PS極振りが友達と最強ギルドを作りたいと思います。 作:五月時雨
地上に降りたツキヨとミィが最初に感じたのは、潮の香りだった。
「カナデの言ってた通り、海が近いんだね」
「うん。【遠見】で確認した。百メートルも離れてないよ」
海辺の一部がモンスターの出ないエリアになっているらしく、『そこなら休めるだろう』とはカナデの談である。
魔法陣を出て、生い茂る森の中をツキヨの先導で歩く。目標は、カナデから聞いた海である。
「海があるってことは、水中にもモンスターがいるのかな?」
「いる……とは思うけど、もしかして行くの?私【水泳】も【潜水】も持ってないよ?」
「十分も泳がない内に取れるし、この際取れば?水中でも魔法の火は消えないんだから、よほど高い耐性じゃなきゃ焼けるし」
「威力半減するけどね。効果時間も半分になるし……だから水の中って嫌なんだよぉ……」
魔法属性によっては、環境そのものが発動の邪魔をし、威力や効果時間が減衰するものがある。
【火魔法】はその典型であり、水中で発動すると、威力と効果時間が半分になってしまう。それでもミィのスキルと高いINTによって、かなりの威力を持っているのだが、やはり戦闘としては苦手意識が強かった。
だが、そこはそれ。ツキヨさんはちゃんと考えている。
「なら、試してみたいことがあるんだけど……だめ?」
「なに?」
「【アクアヴェール】。それを【聖水】で強化したやつ。元々は水のヴェールを纏って、敵の攻撃を受け流すっていう防御系のスキル。強化したらもう一つ付くんだよ。それが――」
―――一時的な水中での呼吸可能。
「すご!?【潜水】要らなくなるじゃん」
「十分くらいで効果失うし、【潜水】が育ちにくいってデメリットもあるけどね。他にも【水陣】で水属性を付加した【火魔法】なら、効果時間変わらないかもしれないし、試す価値はあるって」
他にも試したいスキルはいくつかあるため、その辺の協力をしてもらいたいと言うツキヨ。
ミィも楽しそうだと了承する。
少しして、森を抜けた先には。
「おぉ……」
「すっごいキレイだね」
日の光に照らされてキラキラと輝く海面。
色とりどりの魚が泳ぎ、美しい珊瑚が海中を彩る。波の動きによって、不規則に輝きを変える。
カモメのようなモンスターが上空で群れをなして飛び、地面は真っ白の砂浜。
遠く海の先を見れば、島が一つ見える。
雄大な海が、広がっていた。
「これは、私も泳ぎたいな」
「おぉ?もう心変わり?」
「単純にキレイなんだもん。ここまでだとは思ってなかったからさ」
「ふふっ、たしかに」
ミィは宣言通り【水泳】も【潜水】も持っていない。ツキヨはどちらもスキルレベルは最高であり、潜水可能時間は四十五分。
となれば、水中戦闘も慣れているツキヨは探索に。ミィはスキル取得と、そのレベル上げをした方が良いだろう。
「取り敢えず、遠くの方の探索に行ってくるね」
「分かったー。なら、私は少し泳いでスキル取るのと、浅瀬を探索だね」
「よろしくー」
バシャバシャと海の中に入っていく二人。
服や武器を装備したまま海に入るのはゲームならではであり、着衣泳なのに普通に泳げる感覚が、なかなかに楽しいのである。
息を大きく吸い込んで潜ると、浜辺で見た景色とは別世界な光景に、また見とれた。
色とりどりの魚や珊瑚礁、海面からは反射して見えなかった、透き通った世界。
まるで宝石のような空間が、そこにあった。
「じゃ、行ってくる」
「あ、喋れるんだ!?」
「じゃなきゃスキル使えないじゃん。息はできないけどね」
「あ、そっか……んぐっ!」
息継ぎの限界が来たミィは海上に顔を出したが、ツキヨはまだ余裕があるし、たった今声をかけたので、そのまま沖に出ることにした。
「AGIって泳ぎの速さにも関係するんだ……ゲーム内なら世界記録とか簡単に塗り替えるね」
数秒で見えなくなった白銀の親友を眺め呟く。
「さ、私も探索しよー!」
キレイな世界に、どぷんっと身を沈めた。
