えることもなく、むしろ堂々としていた。
「逃げないのね。普通のプレイヤーなら一目散に逃げるのだけれど」
「どうせ逃げられないし、僕まだメダルも持ってないしね」
「失うものは無い、と?」
「だって僕まだレベル2だよ?自慢じゃないけど弱いよ?」
本当に自慢じゃなかった。
と言うか完全に初心者だった。
「僕はカナデ。ゲーム二日目からイベントになった完全初心者なんだ」
そう言われてしまえば、ミィとツキヨも自己紹介せざるを得ない。
「私はミィ、【炎帝ノ国】のリーダーだ」
「ツキヨ。同じくサブリーダーをしているわ」
「知ってるよ。《炎帝》のミィさんと《比翼》のツキヨさんでしょ?赤と白のトッププレイヤーで目立つし、唯一の巨大グループの噂はこのゲームを始める前から聞いてたからね。
特にツキヨさんのオーラは目立つし」
「そうか?それは嬉しい限りだな」
「そうね。【炎帝ノ国】の名が広まるのは光栄だわ」
図書館に来るまでに、大量のモンスターで【血塗レノ舞踏】と【剣ノ舞】を最大強化したオーラがツキヨを今も包んでいるため、カナデも一瞬で分かったのだ。そんな特徴を持つプレイヤーは一人しかいないから。
ここから更に真っ白になると知ったらどうなるだろうか。
ミィが本当に照れくさそうに頬を染めているのを横目に、ツキヨはカナデに質問をした。
「それで、貴方はここで何を?」
「見ての通り、パズルだよ。僕の初期位置の近くに地上からこの図書館に繋がる魔法陣があってね。どうせモンスターに勝つのは難しいし、ここならボスはいるけど、図書館内にモンスターは居ないから暇つぶしに丁度いいんだ」
絵柄のようなものはなく、全てのピースが真っ白のパズル。パズルとしての難易度は最上級……というか進んではやりたくない類のパズルだった。
カナデの方から色々と情報を飛び出してくれたので、ツキヨとしては大助かりである。
「へぇ。私達はこの浮島が初期位置だったから、地上に降りる魔法陣があるのは助かるわね」
「僕が地上から来た魔法陣ならここから奥に進んで、突き当たりを右に行った小部屋にあるよ。
それと、その部屋の奥側の扉がボス部屋。一度挑んだけど、流石に一人じゃ勝てないから、こうしてパズルをしようとしてたんだ」
「良いのか?私達にそんな情報を与えてしまっても?」
「いーよいーよ。どうせ勝てないし。むしろボスを倒してくれれば、今後図書館の中にモンスターが出る可能性も無くなる。僕にとってもメリットがあるからね」
「なるほど……」
奇襲で倒さなくて良かったとツキヨは思った。お陰で地上に降りる魔法陣があること。ここが一応ダンジョンであり、ボスが存在すること。その二点が分かったのだから。
「カナデにメリットがあったとしても、私達の方が貰い過ぎだな」
「そうね。こちらからも、何かしらメリットとなる情報を提示できれば良いのだけれど……」
「ここまでモンスターと戦闘しかしていないからな。イベントの情報はろくに無い。悪いな」
「いーよいーよ。イベントに参加したのも気まぐれだし。……あ、ずっとパズルっていうのも疲れるし、何か休憩できるようなものとか貰えると助かります」
ペコリ、と頭を下げてくるカナデを見て、ミィはツキヨに目配せする。
「見返りがそれで良いのなら、こちらとしても助かるわね……良いわ。色々出すから、好きに選んでちょうだい」
「探索中は神経を擦り減らすからな。嗜好品の類はツキヨが大量に仕入れている」
「あ、この紅茶とお菓子を貰おうかな。ゲームだからご飯はいらないけど、本を読む時にもちょうど良さそうだから」
そうして出るわ出るわ。
紅茶はツキヨが個人的に仕入れたものだが、今カナデに出しているのはかつての結成式で【料理】持ちに作ってもらった料理。インベントリに入れておけば腐敗も破損もしないのが良いところである。
イベントでの自分たち用に仕入れた食料品には一切手を付けていないのが、何ともツキヨらしかった。
「飲み物も色々とあるわ。日本茶や紅茶、コーヒーにココア……そうそう、スープ類もあるわね」
「本当に用意が良いな……」
「偶にお味噌汁とか飲みたくなるよねー」
「そうね。少しおすそ分けするわ」
「お、良いの?ならありがたく」