◆◇◆◇◆◇
ところ変わってツキヨは、キレイな世界に目を奪われつつもしっかりと探索していた。
「ぷはっ……これでメダル一枚。もう一つくらい欲しいなー?」
珊瑚の隙間や海底の砂の中、昆布やワカメの間を調べていく。
これもツキヨのスキルレベルが高く、ステータスも相応に高いからこそである。
時間ギリギリまで潜る必要もないため何度か息継ぎをしながら、余裕を持って探索する。
色々とやっているが、これでもまだ初日。300枚のうちの三枚を、この時点で得ているのであれば、成果としては上々である。
珊瑚の隙間が奥に続いている場所や、岩礁の奥などを徹底的に探す。
さっきのメダルもそういう場所にあり、探索とはそういうものだから。
結果、水属性を宿した巨大な真珠のような宝石と、メダルをもう一枚見つけることができた。
「後は、あの島だよねー」
ツキヨは、浜辺からも見えていた小さな島に泳いでいく。
遠目で見た時もかなり小さかった島はかなり沖にあり、海外アニメでよくある、遭難した孤島といったレベル。
ヤシの木が一本生えているだけの、平たい小さな島。満潮になったら、ヤシの木以外消えて無くなりそうだ。
そこはゲーム的に無くならないのだろう。
あとあるのは、中央に地下に続く階段。かなり下まで続いているのか、先は見えない。
「……取り敢えず、行ってみよう」
ツキヨは、慎重に階段を下りていく。
図書館はモンスターがボスしか出なかったが、ここもそうとは限らない。むしろ、【水泳】と【潜水】を持っていなければ到底たどり着けない上に、ダンジョンとしてはかなり異彩を放つそれに、警戒心は最大だった。
階段は百段ほどあり、降りきった先にあったのは、普通の木製の扉だった。
「は?」
かなり異質な入り口だったのに、あるのはただの扉。ボスモンスターがいる所は、総じて荘厳な扉がある。
封印でもなく、鍵もかかっていない。
「だからこそ、怪しいよね」
ツキヨは、その扉を慎重に開く。
そして、中の光景に驚いた。
中は、綺麗な半円のドームだった。
そして、その中央には石でできた古い祠と魔法陣が静かに佇んでいる。
何度か見て、さっきも使用した転移の魔法陣。
けれど、一緒に鎮座する祠に見覚えはない。
「祠、ねぇ……何かを祀っているだけなのか。あるいは……」
いや、前者はあり得ない とツキヨは即座に切り捨てた。これはゲームなのだ。ただ祀っているだけならば、ここに魔法陣は必要ない。そして、ゲーム内で何かを祀るということは、それ自体に意味が必要になる。
ならば、『あるいは』が考えられる可能性であり、一人では判断できないものだ。
「取り敢えず、ミィに相談かなぁ……」
ツキヨは階段を引き返し、地上に出た。
砂浜まではかなりの距離があるが、先程までと違い探索せずに行けば、すぐに戻ることができそうだと思い、まっすぐ泳いでいく。
そして、半分ほど進んだところで真っ赤な人影が目に入った。
「あ。おーい、ツキヨーっ!」
………赤い浮き輪でプカプカと漂う炎帝様が。
無駄に凝った、『演技に合いそう!』とお揃いで購入したグラスを片手に優雅に手を振っていた。
「何それ。そんなの持ってたっけ?」
「うぅん違う違う。あれあれ」
そうやって指差す先には、森と砂浜との境界線ひっそりと聳え立つ、実のついた一本の木があった。
「あれが……なに?」
「ツキヨなら見えるでしょ?よく見てよ、あの木の実」
「木の実?……【遠見】」
見えたのは真ん中に穴の空いた、変な形をした木の実だった。
「何あれ?ドーナツみたいだけど……食べられるの?」
「違うってば。はいこれ」
もう一つ持っていた、小さな輪っか上の白い木の実を渡してくるので、反射的に受け取ってしまうツキヨ。
見てみれば、浜辺に見える木の実と同じ形だ。
「それの『へた』の所。枝の中が筒状になってるでしょ?そこに思いっきり、息を吹き込んで」
ミィの言うとおり、恐らく枝と繋がっていたであろう『へた』らしき部分が、側面から一センチほど突き出している。
言われた通り、半信半疑ではあるが、ツキヨはそこを咥える。
そのまま鼻から大きく息を吸い、筒状になっているヘタに、空気を吹き込んだ。
「ほらほらもっと強くー」
両目を閉じて思い切り、勢いよく吹き込むと、一度目に感じた抵抗が次第になくなり、次の瞬間、まるで弁が開くような感覚とともに空気が木の実に入り込んだ。
直後。
ぽーんっ!という盛大な破裂音を響かせて、白い木の実は瞬時に巨大化した。
最初は7、8センチだった直径が、今は一メートルにも達している。これはもう、どう見てもドーナツではなく。そして目の前でミィが使うものと同じ――。
「あははっすごい!浮き輪になった」
「海からはすぐに見えるけど、陸からはかなり見つけづらい場所にあってね。穫ってから丸一日で消えちゃうらしいけど、十分じゃない?」
「流石ゲーム。こう言うのもあるんだ……これなら、浅い所なら安全に探索できるね」
「いやー、今ここ私達だけでプライベートビーチみたいでしょ?雰囲気も出してみた!」
「それでそのグラス……」
普通に浮き輪の輪の中に収まるのではなく、海面に浮かべた浮き輪の上に腰を下ろしているミィ。水着じゃないのがシュールであるが、それなりに様になっていた。
「中身はぶどうジュースだけどね。浮き輪の木の後ろ辺りに色んなフルーツの木があってね。もいだフルーツのヘタを取ると、そこからフルーツのジュースが出るんだよ」
「色んなフルーツ……」
目を向けても浮き輪の木が邪魔で見えづらいのだが、【遠見】と【魔視】の重ねがけの前では無力。ツキヨは、文字通り『色んなフルーツが成る一本の木』が見えた。
「ドリンクバー!?」
「あははっ、だよね!」
りんごに蜜柑にぶどう、桃、梨、果てはメロンやいちごまである。木にできちゃいけないやつだろう、それは。というか果物じゃないだろう。
「真っ黒い泡みたいな実はコーラで、ここからじゃ見えないけど、透明な泡の実はサイダー。他にも、お茶は木の葉から色々と」
「本当にドリンクバーだね……」
「数時間で腐っちゃうみたい。インベントリに入れても数時間で勝手に消えちゃうらしいから、持ち運びもイベント後に持ち出しもできないけどね。……というわけでツキヨも。はい」
「桃……しかも白桃ね。狙ったでしょ?」
「まぁねー?」
インベントリから、ミィと同じデザインのグラスを取り出し、桃のヘタを取って逆さにすると、そこから白く半透明な白桃のジュースが出てきた。
ミィが鮮やかで濃い赤色のぶどうジュース。ツキヨが真っ白の桃のジュース。
浮き輪の色含め、狙ったとしか思えない。
ツキヨも『まぁ、それはそれで良いか』と思ったので、ミィに倣って浮き輪に腰を下ろし、波に流されないように互いの浮き輪に掴まりつつもジュースを飲む。
「あ、そうそう。浅瀬の探索だけどね。メダルが一枚と、食材アイテムがたくさん出てきたよ」
「食材?」
「そ。アサリっぽい貝とか、蟹とか!」
「海の中でも魚取れるのかな……?どうせなら、夕ご飯はここで獲ってみる?。【料理】スキル、少し上げてきたし」
「あ、悩んでたみたいだけど、取ったんだ」
「うん、調味料もそれなりに揃えたから、それなりにはできると思うよ。……あ、この桃ふつうにでも食べれるみたい」
言いつつ、早速ペティナイフを取り出したツキヨが器用に桃をカットし、その一切れをミィの口に放り込んだ。
「あむ。んー……なんか、味が薄いような?」
「あむ。……ホント。ジュースの方に出尽くしちゃったみたいだね。ぶどうは?」
「……こっちも薄い。というか無味。後でジュースとは別で取ってこようよ」
「ふふっ、その方がいいね」
「夕ご飯のデザート決定!」
「私が作るより、事前に買ったやつの方が美味しいけどね。スキルレベル的に」
「良いんだって。雰囲気が大事でしょ!それに、今しか食べられないんだから!」
「それもそうね」