いつの間にかカナデのほんわか空間に飲み込まれ、一番素に近い楽な演技になっていたツキヨ。
ミィも雰囲気を崩さないまでも楽にしていて、目の前に飲み物や食べ物があるため今にも女子会(一名男を含む)が始まりそうである。
小さなポットにお味噌汁を移し、親切にお玉まで付けてカナデに贈る。
ご近所付き合いだろうか。
それからカナデはパズルをするとかで集中するらしく、ツキヨとミィも地上に行くために、あとボスからメダルが出るかもしれないのでカナデと別れた。
「ツキヨの準備の良さには呆れを超えて感心するよ」
「あはは……だって一週間も過ごすんだよ?飽きないように楽しく過ごしたいじゃん」
「……因みにスープは何が?」
「お味噌汁に卵スープ、わかめスープ、コンソメスープ、コーンスープ、ミネストローネ、クラムチャウダー……」
「判ったもう良いや……それ一週間分より絶対に多いよね?」
指折り数えだした数字が七を超えたので、ミィがついにストップをかけた。
「あはは……。色々と調達してたら、イベント用に売ってたプレイヤーメイドの料理が全部美味しそうでさ。選べなかったから少しずつほぼ全種類買ってきた」
これでいつでも好きなスープが飲めるよーとほんわか笑う。コイツ。攻略というより意識が観光に近い。いや、もはや自力バイキングでも始めかねない。
なお、ツキヨの言う『少しずつ』は販売最低量だった一キログラムである。
これだけの種類と量。半月は問題なかった。
そうして歩くこと数分。カナデが言った通り、突き当たりを右に行った先の小部屋に入ると中央に魔法陣があり、ツキヨ達が来た扉と正反対の位置に別の扉が。
しかもツキヨたちが入った方とは大きさが倍以上あった。しっかりと装飾がなされ、明らかにボス部屋である。
「この浮島はあんまり大きくなくて、見たところこの図書館しかめぼしいものはない。まだ始まって数時間しか経ってないし、ボスを倒したら地上に降りようか」
「夜休む時はここに戻っても良いかもね」
「さっさと倒して、どんどん攻略しよう!」
「同感、行こう!」
扉を押し開き、中に入る。
そこは、全周を本棚に囲まれた部屋だった。
半径二十メートルはありそうな大きな部屋で、部屋の真ん中には一冊の本が落ちている。
二人が下手の中を進んでいくと、後ろの扉が勢いよく閉まり、次の瞬間、落ちていた一冊の本の体積がぐんぐんと肥大化していく。
「本型のボス!」
「よく燃えそうだね、ミィ!」
「ばっさり斬れそうでもあるね、ツキヨ!」
物騒な炎帝と比翼だった。
だがそんな二人などお構いなしに、どこから出しているか分からない咆哮に上げたボスに合わせ、壁面から何十もの本が飛び出す。
それらは空中で停滞し、一斉に開かれたページから無数の魔法陣が浮かび上がった。
「弾幕勝負?……なら、こっちだって負けない!【遅延】解除!」
「【血風惨雨】!」
ボスに挑むと決めた時からため続けた、ミィの大量の【炎槍】とツキヨの水の鏃が魔導書が放つ魔法を撃ち落とす。
ミィと違い一つ一つの威力が低いツキヨは、その差を物量で覆し、敵の魔法をきっちり半分ずつ処理した。
「引きつける!【挑発】【ウィークネス】!」
「了解、【チェインファイア】!」
自分が接敵してボスの注意を引くから、ミィは攻撃に集中して!と親友故に伝わるだろうと信じて一言で伝え、【白翼の双刃】を抜刀して駆ける。
そして、ツキヨは瞬時にボスの目の前に
今のツキヨのあらゆる動作は、その踏み込みから攻撃に至るまで、
ボス部屋に入る前に、既にツキヨは臨戦態勢に入っていた。
《神速反射》を御し切るために磨かれた高い集中力と身体操作技術を遺憾なく発揮した今のツキヨの動作には、殆ど
行動にのみ全エネルギーを消費している。
そのため空間に一切の振動を限りなく起こさず、音が発生しないのだ。
加えて、0から100への急激な緩急を旨とするツキヨの剣は視覚でも捉えるのが難しい。
視覚も聴覚も当てにならない、高速にして無音の斬撃。
アウトレンジから見ていたミィの動体視力すら振り切って、ボスの弱点である開いた本の中央に一撃を叩き込む。
これだけでスキルを使用すらせずにボスのHPは一割削れた。だがボスもやられっぱなしではない。攻撃された瞬間、その場所には確かにツキヨはいるのだから!
三メートルにまで肥大化した本の身体を勢いよく閉じ、ツキヨを挟み込んで攻撃する。
「させない!」
が、それはミィが放った【炎帝】によって、閉じようとした身体を
ツキヨはその間に一時離脱し、なおも空中に停滞する魔導書を瞬く間に斬り刻み、無効化していく。
「ぬるいね……欠伸が出るよ」
ツキヨは、全方位から放たれる魔法を、その発射音の大きさと角度から位置を算出。
高速で飛び回り的を絞らせず、なおかつ進行方向に別の本モンスターを置くことでフレンドリーファイアを誘発。
ダメージこそ発生しないが、魔法が当たったことによる
「ツキヨ後ろ!」
「ッッ!」
ボスがその身を燃やしながらもツキヨに迫る。
だが、ツキヨはその熱気を感じていた。
「【ウォーターウォール】【跳躍】
図書館は火気厳禁――【鉄砲水】!」
高速で突っ込んでくるボスを水の壁に突っ込ませ、仕方なく消火しつつ隙を作り退避。
そのまま一瞬で背後に回り込み、高圧の水弾を放った。
ツキヨがいる位置は本棚のある壁面近く。本棚に激突してボス部屋全域を火の海に変えられたらたまったものではない。
「あと二割!」
「うん!よく燃えるみたいで、【炎帝】の後にかなりの継続ダメージが入ったよ!」
「了解!そっち行ったらよろしく!」
「そしたら動き止める!」
「なら決める!」
壁面に激突したボスに動きはない。
しかし、安易に二人が一箇所に集まるのも危険なため、言葉少なに警戒を緩めない。
再び動き出したボスは、やはりどこからか不明な咆哮を上げる。
再度、しかし今度は先程より少ない本が飛び出し、ツキヨの予言した通りミィを狙った。
「私を見てていいの?間違いなく……」
瞬間、白い一閃が瞬き、再び呼び出された本モンスターが魔法発動の隙すら与えられずに砕け散る。残ったのは、魔法を発動しようとするボスのみ。
「向こうの方が怖いよ?……【爆炎】!」
その時点でボスは都合九つの魔法を同時展開し、ミィを狙っていた。だが、魔法ごとその身体を【爆炎】に吹き飛ばされ、高ノックバックで動きを止められる。
致命的な隙が生まれた。
「……やっちゃえ、ツキヨ!」
「二刀――【
神速の十六連撃の全てを最大の弱点である背表紙に叩き込んだ瞬間、その身体は両断された。
次話にも続いてるから、諸々の補足は次話の後書きでやります。
感想で補足に関わる質問、疑問が有っても、そこはお答えできませんので悪しからず。
まぁ要は、次話の後書きは1000字行くんじゃないかなぁ(白目)
とりあえず、カナデを出したかった……。
第二回って言ったら、カナデとカスミ登場回ですしね。原作でもカナデはレベル5だったし、パズルの前は2でもおかしくなさそう。
あと最近、影薄気味だった【八岐大蛇】とか、ちゃんとミィだって強いんだよって所とか、あんまりやらなかった二人の連携とかとか。
やりたかったことを詰め込んだ。
いつもはミィが演技してたり、ツキヨちゃんメインだったりでミィあんまり出せてないんだけど、第二回イベント前半はミィにも沢山スポットを当てたい。てか当てる。