ミィの探索結果は以上のようで、次はツキヨの報告……の前に。
「殆ど陸の探索じゃん。スキルは取れたの?」
「取れたよ。どっちもまだ【Ⅰ】だけどね」
「取れたなら良いけど……海の中の探索してなかったら、浮き輪から叩き落としたよ」
「それトラウマになるよ!?むしろ泳げなくなるから!メダルは波打ち際で、貝は岩礁だよ!」
ちゃんと探索したからね!?と半泣きのミィだった。それに一頻り笑い、ごめんごめんと謝ったあと、ツキヨの報告を始める。
「こっちはメダル二枚に、魔法石っていうのが一つ。生産素材みたいで、【水属性強化】が付くんだって。ミィには使い道ないかな」
「もろツキヨ用だね。メダル二枚か……順調、なのかな?」
「初日に五枚。運もあるけど、ハイペースとしか言えないよ。参加人数もすごい多いんだし」
―――
『水面の魔法石』
【水属性強化】
―――
今までに見たことのないアイテムで、生産素材として加工できるらしい。
ミィは現実ではまずありえない掌大の真珠を手に取って、目を瞬かせた。
「おぉ、大っきいね。海に水の魔法石なら、火山みたいなフィールドには……」
「火の魔法石があるかもね?」
「次はそこ行こう!」
「はいはい。まずは私の報告を聞いてね?」
真珠を返してもらい、メダルをミィに預ける。
接近戦が主体のツキヨより、魔法使いのミィの方が死ににくいという判断である。金のメダルだけは自分で所持しているが、銀のメダルはミィが全て管理している。
それはさておき、ツキヨは沖に浮かぶ島を指さした。
「あの孤島の地下に、転移魔法陣と祠があったんだよね」
「魔法陣と……祠?」
「そう。転移の魔法陣は、今までと同じなんだけど、祠は見たことないでしょ?」
「無いね。けど、転移先には行ってみたんでしょ?」
「……いや、行ってない。戻れる保証がないし、一人で行くのはミィに悪いし。それに……嫌な予感がする」
最後の言葉に、ミィが耳を傾ける。
「祠のある転移魔法陣。この場合、魔法陣の先にある何かを祀ってるんだと思うんだけど……祀る『モノ』って……何?」
「……神様とか?でもゲームなんだし、別に変なこと、じゃ……」
ツキヨは、尻すぼみに小さくなっていく声音に、ミィも気付いたかと小さく頷く。
「普通に祀るなら相手は神様。まぁ小さな祠だし、現実なら土地神とかの小さな神様だよね。でも、ここはゲームなんだよね。
「海の神様……いや、敢えてモンスターの方が良いかな?だとしたら、その祠は封印だよね。もしそうなら」
封印か、祀るか。どちらにせよそんな存在は。
「「十中八九、超強いモンスター……」」
神様か、怪物か。どちらにせよ、強敵であることに間違いはなかった。
カナデに出会った時点で、降りる場所はお察し。さぁ、ここからどうなる!
魔法の火は、MPを燃料にしているから消えはしない。けど、威力は減衰します。独自設定。
水中はツキヨの領分だぁね。あと、スキル【聖水】はもはや便利スキル。
水に関してはもうエキスパートになってます。
そして、ようやくキャラ設定の所を大きく更新できそうで楽しみな私。
【アクアヴェール】。体の周囲に水のヴェールを纏い攻撃を受け流し、ダメージを半減する。
【聖水】による強化で10分の水中呼吸が付加。
『水の加護』を受けたと言えるでしょうね。
変化した時の名称は未確認。
浮き輪のなる木……SAOプログレッシブよりクロスオーバー。こういうファンタジーっぽいアイテムは好み。
ドリンクバーの木はオリジナル。きっと、色んな種類の木を接ぎ木したんだろうなぁ(白目)
魔法石……原作で第二回イベント中に、サリーが『魔石杖』って装備を拾ってるのから着想を得ました。魔石なるアイテムがあるなら作ってしまえ。この手で!のノリ。
ツキヨが言った通り、装備作成の素材にすることで、属性強化のスキルが付きます。そのまま持ってても、恩恵は得られません。
ごめんサリー!
獲得予定のメダル、もう取っちゃった!初日にして5枚。まぁハイペースですね。